英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第69話
アルフィン皇女と共に脱出方法を探っていたリィンは客室の中にあったダクトを見つけ、アルフィン皇女と共にダクトを抜けると貴賓区画を無事抜ける事ができた。
~パンダグリュエル・艦内通路~
「よし……何とか抜け出せましたね。」
「はあ、ドキドキしました。まるで流行りのスパイ小説みたいですね。」
リィンが安堵している中、緊張を解いたアルフィン皇女はウインクをしてリィンに微笑んだ。
「はは……とにかく見つからないよう何とか甲板まで―――」
「リィンさん……?」
突如ある方向へと身体を向けて真剣な表情になったリィンを見たアルフィン皇女は不思議そうな表情をしたが
「――兵士が来ます。下がっていてください。」
「!」
リィンの言葉を聞くと血相を変えた。すると貴賓区画から領邦軍の兵士が二人現れた。
「ふう、あの若者はともかく。尋常ではない客人ばかりでさすがに緊張するな……」
「ああ、せめてアルフィン殿下に一目お目にかかりたいんだが―――。」
雑談しながら通路を歩いていた兵士達はアルフィン皇女を背に太刀を構えたリィンに気付いた。
「あ。」
「え”。」
「遅い――――二の型―――疾風!!」
そしてリィンは呆けている兵士達に先制攻撃を仕掛けた!
「グアッ!?」
「うあっ!?く、クソ……ッ!」
リィンの先制攻撃を受けた兵士達は銃口をリィンに向けたが
「アークス、駆動!燃えなさい!―――ヒートウェイブ!!」
「ガアアアアアッ!?」
「熱い、熱いよ―――!?」
アルフィン皇女のアーツを受け、悲鳴を上げながら苦しんだ!
「ハァァァァ……滅!!」
「ガッ!?」
「グッ!?」
その隙を逃さないリィンはクラフト―――業炎撃で兵士達を地面に叩きつけた!
「……ぅ…………」
「つ……強い……」
兵士達の気絶を見届けたリィンは太刀を鞘に戻し
「はあはあ……」
戦闘が終了し、極度の緊張が解けたアルフィン皇女は胸を手で抑えて息を切らせていた。
「……大丈夫ですか、殿下?」
「は、はい……ちゃんと守って頂けましたから。しっかり付いていきますので脱出を開始しましょう……!」
「……わかりました。それでは付いて来て下さい!」
そしてリィンとアルフィン皇女は通路を走りながら徘徊している人形兵器を協力して倒し、時折追いついてくる兵士達を撃退し続けていた。
「いたぞ……!」
「皇女殿下を保護しろ……!」
「っ……」
追手の声を聞いたアルフィン皇女は表情を厳しくし、リィンはアルフィン皇女を背に太刀を鞘から抜いて構えた。
「2名と軍用魔獣……ここで撃破します。下がっていてください。」
「はいっ……!」
リィンの指示にアルフィン皇女が頷いたその時、追手である兵士達がリィン達と対峙した。
「殿下には傷一つつけられん。あの若者を集中攻撃して制圧するぞ!」
「…………悪いが、それは無理な相談だな。可愛い後輩を捕まえる趣味は俺にはねぇよ。」
「え…………」
自分にとって聞き覚えのある懐かしい声が片方の領邦軍の兵士から聞こえ、その事にリィンが呆けたその時!
「お前、何を言って――――ガッ!?」
「そらよっ!」
「ギャンッ!?」
「ええっ!?」
何と領邦軍の兵士が一瞬で側面からもう一人の兵士の喉元を銃剣で貫き、更に間髪入れず魔獣の喉元も貫くと同時に銃撃し、同士討ちをした兵士の行動を見たアルフィン皇女は信じられない表情で声を上げた!
「き、貴様、一体……何……を……………」
絶命した魔獣と共に地面に倒れた兵士は信じられない表情で自分の喉元を貫いた領邦軍の兵士を見つめながら絶命した!
「クク、プリネ姫の護衛の為に異世界の士官学院に留学した話は聞いていたが、まさかこんな所で再会する事になるとはな。」
そして残りのもう一人の兵士は口元に笑みを浮かべてリィンを見つめ
「その声――――フォルデ先輩!?」
リィンは信じられない表情で兵士を見つめて声を上げた。すると兵士が被っていた兜を脱ぐと軽そうな雰囲気を纏わせる青年の顔が現れた!
「よっ、リィン。まさかお前から脱出行動に移るとはな。それに以前と比べて随分良い顔をするようになったじゃねえか。」
「せ、先輩……何故先輩がここにいるんですか!?」
「あ、あの、リィンさん。そちらの方とはお知り合いなのですか……?」
兵士と顔見知りのように話すリィンを見たアルフィン皇女は戸惑いの表情で尋ねた。
「は、はい。そちらの方―――フォルデ先輩は俺がメンフィル軍の訓練兵の時、直接指導してくれたメンフィル軍の正規兵の方です。」
「それは過去の俺だ、リィン。今の俺はエフラム様の親衛隊の隊員だぜ♪」
リィンの説明を聞いた青年はリィンにウインクをした。
「そ、そうだったんですか。昇進おめでとうございます、先輩。」
「ハハ……まあ、お前の将来と比べれば俺の昇進なんざ、大した事ねぇよ。」
「?それは一体どういう意味でしょうか?」
苦笑する青年の言葉にリィンは不思議そうな表情で首を傾げたその時
「え、えっと……一体何故メンフィル兵がこの船に…………」
アルフィン皇女が戸惑いの表情で青年――――リィンがメンフィル軍の訓練兵だった頃、直接リィン達を指導していたメンフィル軍の正規兵であり、現在は親衛隊の一員であるフォルデを見つめて尋ねた。
「あ~、悪いですけどそれは”軍事機密”ですので、申し訳ありませんがこれ以上は答えられません。……おい、リィン。こんな可憐な女の子―――それも他国の皇女を連れて逃避行とはやるじゃねえか♪メイド達や同期の女性訓練兵達の熱い視線にも気付かず、娼館に誘ってもエリゼちゃんを理由にして絶対に誘いに乗らなかった奴が成長したね~。」
「まあ……そんな昔からリィンさん、モテていたんですのね♪……ちなみに娼館って何ですの??」
「こ、この非常時に昔の話を持ち出さないで下さい、先輩!それより何故先輩がここにいるのか教えてください!」
(あらあら、これは良い事を聞いたわね♪)
(ふふふ、やはり昔から天然かつ鈍感だったようですね。)
(ア、アハハ……その方達は幸運と言うべきか、不運と言うべきか、どちらでしょうね……?)
(クスクス……少なくともエリゼは知っていたでしょうね。)
からかいの表情で口元をニヤニヤして自分を見つめるフォルデの言葉を聞いてある事が気になっているアルフィン皇女の様子に気付いたリィンは慌てて話を誤魔化した後真剣な表情でフォルデを見つめ、フォルデの話を聞いたベルフェゴールとリザイラは興味ありげな様子を見せ、メサイアは苦笑し、アイドスは微笑んでいた。
「――――今はそんな事を気にしている場合か、リィン。甲板にあるお前が操縦する”騎神”とやらで逃げるんなら急げ。貴賓区画にいた連中――――”帝国解放戦線”の幹部や”結社”だったか?その連中がこの先に向かったという情報がさっき入ったから気を引き締めておけ。」
「!!…………ご忠告ありがとうございます、先輩。――――失礼します。行きましょう、殿下。」
「は、はい。その……危ない所を助けて頂きありがとうございました。」
真剣な表情になったフォルデの忠告を聞いたリィンはフォルデを見つめて軽く頭を下げた後アルフィン皇女を促して先に進もうとしたが
「―――そうそう、言い忘れていたがエレボニア帝国に誘拐されて幽閉の身となっていたお前とエリゼちゃんの妹ならさっきリフィア殿下やエリゼちゃん達に救出されたっていう連絡が来たぞ!」
「ええっ!?エ、エリスがリフィア殿下やエリゼさん達に!?」
「!!??そ、それは本当ですか、先輩!」
フォルデの言葉を聞きアルフィン皇女と共に驚いた後信じられない表情でフォルデを見つめた。
「ああ。さっき入った連絡によると今は両親に救出の成功を知らせる為にお前達の故郷であるユミルに送り届けている最中だそうだ。」
「そうですか…………!」
「よかった……本当によかった……!」
フォルデの説明を聞いたリィンは安堵の表情をし、アルフィン皇女は嬉しそうな表情で涙を流した。
「今は感動するより先に、とっとと逃げな!家族や学院でできた仲間達と再会する為にも!」
「はい!―――行きましょう、殿下!」
「はい!―――それではわたくし達は失礼しますわ!」
そして二人はその場から去って行った。
「さてと……作戦内容がちょっと変更になる可能性が高い事をエフラム様やリウイ陛下達に伝えないとな。―――こちら、フォルデ。応答せよ、”モルテニア”――――――」
二人を見送ったフォルデは懐から通信機を取りだすと真剣な表情で通信を開始した。
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