英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第140話
12月30日――――
準備を整えたリィン達は作戦内容を確認していた。
~カレイジャス・ブリッジ~
「―――さて、改めて作戦の段取りを説明させてもらうとしよう。」
「まず、トリスタ付近の状況だけど……貴族連合軍が殆んど手を引いているとはいえ、東側には守備が敷かれているみたい。たぶんトリスタに近づけば、機甲兵部隊が迎撃してくるはずだよ。」
「まずは俺とヴァリマールで機甲兵たちを蹴散らし、進入経路を切り開くわけですね。」
トワの言葉に続くようにリィンは真剣な表情で頷いた。
「ゼムリアストーン製の太刀の試作品もようやくお披露目というわけだ。」
「リィン君たち”A班”はトリスタを解放したら、そのまま士官学院の正門に向かってくれ。前もって説明したとおり、”トワを同行した上でね”。」
「ハーシェル会長が突入メンバーか……やっぱり少々心配ではあるが。」
「ええ、今まではバックアップとして手助けしてもらいましたし……」
「トワが戦っている所……見た事ないわ……」
アンゼリカの話を聞いたマキアスやエマ、ゲルドは心配そうな表情でトワを見つめた。
「えへへ、大丈夫。これでも士官学院生として戦闘の心得はあるから……!少なくとも、リィン君達の足手まといにはならないつもりだよ。」
「現状、あのハイアームズの三男が”騎士団長”などに任命されている。」
「それを覆す以上、我らも大義を示す必要があるわけだな。」
「士官学院の生徒会長……”騎士団長”に対抗できる”大義”として適役ですね。」
ユーシスとラウラの言葉に続くようにエリスは静かな表情で呟いた。
「そういう意味でも、A班は無事にトワを士官学院まで届けなくちゃね。気張っていきなさい、あんたたち!」
「今回の作戦は士官学院生同士による決着との事ですから、”Ⅶ組”の”協力者”である私やエリスさん、ゲルドさんは勿論ですが教官であるサラ殿とトマス殿も手を貸せません。戦力は著しく下がるでしょうが、今まで実戦を潜り抜けた皆様なら問題ないかと思われます。相手に思い知らせてやりなさい、苦難を乗り越えてきた自分達の”力”を。」
「ええ、任せてください……!」
サラ教官とシグルーンの激励にリィンは力強く頷いた。
「それと今回は、アンゼリカさんが”B班”として参加するんですよね?」
「ああ、サラ教官達が参加しない代わりと言ってはなんだがね。カレイジャスを迂回させて裏門に向かい、A班と同時に突入するつもりだ。」
「正門側と挟み撃ちにする形で士官学院を制圧するわけですね。うう、上手くいけばいいけど……」
「ま、とにかくやってみるしかないんじゃないかなー?」
アンゼリカの話に続いて答えた後不安そうな表情をしているエリオットにミリアムは苦笑しながら指摘した。
「ああ、行方不明の学院生たちも全員揃えることができたしな。」
「ん、できることは全てやった。」
「あとは風と女神のみぞ知る、か。」
「あはは、なんだかドキドキしてきましたね~。」
「……やれやれ。どうにも緊張感がないっていうか。」
リィン達がそれぞれ緊張している中、呑気な様子でいるトマス教官にセリーヌは呆れた表情で指摘した。
「ふふ、それでこそ皆さんでしょう。ようやく――――本当にようやく、ここまで来る事ができました。あとは皆さん自身の手で、大切な場所を取り戻してください!」
「はいっ……!!」
アルフィン皇女の号令にリィン達は力強く頷き
「―――カレイジャス、総員配置についてください!行こう―――わたしたちのトールズ士官学院へっ!」
トワは士官学院生でもあるカレイジャスの船員達に号令をかけた!
「――――こちらシグルーン。現在トリスタ近郊の上空に到着し、トリスタの奪還作戦が行われようとしていますが、何かありましたか?」
リィン達がトリスタ並びにトールズ士官学院の奪還作戦を始める直前、シグルーンは人気のない所で誰かと通信をしていた。
「――――!!……そうですか。……ええ……ええ……了解しました。明朝彼らに事実―――――”戦争回避条約”の”期間”が切れ、メンフィル・クロスベル連合軍によるエレボニア帝国全土の制圧が始まり、その時点で今から行われる連合軍の襲撃によって”既に帝都も制圧された事”を伝えた後彼らの許を離れ、リフィア殿下達に合流致します。」
通信内容を聞いて目を見開いたシグルーンは静かな表情で頷いて通信を止めた。
(想定していた通り、彼らは”メンフィルが指定した猶予期間以内に内戦を終結させられなかった”わね…………元々学生がそんな事をできる訳がないし、後は彼らより実戦経験があり、既に社会に出て理不尽な現実を知り、その現実に何度も抗い続けた”特務支援課”と比べる事自体が間違っているわね。むしろ、学生でありながら帝都解放の一歩手前の状況まで持って来れただけでも普通ならありえないくらいの成果ね。)
通信を止めたシグルーンは静かな表情で考え込んでいた。
「……やっぱり、リィン達は”間に合わなかった”ようね……」
その時ゲルドが複雑そうな表情をしながらシグルーンに近づいてきた。
「ゲルドさん。今の通信を聞いて―――いえ、貴女には”予知能力”がありましたね。」
「……………………」
ゲルドの登場に目を丸くしたシグルーンはすぐにある事に気付いて気を取り直して静かな表情で黙り込んでいるゲルドを見つめた。
「それで……彼らに”戦争回避条約”の期限が切れた事を伝えるのですか?」
「ううん……この日の為に今まで頑張ってきたリィン達の決意を鈍らせたくないし……せめてリィン達が悲願を叶える今日一日だけでも辛い現実を知って欲しくないからそれまでは黙っているつもり……」
「……そうですか。未来が見えすぎるのも難点ですね。辛い未来まで見てしまう事になるのですから。―――では私達もブリッジに戻りましょうか。せめて悲願を叶える彼らを見守る為に。」
ゲルドの答えを聞いたシグルーンは重々しい様子を纏って呟いた後気を取り直して促した。
「うん。」
そしてゲルドはシグルーンと共にブリッジに向かい
(シグルーンさん……ごめんね………私は”エレボニア帝国が滅亡した後、リィン達がエレボニア帝国が国として生き延びる方法を見つけて、それを実行してその方法をメンフィルとクロスベルも認めて、その結果制圧された領地はある程度エレボニア帝国に返還されて、エレボニア帝国は多くの領地を失いながらも国としては生き延びる未来”も”見えて”いるけど、リィン達の為に黙っているね…………)
シグルーンと共にブリッジに向かっているゲルドは一瞬複雑そうな表情でシグルーンを見つめた後すぐに表情を戻した。
こうして……いよいよリィン達の悲願であるトリスタ、そしてトールズ士官学院の奪還作戦が行われようとしていた。だが……ロイド達”特務支援課”やそれぞれの事情で”特務支援課”に助力する”協力者”達の活躍によって”碧の大樹”の攻略は順調に進んでいた為リィン達がトリスタの奪還作戦を決行する前日の夕方にはロイド達はマリアベルとイアンに協力するアリオスを始めとした強者達を全て退け、”碧の大樹”の終点までのルートを確保していた。
その為リィン達がトリスタの奪還作戦を始める数時間前には”最終決戦”に全員で向かおうとする直前でロイド達には知られないように裏でシグムントとシャーリィを暗殺したレンと合流した後ロイド達は”碧の大樹”での”最終決戦”に向かい……リィン達がトリスタの奪還作戦を決行する1時間前にロイド達はロイド達と共にいたケビンによって暗殺されたマリアベルが死に際に遺して行った超越した存在を撃破し、ロイド達”特務支援課”の本来の目的である”キーア奪還”を果たして崩壊していく”碧の大樹”から脱出し……皮肉にもリィン達が作戦を決行する12:00には”碧の大樹”は完全に消滅した。
そして――――”碧の大樹完全消滅”の報せを知ったリウイ達率いるメンフィル帝国軍はヴァイス達率いるクロスベル帝国軍と共に”帝都制圧作戦”並びにエレボニア帝国各地の領土を制圧する為に”大侵攻”を開始していた……!
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