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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第44話

その後ユーシスの情報を集めていたリィン達はユーシスはアルバレア公爵邸にいる事を突き止めた。そして何とかユーシスに会う方法を練っていると子供達がリィン達に話しかけてある人物からの伝言をリィン達に伝え、その人物がユーシスだと察したリィン達は伝言を追って様々な場所を回り、ようやくユーシスがいると思われる場所に到着し、ユーシスが待つ場所に向かった。



~バリアハート空港・定期飛行船内~



「―――遅かったな。」

「あ……!」

リィン達が室内に入るとユーシスが外の景色を見つめ、リィン達へと振り返った。



「ユーシス―――!」

「やはり、そなただったか。」

「フン、待ちくたびれたぞ、随分と時間がかかったようだな?」

リィン達との再会を喜ぶかのようにユーシスは静かな笑みを浮かべてリィン達を見回した。



「ふう、あなたがあんな回りくどい方法で呼びだしたからでしょう。」

「全くよ!どこかの変態仮面が出して来た謎解きをしている気分だったわよ?」

「ハハ……さすがに彼が出している謎解きと比べれば優しい問題だと思うけど。」

「変態仮面、ですか?」

アリサの言葉に頷いたエステルの言葉を聞いたヨシュアは苦笑し、エイドスは首を傾げた。



「この街は少々人目がありすぎるからな。気を遣ってやっただけありがたく思うがいい。」

「……やれやれ。」

「あ、相変わらず偉そうな子ね。」

「まあまあ。」

ユーシスの言葉にセリーヌは呆れ、ジト目でユーシスを見つめるエステルをヨシュアは諌めていた。



「はは………でもよかった。こうしてまた会う事ができて。無事でいてくれて……本当に安心したよ。」

「……お前の方もな。よくぞあの状況を乗り越え、ここまで辿り着いたものだ。……まあ、お前ならば成し遂げるとは思っていた。この俺が見込んだ男だからな。」

「はは……きっと、みんなのおかげだろう。ありがとう、ユーシス。」

「ふふ、ようやくこれで皆様全員が揃いましたね。わたくしも嬉しい限りですわ♪」

「はい……本当に。」

シャロンの言葉にエマは笑顔で頷き

「ふふ、シャロン殿やエステル殿達もお力添えに感謝する。」

「アハハ、別にいいって。大した事はしていないし。」

ラウラの感謝の言葉にエステルは謙遜した様子で受け取った。



「フン、なぜRFのメイドや遊撃士達まで一緒にいるのかは知らんが……………」

「ユーシス……?」

「何か気になる事があるのですか?」

突如黙り込んだユーシスを見たリィンとエイドスは不思議そうな表情をした。



「……お前達の動きは貴族連合を通じて伝わっていた。あの”灰色の騎士人形”を使って各地の貴族連合の部隊を何度か退けていることも……しかし正規軍に属することなく、あくまで”第三勢力”として動いているということもな。」

「あ……」

「ふうん、”騎神”のことも一応は伝わってるみたいね。」

「そして……俺がこの場を作ったのは、単にお前達と再会するためだけではない。俺とお前達の立場の違いを今一度、明確にしておくためだ。」

「ユーシスさんと、私達の立場……」

「もしかして君は……」

ユーシスの話を聞いたエマは不安そうな表情で考え込み、ある事を察したヨシュアは複雑そうなをした。



「……なるほど。つまりそなた……我らと共に来る気はないのだな?」

「へっ!?」

ラウラの推測を聞いたエステルは驚き

「あ……」

「……まさか……」

アリサとガイウスはユーシスを見つめた。



「フン……何を驚く事がある。これでも一応、”貴族連合”の中核であるアルバレア家の人間だ。既に領邦軍の指揮など父の手伝いをしていることはお前達も知っている筈だ。」

「それは……」

「……貴族の義務、か。」

ユーシスの指摘にリィンは反論できず、ラウラは目を伏せた。



「そして兄は連合軍の総参謀として働き……父は―――猟兵を雇ってユミルを――お前の故郷を襲った。あの心優しい人々がいた俺にとっても思い出深い場所を。」

「あ…………」

嘆くように呟いたユーシスの言葉を聞いたリィンはユミル襲撃の日を思い出した。



「……すまない。俺がもう少し早く実家に戻っていれば……―――いや、弁解は無用か。……リィン、一つだけ聞きたい事がある。」

「……何だ?」

「メンフィル帝国はユミル襲撃の報を受け、どんな反応をしている。」

「そ、それは…………」

ユーシスの問いかけにリィンは口ごもり

「――――先日エリゼ様とリフィア殿下の親衛隊の副長を務めておられ、”伯爵”の爵位も持つシグルーン様が男爵閣下のお見舞いに参られ、その際にメンフィル帝国はエレボニア帝国との戦争に備え、準備を始めている話を遠回しな言い方で教えてくれましたわ。……ちなみにメンフィル帝国は”百日戦役”の時と違い、エレボニア帝国を本気で滅ぼすおつもりのようです。最低でもエレボニア帝国全軍の10倍以上はある兵力を揃え、リウイ陛下を始めとした戦場で多くの武勲を立てて来た勇将達も投入するとの事です。」

「シャロン!」

シャロンが代わりに説明し、アリサが不安そうな表情で声を上げた。



「そう……か……やはり”手遅れ”だったか………………………」

シャロンの説明を聞いたユーシスは肩を落として考え込み

「…………エステル・ファラ・サウリン・ブライト―――いや、”ファラ・サウリン”卿。貴女に折り入って頼みがある。」

「へっ!?あ、あたし!?」

「ユ、ユーシスさん……?」

「…………………エステルを”その名前”で呼ぶって事はまさか――――」

ユーシスに視線を向けられたエステルは驚き、エマは戸惑い、ヨシュアは真剣な表情でユーシスを見つめた。



「……図々しい頼みだとは思うが今から俺をリウイ陛下達の許に”連行”してくれ。かつてプリネから貴女はリウイ陛下達と気軽に面会できる立場である話を聞いた事がある。貴女にしか頼めない事だ。」

「れ、”連行”って……」

「……まさか貴方は…………」

ユーシスの言い方から何かを察したアリサは不安そうな表情をし、ある事を察したエイドスは悲しそうな表情をし

「ユーシス!まさかお前、猟兵達にユミルを襲撃させる指示を出したアルバレア公爵の代わりにリウイ陛下達――――メンフィル帝国の”裁き”を受けて戦争を止めるつもりか!?」

リィンは血相を変えてユーシスを見つめた。



「ううん…………こう言う言い方はしたくないけどユーシス君だけが犠牲になっても、メンフィル帝国は絶対に戦争を止めないわ。”主犯の息子を裁いた程度”でリウイ達――――”メンフィル帝国”の怒りが収まるとはとても思えないもの。」

「……猟兵達にユミル襲撃を直接指示したアルバレア公爵本人なら、まだ可能性はあるかもしれないけど…………」

エステルとヨシュアは辛そうな表情で説明し

「…………始めから俺の首一つで戦争を止められるとは思っていない。”総参謀”の兄上と違い、貴族連合の中でも重要人物でもなく、しかも妾の子である俺はメンフィルにとってはそれほど価値はないだろうしな。だが、妾の子とはいえ”アルバレア公爵家”の息子である俺が処罰される事で開戦する日数を遅らせる事くらいならできるかもしれん。俺一人の首で開戦する日にちを伸ばし、エレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争回避を練る猶予が作れるのなら安いものだ。」

ユーシスは辛そうな表情で答えた。



「そんな……!」

「エレボニア帝国を守る為に死ぬ気なのか……」

「…………それも貴族の義務……―――いや、”猟兵達にメンフィル帝国領の襲撃を指示した主犯であるアルバレア公の息子として”の責任を取るつもりなのか。」

「その心がけは御立派ですが…………」

「というかアンタ一人だけが犠牲になっても、ただの犬死だと思うわよ?話を聞く限り、メンフィル帝国はアルバレア公爵家や貴族連合どころかエレボニア帝国自体に対しても相当な怒りを抱いているみたいだし。」

「セリーヌ!」

ユーシスがメンフィル帝国に”処刑”される事も覚悟している事にアリサやガイウス、ラウラとシャロンは辛そうな表情をし、セリーヌの推測を聞いたエマは声を上げた。



「……例え俺の死が無駄になっても仕方のない事だ。それが俺が”アルバレア公爵家の子息として”メンフィル帝国にできる唯一の”償い”だからな。そしてお前達も気付いているだろう。もはや俺とお前達との間には埋めようもない溝がある事を。道は―――わかたれたという事を。メンフィル帝国に裁かれる立場である俺の事など、とっとと忘れるがいい。」

「そんな………………」

「……………………」

「ユーシスさん……………」

「…………………………」

ユーシスの言葉に仲間達が辛そうな表情をしている中、リィンは目を伏せて考え込んでいた。



「―――さてと。この街から出る方法を考えるぞ。できればメンフィル領であるケルディックに向かい所だが―――――」

「…………ユーシス。」

ユーシスが考え込み始めるとリィンが制止した。



「ユミルの事、アルバレア家の責務の事、メンフィル帝国の事――――色々なしがらみがあるのはわかる。……ちなみに父さんは先日、目を覚ましたばかりだ。ほとんど傷も回復して……後は体力を戻すだけだろう。」

「そうか……良かった。できれば直接、お見舞いと謝罪をしたかったが……」

リィンの話を聞いたユーシスは安堵の表情をした後辛そうな表情をしたが

「いや、気にしないでくれ。俺が言いたかったのは―――それを理由にするなって事だ。」

「え…………」

リィンの指摘に呆けた表情をした。



「大事なのは、ユーシス自身がどうしたいかって事だろう。真にエレボニア帝国を守る為にメンフィル帝国に裁かれるつもりなら、俺達だって止めやしないし、ユーシスの覚悟を無碍にしないように陛下達に何とか進言もするつもりだ。……だが、少しでも自分を曲げているんだったら。俺の父が傷ついた事にありもしない責任を感じているなら……後戻りできなくなってしまったと勝手に思い込んでいるのなら―――それはただの”逃げ”だろう。真のエレボニア帝国貴族に相応しいとは俺には思えない。俺の父がここにいたら……叱って、諭しているはずだ。」

「っ…………!」

(湖でエマさんを説得していた時から感じていたけど……”あの人”と少し似ている部分があるわね、この子……)

リィンの指摘にユーシスは息を呑み、エイドスは目を丸くしてリィンを見つめていた。



「でも……その通りだわ。」

「……無理をしているのは俺の目から見てもわかる。」

「……俺達はまだ学生で自分達のことで手一杯だ。この内戦やメンフィルとエレボニアの外交問題も、様々な対立も将来どうすべきかも……未熟なままで答えを出すなんてとてもできるとは思えない。だからこそ―――俺達はもう一度集まるべきだと思う。生まれも違えば、立場も違う、そんな”未熟者同士”……それでも意見と知恵を重ねて難しい状況を乗り越える――――……俺達が”特別実習”でやり遂げてきたことだろう?」

「…………あ…………」

リィンを始めとした仲間達の言葉にユーシスは呆けた。



「フフ……そうだな。」

「そうですね……それが私達”Ⅶ組”でした。」

「ま、見てる方はハラハラしっ放しだけどね。」

「うふふ……そうですわね。」

「……まあ、エステルの暴走癖に比べれば大した事はないと思いますけどね。」

「ちょっとヨシュア!?それ、どーいう意味よ!?」

「ま、まあまあ。落ち着いて下さい、エステルさん。」

セリーヌの言葉にシャロンと共に同意したヨシュアの言葉を聞いてヨシュアを睨むエステルをエイドスは苦笑しながら諌めていた。



「フン……何となくだが。お前には、俺の”迷い”を斬られるような予感はあった。」

「ユーシス―――」

「だが―――それでも俺にはアルバレア公爵家の人間として果たすべき責任と義務がある。それでもお前が、お前達が引き下がらないというならば……――”勝負”をもってケリをつけるしかあるまい。一ヶ月前、お前とクロウが”騎神”を駆ってそうしたように。」

「勝負……!?」

「ついてくるがいい、リィン。”オーロックス峡谷”――――かつて俺達が実習で通ったあの地で白黒をつけるとしよう。」

ユーシスの言葉に驚いているリィン達を遠くから見つめている者達がいた。



「フン、まったく―――”紅き翼”の情報を集めていたらとんだ所に出くわしましたわね。アルバレア公に対する義理などはありませんが……一応、見届けた方がいいかもしれませんわね?」

リィン達の様子を見ていた娘は不敵な笑みを浮かべ

「ふわああっ……オレはどっちでもいいぜ。お前さんに全部任せるからよろしく頼むわ。適当に街をブラついてるからよ。」

娘の近くにいる炎を顕すかのような真紅のコートを纏った男はダルそうな表情で呟いた。



「って、貴方が来ないでどうするんですのっ!?わたくしはあくまでサポート――――あなた方”ナンバー持ち”を手伝っているだけですわよ!?」

「わーったよ……ったく、面倒くせぇな。」

娘に指摘された男はめんどくさそうに頭をかいたがすぐに目つきを変えた。

「ま、知った顔もいるしちっとは愉しめそうだな。」

リィン達と共にいる人物達―――シャロンとヨシュアの姿を確認した男は不敵な笑みを浮かべて呟いた。 
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