おぢばにおかえり

「それはね。けれど実際は高校出てからじゃない」
「あと一年じゃない」
「そうよ。たった一年」
　タイムリミットって感じの言葉でした。
「一年で結婚できるのよ。どうなのよ」
「けれどまあ」
　ここで別の女の子が笑いながら言いました。
「阿波野君一年だしやっぱり高校生だし」
「あと三年？」
「ちっちは二十一歳」
　その時どうなっているのか。全く想像できません。三年先は闇とはその通りです。けれど多分おぢばにいるんだなってことはおぼろげに想像はできます。
「丁度いいわよね」
「ねえ」
「奥華じゃあれでしょ？」
「あれって？」
　話が私のいる大教会の方にもいきました。
「十九歳で会長さんになられた人もいるのよね」
「それはね」６
　その通りです。教会長になるにはまず修養科等を出てようぼくにならせて頂いてそれから二ヶ月置いて前期講習を受けてまた一月置いて後期講習を受けてそれから教会長検定講習を受けてならせて頂きます。それぞれの講習は一月弱程度です。大体一年もあればならせて頂きます。ですから十九歳でもならせてもらうことができます。
「そうだけれど」
「じゃあそれでどう？」
「十九歳の会長さんに二十一歳の奥さん」
「まあ大学行くのならまだ先になるけれどね」
「大学行くつもりだしそれに」
　凄く腹が立っているのが今です。
「勝手に言わないでよ。何でそうなるのよ」
「だってねえ」
「教会継ぐんだし」
「そりゃ私だってお婿さん貰わないといけないけれど」
　これはどうしてもです。
「それでもね。何でそこで阿波野君を話に出してくるのよ」
「善は急げっていうじゃない」
「そうそう」
「何が善なのよっ」
　ここでもまた八重歯を出してしまいました。もう本当にからかわれっぱなし、言われっぱなしになってしまっているのがわかります。
「だから私は阿波野君とは唯の先輩と後輩なんだから」
「そうやってスキャンダル誤魔化す芸能人多いわよ」
「確かにね」
「けれど実際はどうかというと」
「何と、ってことも」
　どうしても無理矢理そちらに話をいかせたいみたいです。それも皆で。
「だからちっちだってね」
「どう？本当に」
「あの子確かに平均点高いし」
「問題は心よ」
　こればかりは外せませんでした。
「心。わかってるの？」
「顔はどうでもいいの？」
「ルックスも？」
「あるには越したことはないけれどやっぱり心よ」
　私はまたこのことを言いました。
「心。それがないと駄目よ」
「ううん、何か老成っていうか」
「大人の言葉ね」
「だって心って顔に出るじゃない」
　私も見たことがあるので言えます。心が奇麗な人はその表情が違います。とても穏やかだったり清々しかったり。そういうものですから。
「それに一緒にいてもその方がいいじゃない」
「まあね。性格いいとね」
「ちっちも見てるじゃない」
　皆今度は感心してきました。それでもどうにもいじられてるって思ってしまいます。実際こういう話になったらいつもいじられてしまいます。
「感心感心」
「いい奥さんになるわね」
「誰だって同じでしょ？」　
　私の反論はこうでした。