ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第42話信じらんねぇ・・・
竜side
2025年1月21日、神鳴家
オレは今朝早く起きて、二年間SAOにいて全く使っていなかったスマホを操作し、ある人物に電話をかけている。それはオレの兄、神鳴龍星。今は午前8時、早すぎる気もするが問題ないだろう。アイツの一日の平均睡眠時間は約17分という常人じゃありえないぐらい短いからな。今頃余裕で起きてんだろーーー
【もしもし?】
「もしもし龍星か?竜だ。今どこにいる?直接会って話したい事があるんだけど・・・」
【うん、全然大丈夫だよ。じゃあリビングに降りてきて】
やっぱり起きてたな。『オレだ』って言わなかったのは、アイツが分かっててオレオレ詐欺だとわざとらしく疑ってくるからしっかりと名前を言わないとメンドクサイからなーーーリビング?なんでリビングなんだーーー
「まさか・・・!」
嫌な予感を感じたオレは二階の自室を出て階段を降り、リビングのドアを開けた。そこには父さんと母さんと、その他にーーー
「りゅーちゃんおはよ~~」
「学校ないのに朝早いんじゃないか?竜」
「パパは遅すぎでしょ。会社に遅刻しないの?」
「うおっ!ヤッベ!また上司にビンタされる!行ってきまーす !」
『行ってらっしゃーい』
おはようとオレに言う母さんと、会社に遅刻しそうな父さん、そしてーーー左目が隠れるぐらい長めの金髪ショートカットの兄、龍星がいた。
「電話する必要なかったじゃねーか・・・いつ帰って来たんだ?」
「昨夜遅くにね。その時竜はもう寝てたから分かんなかったかな?」
昨日まで家にいなかったのに今朝リビングに来たら兄貴がいた。リビングに来いってーーーリビングにいるから降りて来いって事だったのか。相変わらず回りくどいなクソ兄貴。
「じゃあ早速だけど「待って!当ててみよう!」・・・」
オレのセリフの途中なのに龍星がそれを阻む。当てるって、まだ何も言ってないから無理だと思うけどな。いくら兄貴が天才だからってーーー
「うーん・・・ダメだ!やっぱり分かんないや!」
ほれ見ろーーー
「もしかしたら最近《アルヴヘイム・オンライン》を始めてアバターのステータスを確認したところ、それはSAOにいた時のステータスと全く同じ数値だった事を知った。でもそのデータは総務省に回収された竜の《ナーヴギア》に入れっぱなしだったメモリーカードの中にしかないはずなのに、ひょんな事でそのデータを手に入れてしまった。だからSAO事件に関わっていたボクに話を聞きたくて電話をかけた・・・と思ったけどやっぱ違うよね~・・・」
「キミ予言者か何か?」
ノーヒントでどうしてオレの用件をそんなピンポイントで当てられるんだよ。おかしくね?いくら天才でもおかしくね?
「・・・まあ話が早くて助かるけどよ、どういう事なのかオレの頭に分かるように教えてくれるか?大天才殿、いや・・・
総務省仮想課の若き天才新人さん?」
龍星はSAO事件の最中、イギリスのケンブリッジ大学を卒業し、総務省の人間になっていた。そして《SAO事件対策本部》なる団体に加入した。まあ、ほとんどの役人が全くと言っていいほど何も出来なかったらしいが、龍星がSAOサーバーにハッキングという離れ業をやってのけたので度肝を抜かれたそうだ。
総務省の人間なら《ナーヴギア》の回収、処分も担当しているから、オレのSAOのキャラデータが入ったメモリーカードも《ナーヴギア》もろともスクラップになってるはずなんだけどーーー
「・・・総務省仮想課は、昔茅場博士の研究室にいた須郷伸之にマークをかけていた。でも突然SAOプレイヤー達が現実世界に覚醒したので、須郷のマークを疎かにしてしまっていた」
「アイツか・・・」
須郷伸之ーーー現実に目覚めていないアスナさんと結婚しようと企んでいるゲスの極み野郎。どうやら奴は昔茅場晶彦のフルダイブ研究のチームに在籍していたらしく、SAO事件に絡んでいるのではないかとマークをしていたが、オレがSAO事件を終わらせて全プレイヤーがログアウトしたため、とてつもなく忙しくなりてんやわんやだったそうだ。
「ところで、そのメモリーカードは何処で手に入れたの?」
「何処でって・・・須郷の部下の人に貰ったんだよ」
突然須郷伸之の話からメモリーカードの話になった。まあオレが聞きたかったのはその話だから別にいいんだけどーーー
「その部下の人、性別は?なんて名前?」
「えーっと・・・橘雪乃って女の人だった」
「やっぱりもう接触済みだったか」
「知ってるのか!?」
龍星の奴、橘さんを知ってるのか?どうして須郷の部下と知り合いなんだ?
「そりゃ知ってるよ。彼女は須郷の部下として総務省仮想課から潜入捜査をしてる役人だよ。須郷に顔が割れてないのがユッキーしかいなかったんだ」
「総務省!?潜入!?ユッキー!?」
ちょっと待ってほしい。総務省から潜入してるって事は橘さんはーーー同僚って事か?いや、だからといってユッキーってなんだ?それが一番気になるーーー
「随分橘さんと親しいんだな・・・」
「親しいも何も・・・
ユッキーはボクの奥さんだから」
「・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
奥さん!?龍星の!?嘘だろ!?確かに法律上、龍星は二十歳そこそこだから結婚は出来るけどーーーいつの間に結婚してたんだよ!?
「去年の秋辺りに式を挙げたよ。いやーユッキー綺麗だったな~。ちなみに、もうあーんな事やこーんな事やそーんな事まで済ませてるから」
「思春期の弟にそんな事言うなよ!てかそれはどうでもいいんだよ!つーか去年の秋に挙式!?」
去年の秋っつたら、オレ達がSAOにいた時じゃねーか!何!?養子とはいえ弟と実の妹が命懸けで戦ってた時にそんなバカな事してたの!?信じらんねぇーーーどういう神経してんだよ。
「まあとにかくSAO未生還者の件で須郷が作ったALOが怪しいと踏んでね、ユッキーに竜の《ナーヴギア》に入ってたメモリーカードを渡して、どうにか接触して貰おうと思ったんだ」
「・・・メモリーカードと橘さ・・・雪乃さんの事は分かった。でも、それヤバくね?」
「・・・え?」
龍星に頼まれてオレにメモリーカードを渡して貰おうとした事と、雪乃さんとの関係は分かった。でもーーー
「須郷に正体がバレたら・・・雪乃さん、どうなるんだ?」
「・・・あ」
もしも須郷がとんでもない野望を抱えていて、それを雪乃さんに知られて、雪乃さんの潜入がバレたらどうなるんだ?そう龍星に尋ねたらーーー
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!そうだったぁぁぁぁぁ!!」
「それは分かってなかったの!?バカなの!?死ぬの!?」
コイツ自分の奥さんが危険に晒される恐れがあるのを気づいてなかったのか!?奥さんだぞ!?共に生涯を支え合うパートナーだぞ!?なんでそんなすぐに思い付くような事が頭に浮かばねーんだよ!?
「どうしよう・・・ユッキーに何かあったらどうしよう・・・!お腹の子に何かあったらどうしようぉぉぉぉ!!」
「おまけに身ごもってんのかい!!」
なんなのコイツ!?妊娠してる奥さんを危険人物の所に潜入捜査に行かせるってどういう神経してんだよマジで!お前パパになるの!?超展開過ぎてついていけない!!
「竜!!お前ALOでどこに行く予定だ!?」
「えーっと・・・《世界樹》攻略に向かう予定だけど。アスナさんの手がかりが《世界樹》にあって、運が良ければ未来も「頼む!ユッキーとお腹の子に危険が及ぶ前に須郷の悪事を白日の下に晒してくれぇぇっ!!」分かった!分かった!分かったから頭グワングワンするな!!」
マジで気持ち悪くなってきた。雪乃さんーーー義姉さんとお腹の子は出来ればなんとかするからオレの頭を振るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
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