英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第139話
リィン達に連絡したある人物―――クレア大尉はリィン達にとって驚くべき情報を教えた。
~カレイジャス・ブリッジ~
「クレア大尉―――今の話、本当ですか!?」
「ええ、間違いありません。貴族連合による帝都の防衛線は先日、西側に後退しました。その意味で、帝都の東側―――トリスタ周辺の守備はかなり薄くなっている状況です。」
「そ、そうなんだ……!」
「……朗報だね。」
「”トリスタ”……リィン達の士官学院がある町ね。」
クレア大尉の答えを聞いたエリオットとフィーは明るい表情をし、ゲルドは静かな表情で呟いた。
「ええ、私達の”大目標”は『トールズ士官学院の奪還』……」
「ようやくそれを達成できる光明が見えたというわけか。」
「はい、これで士官学院を奪還できる可能性が高まってきましたわ……!」
アリサとガイウスの言葉にセレーネは嬉しそうな表情で頷き
「貴族連合も正規軍との決戦やメンフィル帝国軍の迎撃に備えて帝都に戦力を集中しているみたいだし……確かに今が最大のチャンスかもねー。」
ミリアムは口元に笑みを浮かべて呟いた。
「ただ、少々気になる情報も入ってきています。帝都防衛に集中するため、トールズ士官学院の管理は貴族連合軍から離れ―――現在は貴族の学院生たちに一任されているそうです。」
「貴族生徒達に……!?」
「……あくまで士官学院は”貴族”の管理下にあるわけか。確かに貴族生徒たちならそれくらいはできて当然かもな。」
「……管理はできても、彼らは武術の心得はあっても実戦経験はほとんど皆無と言ってもおかしくないでしょうに。……どうやら東側の守りは完全に”捨てる”ようですわね。」
クレア大尉の情報を聞いたラウラは驚き、マキアスは真剣な表情をし、シグルーンは静かな表情で推測した。
「その、学院を管理している貴族生徒というのは……!?」
「上級貴族の生徒を中心に”騎士団”が結成されたそうです。騎士団長には、四大名門”ハイアームズ侯爵”のご子息―――パトリック・T・ハイアームズさんが務められているとか。」
「え……パ、パトリック様がですか……?」」
「パトリックが―――!?学院に残っているというのは聞いていたけど……」
クレア大尉の話を聞いたエリスは戸惑い、リィンは驚いた後考え込んだ。
「そ、それに騎士団って……」
「フン、いくら貴族とは言え時代錯誤な名称だな。」
「――”騎士の心得”が何であるのかも知らない半人前達が”騎士団”を名乗る等、正直不愉快ですわね。」
トワが不安そうな表情をしている中、ユーシスは鼻を鳴らし、シグルーンは不愉快そうな表情をした。
「他にもフロラルド伯爵家のご兄妹や貴族寮職員である執事・メイドなども集められているようです。学院長や他の教官達については引き続き軟禁されているらしく……」
「フェ、フェリスたちがそんなことを……?」
「一体どうしてそのようなことを……」
「ふむ、貴族連合が言付けた命令ってところでしょうね。」
「うーん、さすがに心配ですねぇ。」
クレア大尉の話を聞いたアリサは戸惑い、セレーネは不安そうな表情をし、サラ教官は真剣な表情で考え込み、トマス教官は困った表情をした。
「……ヴァンダイク学院長は正規軍の名誉元帥でもあります。そこで現在、鉄道憲兵隊でトリスタ解放作戦の準備が進められている状況です。おそらく帝都での決戦前にはこちらの精鋭部隊によって作戦が決行されるでしょう。」
「あ……」
「で、でも、それは……」
「”Ⅶ組”の”大目標”がなくなってしまうわね……」
クレア大尉の説明を聞いてある事を察したエリオットとエマは複雑そうな表情をし、ゲルドは静かな表情で呟いた。
「……―――クレア大尉。その作戦―――待っていただくことはできませんか?」
「リィンさん……」
「……鉄道憲兵隊では役者不足でしょうか?」
リィンの問いかけを聞いたアルフィン皇女は心配そうな表情でリィンを見つめ、クレア大尉は真剣な表情で尋ね返した。
「いえ、そうじゃありません。ですが士官学院の奪還は俺達”Ⅶ組”の悲願です。いや、俺達だけじゃない。このカレイジャスに集まった士官学院生全員の果たすべき”使命”と言っていい。他のどんな勢力にも任せるわけにはいきません。」
「リィン君………」
「兄様…………」
「……………………」
(―――――”碧の大樹”の攻略状況を考えると恐らく士官学院の奪還成功の前後に”碧の大樹”が消滅し、明日帝都近郊に潜伏する予定になっている連合軍が領邦軍に潜入している部隊と共に一気に帝都防衛部隊を殲滅、帝都の制圧やエレボニア帝国の各領地の襲撃並びに制圧をするでしょうね……)
リィンの言葉を聞いたその場にいる全員がリィンを見つめている中、シグルーンは静かな表情で考え込んでいた。
「わたくしも同じ気持ちですわ。トールズ士官学院は大帝が設立した皇立学校……できれば学院生の方々だけで決着をつけるべきでしょう。」
「――殿下の仰る通りさ。……最後の最後まで鉄道憲兵隊に任せるというのはどうにも示しがつかない。その”騎士団”との対決、我々が果たすのがスジじゃないか?」
「うんうん、その通り!」
「せっかくここまで一生懸命やってきましたし……」
「フフ、人任せって言うのは先輩としても恰好がつかないしな。」
「マカロフおじさんだって助けなきゃいけないしね~!」
アルフィン皇女の意見に続くようにアンゼリカ達―――カレイジャスの乗組員たちも次々とアルフィン皇女の意見に賛成した。
「アンゼリカさん、他のみんなも……」
「フフ、想いは同じなようだ。」
「もちろんボクたちもだよ、クレア!」
「ミリアムちゃん…………」
「大尉―――改めてお願いします。トリスタと士官学院の解放……俺達の任せてもらえませんか?」
「……どうかお願いします。」
「父やお世話になった人達に胸を張って再会するためにも……!」
「………そのためなら頭も下げよう。」
「お願いします……!」
「皆さん……私もトールズの出身ではありますが……皆さんほど士官学院を大切なものに思えたことはなかったように思います。全てを賭けることのできる、強固な意志と結束……ふふ、少し羨ましいです。」
リィン達”Ⅶ組”の決意を知ったクレア大尉は苦笑しながら呟いた。
「大尉……」
「クレア大尉の気持ち、わかります。」
「私も……」
クレア大尉の答えを聞いたフィーは驚き、エリスとゲルドはそれぞれ静かな表情で答えた。
「―――2日、待ちます。帝都攻略においてトリスタは重要な拠点……このまま放置はできない上、戦争回避条約に記された”期間”も考えるとそれ以上は待てません。その間に、皆さんで何とか決着をつけてください。」
「あ…………」
「あ、ありがとうございます!」
「フフ、”氷の乙女”殿は小芝居がお上手だこと。最初からこっちに譲るつもりだったんでしょうが?」
「ふふ、何のことでしょう。それではみなさん。御健闘をお祈りしています。次にお会いする時は―――是非、内戦の終わった帝都で。」
「はい……!」
「どうか大尉もお気をつけて!」
こうして、リィン達Ⅶ組によってトリスタの奪還作戦が正式に行われることになった。詳しい作戦の段取りは一端、トワに任せることになり……リィン達はヴァリマールの太刀の”試作品”の完成に合わせて決行することにしたのだった。
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