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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~戦争回避条約~

~グランセル城・客室~





『戦争回避条約』







1、”アルバレア公爵家”並びに”カイエン公爵家”の爵位を剥奪して”平民”に落とし、剥奪した公爵家の全財産を没収して全てメンフィル帝国に贈与し、エリス・シュバルツァーの誘拐を直接実行したアルティナ・オライオン、誘拐の指示をしたヴィータ・クロチルダ、カイエン公爵家並びにアルバレア公爵家の当主、当主の正妻、そしてそれぞれの家の長男の身柄の引き渡しをする事



2、クロイツェン州全土とラマール州全土、残りの”四大名門”の本拠地、そしてノルティア州とサザーランド州からはメンフィル帝国が指定する領地の統治権、”ザクセン鉄鉱山”の所有権をメンフィル帝国に贈与する事



3、謝罪金並びに賠償金合計1000兆ミラの支払い



4、内戦によってメンフィル帝国領並びにリベール王国に避難してきた難民達の生活費等の支払い(なお、内戦が始まってから現在に到るまでの金額は利子込みで500億ミラで、内戦終結まで1日経つ度に難民達の一日の生活費を利子込みで20億ミラが増加し続ける)



5、メンフィル帝国に贈与した元エレボニア帝国領地に住んでいる貴族達は”アルゼイド子爵家”のような内戦に加担していない貴族以外は全てメンフィル帝国への帰属を許さない。よって贈与された元エレボニア帝国領内に引き続き住むのならばメンフィル帝国は爵位を剥奪して”平民”に落とし、貴族としての”爵位”を維持し続けたい場合はエレボニア帝国が引き取り、エレボニア帝国領内に住まわせる事



6、ユーシス・アルバレアは士官学院卒業又は退学後”アルバレア公爵家”の”シュバルツァー家”への”償い”として、ユーシス・アルバレアの子孫も含め、永遠に”シュバルツァー家”に仕える事。なお、ユーシス・アルバレア自身には”男爵”の爵位をメンフィル帝国が授けると共にケルディック地方の領主権限を授け、ユーシス・アルバレアやその子孫が功績を残せば爵位を上げる事や領主権限を増やす事も考慮する。また、”シュバルツァー家”の次期当主であるリィン・シュバルツァーは”シュバルツァー家”を継いだ際、今までの功績を評してメンフィル帝国より”公爵”の爵位が授けられ、クロイツェン州全土の領地の経営を任せられる。



7、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女は女学院卒業又は退学後メンフィル帝国領内で一生を過ごす事。メンフィル帝国で行う社交界への参加は許可するが、エレボニア帝国で行う社交界は夏至祭、皇族の誕生日、年末年始の際に行う社交界以外の参加を禁じ、帰省は1年につき30日間のみ認める。また、アルフィン皇女とエレボニア帝国人(貴族も含める)との結婚も禁ずる。(愛人として迎える事も禁ずる)



8、ユーゲント・ライゼ・アルノール皇帝はユミルに自ら赴き、”シュバルツァー家”にメンフィル帝国領であるユミルを自分の不徳によって起こったエレボニア帝国の内戦に巻き込んだ事を誠心誠意謝罪し、エレボニア皇家の財産からシュバルツァー家に謝罪金並びに賠償金を支払う事



9、エレボニアは今後『帝国』の名を捨て、『王国』または『公国』を名乗る事



10、エレボニア人がメンフィル帝国領に入国する際、平民は入国料金一人1万ミラ、貴族、皇族は一人10万ミラを入国時に毎回支払う事を承認する事。更にメンフィル帝国領内でエレボニア人(貴族、平民問わず)が犯罪を犯した場合、通常の判決より厳しい判決が降される事を承認し、メンフィル帝国領内で犯罪を犯したエレボニア人がエレボニア国内に逃亡した場合は犯人逮捕に積極的に協力し、犯人の引き渡しをする事





以上の内最低二つを即実行後、メンフィル帝国が定めた期間以内に内戦を終結させて残りの全てを実行するのならば、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対する侵略行為を中止し、和解にも応じる。









「こ、この条約は……!?」

「そ、そんな…………――――リウイ陛下、シルヴァン陛下!こちらの”契約書”に書かれてある”条約”は幾ら何でも余りにも理不尽ではありませんか!?これではエレボニア帝国が貴国に隷属したも同然の扱いです!」

契約書の内容を全て読んだユリア准佐は信じられない表情をし、クローディア姫は表情を青褪めさせた後二人を睨んだ。

「一部を除けば金銭と領地をメンフィルに贈与するだけだ。戦争によって多くの民達や兵達の犠牲が出る事と比べれば、人道的な内容だと思うが?」

「し、しかし……”アルバレア公爵家”の次男――――ユーシスさんの件はまだ理解できますが、何故アルフィン皇女やユーゲント陛下まで責任を取る事に。お二方とも被害者なのに……」

シルヴァンの答えを聞いたクローディア姫は不安そうな表情で反論した。



「皇族が責任を取るのは当然の事だ。それに自分自身が狙われている身である事を理解していながら、他国領であるユミルに避難して来たアルフィン皇女自身もそうだが、”貴族派”と”革新派”をまとめきれず、結果内戦を引き起こしてしまい、メンフィル帝国領であるユミルまで巻き込んだユーゲント皇帝にも”人”として……そして”皇帝”としての責任を取る必要がある。―――俺の言っている事に何か間違いはあるか?」

「そ、それは…………」

しかしリウイの正論に対する反対の意見が思い浮かばず、黙り込んだ。

「エリス嬢を誘拐した下手人達とカイエン公爵家並びにアルバレア公爵家の当主達の身柄の引き渡しとありますが、メンフィル帝国はエレボニア帝国に引き渡された彼らをどうするおつもりなのですか?」

その時ある事が気になっていたカシウスは尋ねた。

「フン、当然”処刑”に決まっているじゃない。まあ常識で考えたら、貴族の子女―――それも次期”公爵家”になる事が約束されている貴族の誘拐を実行した下手人達は当然として、内戦を起こした上貴族が仕えるべき主――――皇族を軟禁、誘拐したのだから、私達が処刑しなくても内戦を引き起こした貴族連合のトップである”主宰”のカイエン公爵と”総参謀”のルーファス・アルバレア、そして他国領であるユミルの襲撃を猟兵達に指示した張本人のアルバレア公爵に対して処刑の判決が下って当然だと思うわよ?そして主犯格の正妻や長男も責任を取って処刑されるのは当然よ。第一皇族に逆らうどころか危害を加えた上、内戦も引き起こした者は一族郎党処刑でもおかしくないでしょう?まあ、”蒼の深淵”は魔術師としての使い道はありそうだから、メンフィルに忠誠を誓うのならレーヴェの時同様罪を許して、ある程度の自由を認めてやってもいいというのがメンフィルの考えよ。」

カシウスの問いかけに対してファーミシルスは鼻を鳴らした後嘲笑し

「…………………………」

ファーミシルスの答えに対する反論を持ち合わせていないアリシア女王達は重々しい様子を纏って黙り込んだ。



「リウイ陛下……陛下はトールズ士官学院の常任理事の一人を務めているとお聞きしています。なのに、エレボニア帝国に対してこのような(むご)い仕打ちをする事について、何も思わないのでしょうか?学院に留学しているプリネさん達だって、きっとお辛い立場だと思います。」

そしてやがて口を開いたクローディア姫は悲しそうな表情でリウイを見つめ

「その件と今回の件は別問題だ。第一国際問題に俺やプリネ達を含めたメンフィル帝国人の”個人の感情”は関係ない。それに今の俺は帝位を退いた身。メンフィル帝国の今の皇帝はあくまでシルヴァンであり、シルヴァンの判断がメンフィル帝国の判断でもある。それと言っておくが本来は戦争回避の条約に関して更に厳しい条約の案も出ていたが、俺やイリーナ、プリネ達の口添えによって戦争回避の条約をここまで”譲歩”したのだぞ?」

リウイは静かな表情で答えてクローディア姫を見つめた。



「陛下達が………」

「”譲歩”して、この条約ですか。この条約より更に厳しい条約等想像できませんし、したくもありませんな……」

「メンフィル帝国はそれ程までにエレボニア帝国の”ユミル襲撃”の件に対して、怒りを抱いていると言う事でしょうね……」

リウイの説明を聞いたクローディア姫は呆け、カシウスは疲れた表情で呟き、ユリア准佐は重々しい様子を纏って呟いた。



「――しかし、この条約内容では領地の贈与や入国料金等の件はともかく、国家予算数十年分をも超えると思われる莫大な金額の賠償金等金銭に関する支払いは現実的に考えて不可能だと思うのですが。IBCの資産凍結によってエレボニア帝国は経済が著しく衰えている状態でしょうし、エレボニア皇室に溜め込んである莫大な財産を開放した上エレボニア皇家や貴族達が所持している資産価値の高い調度品等を全て売り払っても払いきれない金額だと思います。」

「―――その点に関しての救済も考えてあり、その条件も既にある。」

アリシア女王の指摘を聞いたリウイは答え

「え…………」

「……一体どのような条件なのでしょうか?」

リウイの答えを聞いたクローディア姫は呆け、アリシア女王は尋ねた。そしてリウイ達はアリシア女王達に別の契約書を見せた。

「……………………こ、これは……!?」

「………………――――え。」

契約書の内容を読んだアリシア女王は驚き、クローディア姫は呆けた。 
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