英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第81話
戦闘不能になったクロウは元の人間の姿に戻り、ヴァリマールからセリーヌと共に降りたリィンは仲間達と共にクロウにかけよった。
~ジュライロッジ~
「大丈夫か、クロウ―――――ッ!?」
仲間達と共にクロウにかけよったリィンは倒れているクロウを両手で抱え起こした。
「ぐっ……ゴホッ、ゴホッ……!」
するとクロウは口から大量の血を吐いた。
「……あ……」
「……これは……」
「そ、そんな……」
「嘘……だろ……?」
「……………」
自分達と同年代とは思えない程やせ細り、銀髪だった髪はまるで老人のように白髪になっていたクロウを見たアリサは呆け、ガイウスは重々しい様子を纏い、エリスは悲痛そうな表情をし、マキアスは信じられない表情をし、フィーは悲しそうな表情で目を伏せた。
「……レン姫、まさかこれは”グノーシス”を服用しすぎた”副作用”なのでしょうか……?」
「それもあるけど、さっきの二柱の悪魔達の顕現が一番の原因だと思うわ。」
「先程顕現した悪魔は多くの悪魔達を率いる”軍団長”―――つまりは”魔神”に迫る程の悪魔達です。」
「それ程の高位の悪魔を術者でもないのに二柱も顕現してしまえば、必ず術者に反動が来てしまいます……」
「……あれ程の存在を二柱も顕現させた上、自身も魔人化をして戦い続けられるなんて、そちらの方が驚嘆に値するくらいだ……」
「ん……プリネ達と違って術者としての訓練もしていない上、魔力もそんなにないクロウがあの悪魔達を呼んでクロウ自身もあんな姿になって戦い続けていたら、クロウは………」
シャロンに尋ねられたレンは静かな表情で答え、リアンヌとルイーズ、パントの説明に続くようにエヴリーヌは複雑そうな表情で最後の言葉を濁した。
「今、治癒術を……!セリーヌ、手伝って!」
「わかった……っ!」
「わたくしも手伝いますわ……!」
「私も手伝います……!ツーヤも手伝って!」
「はい……!」
するとその時エマとセリーヌ、セレーネやプリネ、ツーヤがそれぞれ様々な治癒術をクロウにかけ始めた。
「…………ったく…………なりふり構わないやり方をして、このザマかよ……ハハ、俺もカイエンのオッサンと同類だな……」
「クロウ……!」
「しゃ、喋っちゃ駄目だよ!」
クロウが話し始めるとリィンとエリオットは心配そうな表情で声を上げた。
「……悪いな…………”勝負”から逃げちまった上……あの時の約束を……こんな無様な形で…………再現しちまって………」
「いい、それはいいんだ!」
「兄様………」
「それより今はクロウのその身体を治す事が先決よ―――!」
クロウの言葉を聞いたリィンは悲痛そうな表情で首を横に振り、その様子をエリゼは辛そうな表情で見つめ、アリサは真剣な表情で声を上げた。そしてクロチルダが治癒魔術を発動しようとしたが中断して目を伏せた。
「……無理なのね?」
「……ええ……たとえ魔女の治癒術でも。……ここまで命の源である霊力を失ってしまっては……」
「……加えて臓器も相当やられているな…………」
「……もはや通常の治癒術でもどうにもできないレベルですわ。」
既に察していたサラ教官に視線を向けられたクロチルダは辛そうな表情で頷き、クロウの状態を察していたレーヴェとシグルーンは重々しい様子を纏って呟いた。
「……くっ…………」
「ダメ、これ以上は……っ!」
「そんな……!どうして治らないのですか……!?」
「諦めないで下さい!クロウさんを助ける方法は必ずあるはずです……!」
「……ッ!(ミントちゃんがいてくれたらフェミリンスさんの時のようにでクロウさんの状態を”戻す”事ができるのに……!)」
それぞれがクロウを治療している中、ある事に気付いたツーヤは唇を噛みしめていた。
「ゴホッ………委員長ちゃん……セレーネ……プリネとツーヤ……黒猫も……悪ぃな…………おかげで…………最後の挨拶が……できる……」
「クロウ……さん……」
「……アンタ…………」
「やめろ……やめてくれ……」
「ったく、甘ったれが……………」
泣きそうになっているリィンの頭を撫でたクロウは順番に仲間達に視線を向け始めた。
「エリオット……ステージ……楽しかったぜ……お前の音楽……俺は好きだぞ……」
「うぐっ………ううううう……!」
「アリサ……お袋さんとは……上手くやっていけよ……?生きて話せるだけでも……上等だろうからな……」
「ぐすっ……うん……そうね……」
「お嬢様……」
「……マキアスにユーシス……いいケンカ友達でいろよ……エレボニアがどうなろうと……変わらずに……そのままで……」
「……うぐっ……当たり前だろう……!」
「……友達はありえんが……喧嘩相手としては認めよう………」
「ラウラにフィー……ガイウスにミリアムも……色々あったが……楽しい時間……過ごさせてもらった……あんがとよ……」
「こちらこそ……ありがとう。」
「……わたしも楽しかった。」
「仲間として、先輩として……本当に世話になった……」
「ボクも……立場とか関係なくすっごく楽しかったよ……」
「……プリネにツーヤ……それとエヴリーヌ……お前達メンフィルには……俺の計画を滅茶苦茶にされたが……悪かったな……俺達が引き起こした内戦に……エレボニアとは関係のないメンフィルまで……巻き込んじまって……」
「その事はもういいのです……!」
「色々とありましたけど、クロウさんはあたし達にとっても大切な仲間です……!」
「……ま、エヴリーヌは全然気にしていなかったから、クロウが気にする必要はないよ。」
「セレーネ……エリス嬢ちゃん…………この甘ったれがヘタレないように……支えてやれよ……」
「クロウさん……」
「ぐすっ……はい……!」
「エリゼ嬢ちゃん……殲滅天使…………結局……最後までお前達メンフィルには……”本当の力の差”を思い知らされて……一矢を報いる事すら……できなかったな…………お前達やメンフィルの”力”が圧倒的なのは……認めるが……油断をしていたら……経験した修羅場の数や”騎神”の操縦経験で調子に乗っていた結果、オルディーネを失った俺のように……足元をすくわれるから、せいぜい気を付けておけよ………」
「クロウさんの忠告、心の底まで刻み込んでおきます。」
「ま、世の中何が起こるかわからないからね。バンダナのお兄さんの忠告、ありがたく受け取っておくわ。」
「……サラ教官……二年間、世話になった……レオンハルト教官も短い間だったが……世話になった……ヴィータも……色々あったが礼を言っておくぜ……」
「フフ………お互いお世辞にも真面目とは言えなかったけど……」
「短い間だったが、お前を指導する事は俺にとっても忘れられない出来事だった……」
「……礼を言うのはこちらの方よ。」
「シャロンさん……いつも上手いメシ……食わせてくれて……あんがとな……」
「クロウ様こそ、いつもわたくしの料理を美味しそうに召し上がっていただき、本当にありがとうございました……」
「……オラ……情けねぇ顔、すんな…………」
仲間達への遺言を言い終えたクロウはリィンへと視線を向けた。
「クロウ……」
「……これから先……お前は………色々あんだろう……俺は立ち止まっちまった……だがお前は……お前らは……まっすぐ前を向いて歩いていけ……カハッ!?」
リィンへの遺言を終えた後虚ろな目で喋り続けたクロウは再び口から大量の血を吐いた。
「クロウ……!」
「何か……何かクロウを助ける方法はないの!?」
「無理よ……”至宝”のような”奇蹟”が無い限りは……」
「……後は”空の女神”―――エイドス様がいれば、何とかなったかもしれませんね……実際エイドス様は”奇蹟”を起こして”グノーシス”に侵されていたディーター元大統領を救ったのですから……」
それを見たエリオットは声をあげ、必死の表情をしているアリサの言葉を聞いたクロチルダは辛そうな表情で呟き、エリゼは重々しい様子を纏って呟き
「レクターがクロウみたいに”グノーシス”を投与された人達を助けられる”空の女神”に交渉しているって、クレアは言っていたけど……」
「……例えエイドスさんがエレボニアの要請に応えてくれたとしても、エイドスさんがこの場にいない以上先輩は……」
「クッ、肝心な時に役に立たないとは、どこまでふざけた女神だ……!」
「”女神”……―――!リィンさん、アイドス様でしたらクロウさんを助けられる可能性はあるかもしれません!」
暗い表情で呟いたミリアムとマキアスの言葉を聞いて悔しそうな表情をしているユーシスの言葉を聞いてある事に気付いたプリネはリィンに視線を向けて希望の言葉を口にした。
「!!頼む……クロウを助けてくれ、アイドス!」
「―――わかったわ。星芒よ、かの者に慈悲を――――!」
リィンの呼びかけで出てきたアイドスはその場で祈りを捧げた。するとアイドスの全身から膨大な神気が放たれ、クロウにはアイドスの祈りによって発生した癒しの光が包み込み始めた。
「ハハ……あったけぇな……これが女神の御慈悲……ってやつか……」
「あ……クロウの顔色が……!」
「僅かにだが、良くなっているな……」
僅かに顔色が良くなり始めたクロウを見たミリアムとガイウスは明るい表情をしていたが
「だが……本当にあのままで大丈夫なのか……?」
「先輩の身体は以前ベルフェゴールが夏至祭でテロリスト達を殺した時に近いくらいやせ細っているしな……」
やせ細った状態のクロウが気になっていたラウラは重々しい様子を纏って呟き、マキアスは不安そうな表情をしていた。
「!リィンさん、ベルフェゴールさんも呼んでください!睡魔族―――それも”魔神”の彼女ならば人一人分の失った精気を苦も無く分け与えられるはずです……!」
マキアスの言葉からある事を察したツーヤはリィンに視線を向けた。
「ああ……!――――頼む、ベルフェゴール!」
ツーヤの言葉に頷いたリィンはベルフェゴールを召喚し
「フウ、ご主人様に頼まれなければ、”仲間”を裏切った挙句そんな有様になったのも自業自得なあんたを助けるつもりなんてなかったんだからね。―――ご主人様に心から感謝しなさいよ。」
召喚されたベルフェゴールは溜息を吐いた後片手をクロウの身体に置いて片手越しに自身の精気を分け与え始めた。するとやせ細っていたクロウの身体は徐々に肉が付き始め、今にも死にそうなほどをしていた青ざめた顔に血色が戻り始め、最後は髪の色以外は元のクロウの姿へと戻り、アイドスが祈りを終えるとクロウは安らかな表情で眠っていた。
「あ…………」
「クロウさんは助かったのですか……?」
クロウの様子を見たエリスは呆け、セレーネは恐る恐るアイドスに視線を向け
「ええ。――――何とか峠を越える事はできたわ。」
その場にいる全員を安心させるかのようにアイドスは優しげな微笑みを浮かべて答えた。
「ううっ、本当によかったわ……」
「うう……ああああ……っ!」
アイドスの答えを聞いたアリサは安堵の表情で涙を流し、エリオットは安堵のあまり泣き始め
「全く……今回ばかりは本当に心臓に悪かったぞ……」
「フン……人騒がせな…………」
「ったく……助かるんだったら、遺言なんて紛らわしい真似をするんじゃないわよ………」
マキアスとユーシス、サラ教官はクロウに対する憎まれ口を言いながらも安堵の表情をしていた。
「ふふっ、さすがは”女神”ね。」
「――――”慈悲の大女神”。アイドス殿はまさにその名の通りの存在である事を示したね。」
「ええ……大いなる”慈悲”という”奇蹟”を起こして彼や彼を心配する多くの仲間達を救ったのですから……」
「はい……本当によかったです。」
「…………………」
レンやパント、シグルーンとルイーズはそれぞれ微笑み、リアンヌは静かな笑みを浮かべていた。
「アイドス……ベルフェゴール……本当にありがとう……!」
「私からも礼を言わせてもらうわ……―――クロウを救ってくれて、本当にありがとう。この恩は一生忘れないわ。」
「うふふ、私はご主人様の使い魔として……ヴィータの主として当然の行動をしただけよ♪」
リィンとクロチルダに感謝の言葉を述べられたベルフェゴールはウインクをした。
「というか今更だけど何でもっと早く出て来てクロウを治療しなかったの?」
「そうだ、そうだ~!お蔭でボク達、泣く羽目になったんだよ~!?ボク達が流した涙を返せ~!」
「フィ、フィーちゃん……ミリアムちゃん……」
「ま、まあまあ……クロウさんが助かったのですからいいではありませんか。」
ジト目のフィーに続くように二人に文句を言うミリアムを見たエマは冷や汗をかき、プリネは苦笑しながら二人を諌めていた。
「……その事なのだけど……―――正確に言えば彼は”完全に助かった訳ではないわ。”」
「か、”完全に助かった訳ではない”って……!」
「……見た所何も問題ないように見えるが……」
「……どこか治せなかった所があるのか?」
アイドスの口から語られた驚愕の事実を聞いたエリオットは信じられない表情をし、ラウラは不安そうな表情でクロウを見つめ、ガイウスは真剣な表情で尋ねた。
「身体は完全に治っているわよ。でもね……」
「―――彼が先程の戦いで燃やし尽くした”命の焔”までは治せないのよ。」
そしてベルフェゴールに続くようにアイドスは重々しい様子を纏って答えた。
「い、”命の焔”ですか……?それは一体……」
「多分”寿命”の事を言っているんだと思うよ。」
アイドスの答えに困惑しているエリスの疑問にエヴリーヌは静かな表情で答え
「じゅ、”寿命”って……!」
「そう言えば……髪だけは元に戻っていませんね……」
「七十七の悪魔―――それも最高位の悪魔二柱の顕現は、エマやヴィータのような修行をした”術者”でもタダではすまないわ。そのバンダナ男が一体後どのくらい生きられるかわからないけど……多分、バンダナ男の寿命はそんなに”長くないわ。”」
「……今こうして助かっただけでも、まさに”奇蹟”と言っても過言ではありません……」
「そうね……」
エヴリーヌの答えを聞いたアリサが信じられない表情をしている中エリゼは不安そうな表情でクロウの白髪を見つめ、セリーヌの推測に続くようにエマとクロチルダは重々しい様子を纏って答えた。
「そんな……!何とかならないのか……!?」
クロウの寿命が長くない事を知ったリィンは悲痛そうな表情でアイドスを見つめ
「ごめんなさい……失った命の焔を元通りにする事は私の力でも……」
「いえ、クロウさんの寿命を”元通り”―――つまり”本来のクロウさんの寿命に戻す方法”はあります。」
アイドスが悲しそうな表情で答えかけたその時、ツーヤが静かな表情で答えた。
「へ………」
「ツ、ツーヤお姉様……?一体何を……?」
「”本来のクロウ様の寿命に戻す”……一体どのような方法なのでしょうか?」
ツーヤの言葉を聞いたマキアスは呆け、セレーネは戸惑い、シャロンは不思議そうな表情で尋ねた。
「うふふ、なるほどね。とっておきの”反則技”があったわね♪」
「!!まさか……!」
「――――”真竜”の力を借りるつもりか。」
一方心当たりがあるレンは小悪魔な笑みを浮かべ、プリネは血相を変え、レーヴェは静かな表情で呟き
「”真竜”というと……秘匿情報にあった”彼女”の事か。」
「確かにかの”姫神”が受け、誰もが解呪できなかった”殺戮の魔女”の呪いをその力で解けた”彼女”の力ならば可能でしょうね。」
「ですが問題は……」
「……彼女が自身の力を使って彼を救う事に応じるかですね。」
「………………」
パントとシグルーンはそれぞれ真剣な表情で考え込み、ルイーズは心配そうな表情をし、リアンヌは重々しい様子を纏って呟き、エリゼは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「”真竜”……何それ。」
「呼び方から察すると恐らく特定の竜族を示しているのだと思うのですが……」
「わたくしも今初めて聞いた名前のドラゴンですわ。」
「プリネ達が知っているという事は……もしかして異世界の竜族なのかしら?」
「しかも先程”姫神が受けていた”呪いがどうと言っていたが……”姫神”とはまさか”ブレイサーロード”達の傍にいる女神の事を言っているのか?」
初めて聞く言葉にフィーは首を傾げ、エマは真剣な表情で考え込み、セレーネは戸惑い、アリサとユーシスはプリネ達に視線を向けて尋ねた。
「そうだよ。フェミリンスの呪いを解けたミントならクロウを治す事もできると思うよ。」
「ええっ!?」
「ハアッ!?」
「ミントさんって……もしかしてエステルさんの養女のミントさんの事を言っているのか!?」
そしてエヴリーヌが答えるとエリオットとサラ教官は驚き、リィンは血相を変えて尋ね
「エ、エヴリーヌお姉様……そんなあっさりと秘匿情報を口にしないで下さいよ。特にミントの情報については最高機密の秘匿情報として扱われているのですから……」
「やれやれ。情報の重要さは士官学院の授業でも習ったはずだぞ。」
「ま、まあまあ。どの道クロウさんを治す為にミントちゃんの事を話さない訳にはいきませんから、遅かれ早かれ知る事になったと思いますよ。」
プリネは頭を抱えて疲れた表情で指摘し、レーヴェは呆れ、ツーヤは苦笑しながら諌めていた。
「ほえっ!?”黄金の百合”の情報がメンフィルが最高機密にするレベル!?」
「あのメンフィルに秘匿―――それも最高機密の秘匿情報として扱われているとはミント様の経歴には相当な秘密が隠されているのでしょうね……」
プリネ達の話を聞いたミリアムは驚き、シャロンは真剣な表情でプリネ達を見つめ
「……それで?その秘匿情報とやらはどんな情報なのかしら?まさかとは思うけど、人の命―――それもクラスメイトの命がかかったこの状況で出し惜しみをしないわよね?」
サラ教官は厳しい表情でプリネ達を見つめて問いかけた。
「―――仕方ありませんね。お願いしますから、今から話す事は絶対に誰にも漏らさないで下さいよ―――――」
そしてプリネ達はミントが過去、現代、未来と自由に時空を駆ける事ができる存在にして”刻”を司る”真竜”であり、またミント自身も”時間”を操る事ができ、過去フェミリンスが受けたフェミリンスでも解けない強力な呪いをフェミリンス自身の”時”を”戻して”フェミリンスの呪いを解いた事を説明した。
「「………………」」
「じ、時空を超える事ができる上更に対象者の”時間”を操る事もできる竜――――”真竜”……それがミントさんの正体……」
「まさかわたくし達の世界にそのようなドラゴンがいたなんて……」
「ひ、非常識にも程があるぞ!?」
「”ブレイサーロード”といい、”剣聖”といい、”ブライト家”には非常識の塊しかいないのか!?」
「うふふ、”時空”を操ると言われている”エリュア”も真っ青な能力ね♪」
「というかミントが”エリュア”と呼ばれてもおかしくないくらいよ。」
説明を聞き終えたリィンとサラ教官は驚きのあまり口をパクパクさせ、アリサとセレーネは呆け、マキアスとユーシスは疲れた表情で声をあげ、ベルフェゴールはからかいの表情をし、アイドスは苦笑し
「姉様はあまり驚いていない様子ですけど……もしかして姉様も知っていたのでしょうか?」
「ええ。メンフィルの秘匿情報には何度も驚かされたけど、その中でも2番目の驚きだったわ……」
「に、”2番目”でミントさんの正体って……それじゃあ、1番目はどんな情報なんだろう……」
(うふふ、”一番目”は間違いなくエステルの”先祖”の事でしょうね♪)
エリスの質問に苦笑しながら答えたエリゼの話を聞いたエリオットは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。
「……なるほどね。確かにそれなら、バンダナ男の寿命を何とかできるかもしれないわね。」
「ええ。クロウの身体を”グノーシスに侵される前の身体に戻せば”クロウが燃やし尽くした寿命も”元に戻す”事もできると思うわ。」
「あ……」
セリーヌの言葉に頷いたクロチルダの推測を聞いたリィンは明るい表情をし
「ですが……ミントさんが応じてくれるでしょうか?”人の時の流れを操る事”は”零の至宝”の”因果”同様、神々のみが起こせる”奇蹟”と言っても過言ではありませんから、おいそれと使っていい能力ではないはずです。」
「それは…………」
不安そうな表情をしているエマの推測を聞いたガイウスは複雑そうな表情をした。
「……クロウの寿命を何とかできる方法があるだけ、まだ希望はある。」
「そだね。それに”黄金の百合”の性格を考えたら案外あっさり応じてくれるかもしれないし。」
「というか正体を黙る代わりにクロウを治してって言えばいいんじゃないかな~。」
「このガキは……」
「さすがにそんな脅迫同然の方法は人として間違っているぞ。」
「第一そんな事をすれば、ミントさんの情報を秘匿しているメンフィルが黙っている訳がないだろうが……」
リィンが呟いた言葉にフィーは頷き、ミリアムの提案を聞いて仲間達と共に冷や汗をかいたユーシスは顔に青筋を立ててミリアムを睨み、ラウラは真剣な表情で指摘し、マキアスは呆れた表情で指摘した。
「―――何はともあれ、残すはヨアヒム・ギュンターのみだ。」
「恐らく”蒼”の”起動者”がヨアヒムにとっての最後の砦だったはず……彼の司祭の守りは丸裸ですわ。」
「彼の司祭を滅する事ができれば、かつてのクロスベルの時のように”グノーシス”で操られた者達も無力化され、悪魔達も消えて、今回の”異変”を解決する事ができ、真の意味で内戦を終結させる事ができます。次が貴方達”紅き翼”にとっての”最後の戦い”です。最後まで決して気を抜かずに戦い抜くように心がけなさい。」
「はい……!――――これより”D∴G教団”司祭ヨアヒム・ギュンターの討伐を行う………それぞれの”明日”を掴むため……そして”かけがえのない毎日を取り戻すため”……各自、全力を尽くしてくれ!!」
パントやシグルーン、リアンヌの言葉に頷いたリィンは仲間達へと振り返って号令をかけ
「おおっ!!」
リィンの号令に仲間達は力強く頷き、先へと進み始めた。
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