英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第210話
~カレイジャス・会議室~
「君達には”本隊”と共に屋上を目指して貰いたいと思っている。」
「ええっ!?ほ、”本隊”って事は……!」
「”空の女神”の一族の方々やあのセリカさん達と一緒のメンバーだな。」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたエリオットは驚き、ガイウスは目を丸くし
「ラッキー♪そっちの方が楽じゃん!」
「よく君はそんな図々しい考えができるな……」
「このガキは……―――殿下。俺達――――エレボニアの精鋭部隊が”本隊”と共に屋上を目指す理由はやはり今回の騒動の元凶がオズボーン元宰相――――”エレボニア人”だからですか?」
無邪気な笑顔を浮かべているミリアムにマキアスは呆れ、ミリアムを睨んだユーシスは気を取り直して真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。
「……ああ。ちなみに私やアルフィン、後は私の護衛であるミュラーも君達や”空の女神”達と共に屋上を目指すつもりだ。」
「ええっ!?殿下達も私達と一緒に戦うんですか!?」
「危険です!もし殿下達に万が一の事があったら、エレボニアは……!」
オリヴァルト皇子の口から出た予想外の答えにアリサは驚き、ラウラは真剣な表情で忠告した。
「―――君達も知っての通り今回の騒動の元凶は宰相殿―――つまりは”エレボニア”だ。エレボニアが各国に対して責任を取る意味でも宰相殿との決戦にエレボニア皇族が自ら戦わない訳にはいかないだろう?」
「それは…………」
「………………」
「………………その、どうしてアルフィン義姉様までついて行かれるのですか?今のアルフィン義姉様の正式な立場はエレボニア皇女ではないのですし……」
オリヴァルト皇子の正論にラウラとユーシスがそれぞれ複雑そうな表情をしている中、エリスは心配そうな表情でアルフィンを見つめて尋ねた。
「確かに今のわたくしの正式な立場はエレボニア皇女ではありませんけど、後のエレボニアの為にもお兄様や皆さんと一緒にオズボーン元宰相との決戦に挑む事にしたのです。それに夫であるリィンさんも行くのですから妻であるわたくしがついて行かない方がありえないでしょう?」
「アルフィン……」
アルフィンの決意を知ったリィンは驚きの表情でアルフィンを見つめていた。
「ちなみに俺もアルフィン殿下の”護衛”という”依頼”でお前さん達に最後まで手を貸すぜ。勿論そちらの鉄道憲兵隊の大尉さんもな。」
「ええっ!?クレア大尉も僕達と一緒に来てくれるのですか!?」
「えっと……クレアさんは”鉄道憲兵隊”の偉い人なのよね?”鉄道憲兵隊”の人達の指揮とかはしなくていいの?」
トヴァルの説明を聞いたマキアスは驚き、ゲルドは不思議そうな表情でクレア大尉を見つめて尋ねた。
「”鉄道憲兵隊”の指揮の方は別の者に任せているのでご心配には及びません。それに”鉄道憲兵隊”の今後を考えると私自身、皆さんに協力した方が各国やエレボニアの民達の心証を少しでも良くする事ができるのですからむしろ、皆さんの部隊に私を入れて欲しいのです。」
「”鉄道憲兵隊”の今後の為……ですか?」
クレア大尉の説明を聞いたセレーネは不思議そうな表情をし
「……なるほどね。今回の騒動は”鉄血宰相”が起こした事なんだから当然各国もそうだけど、エレボニアの民達の”鉄血宰相”直属の”鉄道憲兵隊”や”情報局”もそうだし、”鉄血の子供達”であるあんた達に対する心証が最悪になって風当たりが強くなるのは目に見えているものね。」
「あ…………」
サラ教官の推測を聞いたリィンは辛そうな表情でクレア大尉を見つめていた。
「はい……各国やエレボニアの民達の心証を少しでも良くする為にも”鉄道憲兵隊”と”情報局”は全員エレボニア軍に従軍し、陽動部隊の中でも最前線――――つまり一番敵戦力が多いと思われる”真・煌魔城”の正面で戦う事になっています。」
「なるほどね~。クレアが”鉄道憲兵隊”の代表者で、ボクが”情報局”の代表者としてオジサンを討伐するって訳?」
クレア大尉の説明を聞いてある事を推測したミリアムはクレア大尉に尋ねた。
「ええ。”情報局”はレクターさんが指揮する事になっていますので。」
「しかしそうなるとオズボーン元宰相と盟友の関係であった父さんに対する民達の心証も最悪になるかもしれないな……」
「マキアス……」
父親の事を心配するマキアスをエリオットは心配そうな表情で見つめていた。
「もしそんな事になっても、レーグニッツ知事は私達エレボニア皇族が全力で庇うからその点に関しては心配しないでくれ。レーグニッツ知事は戦後のエレボニアに絶対に必要な人材だし、私自身も信頼している相手だしね。」
「あ、ありがとうございます……!」
「殿下。先程から”エレボニア軍”と仰っていますが、正規軍だけでなく領邦軍も参加させるのですか?」
マキアスがオリヴァルト皇子に頭を下げた後ある事が気になっていたアンゼリカは真剣な表情で尋ねた。
「……その件についてだが、アンゼリカ君には申し訳ないが、領邦軍の者達に関しては”貴族連合”の一員として戦い、私達エレボニア皇族に対して反逆したという”罪”があるからね。その償いとして領邦軍は最前線で戦う事になっている。」
「え……最前線で戦う事が何故”償い”になるのでしょうか?」
重々しい様子を纏っているオリヴァルト皇子の説明を聞いて不思議に思ったエマは目を丸くして尋ねた。
「最前線って言ったら間違いなく激戦区よ。当然死傷者も最前線で戦う部隊が一番多くなるから、”死地”に向かうようなものよ。戦力不足のエレボニアにとってはちょうどいい処罰方法でしょうね。」
「それは…………」
「……一時期は”逆賊”にまで落ちた領邦軍を言葉通り”命を賭けて戦わせる事”が領邦軍に対する”処罰”ですか……」
セリーヌの説明を聞いたラウラは複雑そうな表情をし、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き
「はい。もし領邦軍に対して甘い処罰を科せば民達から必ず不満の声が上がりますし、内戦に巻き込まれたメンフィルも何か言って来る可能性も十分に考えられます。エレボニアの民達やメンフィルに対して償って貰う為にも領邦軍の皆さんには申し訳ありませんが、最前線で戦ってもらう事にしたのです。――――本当に申し訳ございません、アンゼリカさん……」
「…………私の事はどうかお気になさらないで下さい。以前”黒竜関”でシグルーン中将が父上に仰ったようにノルティア領邦軍もかつては殿下達に剣を向けていた”逆賊”にしてエレボニアを混迷に導いた”元凶”。そのくらいはしないと内戦に巻き込んだ民達やメンフィルに対して示しがつかない事は理解しています。」
「アンちゃん……」
「アン……その、領邦軍は誰が指揮する事になっているんですか?メンフィルに処刑された”総参謀”であるルーファスさんの代わりに貴族連合―――領邦軍を率いていたオーレリア将軍とウォレス准将も戦死したとの事ですし……」
重々しい様子を纏って答えたアンゼリカをトワと共に心配そうな表情で見つめていたジョルジュは自身の疑問を口にした。
「領邦軍の指揮についてはアルゼイド子爵閣下に務めてもらう事になった。」
「父上がですか!?」
「なるほど………貴族の当主である子爵閣下の指揮ならば領邦軍からも不満の声は出にくいでしょうし、エレボニアで5本の指に入ると称されている強さを持つ”光の剣匠”が指揮すればオーレリア将軍達の戦死によって落ちた領邦軍の士気を戻せると言う訳ですか。」
アルゼイド子爵が領邦軍の指揮を務める事にラウラが驚いている中、リィンは自身の推測を口にしてオリヴァルト皇子達を見つめた。
「ああ。子爵閣下とアリシア女王陛下に頼み込んで何とか了承してもらったよ。」
「?何でリベールの女王に……――あ、もしかしてレグラムがリベール領化するから?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いて首を傾げたフィーだったがすぐに察した。
「はい。とはいってもエレボニアが率先して戦う必要がある為、正規軍も領邦軍同様最前線に配備される事になりますから、正規軍も”死地”に向かうことになってしまいますが……」
「父さん……」
アルフィンの話を聞いたエリオットは辛そうな表情をしていた。
「それとログナー候も領邦軍の指揮を申し出まして。アンゼリカさんにとってはお辛い事でしょうが、ログナー候の申し出、ありがたく受けさせて頂きました。」
「私の事はお気になさらず。あの父なら、自ら死地に向かう事を申し出てもおかしくないと私は思っていますし、それが父なりの殿下達への”償い”だとも思っています。」
「アンゼリカさん……」
父が死地に向かう事を受け入れているアンゼリカをアルフィンは辛そうな表情で見つめていた。
「それで……話を最初に戻すが真・煌魔城突入並びにオズボーン元宰相討伐の件……引き受けてくれるだろうか?」
オリヴァルト皇子の言葉を聞いたリィン達はそれぞれの顔を見合わせて力強く頷いて全員揃って返事した。
「はい!」
「本当にありがとうございます……!」
「世界の命運をかけた決戦に臆することなく挑むとかとんでもない学生達だな……」
「フフン、何てたってこのあたしが担任しているからね。」
リィン達の返事を聞いたアルフィンは頭を下げ、苦笑しているトヴァルにサラ教官は得意げに答えた。
「あ。そう言えばプリネ達は決戦に参加するんですか?」
ある事を思い出したアリサは不思議そうな表情でオリヴァルト皇子達を見つめて尋ねた。
「彼女達はメンフィル帝国の精鋭部隊――――リウイ陛下が率いる精鋭部隊のメンバーとして屋上を目指すそうだよ。」
「―――なお、メンフィルはリウイ陛下の部隊とは別に”槍の聖女”率いる”鉄騎隊”の別働隊が二手に分かれてそれぞれのルートから屋上を目指すそうです。」
「ええっ!?や、”槍の聖女”どころか”鉄騎隊”まで精鋭部隊のメンバーなんですか!?」
「まあ連中の実力を考えると精鋭部隊に選ばれてもおかしくないわね。」
「どちらにしても心強い話である事には違いありませんね。」
「まさか”結社”の連中まで世界の命運をかけた決戦に参加するとはねぇ……」
オリヴァルト皇子の後に説明したクレア大尉の話を聞いたエマは驚き、セリーヌは納得した様子で呟き、エリスは微笑み、サラ教官は苦笑していた。
「でもプリネ達はメンフィルの部隊か……やっぱり僕達と一緒に行く事は無理なのかな……」
「……プリネ達の立場を考えたら仕方ないな。」
エリオットとガイウスはそれぞれ残念そうな表情をし
「私は”Ⅶ組”が全員揃った所が見られなくて残念だわ。一度でもいいから”Ⅶ組”のみんなが揃った所を見たかったのだけど……」
「”Ⅶ組全員”という事は……」
「……プリネ君達に加えてクロウもか。」
「クロウ君……」
ゲルドが呟いた言葉を聞き、クロウを思い浮かべたジョルジュやアンゼリカ、トワはそれぞれ寂しげな表情をしていた。
「………………そうだな。ゲルドの言う通り、俺達”Ⅶ組”はまだ”全員揃っていない”。世界の命運をかけた決戦にベストを尽くす為にも”Ⅶ組全員が揃う必要がある”と俺は思う。」
「兄様……?」
「お、お兄様。まさかとは思いますがメンフィルにプリネ様達やクロウさんをわたくし達のメンバーに入れるように説得するつもりなのですか……!?」
リィンの言葉を聞いたエリスは不思議そうな表情をし、セレーネは信じられない表情で尋ねた。
「ああ。――――それとクロチルダさんもだ。」
「姉さんもですか!?い、一体どうして……」
リィンの口から出た予想外の答えに驚いたエマは信じられない表情でリィンを見つめた。
「クロチルダさんに償いの機会を与える為だ。世界の命運をかけた決戦に参加すれば”槍の聖女”同様とまではいかないと思うけど、メンフィルにも貢献した事になるから罪も少しは軽くなるだろう?それにクロチルダさんはみんなも知っての通り、魔術師として相当な使い手だ。戦力としても心強い存在である事には違いないだろう?」
「リィンさん…………」
「ヴィータが世界の命運をかけた決戦に参戦ねぇ……”結社”が崩壊した事に意気消沈しているあの女が参戦するとはとても思えないし、そもそもヴィータやあのバンダナ男を一時的にとは言え釈放したら下手したらそのまま逃げられるわよ?もしそんな事になったらメンフィルに責任を追及されるわよ?」
リィンの答えを聞いたエマは驚き、セリーヌは真剣な表情でリィンに忠告した。
「……その時は俺が責任を持って二人を探して拘束してメンフィルに引き渡すし、メンフィルが決めた俺に対する処罰を受け入れるつもりだ。それにエリスとアルフィンの件を考えるとクロチルダさんは根っからの悪人ではないと思うから、そんな事はしないと思う。」
「え…………」
「わ、私達の件ですか?」
「ど、どうしてでしょうか?姉さんはお二人を誘拐したのに……」
リィンの説明を聞いたアルフィンとエリスは目を丸くし、エマは戸惑いの表情で尋ねた。
「”パンダグリュエル”でカイエン公が俺を勧誘した時にクロチルダさんは俺に俺がどんな選択をしても二人の安全を保障するって伝えて、その場でカイエン公に確約させたんだ。」
「姉さんがそんな事を…………」
「……………………メンフィルの件があったからそんな事を言ったんじゃないかしら?アルフィンはともかく、エリスとアンタに何かあればメンフィル帝国が問答無用で攻めて来て結社と貴族連合を一人残らず殺す事はわかっていたし。その証拠にユミルに現れた貴族連合の協力者達のほとんどを”英雄王”達は殺したじゃない。」
リィンの答えを聞いたエマは驚き、セリーヌは複雑そうな自身の推測を口にした。
「確かにその可能性も考えられるけどエリスの安全を保障をカイエン公が確約する時、カイエン公は一瞬表情を歪めていたから、あれはクロチルダさんの独断でエリスとアルフィンの安全の保障を確約したんだと思う。下手をすればカイエン公が焦りのあまりエリスに危害を加えてルーファスさんの返還をメンフィルに迫る可能性だってあったのに、クロチルダさんは先にその可能性を潰したという事になる。―――それを考えるとクロチルダさんは根っからの悪人とはとても思えないんだ。」
「リィンさん……」
「”蒼の深淵”の件はそれでいいとしても、クロウが逃亡しない可能性はちゃんとあるんでしょうね?」
リィンの説明にエマは僅かに嬉しそうな表情をし、サラ教官は真剣な表情で尋ねた。
「……自分の故郷が”あんな事”になってしまったんですから、クロウとしても自分の手でオズボーン元宰相を討伐し、故郷を何とかしたいはずです。それを考えるとそんな事はしないと思っています。」
「クロウの故郷―――”ジュライ特区”か……」
リィンの言葉を聞いたジョルジュは重々しい様子を纏って呟き
「それに……―――俺は信じています。俺達の”仲間”が俺達を心から裏切らないって。」
「リィン……」
「全く……お前はどこまでお人好しなんだ?」
「フフ、それがお兄様の良い所ですよ。」
「フッ、もしクロウが逃亡なんて真似をしたら半殺しにしてからメンフィルに引き渡そうじゃないか。」
「もう、アンちゃんったら……」
決意の表情をしたリィンをゲルドは微笑みながら見つめ、呆れているユーシスにセレーネは微笑みながら指摘し、口元に笑みを浮かべるアンゼリカの物騒な発言にトワは冷や汗をかいて苦笑していた。
「その、クレア大尉……先に謝っておきます。―――すみません。クレア大尉にとって色々思う所があるクロウを俺達”Ⅶ組”のメンバーに入る事にクレア大尉は反対の上、正直不愉快と思っているかもしれませんけど、それでもあいつもいないとダメなんです。」
「リィン………」
クレア大尉に謝罪するリィンをアリサは心配そうな表情で見つめ
「私の事はどうかお気になさらず。―――それに私も”Ⅶ組”の皆さんが再び全員揃い、共に協力し合う所を見たい事は事実です。」
クレア大尉は静かな表情で答えた後優しげな微笑みを浮かべた。
「―――決まりだな。それでどうするんだ?”英雄王”達に頼み込む為に今からリベールのロレント市に行くのか?」
「いえ、まずバリアハートにいるプリネさん達に事情を説明して、リウイ陛下かリフィア殿下と面会できるように頼み込むつもりです。」
トヴァルに問いかけられたリィンは答えた。
「それじゃまずはバリアハートね。」
「えへへ……そうと決まったら急いで学院のみんなを呼び寄せないと……!」
その後トリスタから出向したカレイジャスはバリアハートに向かった。
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