英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~エイリークの失言~
同日12:10―――――
~ユミル・シュバルツァー男爵邸~
「あなた、エイリーク皇女殿下があなたとの面会を求めていますが……何でもあなたに知らせたい事があるとの事でして……」
「エイリーク皇女殿下が?わかった、会おう。」
執務室で仕事をしていたシュバルツァー男爵はルシア夫人の話を聞いた後応接間でゼトを背後に控えさせているエイリークと対面していた。
「本日はお忙しい中、急な訪問に応えて頂き本当にありがとうございます。」
「いえ……ユミル防衛に務めて頂いている殿下達にはいつもお世話になっておりますので……それで本日のご用件は一体何でしょうか?妻の話では私に知らせたい事があるとの事でしたが……」
エイリークに会釈をされたシュバルツァー男爵も会釈をして答えた後不思議そうな表情で尋ねた。
「はい。エレボニア帝国との外交問題が終結する日が近くなったと思われますのでそのご連絡の為に参上しました。」
「え………………」
「……それは一体どういう事でしょうか?」
エイリークの話を聞いたルシア夫人は呆け、直感で嫌な予感を感じたシュバルツァー男爵は真剣な表情で尋ねた。
「ゼト、先程の報告を説明してあげて。」
「ハッ。―――本日の12:00にて”戦争回避条約”によって設けられたエレボニア帝国の”猶予期間”は切れた為、メンフィルとクロスベルの連合軍はエレボニア帝国各地への侵攻を開始しました。」
「な――――――」
「そ、そんな……!?」
ゼトの説明を聞いたシュバルツァー男爵は絶句し、ルシア夫人は表情を青褪めさせ
「エレボニア帝国を滅亡させれば、その事によってエレボニア帝国との外交問題も消滅し、終結致します。エレボニア帝国との外交問題が終結した際は以前にも説明しました通り我々もユミルの防衛を終えた事になり、本国へと引き上げますので、男爵閣下を含めたユミルの人々も再び以前の暮らしに戻れますので申し訳ございませんが後数日だけ、窮屈な暮らしに耐えて下さい。」
エイリークは静かな表情で説明を続けた。
「エイリーク皇女殿下……先程数日でエレボニア帝国を滅亡させる事ができると仰いましたがそれは真なのでしょうか……?」
「はい。既にノルティア、サザーランド、ラマールの各州に私以外のユミル防衛についていた兄上達が率いるメンフィル帝国軍とクロスベル帝国軍の連合軍が同時侵攻し、更に帝都ヘイムダルにはリウイ祖父上達率いるメンフィル帝国軍とクロスベル皇帝の一人ヴァイスハイト陛下率いるクロスベル帝国軍がヘイムダルの防衛部隊との決戦を開始しました。領邦軍で厄介なのは”黄金の羅刹”オーレリア将軍と”黒旋風”ウォレス准将ですが、リウイ祖父上達がいらっしゃるので問題なく撃破できるでしょう。」
信じられない表情をしているシュバルツァー男爵の問いかけにエイリークは落ち着いた様子で答えた。
「………………」
エイリークの説明を聞いたルシア夫人は辛そうな表情で黙り込み
「…………エレボニア帝国滅亡後、エレボニア皇家である”アルノール家”―――ユーゲント陛下達をどうされるおつもりですか……?」
シュバルツァー男爵は重々しい口調で尋ねた。
「……アルノール家の方々はアルフィン皇女が”救済条約”に記されてあった事を実行するまでは、メンフィル帝国領の辺境の地で過ごしてもらう事になっています。」
「”救済条約”…………リィン達が話していたリィンとアルフィン皇女殿下の婚姻の件ですか。もし条約通りアルフィン皇女殿下がリィンに降嫁した場合、辺境の地で過ごす事になっているユーゲント陛下達はどうなるのですか?」
エイリークの説明を聞いたシュバルツァー男爵は複雑そうな表情で尋ねた。
「その際は元エレボニア帝国領の領主を務めてもらう予定になっておりまして。更に本国の社交界の参加も認める事になっています。」
「あの……何故エレボニア帝国が滅亡しても、その条約は違う形で効果を発揮するのでしょうか?」
シュバルツァー男爵の問いかけに答えたエイリークの話を聞いてある事が気になったルシア夫人は戸惑いの表情で尋ねた。
「さすがにリフィア姉上の専属侍女長を務めているエリゼの家族であり、養子の形とは言え、メンフィル皇家の一員であるセレーネを娶る未来のクロイツェン州の統括領主であるリィンさんの奥方の家族を冷遇できませんし、リィンさんがセレーネとアルフィン皇女を娶った時点でアルノール家がメンフィル皇家にとって遠縁の関係になる事も理由の一つです。」
「!?皇女殿下……今、リィンがセレーネも娶ると仰っていましたが……それは真なのでしょうか?」
エイリークの話を聞いてある事に驚いたシュバルツァー男爵は信じられない表情で尋ねた。
「あら?男爵閣下達はご存知でないのですか?リィンさんは現時点でセレーネどころか、多くの女性達と婚約していると聞いていますが。―――その中には男爵閣下達のご息女であられるエリゼとエリスさんも入っていますよ?」
「なっ!?エ、エリゼとエリスもですか!?ちなみに他にもいるのでしょうか……?」
不思議そうな表情をしているエイリークの言葉を聞いたシュバルツァー男爵は驚きの表情で声を上げた後すぐに落ち着いて尋ねた。
「……現時点で先程上げた人物達以外でリィン・シュバルツァーさんと婚約の間柄であるのはRF(ラインフォルトグループ)のイリーナ・ラインフォルト会長のご息女であられるアリサ・ラインフォルトさんと”鉄道憲兵隊”の”氷の乙女”クレア・リーヴェルト大尉の2名です。」
「ええっ!?ク、クレア大尉とまでそのような関係になっていたのですか……!?私が聞いていた時よりも増えていますね……一体何時の間にクレア大尉とまでそのような関係になったのかしら……」
エイリークの答えを聞いたルシア夫人は驚いた後目を丸くして呟いた。
「……ルシア?まさか知っていたのか?」
「ええ……行方不明だったリィンがセレーネと一緒にユミルに戻ってきた翌日にセレーネに食事の準備を手伝って貰っていた際に教えてもらいました。……貴方に報告できる覚悟ができてから話すつもりだったとの事でそれまでは秘密にして欲しいと言っていたのですが……」
「……………………」
苦笑するルシアの口から出た驚愕の事実にシュバルツァー男爵は石化したかのように固まり
「ゼト……もしかして私、失言を口にしてしまったのかしら……?」
シュバルツァー男爵の様子を見て言ってはいけない事を言ってしまった事を察したエイリークは冷や汗をかきながらゼトに視線を向け
「……エイリーク様に落ち度はないかと。落ち度があるとすれば、そのような状況に陥ってしまった上、男爵閣下に黙り続けていたリィン・シュバルツァー本人です。」
エイリークに視線を向けられたゼトは疲れた表情で答えた。
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