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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~報復の鼓動~

~同時刻・リベール王国・王都グランセル・グランセル城・客室~





「なっ………!?メンフィル軍のヴォルフ砦とハーケン門の通行の許可……!?シ、シルヴァン陛下……!ま、まさかメンフィル帝国は二大国に………!」

話を聞かされたクローディア姫は信じられない表情をし

「クローディア姫、勘違いしないで頂きたい。ハーケン門の件はともかく、ヴォルフ砦の通行の許可を求める理由は先程も説明したようにカルバード領と隣接しているメンフィル領に”有事”に備えて兵を送るだけだ。カルバードもエレボニア同様内戦の真っ只中だ。カルバード領と接しているメンフィル領がユミルの件のように内戦に巻き込まれない保証はどこにもない。」

「そ、それは……」

「…………カルバード共和国側の件はひとまず置いておきまして。――――シルヴァン陛下、リウイ陛下。メンフィル帝国は本気でエレボニア帝国に戦争を仕掛けるおつもりなのですか?貴国の事情はお聞きしましたが、幾ら何でも戦争を仕掛けるのは早計ではないでしょうか?」

シルヴァンの答えにクローディア姫が反論できない中、アリシア女王は真剣な表情で問いかけた。



「――――既にエレボニア帝国の大使館に再三に渡って誘拐されたエリス嬢の返還と誘拐犯である下手人―――アルティナ・オライオンの身柄の引き渡し並びにユミル襲撃の主犯であるアルバレア公爵の引き渡しも要求したが、ユミル襲撃の事件発生日から今日に到るまでそのどれもが実行されていない。渡されたのは”賠償金”並びに”謝罪金”という名のはした金だけだ。約2週間も猶予も与え、警告もしたというのにそのどれもを実行しないという事は我らメンフィル帝国と剣を交える事も辞さない覚悟だと思うが?」

「そ、それは…………し、しかし!エレボニア帝国は陛下達もご存知のように内戦の真っ最中の上、ユーゲント皇帝陛下を始めとした皇族の方達は”貴族連合”によって幽閉の身の上、オリヴァルト皇子に到っては行方不明です!皇族の方達自身は貴国との戦争は絶対に望んでいないはずです!」

リウイの答えを聞いたクローディア姫は一瞬答えに詰まったが真剣な表情で反論した。

「民達を纏めきれず内戦をむざむざと引き起こしてしまった上、行方不明か虜囚の身となった情けないエレボニア皇帝や皇族達の意思を含めたそのような”下らない事”は他国である我らにとっては”一切関係ない”!重要なのはエレボニア帝国がメンフィル帝国領を襲撃した挙句、男爵夫妻にも危害を加え、更にはメンフィルの民を誘拐した事だ!しかも約2週間も猶予を与えたというのに、今日に到るまでこちらの要望に一切応えなかった!まさかクローディア姫は内戦が終結するまで、これらの狼藉を見逃せと仰るのか!?幽閉の身であるエリス嬢も、内戦が終結するまで返還を待てと仰るのか!?内戦が終結するまで彼女の身が無事という保証もなく!」

しかしその時シルヴァンは全身に凄まじい”覇気”を纏って怒りの表情で机を叩いてクローディア姫を睨んで指摘し

「そ、それは………………」

(殿下……)

シルヴァンの指摘に反論できず、辛そうな表情で顔を俯かせるクローディア姫をユリア准佐は心配そうな表情で見つめていた。



「……女王陛下、失礼ながら発言をしてもよろしいでしょうか?」

「カシウスさん……ええ、構いません。」

アリシア女王の許可を取ったカシウスは二人を見つめて発言した。

「リウイ陛下、シルヴァン陛下。その誘拐されたエリス嬢の件ですが……エレボニア帝国と開戦してしまえば、それこそ幽閉の身である彼女の身が危険に晒されると思われるのですが。彼女の身を心配するのならば、少なくとも彼女を救出するまでは開戦すべきではないかと思います。」

「――――その心配は無用だ。既に諜報部隊がエリス嬢が幽閉されている場所は突き止めた上、彼女の無事も確認している。現在はエリス嬢の救出作戦に向けて軍を編成中だ。」

カシウスの指摘を聞いたリウイは静かな表情で答えた。



「なっ!?」

「ええっ!?」

「…………極秘の救出作戦を行うのに軍を動かすというのですか?救出する前に悟られ、エリス嬢を別の場所に移動させられる可能性があると思うのですが。」

リウイの答えを聞いたユリア准佐とクローディア姫は声を上げて驚き、カシウスは真剣な表情で尋ね

「その心配も無用だ。一部は帝都ヘイムダルを奇襲し、そちらに注意が向いている隙に別働隊がエリス嬢が幽閉されている場所を襲撃し、エリス嬢を救出する予定になっている。」

「ヘ、ヘイムダルを……帝都を襲撃するのですか!?そんな事をすれば帝都の市民達が戦に巻き込まれて犠牲になる可能性が非常に高いのに実行するおつもりなのですか!?」

リウイの説明を聞いたクローディア姫は信じられない表情をした後、真剣な表情で声を上げた。



「兵達には”可能な限り”市民は巻き込まない事を厳命している。それに”戦争”は少なからず民にも犠牲が出てしまう。―――少なくとも”百日戦役”のようにあからさまに民達を殺戮するような真似はせん。第一我らメンフィル帝国がそのような事を実行する原因となったのも全ては”エレボニア帝国自身”だ。”ハーメル”の件と同様――――いや、”結社”の”使徒”である”白面”ワイスマンに唆されたあの時と違い”エレボニア帝国自らの意思”で実行した事なのだから、釈明の余地はない。」

「そ、そんな……………」

「…………………………」

シルヴァンの説明を聞いたクローディア姫は辛そうな表情をし、カシウスは目を閉じて黙り込み

「……まあ、現時点でエレボニア帝国との開戦は”確定事項”だが、エレボニア帝国自身が戦争回避の為に我らメンフィル帝国が出した”条件”を全て呑むのならば、我らメンフィルも”不本意”だが怒りの矛を収めて戦争を仕掛けるのを中止して和解してやってもいいがな。」

「え…………」

「”条件”ですか……差支えがなければお聞きしてもよろしいですか?勿論、どなたにも教えるつもりはございません。」

リウイの言葉を聞いたクローディア姫は呆け、アリシア女王は真剣な表情で尋ねた。



「―――いいだろう。これがその”契約書”だ。―――ファーミシルス。」

「ハッ!―――これが件の”契約書”よ。」

「……ありがとうございます。――――女王陛下。」

シルヴァンに渡された契約書をファーミシルスはカシウスに渡し、カシウスはアリシア女王に受け取った契約書を渡した。

「拝見させて頂きます。……………………!?―――――こ、これは………!」

渡された契約書の内容を読んだアリシア女王は契約書に書かれてある普通なら絶対にありえない程理不尽にして信じられない条件に厳しい表情で身体を震わせ始めた。 
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