英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~メンフィルの真の目的~
~グランセル城・客室~
「……アルフィン皇女とリィン・シュバルツァーさんとの婚姻の件は理解しました。それより先程から気になっていましたが、第4項の”メンフィル帝国は”クロスベル帝国”とエレボニア帝国との国交回復に協力する”とは一体どういう意味ですか?」
「そ、そう言えば……」
「現在クロスベルは”クロスベル独立国”と名乗っておりますが……」
「しかも陛下達――――メンフィル帝国も”クロスベル独立国”による資産凍結の被害を受け、リベールを援助したように多くの自治州を援助と引き換えに同盟又はメンフィル領化をしてクロスベルとの戦いに備えているはずなのでは?」
アリシア女王の質問を聞いたクローディア姫とユリア准佐は戸惑い、カシウスは探るような視線でリウイとシルヴァンを見つめた。
「――――ルイーネ皇妃、アリシア女王達への説明を頼む。」
するとその時シルヴァンは客室の扉に視線を向けた。
「かしこまりました。――――失礼します。」
するとルイーネが部屋に入って来た。
「なっ!?」
「貴女は………!何故貴女がリベールに……」
「――――”六銃士”の一人、”微笑みの剣妃”ルイーネ・サーキュリー………!クロスベルでレジスタンス活動をしている貴女が何故このタイミングでリベールに…………」
ルイーネを見たユリア准佐とクローディア姫は驚き、カシウスは厳しい表情でルイーネを見つめ
「―――お初にお目にかかります。クロスベル警備隊に所属するルイーネ・サーキュリー一佐と申します。ゼムリア大陸中にその名を轟かせ、リベールの”英雄”でもある”剣聖”カシウス・ブライト准将や『不戦条約』を提唱したアリシア女王陛下にお会いできて光栄ですわ。クローディア殿下とユリア准佐とは”通商会議”以来ですわね?」
「え、ええ……それよりルイーネ一佐。先程のシルヴァン陛下が貴女の事を”皇妃”と呼んでおられましたが、それは一体……」
ルイーネに会釈をされたクローディア姫は戸惑いの表情で尋ねた。
「フフ、それは勿論ヴァイスハイト・ツェリンダー警察局長――――ヴァイスさんとギュランドロス・ヴァスガン司令――――ギュランドロス様が現クロスベル政権に対して、クーデターを起こして現クロスベル政権を崩御させた後に建国し、お二人がクロスベルの”皇帝”になる為ギュランドロス様の妻である私が自動的に”皇妃”になるからですわ。」
「なっ!?ク、クーデター!?」
「し、しかもヴァイスさんとギュランドロス司令がクロスベルの”皇帝”…………」
ルイーネの答えを聞いたユリア准佐は驚き、クローディア姫は信じられない表情をし
「……ルイーネ殿、”帝国”を名乗るには余りにも領地が少ないと思われるのですが。」
厳しい表情で考え込んでいたアリシア女王はルイーネに指摘した。
「ええ、それは理解していますわ。――――ですが、クロスベルには戦争を仕掛けるには十分な理由がある国家が存在しているのですから、その国家に戦争を仕掛け、領地を奪い取れば”帝国”に相応しい大国となります。」
「!!ま、まさか………!」
「エレボニア帝国とカルバード共和国に戦争を仕掛けるつもりか……!」
「む、無謀すぎる……!戦力差が圧倒的に違いすぎるのに何故そのような事を!?」
ルイーネの話を聞いてある事を察したクローディア姫は血相を変え、カシウスは厳しい表情をし、ユリア准佐は信じられない表情で指摘し
「………!――――まさか。ヴォルフ砦とハーケン門の通過の許可を求めた真の目的はメンフィル帝国も”六銃士”によって建国されたクロスベルと共に二大国に攻め入る為ですか?」
メンフィル帝国のリベール王国への要望と照らし合わせてある事に気付いたアリシア女王は目を細めてリウイとシルヴァンに視線を向けた。
「あ…………」
「た、確かにメンフィルが加われば二大国相手でも互角―――いえ、圧倒的に戦え、ほぼ確実に勝利できると思われますが……」
「しかもクロスベル側からはベルガード門とタングラム門、リベール側からはハーケン門とヴォルフ砦を通過すれば二大国を挟み撃ちする形で一気に攻め入る事ができるな……」
アリシア女王の指摘を聞いたクローディア姫は表情を青褪めさせ、ユリア准佐は戸惑いの表情をし、カシウスは目を細め
「フッ、さすがは”賢王”と名高いアリシア女王と優秀な戦略家でもあるカシウス准将。お二方とも見事な慧眼だ。」
シルヴァンは感心した様子でアリシア女王とカシウスを見つめた。
「っ!!」
「やはりですか……しかし一体何故彼らと同盟を?メンフィルが彼らと同盟を組んでも”利”にはならないと思うのですが。」
シルヴァンの答えを聞いたクローディア姫は目を見開いて息を呑み、カシウスは真剣な表情で問いかけた。
「―――”利”なら既にある。既に彼らにより我らでは知り得なかったメルキアの古の知識――――”魔導技術”と強力な”魔物配合”や”魔術技術”の情報が提供された。それらによってメンフィル帝国軍は大幅な戦力強化や魔導並びに魔術技術によるメンフィル領内全体の生活に対する恩恵を受ける事ができた。」
「また、彼らと同盟を組む事で二大国に戦争を仕掛けて領地を大幅に増やす事ができる。彼らと組む”利”は十分にある。戦争回避条約の中にあったエレボニアに領地を贈与された際、ラマール州全土と”ルーレ”を含めたノルティア州の領地についてはクロスベルに贈与し、”ザクセン鉄鉱山”の鉱山権は半分に分ける手筈になっている。」
「そ、そんなっ!?シルヴァン陛下!メンフィルとヴァイスさん―――いえ、クロスベルがエレボニアとカルバードとの戦争を開戦すれば、西ゼムリア大陸が大混乱に陥る事は承知されているのですか!?」
リウイとシルヴァンの答えを聞いたクローディア姫は表情を青褪めさせた後すぐに気を取り直して怒りの表情で怒鳴ったが
「その事についてだが……―――実質あまり混乱しないと思われるが。既に”我が国”の傘下となった自治州や自由都市も西ゼムリア大陸内でもそれなりに存在する。」
「そして今もクロスベルを支配している暗君ディーターの策略によってクロスベルの傘下となる自由都市や自治州も存在していますので、それらも合わせれば西ゼムリア大陸は”一部”を除いて秩序を保てると思われます。」
「!!」
(ディーター大統領や今のクロスベルの状況をも利用するとは………なんという謀略家……!下手をすればあの”天使”と同じくらいなのではないか………?)
シルヴァンとルイーネの説明を聞いて目を見開いて息を呑み、ユリア准佐は厳しい表情でルイーネを見つめていた。
「それとクローディア姫、忘れていないか?我らメンフィル帝国はエレボニア帝国に戦争を仕掛ける”理由”が十分にある事を。敵国を滅ぼす為に他国と同盟を組む等、一般的によく聞く話だ。」
「そ、それは……!だからと言ってエレボニア帝国と違い、メンフィル帝国に対して敵対行動を取っていないカルバード共和国にまで戦争を仕掛けるのなんて、間違っています!」
「………アルテリア法国の承認も取れていないのに”帝国”を名乗ろうとする”自治州”と同盟を結ぶのもどうかと思われますが。そもそもメンフィル帝国の領となった各自治州および自由都市、”クロスベル独立国”の呼びかけに応えた地域に関してはアルテリア法国もまだ承認していなかったはずですよ。」
クローディア姫がリウイに反論したその時アリシア女王は真剣な表情で指摘した。
「フフ………――――逆にお尋ねしますが何故”たかが宗教団体”が統治する”他国”に”国”を名乗る許可が必要なのですか?」
「同じく何故”宗教団体如き”に他国が我が国の傘下となる事に許可を貰う必要がある?」
「なっ!?」
「ア、アルテリア法国……いや、”七耀教会”の意見を無視するおつもりか!?」
「…………………貴方方もゼムリア大陸と七耀教会の関係は重々承知していると思われるのですが。」
しかしルイーネとシルヴァンから返って来た予想外の答えにクローディア姫とユリア准佐は信じられない表情で声を上げ、カシウスは厳しい表情で尋ねた。
「―――そもそも我が国は貴国と違って七耀教会と”盟約”を結んでいるわけでもないし、七耀教会に気を使う義理はない。むしろこちらが統治している領に宗教活動を無条件で”認めてやっている”上”寄付してやっている”だけでも感謝されるべきだ。」
「それはクロスベルも同じ事。それに各地に散らばっている教会支部は七耀教会の”善意”で支部を建てているだけなのでしょう?第一、”空の女神”御自身はこの戦争の件について口出しするつもりはないと”空の女神”御自らの答えも頂いておりますから、”空の女神”を崇める七耀教会の意見も気にする必要はないかと。」
「なっ!?」
「ええっ!?」
「”空の女神”自身から答えを頂いている……それは一体どういう事ですか?」
ルイーネの答えを聞いたユリア准佐とクローディア姫は驚き、アリシア女王は戸惑いの表情で尋ねた。
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