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おぢばにおかえり

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第三十話 春季大祭その五

「やれやれ。ちっちもねえ」
「阿波野君これから大変ね」
「全く」
「大変なのは私なんだけれど」
 そんな皆にまた言い返しました。
「手間がかかるんだから。何かと」
「それだけ手間がかかるのがいいんじゃない」
「ねえ」
 顔を見合わせて言い合うのが全然理解できません。皆で私に何を言いたいのでしょうか。どうにもこうにもわからないでいると。また言われました。
「母性本能って知ってるわよね、ちっち」
「それがどうかしたの?」
 また変なことを言ってきました。
「そんなの私だって知ってるけれど」
「それ、よく考えてみて」
「年下でね」
「だから。さっきから何を言ってるのよ」
「やっぱりこりゃ駄目ね」
 今の私の言葉で皆心底呆れたような顔になりました。
「何もわかってないわ」
「鉄壁ね、こりゃ」
「鉄壁っていうかダイアモンド?」
 皆の何が何だか全然わからない言葉がまた出ます。
「他のことは鋭いのにね」
「どうしてなんだろ」
「とにかく。阿波野君」
「はい」
 話が全然わからないままですがとりあえず阿波野君に言いました。
「阿波野君のクラスの席に戻って」
「あっ、そうですね」
「そうよ。本来の場所に戻らないと」
 参拝をしているのですから。そうしないと駄目なのは当たり前です。当たり前のことなんですけれどこの参列は。どうにもこうにもです。
「わかったわね」
「わかりました。それじゃあ」
 こうして阿波野君は自分の場所に戻りました。けれど私はそれからも皆に言われ続けるのでした。勘弁して欲しいんですけれど。
「可愛い子じゃない」
「平均点高いわよ」
「平均点って何よ」
「顔に背にスタイル」
「性格も明るいし。いいじゃない」
「だから私は」
 またこんな話になってうんざりでした。
「そういうのじゃなくて。阿波野君はただの後輩よ」
「今はそうでも」
「一線を越えて」
 どうしても話が変な方向に向かいます。というか皆が強引にそっちの方に捻じ曲げている感じです。私はそんなつもりは全然ないのに。
「それでなるってことあるじゃない」
「そうよね。よくね」
「そこから夫婦なんてこともね」
「そのつもりはもっとないし」
 あるわけがないです。
「何よ、夫婦って」
「あれっ、けれどちっちって教会継ぐのよね」
「長女さんよね」
「それはそうだけれど」
 このことはいつも自覚していますけれど。それでも何でここでこんな話になってしまうのか。皆からかうにも程があります。困ってしまいます。
「けれど。何で阿波野君なのよ」
「結婚するのも相手ゲットしないと駄目だからね」
「だったら早いうちに。違う?」
「もう私達結婚できる歳よ」
「そんなの言わなくてもわかってるわよ」
 十六歳からです。これは私も知っています。もっとも高校生で結婚なんて実際は滅多にないことですけれど。そういえば私が生まれる前に高校聖夫婦ってドラマがあったそうですけれど。 
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