英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~ケルディック焼き討ち~
同日10:00―――――
~ケルディック・領主の館・執務室~
「――――プリネ皇女殿下!緊急の連絡が先程入った為、入室と報告の許可を頂いてもよろしいでしょうか!?」
「え………」
「…………」
扉の外から聞こえるメンフィル兵の言葉を聞いたツーヤは呆け、レーヴェは目を細めて黙り込み
「緊急の連絡ですか?――――わかりました、入って来て報告をお願いします。」
プリネは眉を顰めた後真剣な表情で言った。
「―――失礼します!」
「それで緊急の連絡とは一体何ですか?」
「ハッ!先程ケルディック要塞より連絡が入りました!バリアハート方面よりクロイツェン州の領邦軍の大部隊がケルディック要塞に向かっているとこの事!領邦軍の進軍スピードを考えると後20分程でケルディック要塞に到着するとの事です!」
「!!」
「―――ついに来たか。」
「よりにもよってサフィナ義母さんとレンさんが留守をしている時に来るなんて……!」
メンフィル兵の報告を聞いたプリネは目を見開き、レーヴェは目を細めて呟き、ツーヤは厳しい表情をした。
「ケルディック要塞に詰めている部隊には直ちに迎撃態勢を!また、ケルディック市の部隊の内半数をケルディック要塞の防衛に加わらせますので、すぐにケルディック要塞への転移の準備を!ツーヤはケルディックに在留している私の親衛隊から選抜した隊員達を私の護衛に廻し、残りは予め決めておいた避難場所の防衛並びにケルディックにいる市民達並びに難民達の避難誘導に回しなさい!」
「御意!」
「はいっ!」
プリネの指示にメンフィル兵とツーヤはそれぞれ答えた後部屋を退出した。
「レーヴェ、手筈通りに。」
「ああ。気を付けろよ。」
「私なら大丈夫。レーヴェこそ気を付けて。」
そして二人はそれぞれの役目を果たす為に行動を開始した。
~5分後・遊撃士協会・ケルディック支部~
5分後、ケルディックにある遊撃士協会の支部に通信が来た。
「はい、こちら遊撃士協会・ケルディック支――――おや、レオンハルト少佐ですか。一体何の御用で―――――!!」
受付のベルモンは通信相手を知って目を丸くしたが通信相手からある情報を聞かされると目を見開いて表情を引き締め
「……わかりました。では予め打ち合わせていた通り、こちらもケルディックにいる遊撃士達全員に市民達や難民達をそちらが指定した避難場所へと誘導しますのでよろしくお願いします。ええ……ええ……―――それでは失礼します。……まさか本当に的中するとは…………」
通信を終えると重々しい様子を纏って数日前の出来事を思い返した。
~4日前~
「な―――――ケルディックが焼き討ちに……!?それは一体どういう事なのですか?」
レーヴェから事情を聞かされたベルモンは驚いた後すぐに落ち着いて真剣な表情で問いかけた。
「―――先日、”紅き翼”の面々が補給の為にこのケルディックに訪れた際、連中の”協力者”である少女の”予言”によってもたらされた情報だ。」
「”紅き翼”―――――トールズ士官学院の”Ⅶ組”の方達ですか。そう言えばトヴァルさんから記憶喪失で、未来を見る力とやらを秘めている少女が彼らに力を貸している話を聞いていますが……」
「ああ、その者の”予言”によると俺達がケルディック要塞を攻めるクロイツェン州の領邦軍の相手をしている間に、ケルディックに潜伏している猟兵共がケルディックを焼き討ちするとの事だ。」
「!!……その”予言”に信憑性はあるのですか?」
レーヴェの話を聞いて目を見開いたベルモンは真剣な表情で問いかけた。
「既にその者は”予言”を2度も的中させている。1度目はリィン・シュバルツァーがユミルの墓地にてかつてリフィア殿下に討ち取られ、幽霊となった貴族連合の協力者――――”黒兎”アルティナ・オライオンと”契約”するという予言……そして2度目は”紅毛のクレイグ”の娘がクロイツェン州の領邦軍によって双龍橋まで連れて行かれ、第四機甲師団に対する人質として使われるという予言だ。」
「…………既に2度も的中させていますから、彼女の”予言”が的中する可能性は非常に高い事が証明されましたね…………―――それでその”予言”をメンフィルはどのように受け取っているのですか?」
レーヴェの説明を聞き、真剣な表情で考え込んでいたベルモンはレーヴェに問いかけた。
「……出身不明かつ記憶喪失という経歴を持つその者の”予言”を”国として”は全面的に信用できないが、念の為に領邦軍がバリアハート方面より攻めて来た際”特別な対策”を取る事にした。」
「”特別な対策”、ですか?」
「ああ。バリアハート方面より領邦軍が攻めてきた場合、ケルディックに残留する兵達に市民達や難民達をこちらが予め決めておいた一定の場所に避難誘導する事にした。プリネ皇女を始めとした領主達より市民達の命を最優先に守り、最悪建物の破壊の阻止や消火活動は後回しにしろとの勅命が出ている。」
「そうですか…………―――では我々は避難誘導のお手伝いや逃げ遅れた市民や難民達の避難誘導のお手伝いをすればよろしいのですね?」
レーヴェの話を聞いて考え込んだベルモンは真剣な表情で問いかけた。
「話が速くて助かる。領主の館と仮説空港――――その2箇所を避難場所とする。そちらにはそれぞれ2個中隊の兵達と更に親衛隊の一部も防衛する事になっている為、猟兵達も手が出しにくいだろう。」
「……わかりました。ちなみに領主の方々はいざ事が起こればどうなさるのですか?」
「事が起こった際はケルディック要塞の防衛の指揮に取る事になっている。――――ただし、俺はケルディックに残って兵達の指揮を取ることになっているがな。」
「レオンハルト少佐がですか?……フフッ、なるほど。”結社”出身の貴方ならば、適任ですね。」
レーヴェの説明を聞いて驚いたベルモンだったがすぐに何故そうなったかの理由を察して苦笑した。
~現在~
「……ゲルドさんの”予言”の具体的な内容がどのような内容だったかは知りませんが……彼女がケルディックの市民達の身を心配し、我々を信じて教えて頂いたからには少なくても犠牲者を出さないようにしませんとね……!――――こちらケルディック支部受付ベルモン。緊急事態発生。ケルディック所属の遊撃士達に告ぐ―――――」
数日前の出来事を思い返したベルモンは真剣な表情で通信を開始した。そして少しするとプリネが指揮するケルディック要塞の防衛部隊はバリアハート方面から攻めて来た領邦軍との戦闘を開始していた!
~20分後、ケルディック要塞~
「総員、戦闘開始!時間を稼ぐだけでいい!あまり突出しすぎるな!」
「イエス・サー!」
領邦軍の司令官の指示に答えた領邦軍はケルディック要塞に突撃した。
「投石開始!!」
「ハッ!!」
一方突撃して来る領邦軍に対し、ケルディック要塞の屋上にいるプリネの指示によってメンフィル兵達は投石機を使って巨大な岩を突撃して来る領邦軍へと放った。
「ぐわっ!?」
「ががっ!?」
「なっ!?投石だと!?」
巨大な岩に命中した機甲兵達は怯み、それを見た領邦軍は驚き
「クソッ、こんな古臭い戦法でこの機甲兵の部隊に勝てると思っているのか……!?一気に詰め寄って混戦に持ちこめ!!」
司令官は唇を噛みしめた後指示をし、機甲兵達は一斉にケルディック要塞に向かった。
「砲撃開始!!」
「ハッ!!」
「撃て――――ッ!!」
「グアアアアアアッ!?」
「ギャアアアアアアッ!?」
しかしツーヤの指示によって要塞に備え付けてある砲台から解き放たれた砲撃によって機甲兵達は怯み、運が悪い機甲兵はそのまま破壊されて操縦者を絶命させた!
「し、司令……!」
その様子を見ていた兵士は弱気な様子で司令官に話しかけ
「怯むな――――ッ!こちらはこの日の為にクロイツェンの主力まで持ってきたのだ!相手がメンフィルといえど我らに勝機はある!数で押し切れ――――ッ!!」
クロイツェン州の領邦軍の主力がいる事で自分達が有利だと思っている司令官は何も考えずに単純な指示をし
「総員、迎撃開始!一人たりとも後ろに通してはなりません!!」
「御意ッ!!」
「オォォォォオオオオ―――――ッ!!」
プリネの号令に応えたケルディック要塞の機甲兵達は勇猛果敢に領邦軍へと向かい、メンフィル兵達が操縦する魔導兵器達や機甲兵達の援護をしながら戦闘を開始した!
一方プリネ達がケルディック要塞で戦っているその頃、ケルディック市では猟兵達による破壊活動が行われていた!
~ケルディック市~
「うわあああああっ!?」
「キャアアアアアッ!?」
「な、何で猟兵達がケルディックを襲うんだっ!?」
「みな、落ち着くのじゃ!メンフィル兵や遊撃士の方達の避難誘導に従って、避難するのじゃ!」
あちこちから火の手が上がる町の中で悲鳴を上げて逃げ惑う市民達にオットーは指示をして避難誘導を手伝っていた。
「元締め!元締めもそろそろ避難してください!」
オットーが市民達の避難誘導をしていてしばらくするとオットーの部下の一人がオットーに声をかけた。
「市民達や難民達が全員避難すれば、儂も逃げるから心配――――」
「ほう?まだ残っている者達がいるとは。しかも元締めがいるとは都合がいい。」
オットーが部下に答えかけたその時、猟兵達が二人の目の前に現れた。
「りょ、猟兵……!」
「……儂らに何の用じゃ。何故このケルディックを襲撃した!?」
猟兵達を見た部下は表情を青褪めさせ、オットーは怒りの表情で猟兵達を睨んだ。
「アルバレア公の依頼だ。クロイツェン州の民達でありながらメンフィルによって支配された今の状況を受け入れている貴様らや、ケルディックを奪い取った所か帝都襲撃等数々の卑劣な行いを働いたメンフィルに対する”見せしめ”として襲撃しろとな。」
「そ、そんな……!?」
「メンフィルにそのような事をされる原因を先に作ったのはそちらじゃろうが!?どこまで愚かになれば気がすむのじゃ、アルバレア公爵は……!」
猟兵の話を聞いた部下は信じられない表情をし、オットーは怒りの表情で声を上げた。
「フン、”北の猟兵”である我々からすれば”追加料金”を貰い、故郷に仕送りができるのだからありがたい話だ。」
「”北の猟兵”……―――ノーザンブリアの猟兵どもか!お主らはこのような卑劣な事をする事に何とも思わんのか!?”北の猟兵”は元々国を護る兵士達だったと聞いておるぞ!?」
猟兵の正体を知ったオットーは怒りの表情で声を上げた。
「我々は故郷の民達を餓えさせない為に猟兵になると決めた時から”人の心”は捨てた。このような栄えた町で育った貴様らが自給自足すらもできない我らの気持ちがわかるまい!アルバレア公からは何度も逆らい、メンフィルの言いなりになった元締め―――貴様の始末も言い渡されている。ここで女神の許へと向かってもらうぞ……!」
「クッ……!お主だけでも逃げるのじゃ!」
「そんなっ!?元締め!貴方こそ逃げてください!」
猟兵の言葉を聞いたオットー達が絶対絶命の状態に陥ったその時!
「ケッ、故郷を護る為に”何をやって”も許されると思っているテメェらのふざけた考えなんざ、わかってたまるかよ。」
青年の声が聞こえて来た!
「何っ!?」
そして声を聞いた猟兵が驚いて後ろへと振り向いたその時
「らあああああああっ!!」
「ぐあっ!?」
「ががっ!?」
「ぎゃっ!?」
猟兵達の背後にいたアガットが跳躍して炎の闘気を纏った強烈な一撃――――フレイムスマッシュを猟兵達に叩きつけ、それを受けた猟兵達は吹っ飛ばされた!
「そ、その赤毛に”重剣”……!貴様、”重剣”のアガットか……!」
仲間達がアガットの一撃によって気絶している中、唯一意識が残っている猟兵は唇を噛みしめてアガットを睨み
「テメェら……舐めたことをしてくれやがったな!”焼き討ち”は俺にとって一番忌々しい出来事なんだよっ!!」
「へぶッ!?…………」
アガットは怒りの表情で拳を振るって猟兵の顔を思い切り殴りつけ、殴りつけられた猟兵は口から殴りつけられた際に折れた数本の歯を吐くと共に殴られた事によって折れた鼻から血を出しながら瓦礫にぶつかり、そのまま気絶した。
「た、助かった……!」
「お主は確かリベールから来てくれた遊撃士の……!」
アガットの登場と猟兵達の戦闘不能に部下は安堵の表情をし、オットーは驚きの表情でアガットを見つめたその時
「兄貴!……って、うわ!?りょ、猟兵!?兄貴が一人で3人も無力化したんすか!?」
深緑の髪の遊撃士と思われる青年がアガットに走って近づいた後周囲に倒れている猟兵達に気付いて驚いた。
「遅ぇぞ、ディン!5分以内に逃げ遅れた奴がいねぇか見て回ってこいって言っただろうが!?」
「す、すみません!猟兵共が放った魔獣や人形兵器に邪魔されちまって……で、でもその時俺の許に駆け付けてくれて一瞬で魔獣達を倒した銀髪の軍人が良い事を教えてくれました!」
「銀髪の軍人……あの野郎か。それで野郎は何をお前に教えたんだ!?」
青年の話を聞いて一瞬でレーヴェの顔を思い浮かべたアガットは眉を顰めた後真剣な表情で尋ねた。
「はい!市民や難民達の避難誘導は終わって、手の空いている兵士達は猟兵達の制圧や放火された建物の消火に向かった話を教えてくれました!」
「市民達の被害はどうなっている!?」
「それが……重傷を負った市民達がいて、中には意識不明の重体の市民もいるとの事です……ただ、死傷者は今の所出ていないらしいっす!」
「クソッ!だが死傷者が出なかっただけ、まだマシか……――――ディン、お前はその二人を避難場所まで護衛して、その後はメンフィル兵達による消火活動を手伝え!」
青年の話を聞き、襲撃によって市民達が重傷を負った事に悔しさを感じて悔しそうな表情で声を上げたアガットはすぐに気を取り直して青年に指示をし
「はいっ!兄貴はどうするんですか?」
「フン、こんな舐めた事をしてくれたクソ野郎どもに落とし前をつけさせる為に決まってるだろうがっ!!」
「あ、兄貴ッ!?」
そして重剣を構えてどこかへと走り去った!
~難民キャンプ地点~
「よし、町全体を粗方破壊できたし、撤退するぞ。」
「隊長、まだ戻ってきていない者達もいますが……」
「……恐らくメンフィル兵か遊撃士共に制圧されたんだろう。奴等の事は諦めて撤退する。我々は仲間を見捨てて、一人でも生き延びて故郷に仕送りをしなければならん。」
「了解。」
猟兵は隊長の言葉に答えて撤退を開始しようとしたが
「――――残念ながらそれは無理な話だな。」
「なっ……!?」
「馬鹿なっ!?何故ケルディック要塞の防衛をしている”姫君の中の姫君”の護衛をしている貴様がこの場にいる!?”執行者”No.2――――”剣帝”レオンハルト!!」
レーヴェが猟兵達の撤退を阻むかのように猟兵達の撤退先から現れた!
「フッ、”結社”で猟兵達を鍛えていた俺がアルバレア公に雇われている貴様らの行動を読めないとでも思ったのか?」
猟兵の隊長の言葉を聞いたレーヴェは不敵な笑みを浮かべ
「クッ……!我らの行動が読まれていたというのか!?後退して別方向から撤退するぞ!」
「了解!」
隊長は唇を噛みしめた後猟兵達に指示をして後退しようとしたが
「ケッ、逃げられると思っているのか?」
「!!」
「赤毛に”重剣”……!ランクB”重剣”のアガット・クロスナー……!」
アガットが猟兵達の後退先を阻むような位置で重剣を構えていた!
「フッ、正しくはランクAだ。”リベールの異変”の事件の後、Aに昇格したと聞いている。」
「ヘッ、そういう所も相変わらずだな。あのお姫さんの傍にいなくていいのかよ?」
レーヴェの言葉を聞いたアガットは鼻を鳴らした後不敵な笑みを浮かべて問いかけた。
「今のカリンの周囲には以前と違い、カリンの身を任せられる者達がいる。それにカリン自身、腕が立つ故心配は無用だ。相手は強者と戦った事のない雑魚共……そんな連中に後れを取る訳があるまい。」
「ヘッ、確かに”執行者”とも渡り合えるあのお姫さんが領邦軍の屑共相手に後れを取る訳がねぇな。さてと……―――覚悟はできたか、テメェら?」
「懲りずにメンフィル領に手を出した挙句、12年前にそれぞれの故郷で起こった”光景”を見て来た俺達が貴様らの所業を見逃すと思っているのか……?」
アガットは全身に”竜”の顔を形どった闘気を纏い、レーヴェは全身に”獅子”の顔を形どった闘気を纏って猟兵達を睨み、更に二人がさらけ出す膨大な闘気によって空気が震え、大地が小規模な揺れを起こした!
「う……あ……っ!?」
「クソッ、化物共が……!」
「グルルル……!?」
二人の闘気に圧された猟兵達や猟兵達が連れている軍用魔獣はそれぞれ身体を震わせながらも武器を構えて迎撃態勢を取っていた。
「アガット・クロスナー。お前の舎弟のように後れを取って、俺の手を煩わせるなよ。」
「それはこっちのセリフだ!行くぜっ!らあああぁぁぁっ!!」
「ハアアァァァァ!!」
そしてレーヴェとアガットはそれぞれが持つARCUSで戦術リンクを結ぶと同時に戦闘を開始した!
今ここに!”竜”と”獅子”の”逆鱗”に触れた愚か者達が蹂躙される戦いが始まった……!
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