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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第19話


~アルモリカ古道~



「……すみません。わざわざ送っていただいて。」

ハロルドの車の助手席に座っているロイドはハロルドの軽く頭を下げた。

「はは、いいんですよ。ついでに送るだけですし。」

一方ハロルドは笑顔で答え

「しかし自分の車を持ってるって相当スゴイよなぁ。まだまだバカ高いんだろ?」

ランディは感心した後ティオに尋ね

「このクラスの自家用車ならたしか80万ミラくらいかと。」

「80万ミラ………そりゃ凄いな。」

尋ねられて答えたティオの話を聞いたロイドは驚いた。

「一応、貿易商としての仕事の道具でもありますから。バスを使ってもいいんですけどどうしても時間の融通が利かないことが多くて………去年、思い切って購入してしまいました。」

「ふふ、それ以外にも理由がありそうですね?待っている奥様と息子さんに一刻でも早く会いたいとか。」

ハロルドの話を聞いたエリィは微笑みながらハロルドに言い

「はは………参ったな。」

エリィの言葉を聞いたハロルドは驚いた後苦笑した。

「なるほど、お土産もマメに用意してるみたいだし。」

「………所謂マイホームパパというわけですね。」

「いやあ…………とんでもない。どうしても出張が多くて妻と息子には寂しい想いをさせてしまうことが多くて………」

「息子さんはお幾つなんですか?」

「今年で5歳になります。まだ日曜学校に入る前ですけどもう好奇心旺盛で………色んなものに興味を示しては妻の手を焼かせていますよ。」

「へえ………」

「ふふ、お幸せそうですね。」

ハロルドの話を聞いたロイドは口元に笑みを浮かべ、エリィは微笑ましそうにハロルドを見つめていた。

「はは………それはもう。それに私は――――私達は幸せでなくてはなりませんから。」

そしてハロルドは苦笑して答えた後、寂しげな表情になった。

「え………?」

ハロルドの言葉を聞いたロイドは仲間達と共に首を傾げた。

「あ、いや………すみません、こちらの事です。おっと、古道を抜けますね。右に曲がりますから皆さん、どうかお気をつけて。」

その後ハロルドが運転する車は分岐点でクロスベル方面へと曲がって、進んで行った。すると

「……………………」

白と青の毛並みの一匹の狼が草村から現れ、去って行く車を見つめた後、どこかに去って行った。



~中央広場~



「―――ありがとうございます。こんな所まで送っていただいて。」

ハロルドの車によって中央広場まで送ってもらったロイドはハロルドにお礼を言った。

「はは、いいんですよ。それこそついでですしね。皆さん、どうか捜査の方、頑張ってください。応援させていただきますよ。」

「ありがとうございます。」

そしてハロルドの言葉にエリィは微笑み

「………応援していただけるのなら今後、何かあれば支援課(わたしたち)の方に。」

「そうそう。できればギルドより先にな。」

ティオとランディは勧誘をした。

「ちょ、2人とも!」

「もう……露骨すぎるわ。」

(フフ、たくましくなってきたわね。)

2人の勧誘にロイドは焦り、エリィは溜息を吐き、ルファディエルは微笑んでいた。

「はは、たまには売り込みもしとかねぇとな。」

「営業活動は大事です。」

一方ランディとティオは悪びれもない様子で答えた。

「はは、わかりました。もし困ったことがあれば、遠慮なく相談させて頂きます。それでは私はこれで。皆さんもお仕事、頑張って下さいね。」

そしてハロルドは車に乗って西通り方面へ去って行った。

「ふう………すごく良い人だったな。」

「………そうですね。お人好しのレベルがロイドさんに匹敵しそうです。」

「あのな………」

ハロルドが去った後自分が呟いた言葉に頷いた後言ったティオの言葉を聞いたロイドは溜息を吐いた。

「ま、それでも貿易商をやってるくらいだ。ただお人好しってだけじゃ勤まらないと思うけどな。」

「でも、ハロルドさんは地場産業ときちんと協力しながら堅実に商売しているみたいね。クロスベルの貿易商は国際取引で荒稼ぎする人が多いって言われているけど……そんな中では貴重な存在かもしれないわ。」

「なるほど、そういうもんか。」

「ああいう真っ当な人もいればルバーチェ商会みたいなのもある。……それが今のクロスベルか。」

「ええ、そうね………だから今のクロスベルの全てが駄目ってことはないと思うの。」

「ああ………俺もそう思うよ。―――さてと、昼過ぎか。このまま次の目的地に行こうか?」

エリィの意見に頷いたロイドは仲間達に振り向いて提案した。

「ええ………『聖ウルスラ医科大学』ね。」

「………………たしか南口方面ですよね?」

「ああ、このまま南にまっすぐ抜ければバス停がある。30分ごとにバスが出てるって聞いたことがあるな。」

「へえ、そいつは便利だな。まあいい。とにかく行ってみようぜ。」

「ああ。(医科大学か………やっとセシル姉に会えるな。)」

その後ロイド達は『聖ウルスラ医科大学』に向かう為に南口のバス停に向かった。



「次の発車時刻は………10分後ってところか。」

「待っていればすぐに来るわね。ウルスラ病院か………行くのは久しぶりだわ。」

「ああ、俺もそうだよ。本当ならすぐにでも訪ねるつもりだったんだけど毎日忙しかったからなぁ。」

「あら……」

「病院に行くって、どこか具合でも悪いのか?」

ロイドの言葉を聞いたエリィは意外そうな表情をし、ランディはロイドに尋ねた。

「いや………知り合いが勤めているんだ。ずいぶん世話になった人でさ。戻った挨拶をしたかったんだけど。お互い忙しかったから先延ばしになってたんだよな。」

「なるほど、そうだったの。」

「勤めてるってことは医者かなんかか?」

「いや、看護師をしている人だよ。若手のまとめ役みたいで毎日とんでもなく忙しいみたいだよ。」

「看護師ってことは………アレか?もしかして、ナース服着て優しく検温してくれるお姉さん?」

ロイドの説明を聞いたランディは驚いた後尋ねた。

「へ………ま、まあナース服は仕事着だから着てると思うけど。」

「そのお姉さん、幾つ?」

「俺より5歳上だから23歳になったかな……?うちの隣に住んでた人でもう一人の姉さんみたいな人でルファ姉とは親友同士なんだ。」

「美人?」

「う、うーん……………綺麗な人であるとは思うけど。多分、ルファ姉にも負けていないと思うよ。」

(フフ、嬉しい事を言ってくれるわね。)

ロイドの説明を聞いたルファディエルは微笑み

「2歳年上のお姉さん………さらにルファディエル姐さんクラスの美人……………しかもナース服と来たか…………ストライクど真ん中!おーし、みなぎって来たぜぇ!いや~俺は幸せだなぁ!お前みたいな親友(マブダチ)と巡り合うことが出来て!というわけで紹介ヨロシクね♪」

ランディは大声で叫んだ後、嬉しそうな表情でロイドを見つめた。

「あのな………(やっぱりか………)」

ランディの様子を見たロイドは呆れ

「はぁ………男子っていうのはこれだから。」

エリィは呆れた表情で溜息を吐いた。

「ちょ、そこで俺も入れないでくれよ!?」

(かかかっ!まあ、ロイドなら女には不自由しないものな!)

(……ロイドが女たらしみたいな事を言わないでちょうだい。)

エリィの言葉を聞いたロイドは慌て、ギレゼルは笑い、ルファディエルは顔に青筋を立てて呟いた。

「ティオちゃん、どうしたの?さっきから考え事をしているみたいだけど………」

一方考え込んでいるティオの様子に気付いたエリィはティオに視線を向けて尋ねた。

「あ………いえ。少々、病院とかは苦手で。消毒液の匂いとか注射とかがちょっと………」

「そっか………」

「えっと、大丈夫か?何だったらティオは――――」

「―――問題ありません。ちょっと苦手というだけで嫌いというほどではないです。来なくてもいいとか言ったら怒りますよ………?」

ロイドの気遣いをティオは断った後、ジト目でロイドを見つめた。

「い、言わないって。(危ない危ない………少し気を付けなくちゃな。)」

「それに、わたしもロイドさんのお知り合いには会ってみたいですし………この前、通信器で嬉しそうに話していた人ですよね?」

「!ど、どうしてそれを………」

ティオに尋ねられたロイドは驚き

「ふふ、ロイドのもう一人のお姉さんみたいな人か。ちょっと会うのが楽しみになってきたわね。」

「おお、どっちかって言うとメインイベントになりそうだぜ!」

エリィは微笑み、ランディは嬉しそうな表情でロイドを見つめて言った。

「あ、あくまで捜査優先だからな!?」

その後ロイド達はバスを待ったが、30分たってもバスは来なく、他の客達も若干イラつきながらロイド達と共に待っていた。



「………来ないわね。」

「30分経過です。」

「おいおい、ロイド。10分後に来るんじゃなかったのかよ~?」

「……俺に言われても。しかし妙だな。さすがに遅すぎる気が………」

ランディの言葉にロイドは答えた後、考え込んだその時

「ああ………やっぱり来てないよなぁ。困ったなぁ………本当にどうしたんだろう。こっちから通信入れても何の返事もないし……」

一人の青年がバス停に近づいた後、バスが来る方向を見つめて呟いていた。

「あの………どうかしたんですか?」

「随分バスが遅れているみたいですけど。」

「いや~、何かトラブルが起こったみたいでして。一度、バスの運転手から通信があったんですけど………途中でプツリと切れてしまって応答が無くなってしまったんです。」

「それって!?」

「………トラブルの匂いがしますね。」

青年の話を聞いたロイドは驚き、ティオは静かな表情で呟いた。

「ところで………兄さん、どこの人なんだ?」

「ああ、僕はクロスベル市、交通課の者です。一応、自治州で運行しているバスの管理をしてるんですけど………うーん、警備隊に連絡するのもなんだしやっぱりギルドに頼るしかないかなぁ。」

「「「「…………………」」」」

青年の呟きを聞いたロイド達は黙り込んだ後、顔を見合わせた。

(………みんな、いいか?)

(ええ、わかってる。)

(ふう………仕方ないですね。)

(ま、これも巡り合わせだろ。)

賛成の様子のエリィ達を確認したロイドは青年に振り向いて言った。

「あの………その役目、自分達にまかせてくれませんか?」

「え。君達は………?」

「クロスベル警察、特務支援課の者です。これから捜査任務で医科大学に向かう所でした。」

「え、君達、警察の人?そっか………雑誌で読んだことがあるな。警察がギルドみたいな市民サービスを始めたって。」

「………その、厳密には同じではないんですけど。バスの様子を見に行くくらい問題なく出来るかと。そうか……それならよろしく頼むよ。何だったら、遊撃士の応援でも頼んでおくかい?」

「い、いや、多分大丈夫だと思います。――――みんな、行こう。」

「ええ………!」

「おうよ!」

「……了解です。」

その後ロイド達はバスの様子を確かめる為に街道を進み始めた。ロイド達がバス停から去って行くと同時にクロスベル市にある空港から3人の娘達が現れた。



「へ~………ここがクロスベルか~!初めて見るタイプの街だね!」

娘の一人―――薄い撫子色の長い髪をポニーテールにして纏めてなびかせ、足や胸を大胆に見せている黒を基調した衣装を着用し、背中に身の丈ほどある大剣を背負っている娘は興味ありげな様子で周囲を見回し

「セティ姉様、これからどうしますか?例の”特務支援課”でお世話になるのは明日からですが………」

背に一対の美しい白き翼を生やし、白を基調とした上下の服を着て、胸と腕の部分に蒼き装甲を装着している金髪の娘は自分と撫子色の髪の娘の中央にいる緑を基調とした服装で腹以外の部分の肌を隠し、金髪で左右の髪を結いあげて青が混じった白い羽の羽飾りで留め、そして残りの髪を腰までなびかせているエルフらしき娘に尋ね

「そうですね………明日からお世話になる方々の手間を少しでも減らす為に今日はクロスベル市のさまざまな所を見て周りましょうか。丁度観光用の地図もある事ですし………地図に乗っていない細かい所については支援課の皆さんに教えてもらいましょう。幸い、リウイ様の手配によって今日泊まるホテルの部屋は確保してありますし、夕方になったらホテルに帰って明日に備えて休みましょう。」

尋ねられた娘は考え込んだ後提案した。

「賛成~!」

「わかりました。」

娘の提案に2人はそれぞれ頷き

「それでは行きましょう。」

エルフらしき娘に促され、クロスベル市内へ足を踏み入れた。



~ウルスラ間道~



「あれは………!」

「チッ……やっぱり予想通りか!」

街道を進んでいたロイドとランディはエリィ達と共に何かに気付いてその方向を見つめると、そこには2体の大型の魔獣に囲まれているバスと運転手がいた。

「ひ、ひいっ!何でこんな時に魔獣が………ああ、女神(エイドス)よ!どうかお守りください~!」

「大丈夫ですか………!」

運転手が悲鳴を上げたその時、ロイド達が駆け付けた。

「あ、あんたらは………!?」

「警察の者です!」

「撃退すっから中に入っててくれや!」

ロイドとランディの言葉を聞いた運転手は慌てた様子でバスの中に入り、扉を閉めた。



そしてロイド達は戦闘を開始した………!









 
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