戦国異伝
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最終話 天下の宴その三
「わしはよきおなごを女房とした」
「ですな、では」
「その帰蝶様が待っておられる城に」
「これより入りましょうぞ」
諸大名も応えてだ、そして。
信長達は城に入った、すると花達はさらに増えていて城の至るところを飾り歌舞楽曲も賑やかになっていた。
信長達は馬を降りその中を進みだ、遂に。
天主の前に来た、天主は今は何もないが。
その前に帰蝶が市と留守の者達を連れて待っていた、その着ている服はみらびやかな十二単だった。
その十二単でだ、信長を迎えて言うのだった。
「お待ちしておりました」
「左様か」
「よくぞご無事で」
「ははは、わしも皆もじゃ」
見ての通りとだ、笑って言う信長だった。
「無事に帰って来たわ」
「左様ですね」
「ではな」
「はい、これより」
「宴の用意じゃな」
「既にある程度出来ていますが」
ここでこうも言った帰蝶だった。
「お風呂の用意も出来ています」
「そうか、ではな」
「まずはそちらで」
その風呂でというのだ。
「戦塵と落とされ」
「着替えてな」
「そのうえで如何でしょうか」
宴をというのだ。
「帝にもお風呂を用意していますので」
「湯をじゃな」
「はい」
まさにそれをというのだ。
「それは如何でしょうか」
「わかった、では帝にも湯に入って頂き」
「上様も」
「うむ、皆の湯も用意しておるな」
「大風呂があります」
安土城のそれがというのだ。
「諸大名の方々にはそちらに入って頂き」
「公卿の方々の湯もあるな」
「皇室の方々の為の湯も」
「ならよい、ではわしもじゃ」
信長もと言うのだった、ここまで聞いて。
「湯に入ろうぞ」
「それでは」
「御主も共をせよ」
信長は帰蝶にも声をかけた。
「共に湯を楽しもうぞ」
「それでは」
帰蝶は夫の言葉に微笑んで従ってだ、そのうえで。
二人で共に信長の為の湯舟に入った、そこでも二人で語らった。信長は共に湯にいる妻にこんなことを言った。
「思えば御主を妻に迎えてな」
「はい、その時からですね」
「この二十余年色々とあったな」
「はい、あっという間でしたが」
「尾張一国を一つにしてな」
「父上も亡くなられ」
「そのことは残念であった」
同三のことは信長も思い出して言った。
「そなたには申し訳ないことをした」
「いえ、父上も満足しておられましょう」
「あの世でか」
「上様が助けに来られ」
助けられなかったとしてもだ。
「美濃を受け継がれてです」
「そしてじゃな」
「天下人となられ天下に泰平をもたらされ」
「それで、ですか」
「はい、笑っておられましょう」
冥土でというのだ。
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