普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
147 再々転生
SIDE OTHER
時は1980年。魔法界は〝最強最悪の魔法使い〟の悪名に依って昏い闇に包まれていた。……イギリスは特に〝ソイツ〟が拠点としていることもあって、その闇の深さが一層と深かった。
今日も今日とて〝そいつ〟──と〝そいつの手下〟の手に掛かって命の灯火が消えて逝く。
……逆に喜ばしいこともあって、〝消えて逝く生命〟があるのなら──〝生まれ出ずる生命〟も在って、イギリスのとある病院で今日も今日とて新たな生命もあって、ここ──ウィーズリー夫妻の元にも新しい生命が生まれていた…。
「よくやってくれた、≪愛しのモリウォブル≫!」
「ああ…っ、私の愛しい子…」
いくら〝6人目〟で──出産に馴れているとは云え、生命を世界に産み落としたのだ、その消耗たるや、尋常じゃあない。
≪愛しのモリウォブル≫──と、助産師が居る手前で普段ならまず呼ばれないであろう愛称で呼ばれた女性はお産の直後で息を乱しながらも産まれて来てくれた我が子を助産師から受け取って抱いて撫でる。
……我が子を──助産師はノーカウントとするとして、一番に抱けるのは〝母親〟の特権。……一分ほどの我が子との初めての触れ合いの後──母親も一応の満足をしたら、今度は分娩台の横でやたらそわそわしている〝父親〟に子を渡してやる。
「アーサー、この子の名前を読んであげて…」
「ああ。……ロナルド・ランスロー──〝ロナルド・ランスロー・ウィーズリー〟…。……それがお前の名前だ」
母親から子供の名前を呼ぶように頼まれた父──アーサーは考えに考えた息子の名前を呼ぶ。……それが〝ロナルド・ビリウス・ウィーズリー〟として産まれていたはずの少年がどこぞの神の干渉によって、〝ロナルド・ランスロー・ウィーズリー〟として産まれた瞬間だった。
このめでたい事が起きたのは、〝名前を呼んではいけないあの人〟が一人の赤ん坊──〝アニー・ポッター〟に依って撃退されるほんの数ヶ月前のことである。
……もちろんの事ながら、ウィーズリー夫妻は〝〝名前を呼んではいけないあの人から生き残った赤ん坊〟と自分の息子が同級生になる〟──なんて驚天動地な出来事があるなんて、〝知識〟を持っていないウィーズリー夫妻には与りの知れぬことだった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE ???
「ここは…」
目を開ければそこは、肉体年齢が下がったゆえか相対的に広く感じる紺に近い青を基調とした一人部屋で──ふと上を見上げてみれば、〝識らないのに知っている天井〟があった。
「……確かミネルヴァさんに落とされて──っ」
―ロニー坊や、起きて―
―おいフレッド、ロニー坊やがおねむだぜ―
―おいおい本当かよ。まだまだ夜はこれからだってのに勿体無いよな。なぁ、ジョージ―
「……思い…出した…」
ミネルヴァさんに不意打ちが如く送り出され、まだ3回目なのだが──いつもみたく、〝今世〟の記憶の継承を自覚。……そして直ぐに〝升田 真人〟と〝ロナルド・ランスロー・ウィーズリー〟の記憶は、ちょうど良い具合に合致した。
「……〝僕〟──んっん! 〝俺〟の名前は〝ロナルド・ランスロー・ウィーズリー〟。ウィーズリー家の末弟。年齢は7歳」
……一人称が〝ぼく〟のはずが〝おれ〟になっていたのはご愛敬なのか。〝I~~(俺は~~)〟と前世の口調で口を開いても、会話上では〝I(僕は)〟〝My(僕の)〟〝Me(僕を/僕に)〟となるので〝日本語だと不思議だね〟──と、気にしない事に。
取り敢えず舌が回りきっていなかったので修正して、以前の様に〝ここ4年分の記憶〟に検索を掛けてゆく。……すると幾つかの〝聞き覚えある単語〟が涌いてきた。
「【吟遊詩人ビードルの物語】〝死の秘宝〟〝マグル〟〝ロナルド・ウィーズリー〟──そして、〝名前を呼んではいけないあの人〟…。……そうか、ここは【ハリー・ポッター】の世界──か…?」
思わず頭を抱えたくなる。これまでは【ゼロの使い魔】、乃愛が云うには【東方Project】【ソードアート・オンライン】の世界と順に転生やら転移を繰り返してきたが、〝〝原作知識〟が無いからこそ〟円満に進められたと云うことは何と無くだが自覚している。
しかし、【ハリー・ポッター】は割りと好きな映画だったので〝DVDで〟シリーズを徹して何回も観直している。……しかしそれは〝映画版〟の話で、〝原作版〟を呼んだのは円からシリーズ全巻を借りた一回だけと云う現状もまた頭を抱えたくさせる要因となっていた。
……ちなみ【PSYREN】な世界線について触れてなかったのは、腰を据えて居を構えたわけではないのでノーカウントしたからである。
閑話休題。
「……〝ハリー・ポッター〟どこいった。……それに──誰だよ、〝アニー・ポッター〟」
また頭を抱えたくなる。いくら記憶に検索をかけても〝〝名前を呼んではいけないあの人〟から生き残った子供〟として記憶に浮上するのは〝アニー・ポッター〟と云う──〝知っているが識らない名前〟だった。
「なるようになるか…」
ミネルヴァさんの言葉──〝気楽にやればいい〟と云う投げ遣り応援を思い出して、時間も割りと早めだったのでまた眠りについた。……フレッドとジョージ──上の双子が起こしに来る、ほんの数分前の事である。
………。
……。
…。
(……どういう事だってばよ…?)
喧しい事この上無いジョージとフレッドに〝自室〟に突入され、〝食卓があると記憶している〟階下に降り、食卓を見て──思わず〝【ハリー・ポッター】と云う原作を識っている升田 真人として〟、呆然としてしまった。
……と云うのも、〝明らかに高級〟だと判る食器やテーブル等の家具がリビングには溢れていたからだ。
〝クィディッチ〟──〝人間的〟に云えば箒に跨がって、空を飛びながら行うサッカーの様な──〝魔法界〟で超人気スポーツなのだが、そのスポーツに使用される〝競技用の箒1本すらまともに買えない赤貧家族〟と揶揄されていた。
……しかしこの世界ではその揶揄は通じない様で、今朝のこの朝食のメニューの食材を見ても、ウィーズリー家の財政状況はそこまで逼迫している様には思えないし──寧ろ家の広さと我が家の人数から人口密度を割り出しても、〝家のランク〟は高いようにも思える。
「……ウィーズリー家って、赤貧家族──のはずだよな…」
「何か言ったかい、ロン?」
「何も言って無いよ、母さん」
近くに居たモリーさん──母さんには聞かれていなかったようで、そんな俺の──肉体年齢にして7歳の呟きは呟きは、猥雑とした朝食の席の空気に掻き消えていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……よし、特典の方は大体OKだな」
柏手を1つ打ち、重くなっていた腰を上げる。
転生して早数年。9歳になった俺の現在地は、〝敢えて云うなら〟──ユーラシア大陸のどこかである。……俺は家族の目を盗んで〝無人だった世界〟に転移していた。……その理由は、先にも述べた通りで、〝転生特典〟の確認だった。
・〝“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”と“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”の完全融合〟
“赤龍皇帝の双籠手(ブーステッド・ディバイディング・ツインギア)”の〝半減〟と〝倍加〟やらは、恙無く作動しているのを確認。……並びに、〝禁手(バランス・ブレイカー)〟についても、動作は問題無しだった。
……何故かドライグの〝倍加〟〝譲渡〟に続く能力──〝透過〟なる能力も発現していた。
―漸く完璧にアルビオンの能力を掌握出来たからな。……それに、相棒が〝神〟とやらに2つの〝神器(セイクリッド・ギア)〟を混ぜる様に頼んだ事が、俺のアルビオンへの鬱積していた感情が浄化されて、アルビオンの事を真に許せる様になったことも関係しているのだろう。……恐らくだがな―
とはドライグの言。
……ちなみに、〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟は、下手に使ってしまえば〝世界〟がヤバいっぽいので使ってない。
・〝【Fate/Zero】のバーサーカーの宝具〟
“騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)”と“己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)”は、無問題だった。……“無毀なる湖光”も、魔法力(MP)が馬鹿食いされたが、一応ながら顕現可能。
……意外にも、“無毀なる湖光”は〝龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)〟の側面があった様だが、〝龍〟を身に宿している俺でも使えた。
・〝【Fate/Stay Night】のキャスターの、〝クラスも含めたスキル〟を含めたスキル〟
細分化すれば、“高速神言:A”“陣地作成:A”と“道具作成:A”“金羊の皮:EX”の──俺がミネルヴァさんにムリを言って複合化してもらった特典だったが、〝一応〟──首を傾げざるを得ない内容も有ったが、確認完了。
“高速神言:A”は、元より使っていたのが【ファイナルファンタジー】や【ドラゴンクエスト】の呪文や魔法だったので、ある意味──今のところは死にスキルに。
“陣地作成:A”は意外と融通が利いて驚いた。……〝境界〟さえ区切れれば──〝世界〟さえ出来れば、後は“絶霧(ディメンション・ロスト)”の、俺が組み上げた〝禁手(バランス・ブレイカー)〟──“彼の理想郷が創造主の掟(ディファレント・ディメンション・マスター)”のノリで色々と出来そうに感じる。
……利便性は〝禁手(バランス・ブレイカー)〟の方が圧倒的に上だが。
“道具作成:A”については、読んでその字が如くそのままと云うのか──〝魔道具〟に関する才能が付いた。……つまり──軽く触れるのなら〝ハルケギニア式〟以外の魔法も道具やらに付与出来る様になった。
……“金羊の皮:EX”。これがまたクセもので──ミネルヴァさんは、〝〝龍召喚〟の能力がないため使用できない〟〝召喚はできるが制御出来ない〟──と云うのを〝〝龍召喚〟の能力があれば使用できる〟〝勝手に召喚して制御すればいいんじゃない?〟となっている。
「……もしかして──ぶん投げられた…?」
気付いた時には後の祭りだった。
SIDE END
後書き
と云うわけで、新章は【ハリー・ポッター】編です。
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