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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第108話

~地霊窟~



「……前みたいに魔獣が現れる気配はなさそうだな。(それに誰かの”記憶”が流れ込んでくる気配も……)」

精霊窟の奥の扉に来る度に流れ込んできた何者かの”記憶”をリィンは思い返していた。

「ん、それじゃあ開けるわよ。」

「えっ……?」

セリーヌが呟いた言葉を聞いたエマが呆けたその時、セリーヌはリィン達の前に出て全身から魔力を解放し、詠唱を開始した。



「―――地精が築きし輝きの祠よ……精霊の導きにより扉を開き、我々を試しの地へと誘え―――」

セリーヌが詠唱を終えると扉の魔法陣が刻み込まれ、扉は勝手に開き、奥へと進めるようになった。

「あ……」

「開いたみたいだな。というか、もともと開き方を知っていたみたいだな?」

「フン、まあね。」

リィンに視線を向けられたセリーヌは鼻を鳴らして答えた。



「私も今の呪文は知りませんでしたけど……」

「一応”長”に教わってたのよ。新米魔女のアンタにはまだ早いって事なんじゃない?」

「う、うーん……微妙に納得がいかないような。」

セリーヌの指摘を聞いたエマは複雑そうな表情で考え込んだ。



「とにかくこれで”試しの地”への道は開いたわ。この先にゼムリアストーンを結晶化させている場所があるはずよ。相当厳しい試練が待っているはず……せいぜい気を付けて行く事ね。」

「ゴクリ……」

「き、緊張してきましたわね……」

「みんなで力を合わせればきっと大丈夫……」

「そんじゃ、お宝探しに行くとしますか!」

「みんな、気をつけて行きましょう!」

セリーヌの話を聞いて緊張している様子のマキアスとセレーネにゲルドは静かな表情で助言を送り、サラ教官とアリサは号令をかけた。その後リィン達は時折襲い掛かってくる魔獣達を撃破しながら最奥に到着した。



~最奥~



「どうやら終点みたいだな。」

「あ―――あれを見てください!」

階段を上がった先にある祭壇らしき所にある光輝く巨大な鉱石を見つけたリィン達は驚いた。



「なっ、なんだあれは!?」

「綺麗……!」

「鉱石から凄まじい魔力を感じますわ……」

「まさか、あれが……?」

「ええ、お目当ての品ね。七耀脈から力を得て、永い時とともに精製された高純度のゼムリアストーン……ここに辿り着いたということは――――そろそろヤツが現れるわね。」

「え……」

「!構えて。――――来るわ。」

セリーヌが呟いた言葉を聞いたリィンは呆け、予知能力によって今後起こる事がわかったゲルドは杖を構えてリィン達に警告した。するとリィン達の目の前の空間が歪み始め

「何だっ!?」

それを見たリィンが声を上げたその時、魔煌兵らしき人形兵器が現れた!



「あ、あの傀儡は確か……!」

「まさか―――”魔煌兵”!?」

「ユミルやノルドに現れた……!!」

魔煌兵の登場にセレーネとエマは驚き、リィンは厳しい表情をした。



「これが”試練”よ!」

セリーヌが声を上げたその時、リィン達は即座に武器を構えた。

「ゼムリアストーンを手に入れたいなら全力で乗り越えてみせなさい!」

「フッ、上等……!」

「撃破する……!」

そしてリィン達は魔煌兵との戦闘を開始し、協力して魔煌兵を撃破した。



「倒せた……みたいだな。」

「ん、撃破完了だね。」

「ふう、さすがに手強い相手だったな。」

「はい……今まで戦った魔煌兵よりも確実に上でしたわ。」

安堵の溜息を吐いたマキアスの言葉に頷いたセレーネは続けて答え

「でも、これで………!」

「私達が探していた物をようやく手に入れられるわね。」

アリサとゲルドは明るい表情でゼムリアストーンを見つめ

「ええ、早いところあのゼムリアストーンを運び出すわよ。」

二人の言葉にセリーヌは頷いた。その後リィン達はゼムリアストーンに近づいた。



「近くで見ると本当に大きいね。」

「はい、長い時間をかけて結晶化したみたいですから……」

「だが、全員で協力すれば何とか運び出せそうだな。」

そしてリィン達はゼムリアストーンの大結晶を回収した。



「これでよし、と。」

「やれやれ、艦のみんなが腰を抜かしそうね。」

「ま、何はともあれ目的は達成したわね。あとはこれを上手くヴァリマールの武器に加工できるかどうかだけど。」

「とにかく、そろそろここを出るとしよう。艦で待ってるジョルジュ先輩に相談してみないとな。」

その後リィン達はカレイジャスに戻り、ジョルジュや仲間達に回収したゼムリアストーンの大結晶を見せた。



~カレイジャス・格納庫~



「ゼムリアストーンの結晶……いやあ、想像以上だね。まさかここまでとんでもない代物を持って帰ってくるなんて。」

「あはは……」

「わたしたちも素でびっくりしたし。」

「それで、どうなの?ヴァリマールの武器……完成させられそう?」

「うーん、何とも言えませんね。やっぱり加工は難しそうだし、量的な問題もありますから。」

サラ教官に尋ねられたジョルジュは困った表情で答えた。



「……やっぱりですか。」

「騎神用の太刀となると、これでも材料としては全然足りないだろうからな。」

「ええ………一体どれだけ集めればよいのでしょう……」

「シュミット博士も現段階じゃ手伝ってくれなさそうね……

ジョルジュの答えを聞いたリィンやラウラ、エリスとアリサは暗い表情をした。



「とにかく、もっと沢山集める必要がありそうだね。」

「そうね……他の精霊窟にも行って回収しないとね。」

エリオットの意見にゲルドは頷き

「ま、東部には精霊窟があと3箇所あることだし。この調子で試練を乗り越えていけば何とかなるんじゃない?」

「ふう、簡単に言ってくれるな。」

セリーヌの意見を聞いたマキアスは疲れた表情で溜息を吐いた。



「フン、だが現時点ではそれしかあるまい。」

「ああ、俺達自身の手で何とか乗り越えなくてはな。」

「あはは、何とかなるって!」

ユーシスの意見にガイウスとミリアムはそれぞれ答え

(フウ……気楽なものね。特務支援課の方々はクロスベル市を包み込んでいる”結界”を解く方法をついに知って、近日中に”結界”を解く作戦を開始するとの事なのに……やはり彼らは”間に合わない”でしょうね。)

その様子を見ていたシグルーンは心の中で呆れ、静かな表情でリィン達を見回していた。



「でも、今の段階でも加工の感触くらいは掴んでおきたいところだね。そのためには、ちゃんとした作業場を艦内に作る必要もあるな。」

「ふふ、でしたら是非この辺りを作業場にしてください。お兄様もきっと文句は言わないはずですわ。」

ジョルジュの言葉を聞いたアルフィン皇女はジョルジュに申し出た。

「ありがとうございます、殿下。」

「じゃあ、お言葉に甘えて作業に入らせてもらいます。リィン君、手が空いたら改修作業を手伝ってくれるかい?起動者である君がいてくれたほうが色々と捗るだろうしね。」

「ええ、わかりました。」

その後手が空いたリィンはジョルジュと船倉の改修作業に勤しみ……騎神用武器の作業場を完成することができたのだった。



「よし……こんなもんかな。それじゃあ、さっそくゼムリアストーンの加工を試してみるとしようか。」

作業台に機甲兵用のブレードを置いたジョルジュはリィンに視線を向けた。

「ヴァリマールの持っている機甲兵用のブレード―――まずはこれを補強してみるんですね?」

「ああ、そういうこと。ゼムリアストーンの一部を使ってなんとか感触を確かめてみよう。引き続き手伝いをよろしく頼むよ。」

「了解です……!」

こうして、ついに騎神用の武器の作業に取り掛かることになった。単なる補強とは言え、巨大なゼムリアストーンの加工はジョルジュでも難しいらしく……仲間達やヴァリマールと共にリィンもできる限りの手伝いをしながら作業を見守るのだった。そして―――――



12月24日――――



「こ、これが……!」

「ゼムリアストーンで補強した、新たな騎神の武器か!」

「結構キレイに仕上がったね。」

「ふむ、ベースはただの機甲兵用のブレードのようだが。」

「でも、確かに元の物からは感じられなかった霊気(マナ)を感じます。おそらく切れ味は比べ物にならないはず……」

「これが”ゼムリアストーン”の”力”なのですね……」

「凄い魔力を感じるわ……」

「全て”ゼムリアストーン”製になれば一体どれほどの切れ味になるのでしょう……?」

仲間達と共に補強したヴァリマールが扱うブレードを見たセレーネとゲルドは驚き、エリスは考え込んだ。



「しっかしまあ、よく加工を成功させたわね?あれほどの結晶となるとかなり難しかったと思うけど。」

「ふふ、さすがジョルジュ先輩と言った所かしら。」

「はは、リィン君達も手伝ってくれたからね。おかげで何とか形にはなったみたいだ。」

「はは………俺達は大した事は。とにかく、このブレードは大きな戦力となってくれそうです。」

「ああ、ヴァリマールと共に必ずや力となってくれるだろう。」

「あとは実戦で運用して感触を確かめる必要がありそうだねー。」

「ああ、さっそく騎神に装備してもらって―――」

「―――リィン君、みんな!」

ミリアムの言葉にジョルジュが頷いたその時トワが慌てた様子でその場に駆け付けて来た。



「トワ会長……?」

「どうしたんですか?そんなに慌てて。」

トワの様子を見たエリオットとアリサは不思議そうな表情をし

「――――ケルディックの件ですね。」

「え…………」

真剣な表情で呟いたシグルーンの言葉を聞いたリィンが呆けたその時

「はあはあ……た、大変だよ!さっき双龍橋方面から緊急の連絡が入って来て……ケ、ケルディックが……―――ケルディックが!!」

「ケルディック……?」

「あの町がどうかしたんですか?」

トワは息を切らせながら血相を変えて何度も繰り返して呟き、トワの言葉を聞いたフィーとマキアスは不思議そうな表情をし

「ケルディック……―――!まさか……!」

「ゲルドの”予言”通りになったっていうの!?」

ある事を察したラウラとサラ教官は血相を変えた。



「”焼き討ち”されたの!それも――――”アルバレア公爵が雇った猟兵達に”!」

「――――なんだと!?」

そしてトワの言葉を聞いたユーシスは厳しい表情で声を上げた!



トワがリィン達にケルディック焼き討ち事件の報を伝える数時間前、領主の館の執務室で仕事をしているプリネの部屋の前に来たメンフィル兵が慌てた様子で部屋の扉をノックした…………! 
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