英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第24話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「…………うふふ、これで”契約完了”ね。約束通り戦争回避条約の最後の一文にあった期間終了まではよほどの事がない限りメンフィルはエレボニアに対する侵略行為を中止するし、正規軍のメンフィル帝国領の通過、メンフィル帝国領内での無利子無制限の補給、”カレイジャス”の停泊やメンフィル帝国領内にある転移魔法陣の使用も許可するわ。ちなみにこれが補給の件の証明書だから無くさないように気をつけてよ?」
全ての書類を確認し終えたレンはオリヴァルト皇子とクレア大尉にそれぞれ証明書を数枚手渡し、更にセドリック皇太子に一枚手渡した。
「とりあえず西部、東部それぞれに5枚ずつ用意したけど足りるかしら?」
「……ああ、西部でまだ抵抗を続けている機甲師団の数を考えると十分だ。」
「……こちらも問題ありません。メンフィル帝国の寛大なお心に感謝致します。」
レンの問いかけにオリヴァルト皇子と共に答えたクレア大尉は頭を下げた。
「エリゼお姉さん、シグルーンお姉さん。みんなに”通行証”とその予備も配ってあげて。」
「―――かしこまりました。」
「御意。」
レンに指示をされたエリゼとシグルーンは手分けしてその場にいる全員に”通行証”を配った。
「これは一体……」
「プリネ達にもらったのと同じものだね。」
「”通行証”か……」
通行証を見たオリヴァルト皇子は戸惑い、フィーは静かな表情で呟き、マキアスは複雑そうな表情をした。
「それを見せればメンフィル帝国領の各地で”検問”をしている見張りの兵達も無条件で通してくれるわ。無くさないように気を付けてね?オリヴァルト皇子にはミュラー少佐の分を、クレア大尉にはクレイグ中将とナイトハルト少佐、ヴァンダール中将の分も渡しておいたから、それぞれと合流したら渡してあげてちょうだい。」
「―――わかった。」
「―――わざわざ御用意して頂き、ありがとうございます。お三方と合流した際は必ず渡させて頂きます。」
レンの説明を聞いたオリヴァルト皇子は頷き、クレア大尉は会釈をした。
「後、”白兎”の貴女にはこれらもあげるわ。」
そしてレンが指を鳴らすと異空間から”アガートラム”の部品とミリアムのサイズの服が現れ、ミリアムの目の前で着地した。
「ほえっ!?ガーちゃんの部品にこの服はもしかしてボクの防具!?」
自分の目の前にある武具を見たミリアムは驚き
「Ⅶ組のみんなが装備している”匠王”ウィルフレドお兄さんが作った武具よ。武器の名前は”セイクリッド・アーム”。聖なる力が込められた武器だから、幽霊や悪魔相手にも効果抜群よ。防具の名は”イノセンスウェア”。戦闘中に様々な加護が発動する魔術が込められた防具よ。」
「ええっ!?」
「ぼ、僕達が持っているのと同じ……!」
「まあ……かの”匠王”様特製の武具ですか……」
「!何て霊力……!」
「あ、相変わらずウィルフレド様の創った武具は凄まじい力を秘めていますね……」
「”至高の職人”と謳われている”匠王”か……一体どんな人なのだろう?」
レンの説明を聞いたアリサとエリオットは驚き、シャロンは目を丸くし、セリーヌは目を見開き、エマは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ジョルジュは興味ありげな表情をしていた。
「ラッキー!やっとボクもみんなと同じ”匠王”の武具を貰えたよ♪本当に貰ってもいいんだよね!?」
「ええ。”常任理事”であるパパがみんなも持っているんだから、貴女にも渡さないと不公平って事でウィルお兄さんに頼んで創ってもらったのよ。」
「ありがとう!”英雄王”に今度会えたらお礼を言っておくね~。」
レンの話を聞いたミリアムは無邪気な笑顔を浮かべた。
その後レン達は妥協案を実行する為にユーゲント皇帝夫妻と、皇帝夫妻の御世話係をしているメイド達と共に転移魔術で”モルテニア”に向かう事になり……アルフィン皇女達は皇帝夫妻と一時の別れを告げると共に、必ず自分達の手で内戦を終結させる事を誓った。
また……レン達が帰る間近にエリゼはルーファスから託された遺書をユーシスに手渡し……その事に加えて処刑されたルーファスや処刑される予定であるアルバレア公爵夫妻の遺体をいずれ自分に渡すように手配をしてくれたエリゼにユーシスは頭を深く下げた感謝の言葉を述べた。
そしてレン達がユーゲント皇帝夫達と共に転移魔術で”カレイジャス”から去ろうとし、リィン達はそれを見送ろうとしていたその時、レンは転移魔術を発動する前に意味ありげな笑みを浮かべてリィン達を見回した。
「うふふ、それにしても内戦が始まった当初から思っていたけど、内戦が起こったのはエレボニアにとっていい機会だったのじゃないかしら?」
「なっ!?」
「……それは一体どういう意味でしょうか?」
レンの信じられない発言を聞いたレーグニッツ知事は驚き、アルゼイド子爵は厳しい表情で問いかけた。
「だって、この内戦で帝国貴族達のエレボニア皇家に対する忠誠心がよくわかったじゃない♪肝心の”四大名門”は全て皇家に歯向かって、他の貴族達も”四大名門”側についたんだから。残ったのは”貴族連合”にとって価値はないと判断されて相手にされなかったか、”貴族連合”か皇族につくのか判断しきれなかった僅かな中立貴族と、皇家の窮地を救う為に力を貸している貴族に関しては”アルゼイド家”と”ヴァンダール家”だけじゃない。」
「そ、それは…………」
「………………」
「…………ッ……!」
「ユーシス……」
「………………」
「……返す言葉もない……」
「あなた…………」
レンの正論に反論できないアルフィン皇女は辛そうな表情で顔を俯かせ、セドリック皇太子は辛そうな表情で黙り込み、辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているユーシスをラウラは心配そうな表情で見つめ、アルゼイド子爵は目を伏せて黙り込み、疲れた表情で肩を落としているユーゲント三世をプリシラ皇妃は心配そうな表情で見つめた。
「この内戦やメンフィルとの外交問題が終わったら、”戦争回避条約”によって罰せられる”アルバレア公爵家”と”カイエン公爵家”を除いた残りの”四大名門”もそうだけど、彼らに加担した貴族達も”粛清”して、更に帝国貴族達が持つ数々の”特権”を剥奪して貴族達が持つ”力”を衰退させて、帝国貴族達が2度とエレボニア皇家に歯向かう事ができないようにした方がいいと思うわよ?でないといつかまた、貴族達によるクーデター―――内戦が起こるでしょうし。」
「………………」
「……レン姫。それは今まで貴族に数々の特権を持たせていたエレボニアの政治に対する皮肉だろうか?」
レンの指摘にユーゲント三世は目を伏せて黙り込み、オリヴァルト皇子は真剣な表情で問いかけた。
「うふふ、勘繰りすぎよ。レンはただ同じ皇家に所属している者として純粋に助言と忠告をしただけよ♪」
「……あの、参考までに聞きたいのですが。もしレン姫がエレボニアの皇帝だったら、内戦を終結させ、メンフィルと和解できたエレボニアはまず何をすべきだと思っているのですか?」
レンの答えを聞いたセドリック皇太子は複雑そうな表情でレンを見つめて尋ねた。
「そうねぇ……”首謀者”の一角である”四大名門”や内戦に加担した貴族達の粛清は当然として、レンなら真っ先に領邦軍の制度を廃止するわね。」
「ええっ!?」
「りょ、領邦軍の制度を廃止するって……!」
「そんな事をしたら各地の治安が乱れるぞ!?」
「……レン姫。エレボニアは広大な領地に対して正規軍だけでは治安を保てない故それをカバーする為に領邦軍が存在している事はご存知ですよね?その存在を廃止するなんてことをしたら、正規軍ではカバーしきれない領地が出てきます。それに関しての対策はあるんですか?」
レンの答えを聞いたアリサは驚き、エリオットは信じられない表情をし、トヴァルは厳しい表情で声をあげ、リィンは真剣な表情で指摘した。
「そんなの簡単よ。領邦軍にはエレボニア皇家に逆らい、内戦に加担した”厳罰”として全員強制的に正規軍に移籍させて、領地の治安を守る部隊みたいなのを作ってその任に就かせればいいだけじゃない。というか各地の治安への介入は既に”鉄道憲兵隊”がしている上、将来半分以上の領地が削り取られるんだから”今の正規軍”でも可能だと思うし、それ以前に内戦に引き起こして各地の治安を率先して乱している領邦軍にこれからのエレボニアの領地の治安を任せるなんて、”筋が通らない”と思うのだけど?」
「ッ……!」
「兄様……」
「…………」
「それは…………」
「まあ~、それ以前に領邦軍が正規軍になるなんてことを知ったら、それを嫌がって辞める人達は続出するだろうね~。」
意味ありげな笑みを浮かべて自分を見つめて来たレンの言葉を聞いて辛そうな表情で唇を噛みしめるリィンをエリスは心配そうな表情で見つめ、エリゼは目を伏せて黙り込み、クレア大尉は複雑そうな表情をし、ミリアムは静かな表情で自身の推測を口にした。
「うふふ、実際にどうするかはそれこそエレボニア皇家が考えるべき事よ。レンはエレボニアやメンフィルとか関係なく、”一人の皇族として”自分の意見を言っただけよ。―――ま、冗談抜きでこれからのエレボニアは皇家に逆らって内戦を引き起こした貴族達の粛清もそうだけど、貴族達に味方してその貴族達が”本来仕えるべき主”である皇家に逆らう存在なんて、今後の”憂い”を断つためにも廃止した方がいいと思うけどね♪」
「……………………」
「……貴重な助言、感謝する。先程のレン皇女の意見、今後のエレボニアが平和を保ち続ける為にも参考にさせて頂こう。」
レンの正論に反論できないリィン達がそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいる中、ユーゲント三世が重々しい口調で答えた。
「うふふ、どういたしまして♪―――――それでは皆様、ご武運を(グッドラック)♪」
そしてレンは転移魔術を発動して、上品な会釈をしながらユーゲント三世達と共に転移した。
レン達がカレイジャスから去って二日後、ケルディック市の傍に設置されてある仮説空港に降り立ったカレイジャスの中にいるリィン達はそれぞれの行動の為にカレイジャスから降りる面々――――オリヴァルト皇子、アルゼイド子爵、クレア大尉、シャロン、トヴァル、レーグニッツ知事を見送り、自分達の”指針”を決め、帝国東部での活動を開始しようとしていた。
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