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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  148 〝入学〟案内

SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

「うぅん…。……うぉ、眩しっ。無駄に良い天気だなぁ」

まだ()が昇りきっていないと云うのに、もう既にむんむん、と暑くなっている自室で目を覚まし──同時に、閉まりきっている窓に目を遣っては〝念動力(テレキネシス)〟で窓を開け放ち換気する。……それくらいの〝PSI(サイ)〟なら、起き抜けの頭でも行使出来る様になっていた。

もしこの一連の動作が家族の誰かに見られていたとしても、〝魔法〟で説明が出来る。……そういう意味では気楽に過ごしている今生である。

……ちなみに、この前軽く触れていた頭を抱えたくなっていた案件──〝原作知識〟については、ユーノや乃愛の教えと、ミネルヴァさんの言葉を自分なりに噛み砕き、気張らずに過ごす事に決めた。

閑話休題。

「パーシーやフレッド、ジョージに届いた日からして、〝今日〟か…」

開け放った窓から燦然(さんぜん)と注がれる朝日を見ながら、口から出てきたのは〝諦念〟と〝期待〟が()い混ぜになった言葉。今日の日付は7月1日。……ある意味〝来てほしかったけれど、それと同じくらいには来てほしくなかった〟日付でもある。

……〝あるがままを気楽に〟過ごす事に決めた──とは云え、どうにも、軽く肉体に精神が引っ張られているらしい。
(……フレッド、ジョージか…)

ナーバスな気分になりつつ、アンニュイに寝起き特有のふわふわとした感覚に身を任せていると、部屋の前にフレッドとジョージの気配を察知する。

――「おいロン、朗報だぜ! とっとと起きろよ!」

――「早く下に降りて来なよ! ママも下で待ってる!」

そんな風にぎゃーぎゃー、と、けたたましくも俺の自室に闖入(ちんにゅう)してくるフレッドとジョージの口からマシンガンの様に──俺と同じく寝起きとは思えない程にハイテンションで出てくる言葉の数々は、俺に〝それ〟が届いた事を言外に語っていた。

「……言いたい事は色々有るけど──おはよう。フレッド、ジョージ」

「「おはよう、ロン」」

とりあえずは朝の挨拶からである。

………。

……。

…。

「おはよう、ロン。気になることはあると思うけど──ささ席に座って」

フレッドとジョージに背中を押されながら、最早見馴れたキッチンに足を踏み入れれば、母さんから開口一番でそうまくし立てられる。

縦横の比率が大体1:2な長方形の、計12人は悠々と座れそうな食卓の端を見てみれば、煙草の(やに)みたいに黄色に染まった羊皮紙の封筒が〝4通〟も積まれていた。……恐らくはパーシー、フレッド、ジョージのもの含まれているのだろう。

「ロン、ほら君のだ」

「っと──父さん、危ないよ」

手紙の近くに座っていたアーサー・ウィーズリー──父さんは俺の分の手紙を投げて来たので、俺はそれを〝危ない〟と口では言いつつも危なげなく受け取り──[オッタリー・セント・キャッチポール村の外れ 《隠れ穴》 ロナルド・ウィーズリー様]と書いてあるのをちゃんと確認した。

目配せ(アイコンタクト)父さんにして、父さんも〝その手紙〟が届いたことが喜ばしいことだと思ってくれているのか──いつもよりもにんまり、とした顔の父さんが頷いたのを確認すると、翡翠色ともエメラルド色ともとれる蝋で封印されている手紙を素早く開けて、目を通してゆく。

――――――――――――――

ホグワーツ魔法魔術学校

校長 アルバス・ダンブルドア

マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員

――――――――――――――

親愛なるウィーズリー殿

この度【ホグワーツ魔法魔術学校】にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお慶び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封致します。

新年は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてお返事をお待ちしております。


敬具

副校長 ミネルバ・マクゴナガル

――――――――――――――

「げぇっ、マクゴナガルだってよ」

「おいおい、マクゴナガルの名前なんて長期休暇中に見たくなかったぜ」

フレッドとジョージは、後ろから俺の手紙を覗き見ながら、自分達に届いた封筒を開いてゆく。……このやんちゃな双子の反応からして、マクゴナガル副校長の為人(ひととなり)の一端が垣間見える。

「……なぁ、フレッド、ジョージ、この──マクゴナガル副校長とやらはおっかないのか?」

「「それはもう」」

「ロン、フレッド、ジョージ、とっととご飯を食べちゃいなさい! ……なんたって今日は忙しくなりますからね!」

「「「イエス、マム!」」」

沈黙の朝食が始まった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

時は瞬く間に移ろい、普段着のローブや冬用マント等の衣類を【マダムマルキンの洋服店~普段着から式服まで~】で──【フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店】で各教科書を母さんや父さんに手を引かれつつも購入したら、後は肝心要の〝杖〟だけとなった。

……本来なら〝お下がり〟だったりするのだが、この世界線ではやたらと羽振りの良かったりする。対外的に疑問に思われないように、少しずつ我が家であるウィーズリー家の財政的な来歴を(さら)って判った事だが、その昔母さんが出版した〝〝魔法(ファンタジー)を交えた〟メロドラマ的な小説〟が非魔法族(マグル)のマダム達相手にヒットしたらしい。

閑話休題。

「……服もオーケー。本も買った。望遠鏡等の〝その他のもの〟もおおよそ良し──後は〝杖〟だけだね」

「〝杖〟ならオリバンダーさんのところが一番よ」

父さんと母さんに手を引かれ、〝オリバンダーさん〟の店に向かう。

そこで俺はある意味必然の出会いをすると、この時は露ほども思っていなかった。

………。

……。

…。

【オリバンダーの店~紀元前382年創業高級杖メーカー~】と剥げかけの金文字で看板を掲げてあった店に入ると来客を報せるベルの音がして、埃っぽい臭いに()せる前に店の奥の方から天井にまで届きそうな棚に立て掛けてあるキャスター付きの長い長い梯子に乗りながら1人の老人が転がってきた。

「いらっしゃい──おや、2年振りじゃなアーサー・ウィーズリーにモリー・プルウェット嬢。……2年前、双子の杖──ハンノキの35センチと33センチを選んだ際に交わした約束通りにまた訪れてくれて嬉しいよ」

「この前はフレッドやジョージには勿体無い杖を(あつら)えていただきありがとうございます」

「ご無沙汰しておりますわ」

梯子に乗りながらやって来た老人──オリバンダーさん(仮)は、父さんと母さんに一頻り挨拶して、それが満足したのか今度は俺にロックオンの矛先を向ける。

「と云うことは──おやおや、そこの居る子は君達の末息子かね?」

「はい。末息子のロンです──ほら、ロン。こちらはオリバンダーさんよ」

「初めましてオリバンダーさん。ロン・ウィーズリーです」

「……ふむ、アーサーや、見た感じどうやらこの子は3番目の子にそっくりじゃな」

「ええ、フレッドやジョージに比べると幾分か落ち着いているのは間違いないですね」

母さんに促されるまま、俺もオリバンダーさんに挨拶をする。……するとオリバンダーさんは一瞬だけ瞠目(どうもく)して、ひとりでにうんうん、と頷きだす。……どうやら、フレッドとジョージに似ていない事に驚いたらしい。

……ちなみに(くだん)のフレッドとジョージは俺の杖選びに興味津々だったが、今は父さんや母さんにお小遣いを握らされ、妹のジネブラ──ジニーの子守りを押し付けられている。

閑話休題。

……2年前のフレッドとジョージの時の子守り役はパーシーで、ジニー、パーシーと一緒に双子の杖選びを待っていたのを思い出した。

また閑話休題。


「じゃあ父さんと母さんは、すぐ外のそこで待ってるから自分の杖が決まったら呼びなさい」

「判ったよ、父さん」

そう父さんは母さん手を引きながら店外出ていった。……2年前の件からして──どうにも家の両親は杖を選ぶ際はオリバンダーさんに全任しているらしい。……それはきっと、オリバンダーさんを信頼していることの証左。

「で、坊やの〝杖腕〟は?」

「一応右利き」

父さんと母さんが出ていき、ベルの音が止んだ頃オリバンダーさんが〝杖腕〟を()いてきたので、それを伝えながらカウンター越しに右手をオリバンダーさんへと差し出す。

……すると俺の手を見たオリバンダーさんは、メジャーやら定規やらで俺の腕の長さを測っては、またもや〝ふむふむ〟と頷きだす。

「うむ──少々待っとれ」

そう呟きながらオリバンダーさんは店の奥へと消えていった──と思ったら、10数える間もなく長細い箱を持ちながらカウンターへと戻って来て、ことり、と(カウンター)にそれを置いた。

オリバンダーさんはそれを一も二もなく開ける。箱の中には、当たり前と云うべきか──よく手入れされているのか、光沢のある茶色い杖が入っていた。

「〝トネリコ〟〝ドラゴンの心臓の琴線〟〝33センチ〟〝よくしなる〟」

「……っ!」

そう何かの呪文の様に呟きながらその杖の持ち手の方をずい、とオリバンダーから向けられ、俺はその杖に触れる。持った瞬間に判った。〝この杖が自分の相棒(バディ)〟だと云うことが。

(でもなぁ…)

〝この杖が自分の相棒(バディ)〟だと云うのは間違っていない。……それどころか(むし)ろしっくりきすぎているきらいすらあるのだが、心のどこかでは〝コレジャナイ感〟──どこか矛盾した感覚があるのもまた事実だった。

「……ふむ、合わなかったのかね? ……君にピッタリの杖だと思ったのじゃが…」

オリバンダーさんは俺が首を傾げているのを見たのか、そう訊ねてくる。

「いいえ、この杖は俺に合致しています──それはもう間違いなく」

「……どうしたものかのぅ…」

俺とオリバンダーさんは頭を抱え始める。……それに耐えきれなくなった俺は、〝入店した時点から気になっていた事〟をオリバンダーさんに訊いてみる事にした。

「……ところで、この店って〝ウェールズの赤い龍〟に由来する杖ってあったりします?」

「……っ! ……判るのかね?」

訊いてみれば、オリバンダーさん改めて目を(みは)る。……どうやら俺の気になっていた事は正鵠(せいこく)を射ていた模様。……実は入店時点から〝(ドライグ)〟のオーラと、〝質〟が近い物があるのは感じていたのだ。

オリバンダーさんはまるで観念したかの様に、また店の奥に──オリバンダーさんの背には届かないところにその杖が在るのか、今度は梯子ごと引っ込んでいく。……すると、今度は10数える前に──とはいかなかったようだが、それでも30秒も掛からず戻ってきた。

……恐らく、全ての杖の置場所を覚えているのだろう。

「〝柳〟〝ウェールズの赤い龍の角〟〝34センチ〟〝良質だが頑固〟」

(これは…)

オリバンダーさんが持ってきた箱の中には血の様な赤に染められた杖が入っていた。

「(なぁ、ドライグ)」

<(ああ。この感覚間違いない。……ア・ドライグ・ゴッホ──〝俺の同位体〟に由来しているのは確かだろう)>

「……〝これ〟は君の云うように〝ウェールズの赤い龍〟──ア・ドライグ・ゴッホの一部が使われているという〝いわれ〟があるが──どれ、持ってみるかね?」

「よろしいのなら──っ」

――ドクンッ!

そうオリバンダーさんの返事を待たず、渡された杖を持った瞬間だった──赤い杖から力強い脈動が伝わってきた。……オリバンダーさんは「おぉ…」と感嘆した声を漏らしているが今の俺には大して気にならなかった。

「オリバンダーさん、これはいくらで?」

「……28ガリオンです」

良い杖でも7ガリオンが良いところらしいが、曲がりにも〝ウェールズの赤い龍〟の一部が使われているのは同じく〝ウェールズの赤い龍〟であるドライグのお墨付きだから、〝高い〟とは云うまい。

「……いつか必ず50ガリオン出すから、この杖をリザーブしておきたい」

「かしこまりました」

オリバンダーさんはにっこりと笑った。……結局のところは、始めにオリバンダーさんに持たせてもらった5ガリオン2シックルのトネリコの杖を父さんと母さんに買ってもらって、その日の買い物は終了となった。

SIDE END 
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