英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第106話
~煉獄・最奥~
「あれは……!」
「あ………!」」
「着いたか……!」
門に気づいたケビン達はそれぞれ声を上げて門に近づいた。
「”煉獄門”………『かの門は歪にして堅牢。生者と亡者を隔てる関所なり……』」
「聖典に記されているのとまんま同じイメージやな……問題はコイツをどうやって開くかやけど……」
「ナベリウスならなんとか出来るかもしれなかったんですけどね………」
煉獄門を見たケビン達がそれぞれ考え込んでいたその時
フフ………残念だがそれは適わぬよ。
広間全体に誰かの声が聞こえて来た!
「え………!?」
「?どこかで聞いたような………?」
(………この声は……!)
声を聞いたリースは驚き、リタは首を傾げ、ケビンは真剣な表情をした。すると煉獄門の前にリベル=アークで滅した”外法”にして”身喰らう蛇”の”使徒”―――”白面”ワイスマンが現れた!
「久しぶりだね。ケビン・グラハム…………まさかこのような場所で君と再会できるとは………」
現れたワイスマンは不敵な笑みを浮かべてケビンを見つめた。
「貴方は……!」
「フン、やっぱり現れたか。オレが滅した連中がうろついてるから現れてもおかしくないと思ったが………」
ワイスマンを見たリタは警戒した表情で冷たい微笑みを浮かべているケビンと共に睨んでいた。
「………だ、誰なの?」
一方ワイスマンの正体を知らないリースは戸惑った様子でケビン達に尋ね
「元・封聖省司教にして教会史上、最悪の破戒僧………”身喰らう蛇”の使徒にして”白面”の異名を持つ魔人……………半年前にオレが滅した、ゲオルグ・ワイスマンや。」
「!!!こ、この男が…………」
ワイスマンの正体がわかったリースは目を見開き、驚きの表情でワイスマンを見つめた。
「フフ………私としたことが迂闊だったよ。”外法狩り”ケビン・グラハム。まさか君が、長らく現れなかった”第五位”を継ぐ者だったとはね。」
「オレが”守護騎士”というのは『隠し札』の一つやったからな。もっともアンタを滅したことでカードは切られてしまったけど。」
「フフ、封聖省の連中も手の込んだことをする………おそらく君が”聖痕”を顕した直後にシナリオは出来上がったのだろう。”塩の杭”と”守護騎士”………この2つを用いて、万が一にも私を討ち漏らすことがないようにね。」
冷たい微笑みを浮かべて説明したケビンにワイスマンは妖しげな笑みを浮かべて言った。
「ああ、多分そうなんやろ。その意味では……確かにオレはアンタの言う通り”狗”以上でも以下でもない。………それで十分やと思っていた。」
「フフ、どうやら随分と感じ入る所があったようだね。しかし…………さすがは”守護騎士”と言うべきか。私も”聖痕”については個人的に研究を重ねてきたが………そのオリジナルにまさかこれほどの潜在能力が秘められていたとはね。」
「なんのことや………?」
興味深そうな表情で自分を見つめるワイスマンをケビンは冷徹な表情で見つめ返した。
「フフ………君も薄々気づいているはずだ。この”煉獄”が君の潜在的な願望を元に生み出されたことを………より正確に言うと―――全ては君の”聖痕”が原因なのだ。」
「なんやと…………!?」
「ケビンさんの”聖痕”が………!?」
「どういう事ですか………!?」
ワイスマンの説明を聞いたケビン達はそれぞれ驚き、ワイスマンを睨み
「”環”の消滅………それはサブシステムとして存在していた”影の国”に致命的な混乱をもたらした。無理もない………突然、自らを律していた存在が跡形もなく消えてしまったのだ。そして”影の国”は………自らを律する『主』を欲した。より正確に言うと………あの時、”環”の近くにいた者の中で最も深いトラウマを持つ者を選んだのだ。」
睨まれたワイスマンは静かな口調で説明した後、醜悪な笑みを浮かべた。
「!!!」
「…………あ…………」
「……なるほど。そういう事だったんですか………」
ワイスマンの説明を聞いたリースは目を見開いて驚き、ケビンは呆け、リタは静かな表情で頷いた。
「そして”影の国”は君の奥底にある”聖痕”を探り当てそれを取り込む形でコピーした。そして”聖痕”は…………君の潜在願望である”煉獄”を”影の国”の中に現出させてしまう。フフ…………まさにそのような状況の中で”影の王”は誕生したという事だ。」
「………………………………」
「……………ケビン………………」
そして全ての真実を知ったケビンは辛そうな表情で黙り込み、リースは心配そうな表情で見つめ
「………待って下さい。現在にいる方達はともかく、何故過去の方達まで取り込まれたのですか?」
ある事を疑問に思っていたリタはワイスマンを見つめて尋ね
「フフ………それは君達自身が一番わかっているのではないのかね?なんせ、生きた存在でありながら”時”を”操れる”のだから………」
「!ミントちゃんを取り込んだ時にミントちゃんの”真竜”の能力をコピーしたんですか………」
自分の疑問に答えたワイスマンの言葉にリタは驚いて呟いた。
「フフ………講釈はこのくらいにしておこうか。以上のことを踏まえて………一ついい方法を教えてあげよう。君が犠牲となる以外にこの事態を解決できる道をね。」
「「え………!?」」
「な、なんやと………?」
ワイスマンの提案を聞いたケビン達はそれぞれ驚きの表情をし
「なに、簡単なことさ。人間らしい心を捨てさればいい。」
「!?」
「なっ!?」
「………あ………」
凶悪な笑みを浮かべて説明したワイスマンの話を聞き、リースとリタは驚き、ケビンは呆けた声を出した。
「君の”聖痕”は言ってしまえば絶望と罪悪感から生まれたものだ。ならば、そんな下らぬ感情に囚われることのない存在になればいい。すなわち、何者にも拠ることなく自らをコントロールできる”超人”に。」
「………………………………」
「ば、馬鹿げてる………………そんなもの………人として正しい道のはずない!」
「悲しみ………苦しみ………それら全てを含めて”人”なのです!」
「フフ、しかし私は長きに渡ってそれを追求して来た。”聖痕”の研究もその一環………ヨシュアでは失敗してしまったが今の君はその一歩手前まで来ている。そして”超人”となった時………君は完全に”聖痕”をコントロールし、新たなる”影の王”となれるはずだ。」
「黙りなさい、”白面”!これ以上、その淫らな舌でケビンを誘惑するのは許さない!」
「………パズモ達が貴方に対して相当の怒りを抱いていた理由がようやくわかりました………貴方だけは絶対に許しません。生まれ変わる事も許さない。」
凶悪な笑みを浮かべてケビンを見つめるワイスマンをリースとリタはそれぞれ怒りの表情で睨んだ。
「フフ………誘惑ではなく提案だよ。誓って断言するが………私は一言も嘘は言っていない。彼に滅された恨みなど………このような事態になってしまえばむしろ些細なことだ。私は見てみたいのだよ………七耀の教えを捨ててまで”結社”に求めた”超人”への道が真の意味で実現する瞬間をね………!」
「………狂ってる……………」
「………リース、もういい。もういいんや………」
「ケビン………!?」
「……………」
ワイスマンの話を聞き寂しげな笑みを浮かべたケビンをリースは驚いた表情で真剣な表情で黙っているリタと共に見つめた。
「フフ………それでいい。君ならばきっと、理解してくれると思ったよ。」
「確かに………オレは強くあるべきなんやろ。ルフィナ姉さんをこの手で殺めてしまったこと………母ちゃんを拒絶して見殺しにしてしまったこと………そして今も、リースや他のみんなを巻き込んでしまっていること………それもこれも全部………オレが臆病でヘタレだったせいや。」
「ケビン………」
「フフ、その通り。しかしその弱さは必ずや克服できるものだ。私の示す”超人”の道によってね。」
「ああ………多分それもアリなんやろな。―――でもオレ、やっぱその道は選べそうにないわ。」
「…………なに……………」
予想外のケビンの答えを聞いたワイスマンは驚いてケビンを見つめ
「どうやらオレ、思った以上にヘタレだったみたいや。あの時のチョコレートの味や……さっきぶっ倒れた時に感じていた温もりが………忘れられそうにないねん。」
「な……!?」
ケビンの説明を聞いたワイスマンは困惑し
「……………あ………………」
(フフ、”性魔術”の効果がこんな所にも出てくるなんて………教えた甲斐はありましたね………)
リースはルフィナや自分がケビンを連れ戻した事を思い出し、リタは微笑んでいた。
「あの時のオレは………たしかに絶望しきっていた………でも、だからこそ………あのチョコレートはオレにとって忘れられない味になったんやと思う。辛い事、苦しい事、哀しい事、嬉しい事、楽しい事………そんなんを全て合わせてなお、オレを前に歩かせてくれたあの甘くて苦くて懐かしい味や………ぶっ倒れた時に感じていた誰かが抱きしめてくれる温もりを………」
「………ケビン………」
「フフ………」
「だから………すまんな”白面”。あんたの提案…………謹んで辞退させてもらうわ。」
「………………………………クク………いいだろう。君がどのような道を選ぼうとそれは君の自由………―――だが、そのような甘い感傷でどう危機を乗り越えるつもりかな!?」
ケビンの答えを聞いたワイスマンは黙ってケビンを見つめた後凶悪な笑みを浮かべて異空間から杖をだし、詠唱をした。するとケビン達を挟み込むようにかつて戦った”悪魔”―――アスタルテとロストルムが現れ、ケビン達はそれぞれ武器を構えた!
「………あ……………」
「あの悪魔は………!」
「アスタルテとロストルム………”煉獄門”の左右を守る悪魔どもか………!」
現れた悪魔達を見たリースは不安そうな表情で驚きの表情のリタと共に悪魔たちを見つめ、ケビンは静かな表情で呟いた。
「クク………いかに”守護騎士”といえど勝ち目がないのは明らかだろう。彼女達を守る為にもどの道が君に相応しいのか………今一度、選び直す気はないかね?」
ケビン達の様子を見たワイスマンは凶悪な笑みを浮かべてケビンを見つめて尋ね
「………………………………」
「ケビン………耳を貸す必要なんてない!私達なら大丈夫だから………!」
「ええ!”冥き途”の見習い門番として………”神殺し”に仕えし者としての力を今、お見せしましょう!」
尋ねられたケビンは黙り込み、リースとリタはそれぞれ悪魔達に警戒しながらケビンに言った。
「”白面”に加えて高位の悪魔が2体も相手か………ま、確かに万が一の勝ち目がないかもしれへん。………今までのオレやったらな。」
「なに………」
そしてケビンの言葉を聞いたワイスマンが驚いたその時!
「はああああああああああっ………!」
ケビンは力を溜め始め
「!?ドラブナが………!それにこの光はまさか………!」
ケビンが力を溜め始めると同時に”魔槍ドラブナ”は光を放ち始め、さらにリタも光に包まれた!
「おおおおおおおおおおっ………!」
そしてケビンが力を解放すると、ケビンの背に膨大な聖気を纏った何かの紋章が現れ
「嘘………ドラブナの呪いを浄化するどころか私自身を”魔”から”聖”の存在に変えるなんて………」
光に包まれたリタが現れると、そこには禍々しい気を纏った魔槍ではなく、神々しい気を纏い、槍についていた人の骨はなくなり、美しい白き翼がついた白銀の槍―――神槍ドラブナに乗った漆黒の衣装が白銀の衣装に変わり、全身に聖気を纏ったリタが現れた!
「……………すごい……………あれ?どうして、私にもケビンと同じ力が湧いてくるの………?」
ケビンの背に現れた紋章がさらけ出す聖気やにリースは驚いた後、自分の身体に湧いてくる何かの紋章から感じる同じ力を感じて首を傾げ
「ば、馬鹿な………その”聖痕”の光は………!?」
ワイスマンは狼狽えた。
「これはオレの”聖痕”が本来持っていたもう一つの貌………今までのオレには決して見られへんかった光の側面や。」
「な、なんだと………!?」
「なるほど………だから”聖痕”と一体化した私やドラブナも影響されて”光”の存在へと昇華したのですね……フフ、凄い力です。以前通り”魔槍”も召喚できるどころか、”聖霊”となった今なら神聖や治癒魔術も扱え………ケビンさんの”聖槍”も召喚できます。こんな形で新たな力を手に入れるなんて………ありがとうございます、ケビンさん。(それにリースさんにも力が湧き上がるのは恐らく”性魔術”による力の受け渡しにより”聖痕”の力と一体化した事で………リースさんにも影響が出たのですね………)」
そしてケビンの説明を聞いたワイスマンは狼狽え、リタは納得した後ケビンに微笑んだ後、リースに視線を向けた。
「おおきに”白面”………あんたの誘いを断れたおかげで…………オレは少しだけ自分に自信を持つことができたらしい………悪いけどこの力………このまま試させてもらうで!」
「”魔槍のリタ”改め”聖霊リタ”………参ります!」
「狗が………いいだろう!付け焼き刃の力ごときでこの”白面”を凌げるか………試してみるがいい!」
こうしてケビン達はワイスマン達との戦闘を開始した……………!
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