英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~”千の腕”との再会~
~七耀教会・星杯騎士団所属・特殊作戦艇・メルカバ伍号機・ブリッジ~
「ミントったら、エイドスを連れて一体誰を迎えに行ったのかしら?」
「ハハ………エイドスさんを連れて行った時点でとんでもない人物である事は間違いないだろうね。」
「下手したら”聖典”にも乗っている人物かもしれんな~。」
「………というかむしろそっちしか思い当たらない。」
エステルの疑問を聞いたヨシュアと”守護騎士”の一人―――第五位”千の護手”ケビン・グラハムは苦笑し、リースは疲れた表情で呟いた。
「ただいま~。」
「お待たせしました。」
するとその時ミントとエイドスがブリッジの出入り口から姿を現した。
「あ、帰って来た。……っていうか、何でわざわざ出入り口から現れたのよ?てっきりブリッジにそのまま姿を現すのかと思ったけど。」
二人を見て目を丸くしたエステルは不思議そうな表情で首を傾げた。
「フフ、この場にいる皆さんにとってはある意味”お知り合い”だそうですから、皆さんを驚かせる為にそのまま姿を現さなかったのですよ。」
「へ……」
「僕達の”知り合い”ですか?」
「一体誰の事を言ってるんや?」
「……”影の国”の時代が異なるメンバーであるナユタさん達も全員現在この時代にいますし、そもそも”空の女神”であるエイドスさんによる説得が必要かつ私達の知り合いの人物に心当たりがないのですが……」
エイドスの答えを聞いたエステルは呆け、ヨシュアとケビンは目を丸くし、リースは戸惑いの表情で尋ねた。
「その……ケビンさん、リースさん。前もって謝っておくね。――――ごめんなさい!例え”歴史の流れ”とはいえ、二人にとっては嬉しくも辛い再会になる人を連れて来たの……!」
「へっ!?ミ、ミント!?それってどういう意味!?」
「……二人にとって辛くも嬉しい再会で僕達とも関わりがあり、エイドスさん―――”空の女神”による説得が必要な人……―――!まさか……!」
ケビンとリースを見つめて頭を下げたミントの行動を見たエステルは驚き、真剣な表情で考え込んだヨシュアはある人物に思い当たって目を見開き
「お、おい………嘘やろ……?まさかとは思うけど……!」
「―――ルフィナ姉様ッ!?」
ケビンは信じられない表情で身体を震わせ、リースは扉を見つめて叫んだ。
「―――フフ、正解よ。」
するとその時リースの容姿とよく似た騎士装束を身に纏った女性がブリッジに姿を現した!
「!!」
「あ…………」
女性の登場にケビンは目を見開き、リースは呆け
「なっ!?ル、”ルフィナ”ってまさか……!」
「”守護騎士”に迫ると謳われていた実力を持つ正騎士―――――”千の腕”ルフィナ・アルジェント!?」
リースが叫んだ名前を聞いたケビンの従騎士達は驚きの表情で女性騎士を見つめ
「ふふ………どんな風に私の事が伝わっているのか知らないけど、幾ら何でも褒めすぎよ。武術も法術も十人並だし、習得している魔術も十人並………正騎士になれただけでも上出来と言えるくらいだと今でも思っているわ。――――初めまして。私の名はルフィナ・アルジェント。よろしくね、”剣聖”の娘さんに”漆黒の牙”さん。」
女性騎士―――ルフィナは苦笑した後エステルとヨシュアを見つめて微笑んだ。
「へっ!?」
「当時”執行者”であった僕はともかく、エステルの事まで知っていたのですか……」
ルフィナが自分達を知っている事にエステルが驚いている中、ヨシュアは目を丸くし
「カシウスさんから遊撃士に転向しないかっていうお誘いがあった時に彼女の話を少しだけ聞いたのよ。」
ヨシュアの疑問にルフィナは微笑みながら答えた。
「姉様ッ!!」
するとその時リースはルフィナに抱き付き
「フフ、少し見ない内に大きくなったわね、リース……」
「大きくなっていて当たり前です……ッ!姉様が”紫苑の家”から旅立って何年経ったと思っているのですか……!?」
ルフィナに頭を撫でられたリースは涙を流しながら声を上げた。
「―――6年前。」
「え……」
「……ッ!!」
ルフィナがふと呟いた言葉を聞いたリースは呆け、何かに気付いたケビンは辛そうな表情で唇を噛みしめ
「今から6年前、任務を終えた私は久しぶりにちょうどアルテリアのエメローゼ市に戻ってきたケビンと”紫苑の家”に久しぶりに帰ろうとしていた所エメローゼ市に向かう列車が事故にあってね……列車を待っていた際に二人に話しかけられて全ての事情を聞いた後この時代に来たわ。時空を超えるなんて最初は信じられなかったけど……目の前でミントさんが子供になったりするところを見た事や何より”空の女神”御自身の言葉を疑うなんて”星杯騎士”としてあってはならないからね。」
「そ、それってまさか……!」
「…………ハハ……まさかあの”襲撃”の直前の姉さんがそないな事になっていたとはな……ちなみに、ミントちゃん達からどのくらいの事情を聞いてるん?」
ルフィナの答えを聞いてすぐに何かを察したリースは信じられない表情をし、ケビンは寂しげな笑みを浮かべた後辛そうな表情でルフィナを見つめて尋ねた。
「…………――――――”外法狩り”、だったかしら。”守護騎士”になった後渾名を変えるまで名乗り続けた貴方の渾名。」
「!!」
「あ…………」
少しの間目を伏せて黙り込んだ後やがて目を見開いて真剣な表情で自分を見つめて呟いたルフィナの言葉を聞き、全てを察したケビンは目を見開き、リースは辛そうな表情をした。
「ねえ、ケビン。貴方一人が犠牲になって自分から消えようとするなんて行為、”死んだ私”が喜んだり許したりするとでも思っていたの?」
「……ハハ………参ったな…………”影の国”の”第九星層”でオレを叱りつけたリースの言葉と全く一緒やん………さすが”本物”の姉さんやな………」
「ケビン……」
「ケビンさん……」
「………………」
ルフィナの指摘に寂しげな笑みを浮かべて答えたケビンの様子をリースは涙を流して見つめ、エステルやヨシュアは辛そうな表情で見つめていた。するとその時ルフィナがケビンを抱きしめた。
「…………ぁ………………」
「貴方の優しすぎるその性格から”守護騎士”を務めるのは厳しいと思っていたけど……どうやらリースがいてくれたお蔭で何とか務めているみたいね。本当に……成長したわね、ケビン…………」
「ルフィナ……姉……さん…………う……くっ………」
そしてルフィナは声を押し殺して泣き続けるケビンが泣き止むまでケビンの頭を撫でていた。
「ハア……せっかく姉さんと再会できたってのに、いきなりカッコ悪い所を見せてしまったな……」
その後泣き止み、ルフィナから離れたケビンは疲れた表情で溜息を吐き
「ヘタレなケビンが何を今更。」
「お前は容赦がなさすぎやろ……ちょっとは気を使えや……」
静かな表情で呟いたリースの言葉を聞くと表情を引き攣らせて指摘した。
「まあ、男ってのは大体がそうだから、そう言われても仕方ないわね!」
「えっと……どうしてそこで僕を見るんだい?」
「ア、アハハ……」
「クスクス……」
エステルにジト目で見つめられたヨシュアは冷や汗をかき、その様子を見ていたミントは苦笑し、エイドスは微笑ましそうに見つめていた。
「フフ……―――”守護騎士”第五位”千の護手”ケビン・グラハム卿。これより私は元の時代に帰るまでの間は我らが主神”空の女神”の指揮下に入り、貴方方の協力をさせて頂きますので、至らない所があればご指導よろしくお願いします。」
一方微笑ましそうにケビンとリースを見つめていたルフィナは表情を引き締めてケビンに会釈し
「いやいやいやっ!?至らない所やご指導ってむしろオレの方が至らなさすぎて、姉さんに指導してもらわなあかん立場やって!後頼むからそのグラハム卿や丁寧な口調とか止めてくれって!リースの時よりもくすぐったすぎるし!」
「ムッ…………?姉様、エイドスさんの指揮下に入るってどういう事?」
慌てた後疲れた表情で指摘するケビンの様子を頬を膨らませてジト目で見つめたリースはある事に気付いて不思議そうな表情で尋ねた。
「……私がこの時代に来たのは”空の女神の協力者”として”空の女神”の”戦い”を助力する為よ。ミントさんと空の女神もそのつもりで私に接触したとの事だし。それに”この時代では既に世を去っている私”が”星杯騎士”としての活動をしたら混乱が生じるでしょう?」
「あ…………」
「…………」
ルフィナの指摘を聞いたリースは呆けた後辛そうな表情をし、ケビンは複雑そうな表情をし
「―――とは言っても貴方達も空の女神と共に戦うのだから、ほとんど一緒にいるようなものだと思うけどね。短い間になると思うけど、よろしくね。」
「姉さん……ああ、よろしく頼むで。」
「姉様からいたら百人力。」
「えへへ……よろしくね、ルフィナさん!」
「よろしくお願いします。」
「ミント達と一緒に頑張ろうね!」
ルフィナに微笑まれたケビンやリースはエステル達と共に力強く頷き
「フフ……よろしくお願いしますね。―――ただ、その”空の女神”という呼び方は止めて、どうか私の名前で呼んでください。私は”人”として生きる事を決めたのですから。」
エイドスは微笑んだ後真剣な表情でルフィナに指摘した。
「しかし御身は私達にとって崇めるべき存在なのですから、そのような恐れ多い事は……」
その時ルフィナは戸惑いの表情で指摘したが
「―――でしたら私の事は名前で呼びなさい。ちなみに”様”付けも可能な限り止める事。これは貴女達が崇めている”空の女神”としての”命令”です。いいですね?」
「うっ。………………わかりました。改めてよろしくお願いします、エイドスさん。」
エイドスに命令されると唸り声を上げた後疲れた表情で会釈をした。
「あ、あのルフィナ姉さんがあっさりと言いくるめられるなんて……」
「無理ないと思う。幾ら姉様でも”星杯騎士”として”空の女神”であるエイドスさんの命令は絶対服従だからエイドスさんの”命令”には逆らえないだろうし。」
その様子を見守っていたケビンは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、リースは疲れた表情で呟き
「……やっぱり、エステルの先祖だけはあるね。」
「どーいう意味よ!?」
「まあまあ……落ち着いてよ、ママ。」
ヨシュアに視線を向けられた怒鳴るエステルをミントは苦笑しながら諌めていた。
「あ、そう言えばこの時代のケビンとリースに聞きたい事があったわね。」
「姉様?」
「へ……一体何なんや?」
ある事を思い出して呟いたルフィナの言葉を聞いたリースとケビンは不思議そうな表情をしたが
「ミントさん達から聞いたわよ。何でもリースの処女をケビンが貰ったそうね?」
「ね、姉様ッ!?」
「え”……って、ミントちゃん!?な、なななななな、何でそないな事まで姉さんに教えたんや!?」
ルフィナの問いかけを聞いたリースは顔を真っ赤にして慌て始め、ケビンは冷や汗を滝のように流しながら表情を青褪めさせた状態でミントに視線を向けて尋ねた。
「えっと……ごめんなさい、ケビンさん、リースさん!ミントは黙っているつもりだったんだけど、エイドスさんが先に説明しちゃったんだ……」
「いい”っ!?よ、よりにもよって……!」
「い、一体何故そのような事を……?」
ミントの答えを聞いたケビンは表情を引き攣らせてリースと共にエイドスを見つめた。
「フフ、私自らお二人が結ばれた事を祝福したのですから、お二人のご家族にも知らせておくべきでしょう?」
「た、確かにその通りですが、もうちょっと他にも言い方ってもんがあるんやと思うんですが……!?」
エイドスの説明を聞いたケビンは慌てた様子でルフィナを気にしながらエイドスに指摘したその時
「ケビン。」
「な、なんや、ルフィナ姉さん!?」
ルフィナが静かに自分の名前を呼ぶと姿勢を正した。
「エイドスさんの両親や先祖の方々に挨拶をする前に”色々と”聞かせてもらうから場所を変えるわよ。―――リース、勿論貴女にも説明してもらうから貴女も一緒に来なさい。」
「う”……ハイ…………」
「わかりました、姉様…………」
そして膨大な威圧を纏って微笑むルフィナに微笑まれたケビンはリースと共に表情を青褪めさせながら頷いた。
「ア、アハハ……二人とも御愁傷様ね。」
「ま、まあ久々の家族としての触れ合いだから、ケビンさん達にとっても懐かしいだろうからある意味いいかもしれないね……」
一方その様子を見守っていたエステルとヨシュアは冷や汗をかいて苦笑していた。
エステル達が心強い味方と合流し、クロスベルへと向かっている一方各地を回って活動していたリィン達は依頼を全てこなした後、”精霊窟”の一つである地霊窟の奥にある扉の前に到着していた。
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