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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第6章
体育館裏のホーリー
  第106話 二学期、始まります!

 
前書き
第6章の始まりです。 

 
「それにしても、夏休みも終わっちまったなぁ」

 夏休みが終わり、二学期に入って間も無い今日、窓から外をボーッと眺めていたイッセーが隣にいる俺にそう言ってくる。

「そうだな。ま、退屈はしなかったけどな」
「確かに退屈はしなかったけどなぁ……遊ぶ暇が無かったと言うか…」

 冥界に行き、修行したり、テロリストや悪神と戦ったり……最後はすっかり忘れていた宿題を残り僅かな日数で徹夜するハメになったり、遊ぶ暇なんて無かったな。

「今年の夏こそはって思ったのになぁ…」
「過ぎちまった事を一々悩んでも仕方ねえだろ」
「そうだけどよぉ……」
「「よう、イッセーッ!!」」

 嘆くイッセーを突然現れた二人組によって、尻を蹴られる

「いってっ!?何すんだよ、松田、元浜!」

 イッセーを蹴ったのは、クラスメイトで腐れ縁の悪友の松田と元浜だった。
 蹴られたイッセーはいきなりの理不尽な暴力に憤るが、二人の憤怒の表情と気迫を見て尻込みしてしまう。

「海にナンパに行く約束、すっぽかしやがって!?」
「俺達との紳士同盟を忘れてたのか!?」

 そう言えば、夏休み前にそんな約束してたなこいつら。
 俺も誘われたが、レイドゥンの事で余裕が無かった俺はその誘いを断ってしまった。

「合宿だったんだから仕方ねえだろ!?」

 イッセーの言い訳も意に介さず、なおも攻め立てる松田と元浜。

「それで、お前ら成果はあったのかよ!?」
「「うっ……」」

 イッセーがそう訊くと、二人は決まりが悪そうな顔になる。
 その様子から、成果は無かった様だな。
 そこへ、一人の女子が話し掛けてくる。

「ふっふっふん、どうせあんた達の事だから、意味の無い夏を過ごしたんでしょうね」
「なにをッ!?」
「桐生藍華ッ!?」
「余計なお世話だぁ!?」

 話し掛けてきたのは、クラスメイトの桐生藍華だった。相も変わらず、イヤらしい笑みを浮かべていた。

「士騎君もよくこんな奴らと付き合ってるわよね?」
「まあ、確かにこいつらは普段がアレで第一印象は最悪だろうが、悪い奴らじゃねえのは確かだ。付き合いが長くなれば、その辺もよく分かるぞ」
「「「……明日夏ッ……」」」

 俺の言葉に目を輝かせる三人。

「でも、その最悪の第一印象で長く付き合ってくれる人がいないんでしょ?主に女子が」
「まあ、そうだな」
「「「おい!?そこもなんかフォローしてくれよ!」」」
「無理だな」

 フォローする余地が皆無だ。

「まあ、そんな事はどうでも良いんだけどね」

 ……どうでも良いんなら訊くなよ。

「兵藤、あんた夏休み中に何かあったの?」

 桐生が唐突にイッセーに訊いてくる。

「何だよ、唐突に……?」
「いえねぇ、あんた、二学期に入ってから女子の評判が多少上がったのよ」
「「何ぃッ!?」」
「マジで!?」

 桐生の言葉にイッセー、松田、元浜の三人が驚愕の表情を浮かべる。

「大分引き締まった体つきになってるし、顔つきも逞しくなってるわよ?ワイルドになったなんて言う女子もいるぐらいだし」

 そりゃまあ、山でドラゴン(しかも、元龍王)に追いかけ回されながらサバイバル生活を送れば、逞しくもなるだろう。

「「どう言う事だ、イッセェェエエエッ!!」」

 松田と元浜が先程よりも憤怒の表情を浮かべて、イッセーに詰め寄る。

「なんかしばらく見ない内に体つきが良くなってるから、おかしいなと思えば!」
「合宿なんて言って、本当は夏に託けてイメチェンしてやがったなぁ!」
「夏デビューかよコンチクショウ!」
「この裏切り者めッ!」
「裏切り者には死を!」

 二人はそう喚きながらイッセーを締め上げる。

「だから、部活の合宿だって言ってんだろうが!?」
「オカルト研究部の合宿でなんで体を鍛える事になんだよ!」

 元浜の言う通り、文化系の部活のオカルト研究部と体を鍛える事は全く結びつかない。

「……オカルト現象を探す為といつ遭遇しても良い様にと体力を付ける事も活動の一環になってんだよ」

 いいかげん、二人が喧しくなってきたので、適当な言い訳を言うが、我ながら取って付けた様なものになってしまった。

「そ、そうなのか……?」
「確かに、オカルト研究部の部員みんな運動神経が運動部並って言うか、運動部以上だよなぁって思ってたけど、そう言う理由があったのか……!?」

 まあ、バカ二人が納得して黙れば別に良いか。

「ふ〜ん。ま、これも別にどうでも良いんだけどね」

 ……だから、どうでも良いのなら訊くなよ。

「そんな事より、聞いてる?また転校生が来るそうよ。しかも、今度は三人も♪」
「「さっ!?」」
「三人も!?」

 おいおい、アーシアと鶇、ゼノヴィアが来てからそんなに経ってねえのにまたかよ!しかも、三人。

「それも、内二人は美少女らしいわよ♪」
「「「な、何ぃぃッ!!」」」
「もう一人はイケメンだってさ♪」
「「「イケメンは死ね!」」」

 転校生の情報にバカ三人がいちいち反応してる傍らで、俺はその転校生の事を考えていた。
 二年にアーシアと鶇とゼノヴィア、一年に燕と神楽と、短期間で一年二年合わせて五人の転校生があったのに二年にまた転校生。しかも、俺達のクラスに集中してるとなると、これはおそらく普通の転校生じゃないな。
 ……なんか、また知り合いが来そうな予感がするな。


ー○●○ー


 俺の予感は見事に的中した。

「紫藤イリナです!」
「神田ユウナです!」
「皆さん」
「よろしくお願いします」

 件の転校生の女子二人はイリナとユウだった。

『オオオオオオオオオオッ!!!!』
「絶滅危惧種のポニーテール美少女!」
「ツインテの娘も相当だぞ!」
「桐生の情報は!」
「確かだったか!」

 二人を見て、クラス中の男子が騒ぎ出す。って言うか、騒いでいないのは俺とイッセーだけだった。

「ほら、ライ君も」
「……………ライニー・ディランディ。以上だ……」

 そして、二人…と言うより、ユウが来ると言う事は、ユウと組んで行動するライニーも来る訳だ。

『キャアアアアアアアアアッ!!!!』
「イケメンよ!」
「木場きゅんとは違ったクール系!」
「褐色肌が良い味出してるし、木場君よりも私好みかも!」
「私は断然、木場きゅんね!」

 今度はライニーを見たクラス中の女子が色めきだす。

「……こっちも……っ……」
「……桐生の情報通りか……っ……」
『……イケメンは死ねッ!』

 女子の反応にほとんどの男子が…っと言うか、俺とイッセー以外全員、ライニーに対して、小声で毒づく。
 三人の登場にクラス中が騒然としていた。騒いでいないのは俺を始めとしたオカ研のメンバーぐらいだ。いや、俺以外は三人の登場に呆気に取られてるって感じだな。
 俺はまあ、予感があったから、そこまで驚いていない。

「あっ、イッ君、アス君!」
「二人とも同じクラス?」
「……その様だな……」

 俺とイッセーを見つけた二人が声を掛けてくる。

「イッセー、明日夏、貴様らぁ!あの二人と知り合いなのかぁ!?」

 それを見た松田が問い詰めの叫びを上げる。特にイッセーに向けて。
俺達の代わりにイリナが答える。

「兵藤一誠君と士騎明日夏君は私の幼馴染みなんで〜す♪」

 それを聞いた男子達は一斉にイッセーを睨む。何人かは俺の事も睨んでいた。

「ま・た・か!またかよ!また幼馴染みかよ!?」
「千秋ちゃん、千春さん、鶇さん、燕ちゃんと四人も来てるのにまだ!貴様ぁ、一体何人の美少女の幼馴染みがいれば気が済むんだぁ!?」
「いや、そんな事を言われても……!?」

 俺を除いた男子全員の集中砲火にイッセーも完全にダジダジだった。

「安心しろ。これで全員だ」

 嘆息しながら言うと、男子達は今度は俺の方を睨んできた。

「嘘は何一つ付いちゃいねえから睨むな」

 俺がそう言うと、男子達はようやく矛を収めた。

「いや待て待て!」
「……今度はなんだ……?」
「まだ、あっちの子との関係を聞いていないぞ!」

 元浜が俺とイッセーとユウとの関係を訊いてくる。
 それにユウが答える。

「イッ君とアス君とはライ君共々仲の良いお友達の関係で〜す♪」

 嬉しそうに言うユウにライニーが詰め寄る。

「おい、ユウ!誰が奴らと友達だ!俺まで巻き込むな!」
「ええぇ、ライ君ももう二人とお友達でしょう?」
「違う!なった覚えも無いし、なる気も無い!」
「ええぇ、そんなにテレなくても」
「テレてねえ!」

 すると今度はユウとライニーが漫才じみた言い合いを展開し始める。

「あのー、神田さんとディランディ君はどう言う関係なんですか?」

 女子の一人が二人のやり取りが気になったのか、二人の関係を訊ねる。

「私とライ君はイリナちゃん達みたいな幼馴染みか家族みたいな関係かな♪」

 嬉しそうにライニーとの関係を口にするユウ。ライニーも今度は否定はしなかった。

「これでも、ライ君のお姉さんを自負してます!」
「………そうだな。世話の掛かる姉だな」

 胸を張ってライニーの姉宣言するユウにライニーは否定せず、ボソッとそう言う。

「ちょっと、それどう言う意味!?」
「……そのままの意味だ」

 再び、二人が姉弟漫才?を始め出す。
 その光景にクラス中がどこか微笑ましげになった。


ー○●○ー


 放課後、部室で改めてイリナ達の迎え入れをする事になった。

「元気そうでなによりだ!」
「また会えて嬉しいです!」
「私もよ、アーシアさん、ゼノヴィア!」

 再会を喜ぶアーシアとゼノヴィアをイリナは嬉しそうに抱きつく。

「「うわっ!」」

 抱きつかれた瞬間、アーシアとゼノヴィアが悲鳴を上げてイリナから慌てて離れてしまう。

「うん?どうしたの?」
「イリナ、お前の首に下げてる十字架だ」
「あ、そっか!悪魔は十字架はダメよね!ごめんなさい」
「いえ、気にしないでください」
「ああ。ちょっとビックリしたが、これくらいは問題じゃないさ」
「それよりも、再会の嬉しさの方がいっぱいですから」
「「「これも主のお導き。ああ、主よ」」」

 再会を天に感謝し、祈りだす三人。
 悪魔であるアーシアとゼノヴィアがそんな事をすれば、本来は頭痛が襲うところだが、イッセーがミカエル様に頼んで、二人にダメージを与えない様になった事で、二人はなんの問題も無く祈る事ができる。
 以前は祈っては頭痛に悩むアーシアとゼノヴィアの二人がデフォルメだったが、今後はこの光景がデフォルメになりそうだな。

「……良かったらどうぞ」

 そんな中、塔城がユウに自分が舐めているのと同じ飴を差し出す。
 実を言うと、ユウはさっきから塔城の舐めている飴をジッと見ていたのだった。
 ちなみに塔城は今、イッセーの膝の上に座っている。冥界から帰ってきてから、神楽共々そこが定位置となりつつある様だ。今じゃ、神楽と一日交代でイッセーの膝の上に座っている。

「良いの!ありがとう!」

 ユウは特に遠慮する事無く、塔城から飴を受け取る。
 食べ物の事には物凄く素直だよな、ユウって。……悪く言っちまうと、食い意地が張っているって事になるけどな。
 今度、なんか作って持ってくるか?最近、菓子作りしてねえからな。

「……ったく、すぐに順応できて羨ましい限りだ」

 すぐに馴染んでいるイリナとユウを見て、ライニーは嘆息する。
 まあ、悪魔を絶対悪として見てきていたこいつにとっては複雑なんだろう。
 それでも、ここにいるって事は、考えを改めたからなのか?それとも、俺達に対して多少は心を許してくれていると言う事なのか?たぶん、後者だろうな。

「みんな揃っているわね?」

 部室に部長が副部長を連れて入室してきた。

「アルミヤさん!」

 二人の後ろには、アルミヤさんもいた。

「明日からこの学園の教員をやる事になった。よろしく頼むよ」

 そう言えば今日、担任から明日この学園に新任の教師が来ると言う事を聞いていた。イリナ達の事があって特に気にしてなかったが、この人がそうだったのか。
 部長と一緒にいたって事は、その辺の話し合いでもしてたのか?

「紫藤イリナさん、神田ユウナさん、ライニー・ディランディ君、貴方達の来校を歓迎するわ」
「リアスさん…あ、リアス部長、そして皆さん!」
「今後ともよろしくお願いしまーす!」

 イリナとユウは元気良く挨拶をする。

「……迷惑は掛けない様にする」

 ライニーは大分ぶっきらぼうに言うが、まあ、こいつにしては精一杯挨拶した方なのか?

「私が担当するのは英語だ。もしその辺で聞きたい事があれば、教師として教鞭を執ろう」

 この人はそっち方面でも頼りになりそうだな。

「ところで部長、この四人が来たのは三代勢力絡みの事ですか?」
「俺はいらないと言ったんだ」

 俺の質問にいつの間にか背後にいたアザゼルが代わりに答える。

「『渦の団(カオス・ブリゲード)』と言う敵対組織がある以上、堕天使と悪魔だけじゃバランスが悪かろうと、ミカエルが律儀にも寄越したのさ」

 同盟を結んでるし、断る訳にもいかないだろうしな。

「そこで、皆さんと交流があった私達が来る事になったの。ミカエル様の祝福を受けて転生天使となった私達がいれば、さぞや心強い事でしょう!アーメン!」

 イリナはノリノリで自信満々にポージングして言う。

「それにしても、人間が天使になるとはな」
「神の消滅で天使が生まれなくなったからな。悪魔や堕天使が用いていた技術を応用したんだろう」
「カードに倣った編成で、(キング)の上位天使が率いる(エース)から(クイーン)までの『御使い(ブレイブ・セイント)』に私達も選ばれたの」

 カードに(エース)って事はトランプか。

「なるほど、こちらはチェスで、そちらはトランプって事か」

 『悪魔の駒(イービル・ピース)』の技術を一番応用したって事か。

「それで、三人はそれぞれなんの札なんだ?」

 おそらく、全員が気になっているであろう事を訊く。

「よくぞ訊いてくれました!私は(エース)よ!」
「私は3、ライ君は2、三人ともミカエル様の札だよ。ちなみに、ミカエル様が持つ札のスートはスペードだよ」

 イリナが(エース)で、ライニーが2、ユウが3で、三人ともスートはスペードか。
 よく見ると、三人の手の甲にそれぞれの札の数字やマークが浮かび出ていた。

「ミカエル様のエース天使と言う光栄な配置をいただいたの!ああ、もう死んでも良い!ミカエル様ぁぁぁ!」

 ……相変わらず、狂信的な振る舞いだな。

「今のイリナさんの人生の糧はミカエル様なんですね」
「ああ。主を失っても救いはあるのさ。私達同様にね」
「はい」

 その後、色々話をして、イリナとユウとライニーはオカルト研究部に入部する事になった。まあ、ライニーは帰宅部になろうとしたが、ユウによって強引に入部させられた。 
 

 
後書き
ライニーとユウナの札は123って感じで、2と3にしました。 
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