戦国異伝
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最終話 天下の宴その四
「是非」
「ならよいがな」
「ですから」
「そうした意味でわしは義父上の息子になったか」
「そう思います」
「父上に尾張を託され」
信長は父信秀のことを言った。
「そしてな」
「父上に美濃を任され」
「それからであったな」
「はい、上様は上洛されて」
義昭の求めに応じてだ。
「それからでしたね」
「多くの領地を得てな」
「天下第一の大身となられ」
「そしてさらにであったな」
「多くの戦を経て」
「天下を統一した」
完全にというのだ。
「そして魔界衆も滅ぼし」
「天下の泰平も定めた」
「ここまで二十余年、長い様でな」
「あっという間でしたね」
「その間よく留守の時を守ってくれた」
信長は帰蝶に顔を向けて笑って述べた。
「礼を言うぞ」
「それが妻の務めですので」
「よいか」
「はい、お気になさらずに」
「そう言ってくれて嬉しいわ、ではこれからもな」
「我等は」
「夫婦じゃ」
こう帰蝶に告げた。
「死ぬ時も同じぞ」
「そしてあの世でも生まれ変わっても」
「共にいようぞ」
「わかりました、それでなのですが」
「うむ、何じゃ」
「夜になりましたらですが」
「その時にか」
信長も応える。
「何かあると言っておったな」
「天主を出られ遠くからです」
「天主を見よというのじゃな」
「そして天主の一番上まで見られ」
そのうえでというのだ。
「安土の町も御覧になって下さいませ」
「わかった」
信長は妻に笑顔で応えた。
「ではな」
「その様にですね」
「しようぞ」
こう約束をしたのだった。
「是非な」
「それでは」
「その時も二人じゃ」
帰蝶にあらためて言った。
「よいな」
「さすれば」
「そして見ようぞ」
「天主も町も」
「共にな」
風呂の中でこう話してだった、そのうえで。
風呂から上がり身なりも正してだ、そうして。
信長は帰蝶を横に置いて宴に出た、その宴の料理は。
ただの山海の珍味ではなかった、それはまさにだった。
「ふむ、和漢洋のな」
「全てのです」
「食材にか」
「料理を揃えました」
「南蛮の料理じゃな」
肉を焼いたものを見てだ、信長は言った。
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