駄目親父としっかり娘の珍道中
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第79話 似たような人が揃うと酷く面倒臭い
前書き
酷く間が空いてしまい・・・これ前も言ったよね(;'∀')
こんな感じで今後も更新は不定期感覚になるかも知れませんがそれでも楽しんでくれれば幸いです。
今更ですが此処で諸注意させていただきます。
・この作品は二次創作の混合作品です。なので原作との接点、並びに関連性は多分ありません。なのでこれを読んだが為に気分を害したり元の作品への価値観が変貌してしまったりしたとしてもうp主は責任は負えませんのであしからずでお願いします。
妖刀―――
名称や威力等は多々あれど、一貫して普通の刀とは桁違いの強さを誇る刀。
村正やエクスカリバー、他にも様々だがとにかく有名どころの類は大体これらに含まれるであろう。
それを手にした者は常人を凌駕する力を得られ、百戦百勝の強者になれると噂されている。その為、誰もがこぞって妖刀を手に入れようと躍起になると言う事だ。
だが、妖刀を手にした者は確かに力を得られるだろうが、それを手にした者は決まって、碌な死に方をしない事が多い。
それもまた、妖刀の名を広めている要因なのかも知れない。
力とは、それを得る為にはそれ相応の代償を払わねばならないのだ。
”ましてや、妖刀などを使って力を得たのならば尚更である。”
***
両者の刀と刀が互いに激しく交差しあう。戦場であれば見慣れた光景でもあった。
激しくぶつかり合う鉄と鉄。舞い散る火花に戦場を色鮮やかに彩る金属音。戦場を経験している者であれば誰もが見慣れ、聴き慣れた代物であった。
だが、銀時はそれらを目にし、耳にしつつも己が胸中に芽生えた不気味さを拭い切れずにいた。
人、人ならざる者。それらと幾重にも刃を交えて来た事のある銀時ではあったが、まさか刀と戦う事になるとは夢にも思わなかった事態でもある。
しかし、これは決して夢でもなければ幻でもない。今現在も銀時の目の前でしっかりと起こっている現実そのものなのだ。
朱き刀身を持った妖刀『桜月』―――
その朱色の刀身から物語る通り、手にした者を一騎当千の豪傑へと変える妖刀である。並みいる強豪を打ち倒し、使用者を強者へと誘う深紅の刃。
だが、その為に支払う代償は使用者の肉体と命の二つ。それを今、先ほどまで桜月を使っていた岡田は支払ったのだ。
今、こうして銀時の目の前で刃を振るい激戦を繰り広げているのは岡田であって岡田ではない。
既に人斬り似蔵こと岡田似蔵はこの世には居ない。今居るのは妖刀・桜月の操り人形と化した哀れな人斬りに他ならない。
「どうした? 動きが鈍いぞ白夜叉。昔の方がもっと良い動きをしてただろうが?」
「るせぇ! 昔って何時の話してんだよ。銀さんこう見えてまだピチピチだから昔話するネタなんざねぇっつぅの!!」
軽口を叩きつつも、銀時は苦戦を強いられていた。先ほどとは違い、今の桜月の刀身は初期状態の紅桜と相違ない姿に戻っている。だが、見た目と威力が同じとは決して限らない。現に今こうして立ち会っている銀時には分かる。これは紅桜とは似ているが全くの別物に成り代わっている。分かりやすく言うならば、フリーザ第2、第3形態を見た後で見るフリーザ最終形態を見たような心境だ。
要するに見た目に騙されるな。と言う事だ―――
「くそっ、これだったらさっきの化け物刀の時のほうが楽な相手だったぜ」
「そんなに楽したいんだったらさっさと身軽になったらどうだ? そんな重荷を抱え込んだ状態じゃまともに戦えないだろうが?」
「るせぇ! てめぇごときにゃ丁度良いハンデにならぁ!」
更に銀時を苦戦させていたのは両手が使えない事もそうだった。
先ほど助け出したなのはだったが、未だに意識が戻らず眠ったままの状態になっている。こんな状態のなのはをその場に放置する事はとても出来ない。危険すぎるからだ。
だが、その為に銀時は両手が使えず満足に動き回る事も出来ない苦しい条件の中で戦う事を強いられていた。
襲い掛かる無数の剣戟を片手でかわし続けなければならない。一撃一撃を刀を使って弾く度に骨が震え、筋肉の繊維一本一本が限界まで引っ張られる感覚を覚える。腕には血管が浮き出ており、相当なまでの力が込められているのが見て取れる。
だが、そんな戦い方をしていればいずれは限界が来てしまうのは明白の事であった。
「暫く見ない内に面倒な奴になったな白夜叉。昔のお前ならそんな重荷をわざわざしょい込む事などなかったのになぁ」
「へん、てめぇみてぇな無機物と一緒にするな! 人間年とりゃしょい込む物も増えちまうもんなんだよ。特に親父もになりゃぁ尚の事だからなぁ」
「笑わせてくれる。かつて攘夷戦争で多くの天人を葬って来た悪鬼が父親だと? その血で汚れた手で子を育てると言うのか? そんなバカげた話を聞けば地獄の鬼も腹を抱えて笑うわ」
ゲラゲラと笑いながらも桜月から繰り出される剣戟は凄まじかった。
当の持ち主である岡田の体を無理やり動かしているせいからなのか、人の限界のそれを凌駕した動きで攻めて来ている。その動きは人や獣の類のそれとは全く異なる動きであった。
まるで命に対する配慮が見受けられないのだ。ただ目の前の相手を切り刻む。それだけしか頭にない考えの戦い方に見える。
だが、命がある者ならばそんな戦い方をする中でも自分自身へと命の配慮がある。そうしなければ戦いの最中に命を落としてしまうからだ。だが、今目の前でこうして戦っているこいつにはそう言った配慮が一切ない。故に腕が折れようが足の筋肉が断裂しようがお構いなしに攻めて来る。恐らく、こいつの腕を斬った所で無駄であろう。こいつの本体は人間の肉体ではない。刀自身なのだから。
こいつの暴走を止める手立ては刀を破壊し二度と復活出来ないようにする他ない。
だが、それが果たして出来るのか?
俺に、そしてこの白夜に。果たしてあのおぞましい妖刀を破壊する事が出来るのだろうか?
「づっ!!」
ふと、頭の中で不安が渦を巻いていたが為に銀時の防御の手が鈍った。その隙をついてか桜月の下から袈裟掛けに放った一撃が銀時の手にあった白夜を跳ね飛ばす。
遥か頭上で円を描きながら銀時の遠く後方に突き刺さる白夜。完全に丸腰の状態になった銀時に向かい、桜月の無慈悲な斬撃が襲い掛かる。
「拍子抜けだぞ白夜叉!」
これで仕舞いだと言わんばかりに桜月が叫ぶ。一瞬、目の前が閃光で視界を覆う。
視力が戻った時には桜月は遠くの場所に立っていた。どうやら先の一瞬で咄嗟に後方へと飛び退いたのだろう。
頭で考えての行動ではない。咄嗟に本能的に体がそう動いたのだ。
「はぁ……はぁ……残念だったな。どうやらまだまだ終わらないらしいぜ」
「それはどうかな?」
完全に息切れ状態の銀時に対し、桜月は余裕の笑みを浮かべている。一体何がおかしいのか。
理由を考えてる暇はない。今はこうして白夜の近くにたどり着く事が出来たのだ。後は再び白夜を手に取り戦いを再開すればそれで―――
「……うそ……だろ!?」
銀時は今、自分の置かれている状況を見て愕然とした。無いのだ。
さっきまで白夜を振るっていた筈の腕が、肩からバッサリと切り落とされて無くなってしまっていたのだ。
先の斬撃をどうにかかわし、致命傷は免れる事が出来た。だが、その代償として銀時は唯一戦う手段であった腕を失ってしまったのだ。
こうなってしまえば残る手段は今なのはを抱えている左腕を使うしかない。しかし、そうすればなのはは野晒しになる。無抵抗な得物とかしたこの少女を見て、桜月が何もしない筈がない。確実にその命を摘み取りに来るに決まっている。
だが、右腕を失った今、刀を握れるのは左腕しかない。
「さぁて困ったぞぉ。ガキを捨てるか自分自身を捨てるか? どっちを選ぶんだぁ?」
「野郎……良い性格してんじゃねぇか」
銀時の額に青筋が浮かび上がる。明らかに桜月はこの後の銀時の行動次第で動きを変えて来る。
銀時を殺すか? それともなのはを殺すか?
片腕しかない銀時では桜月からなのはを守れるかどうか怪しい所がある。
しかも、今の桜月ならばなのはを降ろして白夜を手に取るまでの間にどちらかを仕留めるのは容易い。戦闘力のある銀時は面倒かもしれないが意識の未だに戻っていないなのはを仕留めるのは容易い筈。
奴はそれを狙っているに違いない。
全くいけ好かない奴だ。正に悪の権化に相応しいと言えるだろう。
(どうする? 腕をやられちまって二進も三進もいかねぇたぁこの事だぜ。こいつを降ろして戦闘をするこたぁ出来る。だがそうなればこいつは真っ先に殺される。それに、この状況であんな化け物を倒せるか? 今でも亡くなった腕んとこから血が出て来てて頭がフラフラしやがる。くそっ! どうすりゃ良い。どうすりゃ―――)
「方法はあります」
「だからその方法を今必至に探してて………ゑ?」
突然声がした。したのは今銀時が抱えているなのはからだった。だが、明らかに話し方が違う。どう言う具合に違うかと言うとちょっと違うのだ。どう違うのかと言うと……まぁ違うと言えば違う。そんな感じに違って聞こえて来たのだ。
「今、貴方は私を抱えているが為に満足に戦えない状況にあります。でしたら私が自立行動をして敵の攻撃から回避出来れば貴方は再度戦闘を行える筈です。更に私が共に戦闘に加われば勝率は20%程向上する筈です」
「えと……なのは、お前一体どうしたんだ? 頭でも打ったのか? それとも変な物でも拾い食いしたのか?」
「いえ、頭部にダメージらしき痕跡は見当たりません。更に言えば先日の夜から何も食していませんので拾い食いの可能性も稀有と言えます。身体的にも問題は有りませんのでご心配には及びませんよ」
「いや、及びますけどぉぉぉぉぉ! 明らかにお前何時もと喋り方が違うじゃねぇか! 何だその知的な喋り方は? 何、最近の流行なの? トレンディーなの? お父さん最近のお子ちゃまの流行とか分かんないから其処んとこ詳しく教えてくんないかなぁ?」
明らかにおかしい。確実におかしい。何時ものなのははこんな知的な会話をする筈がない。さらに言えばひどく回りくどく面倒くさい返しをしてくる。まるで別人と話しをしているかの様だ。
「申し訳ありませんでした。どうやら説明が不足していたようです。現状で私の元の人格は先の戦闘でのダメージが有るようで機能停止状態にあります。その為に急遽私がこの肉体を操作する事になったのです」
「え? 何? どゆ事?」
「ご理解頂けませんでしたか?」
「悪い、全然分からない……つまり、お前は『なのは』なのか?」
「肉体的に言えばそうなのでしょうが今の私は違います。言ってしまえば一種の疑似人格と呼べば宜しいのでしょうか」
「つまり、二重人格って奴か?」
「そう考えて頂ければ相違ないと思います」
正に初公開な話だった。今の今までなのはの中にこんな面倒くさい人格があったなんで驚きである。
しかも会話の内容が難しすぎてついて行くのが困難極まりない感じがする。今でもこうして会話を聞いているだけで銀時の頭がパンクしそうになってくる。
「えぇっと、それじゃよぉ……お前の事は何て呼べば良いんだ?」
「いつも通りで宜しいでしょうが区別をつけたいのでしたら、私の事は星光の殲滅者【シュテル・ザ・デストラクタ―】とお呼びください」
「うん、長いから無理。後何かすげぇ中二臭ぇからやだ。もちっと短くしてくれ」
「それでしたらシュテルで構いません」
「あっそ……まぁ、さっきのよりは大分マシになってるからそれで妥協するわ」
案外すんなり受けれ入れてくれてホッとする銀時。とりあえず意識が戻ったのであれば何時までも抱えている必要はない。なのは改めシュテルを降ろし空いた手で白夜を持つ。
「ところで、貴方は何と言う名なのですか?」
「あぁ、何だよ疑似人格の癖に記憶は共有してねぇのか? 銀時だよ。坂田銀時」
「承知しました。では”金時様”、ご指示をお願いします」
「おい、今明らかに間違えたよな? 金時じゃねぇ、銀時だ! それから、そんな様付けなんてすんな! 痒くなる」
「でしたら何と呼べば宜しいのですか?」
「いつも通りで良いよ」
「いつも通りとは?」
本当に面倒くさい奴だなぁ。
頭を掻きむしりながら銀時はそう思い、深くため息をつきながらシュテルを見下ろす。
「普通にお父さんとかで良いよ。お前は覚えてないだろうが一応前の人格……要するにお前の育て親みてぇなもんだからよぉ」
「承知しました。では……お、お父………様………で宜しい………ですか?」
さっきの機械的な話し方とは打って変わり、何故か頬を赤らめ、少し恥ずかしそうに呼んできた。
え? 何恥ずかしがってんのこの子。其処まで面倒くさい子だったっけ?
心底このシュテルと言う人格の子に一抹の不安、と言うか不安ばっかりが募る思いであった。
「まぁ良いや。とにかくシュテル。お前は出来る限りで良い。援護してくれや。情けねぇ話だが片手じゃあいつとやりあうのはちとキツイんでな」
「お任せ下さいお……父様。私の出来る限りで支援させて頂きます」
「あぁ、はいはい……」
もうそんなんで良いや。半ば無理やり妥協した感じで銀時は桜月の前に再度立つ。
「話は終わったか? 余りにも突然だったんでなぁ。一応空気は読んで黙っててやったぜ」
「有難うよ。ついでに言うがそのまま消えてくれれば言う事なかったんだがなぁ」
「そりゃ無理な相談だ。てめぇ等をぶち殺してこれから江戸の人間一人残らず食らうつもりだからな」
「現在の江戸の人口は約300万人(適当)程います。それらを食い尽くすとなれば一人約5~70人(憶測)食らったとしてその日数はおよそ……」
「要らん計算すな! お前は戦闘にだけ集中しろ!」
「承知しました」
すぐ横で面倒な事を言いそうになったシュテルに釘を刺す。でないと一々ツッコミを入れなければならなくなってしまう事になる。流石に真剣バトルの最中にそれは心底応えるので遠慮したい処だった。
「そんじゃ戦闘再開と行くかぁ白夜叉ぁ!」
「人の腕切り落としといて意気揚々としてんじゃねぇよこのサイコパス野郎がぁぁぁ!」
互いに啖呵を切り合い、再度ぶつかり合う。やはり桜月は強い。ようやく重荷を降ろしたとは言え今度は片腕の状態なので中々攻勢に撃って出れない。下手に攻撃に転ずれば返し刀で今度こそ致命的な一撃を貰う危険すらある。
かと言ってこれ以上戦闘を長引かせる訳にもいかない。今の銀時は時間制限付きの状態なのだから。
「随分と血の匂いが滴って来たじゃねぇか。早く止血しねぇと出血多量で死んじまうんじゃねぇのかぁ?」
「るせぇよ! 他人の心配している暇があんならてめぇの心配をしろってんだよ」
「死に損ないに心配される言われはねぇよ。それよりも死んだ後の心配でもした方が……」
再度攻撃を行おうとした桜月だったが。ふと、その動きが止められてしまった。
まるで、自分だけ時が止まったかの様に動かなくなる。
何があった? 一体何がどうしたのか?
ふと、自分の体を見てみると、其処には何処から現れたのか体中に細い光の糸状の物が絡みつき、動きを封じ込めていたのだ。
「その言葉、そっくりそのまま貴方にお返しします」
「このガキ……」
原因は分かった。どうやらシュテルが桜月の動きを封じ込めていたようだ。
「シュテル!」
「デバイスがない状態ですので砲撃魔法等の大規模攻撃は行えませんがバインド程度ならば可能です」
「上出来だ! その調子で頼むぜ」
ここに来てシュテルの大金星であった。彼女は銀時の失った腕の代わりに防御を担ってくれるようだ。これならば防御を気にする必要はない。一気に攻勢に転ずる事が出来ると言う物だ。
「舐めるなぁ! この程度の拘束なんざ破ろうと思えば破れるんだよぉ!」
折角楽しんでいたのを邪魔されたからなのか先ほどまでの余裕っぷりは影を潜め、怒り心頭な感じに喚き立てながら拘束していたバインドを力任せに引き千切ってしまった。幾ら弱体化しているとは言えバインドを力任せに引き千切るとは相当な力である。
が―――
「脇ががら空きだぞ」
「ちぃぃっ!!」
脇腹目掛けて銀時の白夜が襲い掛かる。寸での所で桜月を縦に構えて横一文字で真っ二つになるのを防ぐ。互いの刀同士がぶつかり合い火花を撒き散らす。
「調子に乗ってるんじゃねぇよ腕なしがぁ!」
「てめぇこそ調子に乗るんじゃねぇ常識知らずがぁ!」
再度ゼロ距離からの切り合いが行われる。しかし、今度は圧倒的に銀時が有利になっていた。何故なら、桜月の斬撃は殆どがシュテルの張るバインドや結界により無力化されるからだ。向こうの攻撃は封じられるがこちらの攻撃は封じられない。その為今度は逆に桜月の方が攻めあぐねる形となっていた。
「くそっ、面倒な戦いしやがって!」
「悪いな、俺もあいつもまだ死にたくないんでな。お前に斬られる訳にゃぁいかねぇんだよ」
「あぁ、そうかい……だったら、これならどうだ!」
即座に桜月は銀時から飛び退き距離を置く。ひと跳びで刀の届かない距離まで飛び退いて何をするつもりなのか。
「近距離からの攻撃は出来なくてもこの距離からの攻撃ならどうだぁ!?」
突如として、桜月の背中から無数の機械の管が姿を現す。先ほどなのはを拘束していたのと全く同一の代物だった。其処まで桜月は宿主を侵食していたのには驚かされる。
だが、その攻撃も無駄に終わった。
「残念ですが、その距離でも私の手は届きますよ」
後方に居たシュテルが呟く。それと同時に数発の魔力で攻勢された弾丸が放たれ、桜月の桜月の繰り出した機械の管を打ち抜いて行った。
粉々に砕かれる機械の管を前にして、桜月は歯噛みする思いに駆られた。
「このガキ、つくづく癇に障る事しやがって」
「貴方の行いでしたら既に2~3手先まで読んでいます。どんな手を使っても無駄ですよ」
「え? 何。お前そんな知的なキャラだったの? 今までのバカキャラが嘘みたいに崩壊してんじゃん。マジでインテリキャラになってんじゃんお前」
「当然です。この程度の事が出来なくては百戦錬磨を成しえる事は叶いませんからね。これからは腕っぷしだけではダメなのです。知力と策略、そして何重にも練り込んだ作戦と計略更には―――」
「うん、もう良い。今はお前が酷く面倒臭いってだけ分かったからそれだけで良い。とにかく少し黙っててくれ。後で300円あげるから」
自信たっぷりに答えるシュテル。そしてそれをどうにか黙らせる銀時。
別人格とは言え此処まで違ってくると正直驚かされる思いだった。
元の人格と呼べば良いのか、とにかく前の人格だったなのはは銀時が親になったばかりに知的とは程遠い感じのキャラに仕上がってしまっていた。
それに対し、今の人格でもあるシュテルは知的に事を運んでくる。まぁ、反面面倒くさい受け答えがあると言うデメリットはあるがこの際それには目を瞑れば良いだろう。
「さっき、言ったよなぁ。俺の動きは2~3手さきまで読めると……」
「申し上げた通りです。どうこようと無駄ですよ。さながら3代目ジョースターさんの如く次に貴方が何を言うのかを予測するかの如く―――」
「もう良いっつぅの!」
正直シュテルが喋るだけでかなり文章が取れてしまいそうな気がしてきた。そんなシュテルを怒鳴って止める銀時。だが、その余裕は突然終わりを迎えた。
「だったらこれは予測出来てたかぁ!?」
大声で勝ち誇ったかの様に叫ぶ。そして、桜月は突如として偽装船に向かい桜月を突き刺し出した。
深々と突き刺したそれは偽装船の航行機能を著しく削いでいく。
それがどう言う意味かと言うと―――
「せ、船体が……揺れる!?」
そう、先ほどまで平坦だった戦場が激しい揺れと傾きに襲われ始めたのだ。
下手に足を取られたらそのまま海面に向かい真っ逆さまとなるだろう。咄嗟に銀時は白夜を同じように船体に突き刺し倒れるのをどうにか防いだ。
そう、それこそが桜月の狙いだったのだ。
「お父様!」
「何!?」
シュテルの叫びが聞こえる。それに反応し銀時の視線が桜月へ向けられる。
奴は狂気に満ちた顔でこちらに迫って来ていたのだ。
足を取られて落ちる事など最初から頭にないと言った面持でこちらに向かって突進してきたのだ。
「くそっ!」
急ぎ立ち上がろうと足に力を籠める。だが、その瞬間銀時の周囲の船体から先の機械の管が飛び出してきた。
「げっ!」
「そいつの動きを封じろ!」
桜月の命令を受け、無数の機械の管が銀時の体に絡みついてくる。凄まじい力で体中を締め上げて行き、言葉通りに銀時の動きの一切を封じてしまったのだ。
「ぐっ……野郎! 此処は健全な小説だってんだよ! そんなプレイはお呼びじゃねぇ!」
「お父様、今拘束を解きます!」
「そうはさせねぇ!」
次に桜月が向かってきたのはシュテルの方だった。
桜月の次の標的はシュテルであったのだ。
銀時と戦いになれば必ずシュテルが邪魔をしてくる。彼女が居る限りこちらが攻勢に出られる可能性は低い。ならば、その壁をまず壊してしまえば良い事になる。
幸い、二人の連携は今完全に分断されてしまった為に、互いをカバーし合う事は出来ない。
「くっ、まさかこんな方法で来るなんて!」
「圧倒的に戦闘経験が不足してるようだなぁお嬢ちゃん。俺達人斬りってなぁなぁ。勝つ為なら手段は択ばないんだぜ」
不気味な笑みを浮かべつつ、桜月がシュテルに向かい斬撃を放つ。
辛うじて目の前に展開した結界にてそれを防ぐも、その結界を桜月は容易く両断してしまった。
「なっ!」
「こいつが妖刀だってのを忘れたか? 何度も目の前に出されりゃ食い方も分かるんだよ!」
食う。
そう、食ったのだ。桜月はシュテルの張った結界を破ったのではなく文字通り食う、即ち吸収してしまったのだ。これでは結界は勿論バインドも通用しない事は明白となってしまった。
「逃げろシュテル! 今のお前じゃ勝ち目がねぇぞ!」
「ですが、それではお父様が!」
「馬鹿、俺の事なんか気にすんな! お前はお前の事だけを考えろ!」
「ですが……」
銀時の言う事は最もだった。今の桜月には魔力関係の攻撃は一切通用しない。結界では斬撃を防げないし、バインドで拘束する事も出来ない。恐らく、魔力弾も奴には通用しないだろう。
そもそも、魔力関係が著しく弱体化してしまうこの江戸の中で魔力で戦うこと事態がそもそも無理な話なのであった。
「まずはてめぇから食ってやらぁ!」
「!!!」
打つ手をなくしたシュテルに向かい、上段からの桜月が迫る。防ぐ手立てはなかった。結界もバインドも無意味。避けようとしても今からでは遅い。頭から真っ二つに切り裂かれる未来が脳裏に過ってくる。
目の前に迫りくる【死】―――
手が勝手に動いた。シュテルの意思とは無関係に彼女の両手が持ち上がり、迫って来た桜月を両手で挟み込むように受け止めたのだ。
「何ぃぃぃ!」
「こ、これは!!」
その光景に桜月は勿論シュテル自身も驚かされた。彼女が意識的に行った動作ではない。では一体何故。
(例え魔法が駄目でも、二本の腕があればまだ戦える。だから、まだ諦めるには早いよ)
(まさか、もう一人の私……貴方が!?)
シュテルの頭の中に声が響く。それはなのはの声だった。つまり、この動きも彼女が行った事となる。
銀時の元で侍の戦いを垣間見て来た彼女ならば、この動きが出来ても不思議ではない。
「このガキ、こんな芸当を隠し持ってたのか? だったら、力任せに……」
「力任せ? 私一人にならいざ知らず、今の【私達】にその手が通用すると思いますかぁ!」
シュテルの渾身の叫びと共に桜月の刃を押しのけて払いのけた。
予想外の出来事に引き下がる桜月。その様を見せつけられた銀時ですら呆気に取られてしまう程だった。
「何だ……こいつの力は……」
「ご助力お願いします。もう一人の私! 私たちのお父様を助ける為にも!」
(勿論だよ。もう一人の私! 一緒にお父さんを守るんだ!)
シュテルとなのは。同じ体の中に住む二つの人格が今、一つの目的の元互いに手を取り合った。
「えっと……そのぉ……え、何? つまり、今のお前はどっちなの? なのは? それともシュテル?」
「両方です!」
「あっそ……」
少なくとも、銀時が今思える事は一つしかない。今まで以上に面倒な事になった。それだけの事である。
つづく
後書き
え? 原作と違う?
良いんです。二次創作だし好き勝手書きたかったんです。ぶっちゃけると知的と書いて面倒くさいと読むシュテルを書いてみたかったんです。
そして、書いた後で思った結論が・・・「こいつ本当に面倒くせぇ」の一言でした。
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