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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第82話

最奥に到着したリィン達は澄んだ色をした湖の中に立っている橋を渡り終え、広い場所に出た。



~ジュライロッジ・最奥~



「ここは………」

「………地下の湖………?」

「ち、地下にこれほどの湖があるなんて………」

リィンは立ち止まって周囲を見回し、フィーは考え込み、エリオットは驚きの表情で周囲を見回していた。

「?あの球体は一体……」

「球体のある所には祭壇らしき設備がありますが……」

「……多分”教団”の重要な”儀式”で使う設備じゃないかしら?」

「!あれはまさか……」

「…………一体どういう事かしら?」

一方祭壇らしき場所にある巨大な球体に気付いたガイウスは首を傾げ、エマとセリーヌは真剣な表情で考え込み、ある事に気付いたシャロンとサラ教官は厳しい表情をした。

「あれ~?初めて来たはずなのに、なんか見覚えがあるんだけどな~。」

「…………うふふ、確かに”情報局”の貴女ならこの”光景”に見覚えがあってもおかしくないわね。」

するとその時首を傾げているミリアムの言葉を聞いたレンは意味ありげな笑みを浮かべて答えた。



「へ……」

「レン姫は何かご存知なのですか?」

レンの言葉を聞いたマキアスは呆け、エリスは不思議そうな表情で尋ねた。

「ええ。だってこの光景、ロイドお兄さん達と一緒にヨアヒムとの決戦に挑んだ”太陽の砦”の終点の光景と”全く一緒”だもの。」

「ええっ!?」

そしてレンの答えにセレーネが驚きの表情で声を上げたその時

「フフ……その通りさ。」

ヨアヒムの声が聞こえた後、祭壇の陰からヨアヒムが現れた。



「ヨアヒム・ギュンター……!」

「!!」

「い、いつの間に………」

「フン、大方亡霊なのを利用して今まで姿を消していただけだろう。」

「ん。最初からそいつはその祭壇の陰にいたよ。」

ヨアヒムの姿を見て厳しい表情で声を上げたクロチルダの言葉を聞いたリィンは目を見開き、ヨアヒムの登場に驚いているアリサにユーシスは鼻を鳴らして答えてヨアヒムを睨み、エヴリーヌはユーシスの推測に頷いて説明を捕捉した。

「―――ようこそ。我等の新たなる聖地へ。”紅き翼”の諸君、そして”紅き翼”の”協力者”の諸君……歓迎させてもらうよ。」

ヨアヒムは階段を下りながら不敵な笑みを浮かべ、階段を降り、広間に来たヨアヒムにリィン達は武器を構えて近づいた。



「……そなたは……」

「この戦力を目の前に随分と余裕だな。」

「貴方の味方は全て無力化しました。……かつて”特務支援課”に敗北した貴方が、味方を全て失った状態で私達に勝てるとお思いなのですか?」

ラウラとレーヴェはそれぞれ厳しい表情でヨアヒムを見つめ、エリゼは真剣な表情でヨアヒムに問いかけた。

「クク、何か勘違いをしていないかい?」

「え……」

「”勘違い”、ですか。」

「それは一体どういう意味なのですか?」

ヨアヒムの言葉の意味がわからなかったツーヤは呆け、リアンヌは真剣な表情で呟き、ルイーズは質問を続けた。



「君達がここに来るまで今まで倒した彼らは僕にとって、ただの都合のいい”手駒”さ!別に彼らを失っても、僕にとっては痛くもかゆくも無かったんだよ?」

「…………!」

「貴様……!」

「フィーちゃん……」

「ユーシス……」

「それはそなたが作った怪しげな薬物を投与されたエーデル先輩や”帝国解放戦線”の者達、そしてクロウの事も言っているのか!?」

高々と答えたヨアヒムの答えを聞き、親しい人物達が”手駒”扱いされた事に怒りの表情になっているフィーとユーシスをエマとガイウスはそれぞれ心配そうな表情で見つめ、ラウラは厳しい表情で問いかけた。

「ああ、彼らか。彼らは大いに役に立ってくれたよ。何せ彼らの実験データのお蔭で”真のグノーシス”を完成させられたのだからね!」

「……ッ!」

ヨアヒムの話を聞いたクロチルダは唇を噛みしめてヨアヒムを睨み

「ちなみにデータの中でもとりわけ役に立ったのが実験に協力してくれた女子生徒とクロウ君だ。やはり若い身体の検体の方が色々と――――」

(…………ッ……!)

(エーデルさん……)

「やめろ………!」

「いい加減にしなさい!この人でなし……!」

「どうして……どうして貴方も同じ”人”であったのに、そんな酷い事を平気でできるのですか!?」

自慢げに説明し始めたヨアヒムの話を聞いて辛そうな表情で身体を震わせているエーデルの様子に気付いたメサイアは心配そうな表情をし、リィンとアリサは声を上げて制止し、セレーネは怒りの表情で問いかけ

「……まさか私の父と同等の”外道”がいるとはね……」

「パント卿の父――――”ケルヴァン”ですか……」

「パント様……」

厳しい表情で呟いたパントの言葉を聞いたプリネは複雑そうな表情をし、ルイーズは心配そうな表情でパントを見つめていた。



「―――ヨアヒム・ギュンター。この光景についてレン姫が仰った事を”その通り”だと言いましたが……あれはどういう意味ですか?」

「フフ、そのままの意味さ。キーア様をお迎えする場所として相応しい場所にする為にこの地をかつての聖地―――”太陽の砦”の祭壇と全く同じ場所へと作り替えたのだよ。」

「”碧の大樹”が消えてもなお、貴方はまだ御子殿を諦めていないのですか……」

「うふふ、今のあの娘にはもはや”至宝”としての力は失われているのだから例えあの娘を手に入れても無駄なのに、わざわざここまでするなんてご苦労様よねぇ。」

シグルーンの問いかけに答えたヨアヒムの話を聞いたリアンヌは目を細め、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。

「そう言えば……ずっと疑問に思っていたけど、アンタはどうやって”執行者”達を味方にしたのよ?」

「確か”怪盗紳士”の話では、亡霊となった”怪盗紳士”達が活躍できる場所を用意する何者かを貴方が取りこんだと言っていたけど……一体誰を取りこんだのかしら?」

そしてサラ教官の質問に続くようにクロチルダは真剣な表情でヨアヒムを見つめて呟き

「ああ、その事か。その人物は君達もよく知る人物さ。―――出てきたまえ。」

クロチルダの言葉を聞いたヨアヒムは指を鳴らした。するとヨアヒムの傍にある人物の亡霊―――オズボーン宰相が姿を現した!



「ほええええええええ~っ!?」

「貴方は……!」

「オ、オズボーン宰相閣下……!?」

「!!」

オズボーン宰相の亡霊の登場にミリアムとエリゼ、マキアスは驚き、リィンは目を見開いた。

「………………………」

しかしオズボーン宰相は何も言葉を発する事なく虚ろな目でリィン達を見つめていた。



「フフ、彼にいくら言葉をかけても無駄だよ。彼の魂は私に支配されているのだから、目の前の彼はただの”抜け殻”だよ。」

「”抜け殻”………」

「アンタが取りこんだ人物というのは”鉄血宰相”の事だったのね……―――それで亡霊になった”鉄血宰相”は何をしようとしていたのよ。」

ヨアヒムの説明を聞いたガイウスは呆け、セリーヌは目を細めて問いかけた。

「クク、どうやら彼も君達が先程滅したルーファス・アルバレア同様不敬ながらキーア様に復讐をするつもりだったようでね。その復讐に必要な物が足りなくなったお蔭で僅かにできた隙を突いた僕が彼を取りこんだのさ。」

「キーアさんに対する”復讐”ですか……オズボーン宰相は一体何をしようとしていたのですか?」

セリーヌの問いかけに答えたヨアヒムの話を聞いたプリネは質問を続けた。

「フフ、かつて”空の女神(エイドス)”というまやかしな存在が封じたという”世界の災厄”……それを自身の”力”にして、彼はこのゼムリアだけでなく異世界をも破壊しつくして、双界をエレボニアの名の元に再生し、そして支配しようとしていたのさ!」

そしてヨアヒムは驚愕の事実を口にした!

「ええっ!?」

「め、女神様が封じた”世界の災厄”ですか……?」

「し、しかもゼムリアだけでなく異世界まで破壊して、支配をするって……!」

「………その”世界の災厄”が何なのかわからないが、どうやら亡霊となった”鉄血宰相”はとてつもない事をしようとしていたようだね。」

ヨアヒムの口から語られた驚愕の事実を知ったアリサは驚き、エリスは不安そうな表情をし、エリオットは信じられない表情をし、パントは重々しい様子を纏って呟いた。



「今までの話を整理するとオズボーン宰相は”世界の災厄”を自身の”力”にしようとしていましたが、何かが足りなくて失敗したとの事。その足りないものとは一体何なのでしょうか?」

「フフ、それは恨みや憎しみを持った死者の魂――――つまりはエレボニアの内戦やメンフィルの侵攻によって命を落とした死者達の事さ!」

「何ですって!?」

シャロンの質問に答えたヨアヒムの話を聞いたサラ教官は声を上げて驚き

「……死者達の魂なんか使って何をする気だったんだろう?」

「さてな。―――だが、結果的には”鉄血宰相”の野望は未然に防ぐことができた……それだけは真実だ。」

「ええ。オズボーン宰相の野望を阻止できたのも、内戦終結の切っ掛けを作った皆さんのお蔭でもあるでしょうね。」

首を傾げているエヴリーヌの疑問にレーヴェは静かな表情で答え、ルイーズはリィン達に微笑んだ。



「さて、無駄話は終わりにしてそろそろ取引をさせてもらうよ。」

「え……と、”取引”ですか?」

話を切り上げた後に提案したヨアヒムの言葉を聞いたセレーネは戸惑い

「今からクロスベルに向かってキーア様をこの場に連れてきたまえ。そうすれば、ジュライ特区とハーケン街道で暴れている領邦軍の兵士達や悪魔達を無力化するし、僕達―――”D∴G教団”はエレボニアに2度と手出ししない事を誓おう。」

「ふざけるな!この期に及んでなお、まだそんな取引に俺達が応じると思っているのか!?」

「うふふ、自分の状況がわかっていて、そんな事を言っているのかしら?先に言っておくけど、”太陽の砦”でレン達に不意打ちしたような手は通じないわよ?」

ヨアヒムが出した条件にリィンは厳しい表情で反論し、レンは小悪魔な笑みを浮かべてヨアヒムを見つめた。



「クク、これを見てもなお、そんな事が言えるかな?」

そしてヨアヒムは杖を掲げて魔術を発動すると、何と気を失っているクロウがヨアヒムの前に転送された!

「クロウ!?」

「馬鹿な!?奴は一体何をしたのだ!?」

クロウを見たクロチルダは血相を変え、ユーシスは信じられない表情で声をあげ

「転移魔法でクロウさんを自分の元に引き寄せたんです!で、でも一体どうやって……」

「アイドス様の治療でクロウさんの身体を侵していた”グノーシス”も解呪された事で貴方とクロウさんの繋がりは途絶えたはずなのに、一体どうやってクロウさんを引き寄せたのですか!?」

ユーシスの疑問に答えたエマは戸惑い、プリネは厳しい表情で尋ねた。



「ハハハハハハハハッ!言っただろう?僕は”真のグノーシス”を完成させたって!到らない君達と違い、”真なる叡智に到った”僕ではこのくらい、簡単にできるのさ!」

「世迷言を……!クロウをどうするつもりだ!?」

高笑いをするヨアヒムの言葉を聞いたラウラが厳しい表情で声を上げて問いかけたその時

「クク、それは勿論仲間想いの君達が本気でキーア様を連れて来る気にさせる為さ!」

ヨアヒムは懐から赤紫色の液体が入った注射器を取りだした。

「注射器……?一体何を――――」

「!まさかあれは……!」

「!いけません!あれは”新型のグノーシス”です!」

ヨアヒムが取りだした注射器を見たエリスが戸惑っている中、ある事に気付いたシャロンは血相を変え、エリゼは厳しい表情で声をあげ

「何ですって!?」

「まさか……彼に再び”グノーシス”を投与して魔人化させ、彼の治療を取引に使うつもりですか!?」

エリゼの言葉を聞いたクロチルダは血相を変え、シグルーンは厳しい表情で問いかけた。



「クク、その通り!」

「止めなさい――――!」

クロウにグノーシスが投与される事を防ぐ為にサラ教官は注射器目掛けて銃撃を放ったが銃弾が注射器に命中する僅かな時間差によって銃撃は外れ、クロウはヨアヒムに注射をされてしまった。

「あ……っ!」

「しまった……!」

「!―――気を付けてください!クロウさんから凄まじい霊圧を感じます!」

注射器に刺されたクロウを見たアリサは声をあげ、リィンは唇を噛みしめ、何かに気付いたエマは仲間達に警告をした。

「う……ガアァァァァァアアアア――――――ッ!?」

するとその時クロウは呻き声を上げながら巨大化した魔人へと変わり果てた!



「な―――――」

「なああああああああっ!?」

「あれがオルキスタワーの屋上でエリゼ達が戦ったという”新型のグノーシス”によって魔人化(デモナイズ)をした魔人か……!」

「……確か話によるとあの状態になった者を治療できるのは現状”空の女神”のみとの事ですが……」

クロウの変わり果てた姿を見たユーシスは絶句し、マキアスは驚きの表情で声をあげ、パントは厳しい表情をし、ルイーズは辛そうな表情でリィン達を見つめた。

「ハハハハハハハッ!さあ、早くキーア様を僕の元に連れてきたまえ!さもなければ、君達の大切な仲間を失う事になるよ!」

「そ、そんな……」

「貴様……!」

高笑いをするヨアヒムの言葉を聞いたエリオットは悲痛そうな表情をし、ガイウスは怒りの表情でヨアヒムを睨んだ。

「クッ、何か……何かあるはずだ!クロウを助ける方法が!」

「ハハハハハッ!一体何をして彼を助けるんだい!?もしかして”奇蹟”が起こって彼が助かるように、まやかしの存在たる”空の女神”にでも祈るのかい!?」

そして唇を噛みしめたリィンの言葉を聞いたヨアヒムが高笑いをしながら問いかけたその時!

「フウ。”空の女神”を信じ、崇めている”七耀教会”もそうですがそれとは逆に”空の女神”の存在を疑ったり、否定したりするのは人それぞれですし、そもそも”私”はその二つ名を迷惑に思っているくらいの上例え”私”の存在を否定しようが赤の他人にそんな事を言われても”どうでもよくて、全然気にしません”が……今目の前で起こっている”人”として決して許されない所業を”神であり、人でもある私”が見逃すとお思いですか?」

リィン達にとって聞き覚えがある声にして、希望となる女性の声がリィン達の背後から聞こえて来た! 
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