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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~白隼(リベール)の決断~

~グランセル城・客室~



「―――話を最初に戻させてもらう。アリシア女王、今こそ援助をする際の条件の一つ………『後にこちらが出す条件にはリベールにとって理不尽な条件でなければどのような条件にも従う』を守って頂こうか。メンフィル軍のヴォルフ砦とハーケン門の通行の許可を頂けるのならば援助した金銭の返金を一切要求しない上、”詫びの品”も差し上げる。」

「え……わ、”詫びの品”ですか?」

「一体何に対する”詫び”なのですか?」

シルヴァンの話を聞いたクローディア姫は戸惑い、アリシア女王は真剣な表情で尋ねた。



「それは勿論、同盟を組んでおきながら貴国が掲げた提唱―――『不戦条約』を無視する事になる為、その事についてはメンフィル帝国も貴国に申し訳ないと思っていてな。その”お詫び”に用意したのが”詫びの品”だ。」

「同じくギュランドロス様やヴァイスさんの方でも、”クロスベル問題”を緩和する為に動いておられたアリシア女王やリベール王国に申し訳ないと思い、メンフィル帝国と同じ”お詫びの品”を用意する事にしました。」

「え……ヴァ、ヴァイスさん達―――クロスベルもですか?」

「…………一体何を御用意されたのですか?」

「―――ファーミシルス。あの契約書を渡してくれ。」

「ハッ!どうぞ、こちらに書かれてある内容をお読みください。」

アリシア女王の疑問を聞いたシルヴァンに促されたファーミシルスは敬礼をした後カシウスに契約書をわたし、カシウスはアリシア女王に受け取った契約書を渡した。



「………………―――――!!こ、これは………!?」

そして契約書の内容を読んだアリシア女王は目を見開いた。その内容を要約すると”ヴォルフ砦、ハーケン門にメンフィル帝国軍を通せばメンフィル帝国は3箇所、クロスベル帝国は2箇所のそれぞれが得たエレボニア帝国もしくはカルバード共和国の領地をリベール王国に譲渡する事。さらにメンフィル帝国は”謝罪金”として今後クローディア姫が王位を継ぎ、次代に王位を譲るまでの間はメンフィル帝国の税金の約1%を毎月リベールに支払う事”であった。



「なっ………!?せ、戦争によって得た地域の一部の統治権をリベールに譲渡する上……メンフィル帝国の税金の一部の贈与!?」

「ふ、普通に考えてもありえません!このような滅茶苦茶な条約は!?」

「………………………考えましたな。確かにこの内容なら我が国にとって理不尽な内容ではないどころか、莫大な”利”を得ることができる内容なのですから、断る理由が一切見当たりません。」

契約書の内容を読み終えたクローディア姫とユリア准佐は信じられない表情をし、カシウスは目を細めてリウイ達を見つめた。



「―――ちなみにこれが我らメンフィル帝国が貴国に毎月贈与する予定の税の額と詳細だ。拝見するといい。」

「――拝見いたします。………なっ!?」

シルヴァンが自分の目の前に出した書類の内容を確認し終えたアリシア女王は目を見開き

「そ、そんな………!?この額だけでもリベールの民達が王国に毎月納めている税の約10……い、いえ20倍は軽く超えていますよ………!?」

「そ、それでもメンフィルにとっては約1%だなんて……!」

「………道理で我が国を含めた他国や自治州に援助をしたり、最低でも国家予算の数年分はあると思われる莫大な金額の金銭をエレボニア帝国に渡せる余裕がある訳ですな………」

クローディア姫は信じられない表情で声を上げ、ユリア准佐は驚き、カシウスは疲れた表情で溜息を吐いた。



「――――国境に他国の軍隊……しかも同盟を結んでいる国の軍隊を通すだけで貴国の領地や民が増える上長期間メンフィルより多額の金銭を受け取れ、国家予算に組み込めるのです。貴国にとってこんな素晴らしいお話、今後一切ないかと思われますが?」

クローディア姫達が驚いている中、ルイーネは微笑みながら尋ねてシルヴァンやリウイと共にアリシア女王を見つめた。

「…………………………………わかりました。すぐに手配致します。」

リウイ達に見つめられたアリシア女王はしばらくの間黙って考え込んだ後重々しい口調で答え

「お祖母様!?」

「陛下!?」

「……………」

アリシア女王の答えを聞いたクローディア姫とユリア准佐は声を上げ、カシウスは目を伏せて黙り込んでいた。



「―――ですが一つだけ条件があります。」

「え……」

「何?」

「あら……」

しかしアリシア女王の口から出た意外な言葉にクローディア姫は呆け、リウイは眉を顰め、ルイーネは目を丸くし

「……一体何だ?」

シルヴァンは真剣な表情で問いかけた。



「先程のエレボニア帝国が貴国との戦争を回避する為の条約の中に一つだけある条約を加えて下さい。」

「へ、陛下……?」

「お、お祖母様……?一体何を……」

「…………その条約の内容とは一体何だ?」

アリシア女王の答えを聞いたユリア准佐とクローディア姫は戸惑い、シルヴァンが答えを促したその時

「――――『”百日戦役”の”真実”―――――”ハーメルの悲劇”を世界中に公表する事』……以上の条約を加えて下さい。」

アリシア女王は決意の表情でシルヴァンを見つめて言った。



「なっ!?」

「お、お祖母様、それは……!」

「……よろしいのですか?そのような事をすれば、エレボニア帝国だけでなくリベール国内でも混乱が起きる可能性も考えられますが。」

アリシア女王の答えを聞いたユリア准佐とクローディア姫は驚いたり信じられない表情をし、カシウスは真剣な表情で尋ねた。



「ええ…………ハーメルの民達の無念を切り捨てたエレボニアは勿論ですが、私達リベールも”空の女神”御自身がこのゼムリア大陸に降臨した今こそ”空の女神”にエレボニアとリベールが犯した罪を告白し、償う時だと思うのです。」

「お祖母様……」

「陛下……」

「……………………」

アリシア女王の説明を聞いたクローディア姫とユリア准佐は心配そうな表情をし、カシウスは目を伏せて黙り込んだ。



「ほう?――――国内に混乱が起こる可能性が高い事を理解していても、犠牲となり、歴史の陰に埋もれてしまった元侵略者であるエレボニア帝国の民達の無念を晴らすその気概……―――畏れ入った。アリシア女王が先程仰った条約は勿論付け加えさせて頂くし、万が一その件でリベール国内で混乱が起きた際、我らメンフィルも全面的に協力して混乱を鎮める事を現メンフィル皇帝シルヴァン・マーシルンの名においてここに誓おう。」

「無論クロスベル帝国もその件について何か協力できる事があれば、協力する事をクロスベル皇妃の一人、ルイーネ・サーキュリーの名において、ここに誓います。」

「…………ありがとうございます。もしその時が来れば、よろしくお願いします。」

シルヴァンとルイーネの言葉を聞いたアリシア女王は会釈をした。その後契約を終えたリウイ達が退出しようとしたその時、アリシア女王が呼び止めた。



「リウイ陛下、シルヴァン陛下、それとルイーネ殿。メンフィル帝国やクロスベル帝国、そして”空の女神”は”零の至宝”――――クロイス家によって作られた”人”についてはどうなさるおつもりなのですか?」

「あ…………」

アリシア女王の質問を聞いたクローディア姫は不安そうな表情をした。

「……未来のミントの話では、”零の至宝”―――キーアは10年後では”人”として穏やかな生活を送っているそうだ。」

「と言う事は”空の女神”は何らかの方法で”零の至宝”としての力を封じたのでしょうか?」

リウイの説明を聞いたクローディア姫は目を丸くして尋ねた。



「さてな……未来の出来事ゆえ、俺達が知る権利はない。今後ゼムリア大陸で何が起こるかの全てを知るのは未来のミントと、未来のミントが連れて来たエステルの娘であるサティアと”未来の零の至宝”―――”未来のキーア”のみだろうな。」

「ええっ!?」

「み、未来のキーア殿自身までもが現代に来ているのですか!?」

リウイの答えを聞いたクローディア姫とユリア准佐は驚き

「ああ、未来のミントの話では既にロイド・バニングス達と合流し、力を貸しているそうだ。」

「……今更ですが、”空の女神”どころか未来と過去の人物達が現代に降り立ち、現代の者達と共に戦う歴史等、まさに”歴史上初”のとんでもない”歴史”ですな……」

リウイの説明を聞いたカシウスは疲れた表情で溜息を吐いた。



「それとメンフィル帝国が”零の至宝”――――キーアについてどうするかという質問があったが、手出しをして利用したりするつもりは一切ない。メンフィルにとってはキーアは恩人なのだからな。恩を仇で返す等”人”として恥知らずな真似をするつもりは一切ない。」

「え……」

「……キーアさんがメンフィルの恩人とはどういう事ですか?」

シルヴァンの答えを聞いたクローディア姫は呆け、アリシア女王は目を丸くして尋ねた。



「―――キーアの因果操作により、俺とイリーナを再会させた事を始めとし、メンフィルは多くの恩恵を受けた。事態が落ち着いた後キーアには一生遊んで暮らしても使い切れない程の莫大な金額の”謝礼金”を与える事が決まっている。」

「クロスベル帝国もメンフィル帝国と同じ意見―――キーアちゃんには一切手出ししません。私達にとってもキーアちゃんは恩人ですし、クロイス家のように”神の怒り”や”世界の禁忌”に触れる事―――”人が決して手出ししてはいけない領域”は心得ておりますので、キーアちゃんに手出しして利用する事は絶対にしません。それに何よりキーアちゃんは私達が守るべきクロスベルの民の一人なのですから、罪もない民に手出しをするという皇族として相応しくない事は絶対にしませんわ。その事についてはヴァイスさんとギュランドロス様も同じ意見です。」

「そうですか…………」

(まあ、ヴァイスさんの場合はキーアちゃんが女の子だからという理由もあるかもしれませんが……)

(た、確かに……)

リウイとルイーネの答えを聞いたアリシア女王は安堵の表情で溜息を吐き、クローディア姫とユリア准佐は冷や汗をかいて苦笑していた。



「―――では我々はこれで失礼する。ファーミシルス、父上、ルイーネ皇妃。行きましょう。」

「ハッ!」

「ああ。」

「かしこまりました。―――それでは失礼します。」

そしてリウイ達は客室から出て行った。



「…………”空の女神も認めた改変されたゼムリア大陸の歴史”によって、衰退もしくは滅亡の未来が待っている二大国にせめて、”救い”があるとよいのですが…………………」

「お祖母様……」

「陛下……」

「………………」

リウイ達が客室から出た後重々しい様子を纏って呟いたアリシア女王の言葉を聞いたクローディア姫とユリア准佐は辛そうな表情をし、カシウスは目を伏せて黙り込んでいた。 
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