ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第41話デジャブ
ライリュウside
まさか翼のあんなショボい技にやられるとわなーーーオレもまだまだって事だな。
つい先ほど、《リトルギガント》とキリトに合流した。逆立った金髪の緑色の侍服を着た《風妖精》のライト。
赤いカンフーの胴着を身に付け、赤いセミロングの髪を中華風の髪止めで止めている《火妖精》のキャンディ。
青いラインが入った白を基調とした着物を着た水色のサイドアップの《水妖精》のアリー。
黒いラインが入った青を基調としたフード付きロングコートを着込んだ無造作な黒髪の《影妖精》のミスト。
オレとキリトは今日ログインしたばかりだから完全に初期装備の両手剣と片手剣、そしてお揃いの黒い服。
キリトは先ほどリーファという《シルフ》の女性プレイヤーを助けて、お礼にオレ達が今いるこの酒場に来た。ちなみにリーファの容姿は、白いリボンで長い金髪をポニーテールにしている。それにーーー見たところ胸もかなり大きい。巨乳金髪ポニーテールか、漫画なんかのヒロインに一人はいてほしいキャラだな。
「じゃあ改めて・・・キリトくん、助けてくれてありがとう!ライリュウくんも、《アルヴヘイム・オンライン》へようこそ!」
「どうも!」
リーファの合図を筆頭に、オレ達はNPCウェイトレスに運ばれてきた紫色の飲料の入ったモンスターの角のようなグラスで乾杯し、一口飲んだ。これはーーーグレープ?SAOの食べ物は結構現実とはかけ離れた味がしたけど、ALOは現実の味とさほど変わらないな。忠実に味を再現出来てる。
「えらい好戦的な連中だったな、ああいう集団PKってよくあるの?」
「《サラマンダー》のシルフ狩りか?」
「うん」
グラスから口を離したキリトの発言から会話が始まり、ライトはリーファに質問し、そうだと返される。
元々《サラマンダー》と《シルフ》は仲が悪かったらしいが、キリトの言っていた集団PKが起こるようになったのは最近かららしい。
「きっと、近い内に《世界樹》攻略を狙ってるんじゃないかな・・・」
「それだ。その《世界樹》について教えてほしいんだ」
「そういやそんな事言ってたね。でも、なんで?」
「オレ達、《世界樹》の上に行きたいんだ。オレにも教えてくれ、リーファ。」
「ライリュウくんも・・・?」
どうやらキリトはリーファに《世界樹》の話を済ませていたらしく、オレもそれを聞く事にする。
《世界樹》の上に行くのは全プレイヤーの最終目標、《グランドクエスト》だそうだ。ALOプレイヤー達の背中にある妖精の羽は飛べる時間がーーー滞空制限が存在する。どんな種族でも、連続で飛べる時間は精々10分が限界で、時間切れになったら日光か月光を浴びて飛翔力を回復するらしい。だが《世界樹》の上にある空中都市に最初に到達して、その都市の主、《妖精王オベイロン》に謁見した種族は《光妖精》という高位種族に生まれ変われる。そうなれば、いつまでも自由に空を飛ぶ力が手に入る。それがALOの《グランドクエスト》だ。
「なるほど、確かに魅力的な話だな」
「《世界樹》の上に行く方法ってのは?」
「根元が大きなドームになっていて、そこから空中都市に行けるんだけど、ドームを守っているNPCのガーディアン軍団がすごい強さなのよ。オープンしてから一年経つのに、クリア出来ないクエストなんてあると思う?」
《世界樹》の根元に中のドームに通ずる扉があり、そこから空中都市までその中を飛んでいこうというシステムだそうだ。でもそのドームにはNPCのガーディアン軍団がいて、そこを切り抜ける事が出来ないぐらいの難易度らしい。ALOオープンから一年、それから今までクリアされない《グランドクエスト》。攻略法があるとすればーーー
「何かキークエストを見落としている・・・」
「もしくは、単一の・・・一つの種族だけでは攻略出来ない」
「へぇー、いい勘してるじゃない」
「クエスト見落としは、今躍起になって探してる」
「流石だな、二人とも」
「でも後者だとすると、絶対に無理だと思うよ?」
「矛盾しとるからな。最初に到達した種族しかクリア出来ないクエストを他の種族と協力して攻略しようなんて、他の種族が《アルフ》になれへんで」
オレとキリトの言葉にリーファとライトとミストはオレ達を褒め、アリーとキャンディは二つ目の可能性を否定する。《グランドクエスト》は「最初に空中都市に足を着けた種族を、高位種族《アルフ》に転生する」という内容だ。例えば《シルフ》と《サラマンダー》が協力して攻略をするとしても、《シルフ》が先に空中都市の地面を踏んだ途端に《シルフ》から《アルフ》に生まれ変わる事が決定し、《サラマンダー》の転生は出来ないそうだ。つまりーーー
「じゃあ、事実上《世界樹》の攻略は不可能って事なのか・・・?」
「あたしはそう思う」
単一種族で攻略するしかなく、それも叶わないクエストだという事。
「でも諦めきれないよね。一旦飛ぶ事の楽しさを知っちゃうと、たとえ何年かかってもきっと・・・」
「それじゃ遅すぎるんだ・・・!!」
「!?」
リーファの言葉に対して過剰反応をするキリト。その目は焦りにも似た感情を秘めている。
そうだ、キリトはアスナさんが須郷と結婚する前に《世界樹》に行かなければならないんだーーー
「パパ・・・」
「・・・ごめん。でも俺、どうしても《世界樹》の上に行かなきゃいけないんだ」
キリトの前でクッキーを食べていた小さな妖精サイズのユイちゃんがキリトの肩に飛び乗り、声を掛ける。それで少し落ち着きを取り戻し、リーファに話す。
「なんで、そこまで・・・?」
「人を、探してるんだ・・・」
「ど、どういう事?」
「簡単には、説明出来ない・・・」
キリトとリーファは会話を繰り返し、その末にキリトの表情が暗くなっていくーーー
「・・・ん?」
キリトの顔を見た途端、リーファが小さく声を挙げた。まるで、今のキリトの表情にデジャブを感じたかのようにーーー
「ありがとうリーファ。色々教えてもらって助かったよ・・・」
「ホント、ありがとな。オレも行くつもりだったんだ」
「リーファちゃん、私達も行くんだ」
「元々コイツらを《世界樹》に案内する事になってたんだ」
「また帰って来るで・・・」
「サクヤさんにはその内戻るって言っといてくれ」
オレ達は席を立ち、リーファに挨拶をする。ライト達をーーー翼達を巻き込んだのは悪いと思ってるけど、アスナさんだけじゃなくて未来も、いるかもしれないんだーーー
「待ってよ・・・」
この時、リーファがキリトの腕を掴みオレ達を止めた。
「《世界樹》に、行く気なの・・・?」
「あぁ、この目で確かめないと・・・」
「ムチャだよ・・・ものすごく遠いし、強いモンスターもいっぱい出るし、そりゃ君も強いけど・・・」
キリトはリーファの呼び止めを受け付けず、彼女の手を小さく振り払い歩みを続ける。
「じゃあ、あたしも行く!!」
『・・・え?』
リーファが突然そんな事を言い、オレ達は全員揃って素頓狂な声を挙げる。行くってーーー一緒にか?
「いやでも・・・会ったばかりの人に、そこまで世話になる訳には「《世界樹》までの道のりは知ってるの?」・・・ライト達が「実はオレ達行った事ないんだ」えっ!?「ガーディアンはどうするのよ!?」ま、まあ、みんなでなんとかするよ「6人じゃキツイなぁ~」・・・」
キリトの遠慮でなんとかリーファの気を変えようとしたが、彼女の強引な質問攻めに押され、ライト達の見え透いたウソっぱちに騙されてとうとう黙ってしまった。その間にリーファはキリトの目の前まで近づいて来てーーー
「いいの!もう決めたの!」
少し顔を赤らめてそっぽ向いて、ついて来るなと言われても断固拒否するような決意表明をする。それに対しキリトは頭を掻き、「分かったよ」と渋々了承する。オレ達も全く意義なし、同行を頼もうーーー
「あの、明日もイン出来る?」
「あ、うん・・・」
「オレ達も大丈夫だ。な?」
「うん」
「全然入れるで」
「特に用事はないな」
「むしろ暇過ぎて何もする事ないぜ」
「じゃあ、みんな午後3時にここで。あたし、もう落ちなきゃいけないから」
オレ達全員明日は特に用事はない。むしろSAOの一件で学校すら通えていない。まあ4月に政府が廃校の跡地を改装して、SAO生還者の学校を造ってくれたみたいだし、それまで暇だからな。
午後3時にこの店で待ち合わせの約束をしてリーファは左手でシステムウィンドウを出しログアウトをしようとする。ALOのシステムウィンドウって左手で出すのか。そしてリーファがログアウトボタンをーーー押そうとした所をキリトが呼び止める。
「・・・ありがとう」
キリトは改めてリーファにお礼を言い、ログアウトしたリーファを見送ったーーー
「そうだ!ログアウトボタン!ログアウトボタン!ステータス!ステータス!」
「いきなりどうした!?・・・あ、確認か」
当たり前だよ、二年間ログアウト出来ないデスゲームにいたのを忘れるなよ翼。オレはALOで復活したVR世界におけるオレの左手でリーファのようにシステムウィンドウを出し、ログアウトボタンをーーー
「あった!よかった~・・・」
ログアウトボタンを存在を確認した。これで心配なくALOにフルダイブ出来るぜ。さてと、肝心のステータスはーーー
「なっ・・・!?」
「え?どうしたの?ライリュウくん・・・」
思わず声を挙げてしまい、アリーを驚かせてしまった。何故ならーーー
「いや、なんでもない。そろそろオレもログアウトするよ、みんな、また明日な」
「おう!」
「また一緒に戦えるんやな!」
「頑張ろうぜ、竜」
「うん。未来ちゃん、絶対に見つけよう!」
「キリト、明日からまたよろしくな」
「あぁ、お前の腕を信用してるぜ」
「ユイちゃん・・・また、会えてよかった」
「はい!私もライリュウさんにまた会えて、とっても嬉しいです!」
オレはみんなに挨拶をして、一足先にセーブポイントの上の宿屋に行って、ベッドの上でログアウトしたーーー
******
ALOから現実世界に戻って、オレは現実のベッドで目を開いた。
それにしても、オレのALOのアバターのステータスはーーー
「なんでSAOの・・・」
SAOーーー《ソードアート・オンライン》時代のオレのステータスだった。ALOがSAOのサーバーをコピーした物で、SAOのステータスが一部引き継がれる仕様になっているのならまだ分かる。でもオレの疑問はそこにある訳じゃない。
あのデータは須郷の部下の女性、橘雪乃さんにもらったメモリーカードだった。確かあのメモリーカードは《ナーヴギア》に入れっぱなしで総務省仮想課の役人に渡したはずだ。なのに、どうして須郷の部下がーーー
「どうして橘さんが持ってたんだ・・・?」
ページ上へ戻る