英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第105話
~煉獄~
「オオオッ!!」
「「アアアアッ!!」」
戦闘開始早々、オーウェンと周囲の亡者達が叫びながら何かの液体を吐いてケビン達に放った!
「「「!!」」」
攻撃に気づいたケビン達は散開して回避し
「リースさん!今までの探索での戦いでお分かりと思いますが亡者―――”死者”達には光の攻撃が有効です!」
リタは魔槍を飛ばして敵達に向かっていきながらリースに助言をした。
「わかりました!………………」
リタの助言を聞いたリースは頷いた後、魔術の詠唱を開始し
「オレ達は光の魔術はできんから、お前だけが頼りや!頼むで!そらっ!!」
ケビンはボウガンに装着した矢を次々とオーウェン達に放って命中させた!
「狙うはそこっ!!」
そして敵達の中心に飛んで行ったリタはクラフト――――薙ぎ払いを放って
「アアッ!?」
オーウェン達の腐敗した肉体の一部を魔槍で薙ぎ払って、血と肉片を地面に飛び散らせてダメージを与え
「イタイ………ニクイ………クルシイ………!」
「アアアアッ!!」
「無駄です。」
オーウェン達が同時に攻撃を仕掛けた時、魔槍を飛ばして亡者達の包囲を脱出すると共にオーウェン達の攻撃を回避した。
「浄化の焔よ………哀れなる魂に救いを!槌の光焔!!」
そして詠唱を終えたリースは光の力が宿った聖なる炎を放つ魔術を放った!
「「「アアアアッ!?」」」
弱点である光の魔術をその身に受けたオーウェン達は苦しみ、次々と爆発を起こして消滅して行ったが
「イタイ………ニクイ………クルシイ………ニクイ………イタイ………」
オーウェンだけは生き残り、憎悪が籠った目でケビン達を見つめた後、リタの魔槍やリースの魔術によって足の一部が消滅したにも関わらず、ゆっくりと近づいて行った。
「………これで楽にしてあげる。」
「次で全て終わらしたるわ、オーウェン。」
その様子を見たリタとケビンは同時に詠唱を始め
「千の棘をもってその身に絶望を刻み、塵となって無明の闇に消えるがいい…………」
「千の棘をもってその身に絶望を刻み、塵となって無明の闇に消えろ…………」
同時に自分の周囲に無数の”ロアの魔槍”を現させ
「「砕け!時の魔槍!!」」
同時に無数の”ロアの魔槍”を解き放った!
「アアアアアア――――――――ッ…………」
無数の”ロアの魔槍”をその身に受けたオーウェンは大爆発と共に叫び声を上げながら消滅した!
「………………………」
「………ケビン………」
戦闘が終了し、自分達に背を向けて黙っているケビンにリースはかける言葉がなかった。
「………さてと。まだまだ先は長そうや。とっとと進むとしようや。」
そしてケビンはリース達に振り向いてケビンは提案し
「………そうですね。」
リタが静かに頷いた。その後探索を再開し、しばらく進むと再び、何者かの怨念の声が聞こえて来た!
ウウウウ………アアアアアアアア………!
声に気づいたケビン達がさらに進むと、再び亡者達が現れ
オニイチャン………オネガイ………タベサセテ………ボク………ボクネ………スゴクオナカガスイテルノ………
「………こ、子供………!?」
亡者の一体の怨念を聞いたリースは戸惑い
「エルマー………狂信的な悪魔崇拝の教団による古代遺物を利用した儀式で人喰いの化物に変えられた少年………どんな暗示も法術も効かず………最後はラクにしてやるしかなかったな。」
ケビンが辛そうな様子で説明した。
「あ………」
「………私、そういう人達が一番大嫌いです………!何の罪もない子供を犠牲にするなんて………!」
説明を聞いたリースは悲しそうな表情をし、リタは怒りの表情で呟いた。
ネエ………イイデショウ………?ソノヤワラカソウナオネエチャンタチモイッショニナカヨクタベテアゲルカラ………ネエ………オニイチャン………タベテモイイデショウ………?
「………っ…………」
「…………………」
「君が悪いんとちゃう………それだけは確かや。そして多分………女神達が悪いんでもない。恨むんなら………オレの事を恨めばええ。」
亡者―――エルマーの怨念を聞いたリースは辛そうな表情で唇を噛み、リタは静かに目を伏せ、ケビンは静かな表情でエルマーを見つめた後
「だからな………もう一度、ラクにしたるよ。」
「私も”冥き途”の見習い門番として貴方をあるべき場所へ還してあげる。」
リース達と共に武器を構えた!
イヤダ、イヤダァ!!………ボク………ボク………オナカイッパイニナリタイノォオオ!!
そしてケビン達はエルマー達との戦闘を開始し、協力してエルマー達を滅した。
「…………………………」
戦闘が終了し、ケビンはエルマーが消滅した場所を辛そうな表情で見つめた後
「はは、あの時は事件の後、1週間は寝込んだもんやけど………今となっては手慣れたもんやな。」
寂しげな笑みを浮かべて呟いた。
「ケビンさん……」
ケビンの様子をリタは心配そうな表情で見つめ
「ケビン……っ………!」
リースは悲しげな表情をしてケビンの背中を抱きしめた!
「どうして………!どうしてこんなことをずっと一人っきりで……!………せめて私に話してくれるだけでも………!」
ケビンを抱きしめたリースは涙を流して叫んだ。
「はは………オレが選んだ道やしな。お前のこと………巻き込みたくなかったんや。」
リースの言葉に寂しげな笑みを浮かべて答えたケビンだったが一瞬考えた後、自分の言葉を否定するかのように首を横に振って再び答えた。
「………いや………違うな。多分………オレは怖かったんや。自分を痛めつけることで『罰』を得ようとするオレの姿をお前にだけは見せたくなかった………お前との絆まで………完全に断たれることが怖かった。」
そしてケビンは空を見上げた。
「ああ………多分、そういうことなんやろな。」
「バカ………!ケビンの大バカ………!」
「はは………オレとしてはアホの方が愛があって好きなんやけど………ま、バカで十分か。」
リースの言葉を聞いたケビンは苦笑し
「ケビンのアホ………ヘタレ………死んじゃえ………」
「………なんか増えてるんやけど。」
自分が求めた言葉以外を聞き、脱力した。
「フフ………」
そして2人の様子をリタは微笑みながら見つめていた。その後探索を再開し、しばらく進むと再び、何者かの怨念の声が聞こえて来た!
………ゴメンナ…………
怨念の声にケビン達が気づいたその時、ケビン達が行く先に女性の姿をした怨霊が現れた。
……ゴメンナ………けびん………デモ………オカアサン………モウ………ツカレテシモウタンヤ…………
「………あ……………」
「も、もしかして………!?」
「ケビンさんのお母さん………!」
怨念の声を聞いたケビンは呆け、リースは信じられない表情をし、リタは真剣な表情で呟いた。
………ダカラ………ダカラナ………けびん………コノママ………オカアサントイッショニ…………
そしてケビンの母の怨霊が襲い掛かって来た!
「させない!………ハアッ!!」
「アアアアア―――!?」
しかしリースが放った神聖魔術を法剣の刃に宿らせ、刃を伸ばして攻撃するクラフト―――ホーリーフェンサーをその身に受けて怯み
「魂をも凍らせてあげる!氷垢螺の絶対凍結!!」
続くように放ったリタの魔術によって全身が凍結して動けなくなり
「母ちゃん………ごめんな……………そらっ!!」
ケビンが放った暗黒魔術を込めた矢を放つクラフト―――ダークアローを受け、矢が命中した瞬間起こった暗黒の爆発によって凍結した身体は爆散して、消滅した!
「…………………ハハ………今のはさすがに堪えたかな………」
「ケビン……いいから…………」
戦闘が終了し、母の亡霊が消滅した場所を見つめて呟くケビンをリースは辛そうな表情で見つめていた。
「この”煉獄”が本当にオレの望んだものやとしたら…………オレってかなりマゾッ気でもあるんとちゃうかな。」
「いいから………!こんな時は喋らなくていいから!」
そして無理をして説明するケビンに涙を流しながら叫んで、ケビンの話を止めようとした。
「………すまん…………」
リースの言葉を聞いたケビンは辛そうな表情で呟いた後、一瞬身体を震わせた。
「………ある意味、今のも必然だったかもしれへん。あの冬の日以来……オレはずっと母ちゃんの死から逃げ続けていただけやったから………これで……やっと向き合える気がする。」
「ケビン………」
そして静かに語るケビンをリースは涙を流しながら見つめていたその時
「く……!?」
ケビンは身体を震わせて呻いた後、地面に倒れた!
「ケビン!?」
「ケビンさん!?」
地面に倒れたケビンに驚いたリースとリタはケビンに駆け寄った。
「……クソ………こんな時に………限って………」
地面に倒れたケビンは呻いた後意識を失った!
「ケビン、ケビン!?しっかりして!」
ケビンに駆け寄ったリースはケビンの名を呼んだが、ケビンは何も答えず意識を失っていた。
「落ち着いて下さい、リースさん。……恐らく、今までの戦闘によって解放していた”聖痕”の疲れが今、来たのではないでしょうか?以前も”聖痕”を解放して倒れましたし………”裏”の”試練”になってから”聖痕”を多用する事もあったらしいですし………その事が原因だと思います。」
「そんな………この状況で倒れるなんて、どうすれば………以前の時もかなり時間がかかったのに………」
そして諌められたリタの推測を聞いたリースは表情を青褪めさせてケビンを見つめたが
「………リタさん。何かいい案はないでしょうか?まだまだ知識不足な私より冥界の守護者として永い時を生きる貴女の知識だけが頼りなんです……!お願いします………!」
すぐに気を取り直し、決意の表情になってリタを見つめた。
「そう言われましても……………………」
一方見つめられたリタは困った表情をした後、少しの間考え込み
「…………一つだけあります。それでしたら魔力どころか精気や精神も回復できますから、”聖痕”による疲労も完全に回復するのですが………ただ、リースさんにとってかなり抵抗や問題がある方法なんですよね………う、う~ん………………………どうしよう………?」
ある事を思い出してそれを口にした後、再び困った表情で考え込んだ。
「…………私の事は心配いりません。どんな方法でもケビンが目を覚ませるのならやります。教えて下さい、リタさん。」
リタの様子を見たリースは決意の表情でリタを見つめて言った。
「………わかりました。ですがその前に一つ聞きたい事があるのですが………」
リースの表情を見たリタは溜息を吐いた後、リースに尋ね
「はい、何でしょう。」
尋ねられたリースはリタを見つめて答えたが
「リースさんは”処女”ですか?」
「…………………………………え”。」
リタのとんでもない質問に一瞬固まった後、呆けた声を出した。
「シスターの方ですから恐らく、”処女”だと思っているのですがどうなんですか?」
「あ、あ、あの!何故いきなりそんな事を…………?」
リタの質問にリースは答えず、顔を真っ赤にして焦った様子で尋ねた。そしてリタは自分が知るケビンを目覚めさせ、回復させる方法――――”性魔術”の説明や何故、”処女”である事を尋ねた事、そして”性魔術”と”処女”の関係を説明した。
「……という訳なんです。まあ、もし”処女”ではなくてもリースさんは聖職者ですから”処女”と同じくらいの効果はあると思いますが……」
「…………”処女”です!…………あの。本当にそれで効果があるのですか……?」
リタの説明を聞き終えたリースは顔を真っ赤にしてリタを睨んで言った後、一瞬ケビンに視線を向け、再びリタを見つめて尋ねた。
「ええ。身近で言えば、主が一番わかりやすい例ですよ。」
「主?……セリカさんですか。そ、その……何故セリカさんは”性魔術”を必要としているのですか……?」
「えっと、主の場合は…………」
そしてリタは何故、セリカが”性魔術”を必要としているのかを説明した。
「……ちょっと待って下さい。その説明ですと今までの探索や試練でセリカさん、相当力を消費したはずですが……?」
「はい。ですから”庭園”での待機時間、折を見て主の”使徒”のエクリアちゃん達や主との”性魔術”の経験がある私やナベリウス、そして主と同じ身体のサティアさんが”性魔術”をして主の力を回復していました。………勿論、その時は他の方達に見られないようにしていましたが………」
「………………………」
自分の疑問に答えたリタの説明を聞いたリースは再び固まった。
「本題に戻りますが……どうします?」
そしてリタが言い辛そうな表情でリースを見つめて尋ねた。
「…………………………」
尋ねられたリースは意識を失っているケビンを見つめながら少しの間考え込み
(…………かつて姉様がケビンを連れ戻したように…………今度は私がケビンを連れ戻す番………………)
両目を閉じて静かな様子を纏い
「――――はい。その方法しかないのなら、やります。」
両目を見開き、決意の表情でリタを見つめて言った。
「フフ………リースさんがそう決めたのなら私から言う事はありませんね。じゃあ、私はしばらくの間、どこかに行った方がいいですよね?さすがに私が見ている前ですとやり辛い上、”初めて”は2人きりの方がいいでしょうし………」
リースの答えを聞いたリタは微笑んだ後、魔槍に乗ってどこかに向かおうとしたが
「………待ってください。」
「?」
顔を真っ赤にしたリースがリタを呼び止めた。
「その………私の場合、”そういう事”に関しての”知識”は疎いので経験のあるリタさんに教えてほしいのです………」
「え”。」
呼び止められた理由を聞いたリタは一瞬固まり
「……………本気ですか?………私が見ている前で”性魔術”をするなんて…………」
そして我に返って表情を引き攣らせた後、困った表情でリースとケビンを見比べて言った。
「………間違ったやり方をする訳にもいきませんし、第一この状況だといつ亡者達が襲って来るかもわかりませんので………警戒の意味も込めてお願いします…………」
リタの言葉にリースは顔を真っ赤にして答え
「……………ハア…………わかりました………(うう~………こんな事になるんだったら、教えなきゃよかった………)」
リースの言葉にリタは心の中で後悔しながら疲れた表情で溜息を吐いた。
(いつか絶対に責任をとってもらうからね………このヘタレ………アホ……大バカ……………)
そしてリースは真っ赤になった顔で意識を失っているケビンを睨み、その後リタに教えられながらケビンに”性魔術”をした。
「………………ん……………?」
数時間後、ケビンは目を覚まし
「あ、起きたようですね?大丈夫ですか?」
目を覚ましたケビンに気づいたリタが話しかけた。
「あ、ああ………手間をかけさせてすまんかったな。オレ、どれぐらい寝てた………?」
話しかけられたケビンは起き上がって答え、リタに尋ねたその時
「………3時間。」
ケビンに背を向けて立っているリースが呟いた。
「へ!?オレ、”聖痕”の力を使いすぎたせいでぶっ倒れたはずやのにたったそんだけで回復したん!?」
「…………………」
「はい。リースさんのお蔭でたったそれだけの時間で回復できたんです。」
リースの答えを聞いたケビンは驚き、リースは何も答えずただケビンに背を向けた状態で黙り込み、リタは頷いて苦笑しながらリースに視線を向けて答えた。
「リースが?一体どんな手段で……」
そしてリタの話を聞いたケビンは驚きの表情でリースに視線を向け
「………1年。」
「へ?」
視線を向けられたリースがケビンに背を向けたまま呟いた言葉を聞き、首を傾げ
「元の世界に戻ったら1年間、私の食費を全てケビンが払う事。それでケビンを回復した方法の件を”一応”許してあげる。」
「はあ!?ちょっと待て!お前の食費を1年も払い続けたらオレの給料どころか全財産が吹っ飛ぶか、下手すりゃ破産するわっ!というか治療されて、なんで許されなあかんねん!?」
リースの言葉を聞いて驚き、慌てた様子で叫んだが
「………………………………」
「う”………」
振り向いたリースの無表情で無言の圧力に圧され
「………それぐらいの条件は受けて当然ですよ、ケビンさん。(なんせ、リースさんはケビンさんを助ける為に初めての口付けどころか”処女”まで捧げたのですから、受けて当然です!いえ、むしろ甘いぐらいですね………)……でないと私も怒りますよ?」
「リ、リタちゃんまで………ハア………わかったわ……どんな方法かは知らんが実際回復したしな…………(一体何があってん………?)」
怒気を纏った笑顔のリタに圧され、疲れた表情で溜息を吐いた。
その後探索を再開したケビン達は巨大な門がある大広間に到着した……………
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