英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~”戦争回避条約”の救済条約~
~グランセル城・客室~
『”戦争回避条約”の救済条約』
1、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁する事(正妻、側室、愛人は問わない)
2、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁した際、”戦争回避条約”の第3項、第4項、第9項、第10項の条約は消滅し、第5項の条約の内容を変更する(変更部分:内戦に加担していたエレボニア貴族のメンフィル帝国への帰属の不許可を条件付きの許可(条件、爵位を一段階下げる。)に変更。※ただし、”四大名門”は禁ずる)、同時にエレボニア帝国がメンフィル帝国に対する”友好”を示した”証”としてメンフィル帝国は100兆ミラ並びに内戦で荒れ果てたエレボニア帝国に必要な分の支援物資を贈与する
3、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女とリィン・シュバルツァーとの間に産まれて来た子供やその子孫についてはエレボニア皇家である”アルノール家”が望まない限り、エレボニア帝国の皇位継承者の権利は存在しないものとする
4、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁した際、メンフィル帝国は”クロスベル帝国”とエレボニア帝国との国交回復に協力する
「ええっ!?ア、アルフィン皇女が”Ⅶ組”のリィンさんに……!?」
「一体何故このような条約を?アルフィン皇女の子供やその子孫が持つエレボニア皇家の皇位継承権がメンフィルにとって唯一の”利”としか思えませんのに、それすらも放棄してしまえばメンフィルにとっての”利”は全くありませんが……」
条約の内容を読み終えたクローディア姫は驚き、カシウスは戸惑いの表情で尋ねた。
「アルフィン皇女は”庶子”であるオリヴァルト皇子と違い、正真正銘の”高貴な血”を引いている皇女だ。そして条約で指定されているアルフィン皇女の婚姻相手であるリィン・シュバルツァーは言い方は悪くなるが出身不明の養子―――つまり”両親共に平民の血”を引いている者だ。そしてエレボニア帝国は”高貴な血”を誇っている。その”高貴な血”――――つまり”誇り”を金欲しさに”生粋の平民”に嫁がせた事―――即ち”国の誇り”を捨てた事をメンフィルの民達が知れば、民達のエレボニア帝国に対する溜飲が下がる。それとエレボニア皇家―――”アルノール家”が流行病や事故等で子孫を残さず滅んだ場合、リィン・シュバルツァーとアルフィン皇女の子供やその子孫をエレボニア皇家の正当後継者として名乗り上げさせる事もできる上、我らメンフィル皇家―――”マーシルン家”が重用しているエリゼの実家である”シュバルツァー家”に箔を付けさせる事もできる。要は最悪の状態にまで陥ってしまった国家間の関係修復をする為の”必要経費”と思ってもらっていい。」
「なっ!?それはアルフィン皇女を……エレボニア皇族である”アルノール家”を最大限に侮辱する行為としか思えません!皇族を―――”人”を金銭や物資の支援を盾に買い取るなんて、言い換えれば”人身売買”です!」
リウイの答えを聞いたクローディア姫は驚いた後厳しい表情で叫んだ。
「言っておくが、この条約をエレボニア帝国が実行すればエレボニア帝国にも金銭の件以外の”利”もある上、”政略結婚”としても成り立つのだぞ?」
「え………」
「金銭以外の”利”、ですか。それは一体どのような”利”ですか?」
静かな表情で答えたリウイの答えを聞いたクローディア姫は呆け、アリシア女王は真剣な表情で尋ねた。
「そちらにも情報が入っていると思うが、リィン・シュバルツァーが操縦する”灰色の騎士人形”―――”灰の騎神”ヴァリマールはガレリア要塞、ノルド高原にて領邦軍を撃退し、結果的に正規軍の助けとなっている。もしこのままヴァリマールがエレボニア帝国中で活躍し、内戦を終結させる手助けとなった場合、ヴァリマールの操縦者であるリィン・シュバルツァーはエレボニア帝国の民達からどのような目で見られる?先に言っておくがはぐれた”Ⅶ組”のメンバーとの合流を目指すリィン・シュバルツァーの性格やガレリア要塞跡やノルド高原での行動を考えると、確実に”Ⅶ組”と共にエレボニアの内戦に何らかの形で介入し、内戦終結の貢献をすると思われる。」
「………内戦終結の貢献をした彼は”英雄”として称えられるでしょうな。そして他国の貴族とは言えエレボニアの”英雄”とエレボニアの皇族が婚姻を結ぶ事で、滅亡の危機に陥っていたエレボニアは衰退しながらも”最悪の結果”―――”国の滅亡”は逃れる事になり、エレボニア滅亡を防いだアルフィン皇女――――エレボニア皇族である”アルノール家”はエレボニアの民達の信頼を取り戻す事ができますな。しかもアルフィン皇女のお相手は血は”平民”とは言え、エレボニアの”英雄”である事に加えてエレボニア皇族と縁があるメンフィル帝国の”貴族”の子息……それも広大なクロイツェン州全土を納める事と”公爵”の爵位を授けられる事が約束されているのですから、そんな相手に”高貴な血”を引くアルフィン皇女を降嫁させるエレボニアの面子も守られますな。」
「確かにそれなら両国にとって、それぞれの”利”となる為、”政略結婚”としても成り立ちますね。」
「あ……………………」
「し、しかし、この条約ではアルフィン皇女の意思を完全に無視しているとしか思えないのですが……というか、一体誰がこのような条約を提案したのですか?」
リウイの説明を聞いて真剣な表情で推測したカシウスは疲れた表情になり、アリシア女王は複雑そうな表情で呟き、リウイ達の話を聞いたクローディア姫は呆け、ユリア准佐は不安そうな表情で尋ねた。
「その条約を提案したのはプリネだが、実際にプリネにその提案を持ちかけたのはエリゼだと聞いている。」
「ええっ!?プリネさんが!?」
「しかも実際に提案したのはリィンの妹であるエリゼですか……一体何故そのような提案を?」
シルヴァンの話を聞いたクローディア姫は驚き、カシウスは戸惑った後真剣な表情で尋ねた。
「―――リィン・シュバルツァーの”Ⅶ組”―――いや、”トールズ士官学院”にてできた友人達や教官達、そして”特別実習”にて結んだエレボニア帝国の人々に対する罪悪感を少しでも軽くする為だと聞いている。それと先程アルフィン皇女の意思を無視しているという意見があったが、エリゼやプリネ達の話ではアルフィン皇女はリィン・シュバルツァー自身に恋愛感情を抱いている上、学院祭の後夜祭の時に接吻までしたとの事だからそれ程問題はあるまい。むしろリィン・シュバルツァーと接吻まで交わす程、リィン・シュバルツァーに対して強い恋愛感情を抱いているアルフィン皇女自身にとっては都合がいい条約だろうな。」
「なっ!?」
「ええっ!?ア、アルフィン皇女がリィンさんに!?し、しかも接吻まですましているなんて………!?」
「なるほど……アルフィン皇女の恋愛感情を利用するやり方は正直どうかと思われますが、アルフィン皇女自身は祖国を救う事ができ、”個人としての幸せ”も手に入れる事ができる為、アルフィン皇女にとっても一応一石二鳥の”利”になりますな……」
リウイの説明を聞いたユリア准佐とクローディア姫は信じられない表情で声を上げ、カシウスは疲れた表情で呟いた。
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