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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第111話

~カレイジャス・ブリッジ~



「……しかし、いよいよ”獅子戦役”の再現のようになって来ましたねえ。250年前も、今回のような焼き討ちが各地で行われたと言われていますが……」

リィン達からケルディックの状況を聞いたトマス教官は複雑そうな表情で呟いた。

「そうだったんですか……」

「確かに………そう伝えられていますね。さすがに250年前と今では状況が違いますが………」

「ま、(いくさ)の世ならともかく今の世じゃ大事(おおごと)でしょうね。」

アルフィン皇女の言葉に続くようにセリーヌは静かな表情で呟き

「―――ですがゲルドさんのお蔭で”最悪の事態”は避けられましたわ。ケルディックの民達が犠牲にならなかったのもゲルドさん……貴女のお蔭ですわ。」

「そう……あの町の人達が助かって本当によかった……」

シグルーンに視線を向けられたゲルドは安堵の表情で呟いた。



「……ユミル襲撃に対する”報復”をしたメンフィル帝国の反応を考えれば貴族連合にとってもマイナスのはずだ。総参謀であるルーファスさんを失った怒りがあるとはいえ、今の状況を考えるとメンフィル帝国の逆鱗に触れるような事をするとはとても思えない……」

「んー、やっぱりアルバレア公の暴走って考えるのが自然かもね。貴族連合の双璧とはいえ、カイエン公にいつも一歩出遅れている感じだし。」

リィンの意見を聞いたミリアムは真剣な表情で自分の推測を口にした。



「…………―――悪いが、俺はここで抜けさせてもらう。艦長代理、どこか適当な場所で降ろしてくれ。」

するとその時黙って考え込んでいたユーシスは辛そうな表情でトワを見つめた。

「ええっ……!?」

「ユ、ユーシスさん!?」

「い、いきなり何を言い出すのよ?」

「ユーシス、まさか………」

「……一人でお父さんと決着をつけるつもりか?」

ユーシスの申し出を聞いたトワ達が驚いている中、エリオットと共にある事を察したリィンは真剣な表情で尋ねたが

「……………………」

ユーシスはリィンから目を逸らして答えなかった。



「フン……何を言い出すかと思えば。寝惚けたことを言うんじゃない。……少しは頭を冷やしたまえ。」

「黙れ……貴様に何がわかる。俺にはアルバレア家の者として父を止める義務がある。とやかく言われる筋合いは―――」

マキアスに指摘されたユーシスはマキアスを睨んで答えようとしたが

「―――それは違うぞ、ユーシス。今回のことは、どう見ても個人の力で何とかなる問題じゃない。」

「マキアスの言う通り一旦頭を冷やしてからみんなで考えるべき。」

「……ッ。」

リィンとフィーの指摘を聞いて黙り込んだ。



「そーそー、ユーシスらしくないって。」

「仲間としてユーシスの気持ちは痛い程わかるつもりだ。だからこそ、オレたちならきっと力になれると思う。」

「うん、これからどう動くか……みんなでそれを考えるとしよう。」

「はい!今までの問題だってわたくし達全員で解決したのですから!」

「フフ、今度は私も一緒ですよ?」

「うん……私も出来る限り力になるわ。」

「……お前達……」

ミリアムやガイウス、ラウラやセレーネ、そしてエリスとゲルドの言葉を聞いたユーシスはミリアム達の心遣いに心の中で感謝しながらリィン達を見回し

「ああ、それでこそ君達だ。」

ジョルジュは口元に笑みを浮かべて頷いた。



「……とはいえ、今回の一件は帝国の内戦の状況とメンフィルとの外交問題に深く結びついているわ。関わるつもりなら、相応の覚悟が必要―――それはわかっているわね?」

するとその時サラ教官は真剣な表情でリィン達に問いかけた。

「もちろんです。……これまで、内戦やメンフィルとの外交問題自体への介入は極力控えていました。ですが、今回は完全に罪のない民間人が標的になってしまっている。さすがにこんな事を見過ごすわけにはいきません。」

「ん、そだね。」

「僕達も同じだよ。実習でも、潜伏していた時にオットー元締めを始めとしたケルディックの人達にはずいぶんとお世話になったし……」

「わたくしも皆さんと同じ意見です。皇族の名の下でなら四大名門であるアルバレア公の罪を問う事もできるはず……このカレイジャス共々どうか役立ててください。」

「ありがとうございます、殿下。」

アルフィン皇女の心遣いに感謝したリィンは仲間達を見回した。



「……そうと決まれば、手立てを考えてみましょう。ユーシスのお父様をこれ以上暴走させないためにも。」

「………………すまない。」

アリサの言葉を聞いたユーシスが謝罪をしたその時、何かの音が聞こえて来た。

「これって……導力通信のコール?」

「リンデ、どこからよ?」

「えっと、ちょっと待ってね。―――こ、これって……メンフィル帝国軍が所有する戦艦――――”モルテニア”からみたいです!」

「メンフィル帝国軍の戦艦―――それもメンフィル帝国軍の旗艦である”モルテニア”から……!?」

「まさかとは思うけどシグルーン中将閣下。貴女がカレイジャスの位置を教えたのですか?」

通信士を務めている士官学院生の報告を聞いたリィンは信じられない表情をし、ある事を察したアンゼリカは真剣な表情でシグルーンに視線を向けた。



「―――ええ。リウイ陛下よりアルフィン皇女に期間以内にメンフィル帝国軍がエレボニア帝国に再び戦争を仕掛けない”条件”を教える必要があるとの事でしたので。」

「ええっ!?」

「そ、そんな……」

シグルーンの話を聞いたアリサは驚き、エリオットは表情を青褪めさせ

「皇女殿下……いかがなされますか?」

トワは不安そうな表情でアルフィン皇女に尋ね

「勿論繋いでください!」

「わかりました。―――スクリーンに転送して!」

アルフィン皇女の答えを聞いた後指示をした。するとスクリーンがリィン達の目の前に現れた後スクリーンにリウイが映った!

「―――久しいな、トールズ士官学院”Ⅶ組”。シュバルツァー兄妹やアルフィン皇女と顔を合わせるのは学院祭以来か。」

「リ、リウイ陛下!?」

「リウイ陛下……その……―――申し訳ございません!」

スクリーンに映るリウイを見たリィンは驚き、アルフィン皇女は辛そうな表情をした後頭を深く下げた。



「ケルディックの件か。単なる謝罪の言葉を口にしても我らにとっては意味のない言葉だ。メンフィル帝国に対して犯したエレボニア帝国の罪を真に償う気持ちがあるのならば自らの”行動”で示せ。」

「……はい。わたくし達が一体何をすれば”戦争回避条約”によって定められてある猶予期間以内にメンフィル帝国軍が再びエレボニア帝国に攻めてくる事を止めて頂けるのでしょうか……?」

リウイの言葉を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情で頷いた後スクリーンに映るリウイを見つめて尋ねた。

「条件は二つだ。まず一つは”戦争回避条約”に新たな内容を二つ付け加えることをこの場で承認する事だ。」

「なっ!?」

「そ、そんな……せっかく”救済条約”を使うことを”誓約”して減らしたのに、あれ以上増えるなんて……」

リウイの言葉を聞いたリィンは驚き、トワは表情を青褪めさせ

「その……陛下……その内容とは一体どういうものなのですか?」

エリスは辛そうな表情で尋ねた。



「一つはアルバレア公が雇った猟兵達に焼討ちされ、メンフィル帝国が負担する事になっている猟兵達に破壊された”大市”の品々の弁償金やケルディック復興の際に必要な金銭を全額エレボニア帝国が後日支払う事と、それとは別にケルディック焼き討ちの”詫び”として先程挙げた弁償金並びに復興金の1,5倍の金銭を後日メンフィル帝国に支払う事だ。―――まさかとは思うがそんな当然の事すらも反論するつもりか?」

「それは…………」

「………………」

リウイの問いかけに対し、ラウラは複雑そうな表情で辛そうな表情で黙り込んでいるユーシスに視線を向け

「……わかりましたわ。残りの条約の内容は一体どんな内容なのでしょう?」

アルフィン皇女は静かな表情で頷いた後尋ねた。



「もう一つはメンフィル帝国に対する謝罪金並びに賠償金の”追加金”としてエレボニア皇家並びに”戦争回避条約”の”第一項”によって爵位剥奪並びに全財産没収がされ、メンフィルに贈与されるアルバレア公爵家とカイエン公爵家を除いた残りの四大名門、そして貴族連合に加担した貴族達のそれぞれの全財産の半分をメンフィルに贈与してもらう。」

「何ですって!?謝罪金と賠償金の件は”救済条約”の実行を”誓約”しましたから、相殺した事になるはずですよ!?」

リウイの答えを聞いたサラ教官は厳しい表情で反論したが

「それは”第3項”の話だ。先程俺が口に出した条約は新たに追加される条約の為、救済条約には適用されない。それに”第3項”とは違い、払えない金額ではないだろうが。内容は皇家や残りの四大名門、そして貴族連合に加担した貴族共それぞれの”全財産の半分”なのだからな。」

「……………ッ!」

リウイの正論に反論できず、唇を噛みしめた。

「そ、そんな……救済条約を使ってせっかくあの莫大な金額の謝罪金と賠償金の件を相殺できたのに……」

「相変わらず滅茶苦茶搾り取ろうとしているね。」

「姫様……」

一方マキアスは悔しそうな表情をし、フィーはジト目になり、エリスは辛そうな表情でアルフィン皇女を見つめた。



「……わかりましたわ。追加する戦争回避条約は以上の二つでよろしいのですよね?」

「ああ。それらについては内戦が終結した後で実行して構わん。――――ただし、”第一項”並びに”第二項”の一部を今日を入れて3日以内に実行してもらう。それが戦争回避条約の最後の一文にあった”期間”以内にメンフィル帝国軍がエレボニア帝国に再び攻め入る事を中止するもう一つの”条件”だ。」

「”第一項”と”第二項”というと……」

リウイの話を聞いたゲルドは考え込み

「……父達の身柄をメンフィルに引き渡す条約とエレボニア帝国の領土をメンフィルに贈与する条約ですか。」

ユーシスは辛そうな表情でリウイに問いかけた。



「そうだ。今日を入れて3日以内にアルバレア公爵夫妻の身柄をケルディックにいるプリネ達に引き渡し、クロイツェン州全土をメンフィルに贈与する事……―――それらを実行すれば”戦争回避条約”に記されてある猶予期間以内にメンフィル帝国軍がエレボニア帝国に攻め入る事を中止する。」

「なっ!?」

「アルバレア公爵夫妻の身柄の引き渡しはともかく、今の状況でクロイツェン州全土をメンフィルに贈与するなんて無理だと思うんだけど~。」

リウイの答えを聞いたリィンは驚いて声を上げ、ミリアムは真剣な表情でスクリーンに映るリウイを見つめた。



「アルバレア公爵を拘束し、クロイツェン州全土の統括領主であったアルバレア公爵の子息であるユーシス・アルバレアとエレボニア皇家の……それもセドリック皇子に継ぐ皇位継承権を持つアルフィン皇女がクロイツェン州全土の貴族達にクロイツェン州はメンフィルに降伏する宣言と同時にメンフィル帝国への降伏を命令すれば一定の効果はあるだろう。」

「それは………………―――陛下。もし降伏に応じない貴族達がいた場合はどうなさるおつもりですか……?」

リウイの話を聞いて複雑そうな表情で黙り込んだユーシスはリウイに尋ねた。

「―――その際は”賊”扱いして降伏に応じない貴族達に軍を差し向けて一人残らず”処刑”する。」

「そ、そんなっ!?」

「問答無用で処刑をするなんて間違っていると思うのですが!?」

そしてリウイの答えを聞いたセレーネは表情を青褪めさせ、サラ教官は厳しい表情で問いかけた。



「”我が国”の問題に何の権力も無い他国の者が口を出す”権利”があるとでも思っているのか?それに例え皇族といえど、我が国の問題に口を出せば内政干渉をしたとして抗議させてもらう。勿論メンフィルの貴族かつクロイツェン州の統括領主になる事が決定しているとは言え、シュバルツァー家の跡継ぎ兼クロイツェン州の統括領主になっておらず、それらの能力もまだ兼ね備えていないお前にも発言権はないぞ。―――リィン・シュバルツァー。」

「確かにリウイ陛下の仰る通り他国のただの士官学院の教官の私達では”メンフィル帝国の問題”に口を出す権利はありませんね……」

「……ッ……!」

「くっ………………」

「兄様………」

「当然メンフィル皇族の一員とは言え、ツーヤお姉様と違い、メンフィル帝国の何の役職にも就いていないわたくしの発言も意味がないものなのでしょうね……」

「………………」

しかしリウイの口から出た非情な答えとリウイの答えに複雑そうな表情で同意したトマス教官の言葉を聞いたサラ教官は唇を噛みしめ、悔しそうな表情で身体を震わせているリィンをエリスは心配そうな表情で見つめ、セレーネは悲しそうな表情をし、アルフィン皇女は辛そうな表情で黙り込んだ。

「……その……陛下……わたくし達の手によって拘束されたアルバレア公爵夫妻をプリネ姫達に引き渡した後、メンフィルに引き渡されたアルバレア公爵達はどうなるのですか……?」

そしてある事が気になったアルフィン皇女は辛そうな表情でリウイに尋ねた。



「引き渡されたその日に”処刑”する。―――なお、ケルディックの民達の前で”公開処刑”をする予定だ。」

「なっ!?」

「…………ッ………!」

「そ、そんな……僕達にユーシスの……クラスメイトの親を処刑する手伝いをしろって事じゃないですか……!」

「ユーシスさん…………」

リウイの話を聞いたリィンは厳しい表情で声を上げ、ユーシスは辛そうな表情で唇を噛みしめ、エリオットは悲痛そうな表情をし、エマは辛そうな表情でユーシスを見つめた。



「不服ならば別にする必要はない。その際はメンフィルが定めたアルバレア公爵夫妻拘束並びにクロイツェン州全土の贈与の期間を過ぎればメンフィル帝国軍が再びエレボニア帝国に攻めてくるだけだ。さて……―――アルフィン皇女。返答は否か?それとも是か?」

「そ、それは………………」

リウイに問いかけられたアルフィン皇女が表情を青褪めさせて身体を震わせたその時

「―――かしこまりました。その任務、どうか自分達に受けさせてください。」

ユーシスが決意の表情で申し出た。 
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