英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第138話
~水霊窟・終点~
「倒したのか……!?」
「手応えはあったようだが……」
「―――なるほど、どうやら言うだけの事はあるみたいね。」
リィン達が周囲を警戒しているとリィン達の頭上に元の姿に戻ったグリアノスがいた。
「あ……あんな所に!」
「あれ程の攻撃を受けて生きているなんて……」
「………さすがは”結社”の”蛇の使徒”の使い魔と言った所ですか。」
グリアノスを見た元の姿に戻ったセレーネは驚き、エリスは信じられない表情をし、シグルーンは真剣な表情で呟いた。
「フン、グリアノスもしぶといわね。……まだやるってんじゃないでしょうね?」
「ふう、残念だけどこの辺りが潮時でしょうね。これ以上グリアノスに無理はさせられないし。」
「姉さん…………」
「エマ、あなたの決意は見せてもらったわ。でも、わかっているわね?―――意志は貫き通せなければ全くの無意味という事くらいは。」
「……ええ、わかってる。私もこの内戦を通して自分の道を見つけて見せる。そして、姉さんを絶対に止めてみせるから……!」
クロチルダの問いかけに対し、エマは決意の表情で答えた。
「ふふ、無駄だと思うけどせいぜいがんばってみなさい。最後の”宝”はこのまま差し上げましょう。ああ、そうそう。去る前に一つ聞きたいのだけれど……貴女は一体どこの”魔女”かしら?エマと同年代でありながら、この私と同等か下手をしたらそれ以上の霊力を秘めている上私も知らない”唄”を歌える”魔女”なんて初耳よ。」
「………………」
「ゲルドさん…………」
「それを知ってどうするつもりなのかしら?その娘の話だと、アンタじゃその娘が歌う”唄”は例えあんたが歌ってもただの”唄”になるわよ?」
クロチルダに視線を向けられても臆する事無く澄んだ瞳でクロチルダを見つめるゲルドの様子をエマは心配そうな表情で見つめ、セリーヌは警戒の表情でクロチルダを睨んだ。
「フフッ、心配しなくても本当にただの興味本意よ。その娘に何もするつもりはないわ。」
「―――ゲルド。”異界”の”魔女”にして”Ⅶ組”の”協力者”ゲルド・フレデリック・リヒター。それが今の私。……以前いた世界の人々からは”白き魔女”と呼ばれていたわ。」
「”白き魔女”……」
「雪に見間違うような美しい白い髪を持つゲルドさんに相応しい二つ名ですね……」
「………そんな風に呼ばれていたって事は、あんたは自分のいた世界ではわりと有名な存在だったのかしら?」
クロチルダの問いかけに対して静かな表情で答えたゲルドの話を聞いたセレーネは呆け、エリスはゲルドの髪を見つめながら納得した様子で呟き、サラ教官は真剣な表情でゲルドに問いかけたが
「………………」
ゲルドは何も語らず黙り込んでいた。
「”白き魔女”ゲルド・フレデリック・リヒター……その名前、覚えておくわ。―――それでは”灰”と”蒼”がぶつかり合うその時まで。」
一方クロチルダの幻影はゲルドを見つめながら呟いた後その場からグリアノスと共に消えた。
「……去りましたか。」
クロチルダの幻影とグリアノスが消えたのを確認したシグルーンは静かな表情で呟き
「………………」
「「(お)兄様……」」
目を伏せて黙り込んでいるリィンをセレーネとエリスは心配そうな表情で見つめた。
「フン、どこまでも気に食わない女ね。……まあいいわ。とっととゼムリアストーンを回収しちゃいましょう。」
「ああ……そうだな。」
その後ゼムリアストーンの大結晶を回収したリィン達はカレイジャスに戻り、ジョルジュに渡した。
~カレイジャス・格納庫~
「うん、かなりの量が集まったね。これだけのゼムリアストーンがあれば”太刀”の材料としては十分なはずだ。」
「そうですか……!……ようやくこれでクロウと同じ足場に立つ事ができます。」
「ああ……無事に完成させられればね。ただし、ここからは前回の機甲兵用ブレードの”補強”とはワケが違って来る。これらの材料を元にゼロから”騎神の武器”を作るのは僕らだけじゃ相当難しいだろう。―――やっぱり、”あの人”の助けを借りる必要がありそうだ。」
リィンの言葉に頷いたジョルジュはシュミット博士の顔を思い浮かべて複雑そうな表情をした。
「では……いよいよシュミット博士に協力をお願いするんですね?」
「ああ、材料が揃った今なら喜んで力を貸してくれるはずだ。あの人を艦に迎えるのはちょっと気は進まないけどね。さっそく準備を始めないと。」
「準備、ですか?」
「前に会った通り恐ろしく偏屈な人だからね。完璧な作業環境を整えておいておかないと機嫌を損ねかねないんだ。まったく、子供みたいに手がかかる御老人だよ。」
「な、なるほど。天才らしいというか……」
「とにかく作業環境が整い次第、工科大学に連絡してみよう。リィン君も手が空いたら手伝ってくれると助かるよ。」
「わかりました。」
その後、リィンはジョルジュと共に作業場の環境をできる限り整える事ができた。そして、そのままルーレ工科大学に連絡をとり―――いよいよシュミット博士をカレイジャスに迎えるのだった。
「……フン、艦内に作った作業場としてはまあまあか。工科大学の設備には及ばないが及第点ではあるな。」
作業場を一通り見て回ったシュミット博士は鼻を鳴らしてジョルジュに評価を与え
「ふう、それはどうも。」
ジョルジュは苦笑しながら溜息を吐いた。
「しかしゼムリアストーンの結晶か……微塵も期待していなかったが、これほどの量を集めるとはな。いったいどこで手に入れた?」
「Ⅶ組の子達が試練を乗り越えた賜物ですよ。とにかく材料を揃えた以上、博士も協力してもらえますね?」
「フン、答えになっていないがまあいいだろう。約束は約束―――やるからには最高の図面を引いてやる。ただし何度かの試行錯誤は必要になってくるだろう。せいぜい邪魔をしない程度にお前も手伝うがいい。」
「はいはい、了解です。」
二人の様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいた。
「な、なんというか……」
「あれが帝国史にも載っているG・シュミット博士か……」
「え、えっと……帝国史にも載っているだけあって、厳格な方ですね。」
我に返ったマキアスは戸惑い、ガイウスは目を丸くし、エリスは冷や汗をかきながら苦笑し
「あはは、聞いていたとおりのヘンクツなじーちゃんみたいだね。」
「ミ、ミリアムさん!」
無邪気な笑顔を浮かべるミリアムの言葉を聞いたセレーネは慌てた。
「でも、ジョルジュ先輩とは結構息が合ってるみたいだね。」
「うん……遠回しにだけどお互いを信頼している風に見えるわ……」
「フン、もともと師弟関係にあったようだしな。」
エリオットの言葉にゲルドとユーシスはそれぞれ答え
「うーん、渋いのは好みだけどさすがに険が強すぎるわねぇ。」
「サラ、守備範囲広すぎ。」
「フフ、サラ殿の殿方の好みはある意味、驚愕に値しますわね。」
困った表情でシュミット博士を見つめるサラ教官の言葉を聞いたフィーは呆れ、シグルーンは苦笑した。
「ゼムリアストーンの加工自体もかなり困難だそうですけど……」
「あとは太刀の切れ味をいかに実現するかであろうな。」
「でも、この分なら何とか完成してくれそうね。技術者としての腕なら間違いなく帝国一でしょうし。」
「ああ、後は二人に任せよう。」
こうして、目標の一つだったヴァリマール用の”太刀”の製作がついに始まり―――いずれ来るクロウとの対決に備え、シュミット博士とジョルジュに急ピッチで進めてもらうのだった。そんな中―――カレイジャスにある人物からの連絡が飛び込んできていた。
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