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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~エリスの決意~

~魔導戦艦”ヴァリアント”・貴賓室~



「そ、そんな……………他に方法はないのですか、姉様!」

ヘイムダルから撤退して行く戦艦の中に設置されてある数少ない貴賓室の中にいるエリスはエリゼから、エレボニア帝国に対して相当な怒りを抱いていたメンフィル帝国がついにエレボニア帝国との戦争を決定した事や戦争回避条約等の件も聞き、表情を青褪めさせた後真剣な表情でエリゼを見つめた。

「―――残念だけど、エレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避するにはこれ以外の方法はないわ。むしろ私がプリネ姫に提案し、プリネ姫が皇族の方達やメンフィル帝国政府の役人達の前で提案した”救済条約”をメンフィル帝国が認めた事を幸運と思うべきね。」

エリゼは重々しい様子を纏って答えた。



「っ!姉様!何故姉様が姫様の気持ちや兄様を利用するような条約を提案したのですか!?」

辛そうな表情で唇を噛みしめたエリスは真剣な表情でエリゼを見つめて声を上げ

「…………アルフィン皇女が兄様の事を愛していなければ、提案しなかったわ。―――逆に言えば、この条約ならばアルフィン皇女はエレボニア帝国を救い、兄様の妻の一人にもなれるからアルフィン皇女は”皇族としての義務”を果たして民達のエレボニア皇族への信頼を回復し、”個人”としての幸せも手に入れるのよ?それに兄様もどの道この内戦に関わるつもりなのだから、その条約によってもたらされる効果――――エレボニア皇族の方達の名誉を少しでも回復させる為に兄様は内戦に関わってもメンフィル帝国からその事について指摘されないし、メンフィル帝国もエレボニア帝国に対して兄様を内戦に関わらせた事を指摘しないのよ?」

エリゼは複雑そうな表情で答えた後静かな表情でエリスに問いかけた。



「それは………………」

エリゼの問いかけに対して反論を持ち合わせていない事や姉が自分の知らない所で自分達の為にどれだけ考え、動いていたのかを察したエリスは複雑そうな表情で黙り込んでいたが

「…………それと、エリス。貴女は今年度限りで女学院を退学し、ある一定の期間までメンフィル皇族の専属侍女を務めてもらう事になっているわ。当然アルフィン皇女の付き人も今日限りで辞めてもらうわ。」

「え…………ど、どうしてですか!?」

エリゼが自分に向けて言った言葉の意味が一瞬わからず呆けた後、慌てた様子で尋ねた。



「ユミル襲撃の件について皇族の方達が話し合っていた時にユミルが襲撃された理由はアルフィン皇女と貴女が”親しすぎた”のではないかとの声があったのよ。夏至祭の件でアルフィン皇女を含めたエレボニア皇族の方達の傍にいれば、何らかの危険に巻き込まれるとわかっていてアルフィン皇女と共に行動をし続けていた貴女も残念ながらユミル襲撃の件で責任が一切ないとは言えないわ。第一以前も注意したけど私達はメンフィル帝国に所属する貴族。他国の皇族と親しくしすぎていたら、メンフィル帝国への忠誠が疑われるかもしれない事を教えたし、リウイ陛下にご指摘を受けた事も覚えているわよね?リフィア達やリウイ陛下、それにシルヴァン陛下が貴女の事を庇ってくれたお蔭で貴女への”処分”はそれで済んだのよ?幸い貴女はアルフィン皇女の付き人を務めていたから専属侍女も務まるでしょうし、私を含めた専属侍女長達が専属侍女の研修をするから、安心して。」

「そ、それは…………………―――わかりました。それで私は一体どなたのお世話をする事になるのでしょうか……?」

エリゼの説明を聞いて辛そうな表情で顔を俯かせていたエリスはやがて決意の表情になってエリゼを見つめた。



「―――レン姫よ。あの方は元々専属侍女がいなかったし、貴女とも一応顔見知りだからちょうどいいとの事で、レン姫自身からも許可を頂いているわ。それにレン姫は兄様がシュバルツァー家の当主の座につくまでプリネ姫達と共にクロイツェン州全土の”臨時統括領主”を務める事になっているから、プリネ姫達の傍で次期クロイツェン州全土を納める統括領主として様々な事を学ぶ兄様の傍にもいれるから、私と兄様が本国に留学していた分も取り戻せると思うわ。」

「姉様…………―――わかりました。その時が来た際、ご指導よろしくお願いします、姉様。」

「ええ。それで………―――エリス、貴女はこれから”どうしたい”?」

「え…………ど、どういう意味ですか、姉様。」

エリゼの問いかけに呆けたエリスは不思議そうな表情で尋ねた。

「さっきも言ったように貴女は今年度に女学院を退学してもらうわ。逆に言えば今年度―――来年の3月31日まで貴女は”聖アストライア女学院生”でいられるわ。つまり私が言いたいのはそれまでの間内戦終結までユミルに滞在し続けるか、兄様達と共に内戦終結の為に”Ⅶ組”の協力者になりたいのかと聞いているの。ちなみに貴女が”Ⅶ組”の協力者になる事についての許可を既にもらっているわ。兄様とセレーネが”Ⅶ組”にいるのだから、今更一人や二人増えても問題ないという考えだし、”Ⅶ組”の協力者兼監視役を務める事になっているリフィア殿下の親衛隊の副長――――シグルーン様が兄様達と違って実戦経験が未熟な貴女のフォローもしてくださるそうよ。」

「!!………………………その、姉様は兄様達に助力する事は不可能なのですよね……?」

エリゼの言葉を聞いて目を見開いたエリスは少しの間黙り込み、複雑そうな表情で尋ねた。



「ええ。さっきも軽く説明したように私は”特殊任務”――――”特務支援課”に合流して”クロスベル解放”までロイドさん達に助力する任務に就く事になっているから無理よ。そしてクロスベルを解放すれば、即二大国と戦争をする事になるから、クロスベル解放時にリフィア達と合流する事になっているわ。」

「……………………――――姉様、その……散々心配をかけ、私の為に手間を取らせてしまって申し訳ないのですが…………」

エリゼの説明を聞いて少しの間黙り込んでいたエリスは申し訳なさそうな表情でエリゼを見つめ

「フフ、わかっているわ。―――兄様達の御力になりたいのよね?」

エリゼは優しげな微笑みを浮かべて問いかけた。



「―――はい。兄様が道を定めた以上、その背中を護るのは妹の務め。姉様の代わりに兄様の背中を護ってみせます……!」

「フフ、私やアリサさん達と同じ”未来の妻”としてではないの?」

「も、勿論それもあります!」

「クスクス…………―――貴女の気持ちはよくわかったわ。ちょっと待ってね。」

顔を真っ赤にするエリスを微笑ましそうに見つめていたエリゼは予め持ってきていた荷物の中から凄まじい聖気を纏わせた細剣(レイピア)と背中に”シュバルツァー男爵家”の紋章が刻み込まれてある服を取り出し、エリスに手渡した。



「ね、姉様、この武具は一体……?」

「―――剣の名は”セイブザロード”、剣でありながら所有者には守りの加護を与えるそうよ。防具の名は”エレメンタルドレス”。全属性に対して、強い耐性を持つ防具よ。……貴女を救出したら、貴女が兄様の手伝いをしたいと言うと思ってリフィアに頼んで”匠王”ウィルフレド様に創って頂いたのよ。幸い貴女は服のサイズも私と全く同じだったからそのまま装備しても問題ないはずよ。遠慮なく受け取りなさい。それらは貴女の為に創られた武具なのだから。」

「姉様…………何から何まで本当にありがとうございます……!」

姉の気遣いに心を打たれたエリスは涙を流してエリゼに感謝の言葉を述べた。

「気にしないで。私は貴女の姉として当然の事をしたまで。それとシグルーン様には実戦不足の貴女に訓練をするように頼んでおいたから、兄様達に追いつけるように頑張りなさい。」

「はい……!」

「それと父様達に貴女を救出した事を知らせる為に現在ユミルに向かっているから、兄様達に会う前にまずは父様達に貴女の意思も伝えなさい。父様達ならきっと貴女の意思を尊重してくれるわ。」

「わかりました……!」

「そして最後に……――エリス。兄様の”本当の父親”が判明したのだけど、貴女も聞く?」

決意の表情で頷いたエリスの様子を見たエリゼは複雑そうな表情で尋ねた。



「え……に、兄様の……ど、どういう事ですか、姉様!?」

「実は――――」

そしてエリゼはエリスに事情を説明した。

「そう……だったんですか………………―――教えてください、姉様。私は兄様がどなたのご子息であろうと兄様を受け入れます。」

「フフッ、双子の姉妹だけあって、考えている事が私と全く同じね。兄様の本当の父親は――――」

決意の表情をしたエリスを見て微笑んだエリゼはエリスに説明を始めた。



こうして……メンフィル軍によるエリスの救出作戦は無事成功した。メンフィル軍による襲撃で戦場となったヘイムダルのドライケルス広場は広場にあるドライケルス像は無惨に破壊され、絶命した領邦軍の兵士達の血によってまさに文字通り”緋の帝都”となっていたという………… 
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