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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第5章
冥界合宿のヘルキャット
  第105話 夏休み、終わります!

 
前書き
アニメ版ロキ戦決着です。 

 
「ぐあっ!?……ぐぅぅぅぅっ……!?」

 オーラの爆発によって吹っ飛ばされてしまった俺は、上手く受け身が取れず、地面の上を転げ回ってしまう!

「ぐぅっ!?」

 終いには岩に叩きつけられてしまった!
 ……こりゃ、また骨が何本か逝ったな…。オマケに体のあっちこっちからも血が出てるし、最悪の状態だ……。
 激痛に耐えながら立ち上がり、神喰狼(フェンリル)の方を見る。
 しばらく爆煙に隠れて見えなかったが、煙が晴れるとその全容が見える様になった。

「……まさか我が子がやられるとはな」

 ロキの言う通り、神喰狼(フェンリル)はボロボロの姿で横たわっており、動く気配が無かった。。

「……ザコとは言え、ドラゴンの使い手と言う訳か」

 ロキはそう言い、魔方陣で神喰狼(フェンリル)を回収してしまう。

「あちゃー、先に回収されたかー」
「笑い事じゃないわよ!どうするのよ?骨折り損じゃない!」

 竜胆達は神喰狼(フェンリル)を手に入れる事が目的だった様だが、どうやら俺が暴れた事で結果的に連中の妨害をした様だな。

「お。なんかしてやったりって顔だな」

 竜胆が俺を見てそう言う。
 ああ、たぶん今そんな顔してるだろうな。その割に奴は嬉しそうな顔してるが。

神喰狼(フェンリル)も回収されちまって用も無くなっちまったし。悪神様からもめっちゃ睨まれてるし。帰ろうぜ二人とも」
「まったく。白音、今日は急ぐけど、いつかまた迎えに来るからね♪」
「木場祐斗君、ゼノヴィアさん、アルミヤ殿、いつか剣士として相見えましょう。では」
「お前もこれから精進しろよ。あと、冬夜によろしく伝えといてくれ。んじゃ♪」

 それぞれ言いたい事を言い、三人は転移でこの場を去ってしまう。
 まあ正直、色々限界が近いんで、あいつらの相手をしないで済むのは助かる。
 後はロキだけ!
 俺達はロキの方へと視線を向ける。

「フン、まあ良い。神喰狼(フェンリル)がいなくとも、私だけで十分だ」

 当のロキは未だ余裕そうだな。さて、どうしたもんか?

Boost(ブースト)!』

『ッ!?』

 突然、聞こえるはずの無い音声がこの戦場に鳴り響いた!
 音声の発生源の方へ視線を向ければ、そこにミョルニルを手にしたイッセーが立っていた!

「イッセーッ!?」
「貴様何故!?」
「フェニックス家のお嬢様の差し入れだ!宝石かなんかだと思って開けもしなかったけどな」

 そう言うイッセーの足下には空になったレイヴェル・フェニックスから貰った入れ物とフェニックスの涙の空き瓶が転がっていた。
 あれの中身、フェニックスの涙だったのか!

「イッセー!」
「はい、部長!行くぜ、どデカいハンマー!」

Boost(ブースト)!』

 イッセーはミョルニルを頭上へと持ち上げる。

「グッ、重いけど、やれない訳じゃない!」
「させるか!」
「それはこっちのセリフだ!」

 俺の叫びと同時にロキの妨害を阻止しようと、副部長の雷光、塔城の炎、イリナの光力、ライニーの銃撃、アルミヤさんの聖剣の掃射、会長の魔力が放たれる!

「ッ!?クソッ!ザコの分際でッ!」

 ロキは慌ててその場から離れようとするが、俺のオーラの龍腕と匙のラインがロキを縛り付ける!

「逃がさねえぞ!」
「テメェはここで終わりだ!」
「忌々しいドラゴンがぁッ!!」

Transfer(トランスファー)!!』

 イッセーの持つミョルニルに力が流し込まれ、ミョルニルが巨大化する!

「若手悪魔を……舐めんなァァアアアアッ!!」

 力いっぱいに振りかぶられたミョルニルがロキに迫る!

「おのれ赤龍帝ッ!?おのれオーディンッ!?」

 ドガガガガガガガガガッ!

 ミョルニルがロキを捉え、凄まじい程の雷が発生し、ロキの身を包み込んでその身を封印していく!

「こんな悪の神より、乳の神とかに会いたいもんだぜ!」

 イッセーらしい言葉を吐くと同時にロキは封印されていった。

『……ただではやられん。呪いあれ。存分に苦しむが良い……』

 ……なんだ?今何か聞こえた様な?気のせいか?
 一瞬朧気な声が聞こえたが、すぐに聞こえなくなった。

「……激闘の疲れで幻聴でも聴こえたのか?」

 ま、クタクタなのも事実だし、体中もあっちこっち痛ぇ。正直、ぶっ倒れたい。

「大丈夫かよ、明日夏!?ボロボロだぞ!?」

 俺の身を案じて、イッセーが駆け寄ってくる。
 ……って言うか……。

「貰ったもんの中身ぐらいちゃんと確認しろよバカ!このバカ!本気で死んだかと思って、焦ったんだぞ!」

 生きていた事に対する安堵も喜びあったんだが、無駄に心配掛けされた怒りの方が強く、思わず怒鳴っちまった。

「わ、悪かった!?悪かったって!?うおっ!?」

 千秋が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら抱き着かれ、イッセーは尻餅を着く。

「イッセー兄!イッセー兄ッ!」
「……ごめんな、千秋。また、心配掛けちまったみたいだな」

 イッセーは頭を撫でながら千秋を宥める。

「まったくだ。とりあえず、一発…いや、十発殴らせろ?涙ですっかり元気なんだろ?」
「えっ!?」
「いや、やっぱ、猛虎鉱爬山十発だ!」
「死ぬ!?今度こそ俺死ぬって!?」
「安心しろ。死なない様に加減してやるからよ」
「明日夏先輩の言う通り、イッセー先輩は私達に心配掛け過ぎです!殴られるべきです!」
「ええぇっ!?小猫ちゃんまで!?」
「よし、千秋、塔城、イッセーを抑えてろ」
「うん」
「はい」
「ちょ、千秋!?小猫ちゃん!?」

 千秋と塔城に拘束されて、身動きが取れなくなったイッセーは慌てだす。

「ま、まあまあ、イッ君もこうして無事だったんだし。結果オーライって事で良いんじゃない?」

 ユウがやって来て、そんな甘い事言ってくる。

「それにアス君も人の事言えないんじゃない?」
「ぐっ……」

 ……俺も一歩間違えれば危なかったのも事実なので、反論できないな。

「うん」
「そうですね」

 イッセーを拘束している千秋と塔城もジト目で頷く。

「そうだぞ!?お前だって無茶してるだろうが!?」
「……イッ君が私達にすっごく心配掛けたのも事実だよ」
「うっ……」

 ここぞとばかりに反論しようとするイッセーをジト目のユウが説き伏せてしまう。

「はぁ……」

 ゴツン。

 俺はイッセーの額に軽く拳を当てる。

「……圧倒的に心配掛けたのはお前なんだ。一発は受けろ」

 とりあえず、神であるロキと伝説の魔物である神喰狼(フェンリル)を相手に死者がゼロな訳だし、ユウの言う通り、結果オーライって事で良いか。

 ギシャァァアアアアア!

『っ!?』

 倒されたかに見えていた模造品のミドガルズオルムが突然起き上がり、丁度目の前にいた副会長を背後から襲い掛かろうとしていた!

「危ない!」
「ッ!?」

 間一髪で木場が自慢の俊足で副会長を助け出す!
だが、模造品のミドガルズオルムは尚も二人に襲い掛かる!

「木場ッ!」

 そこへ、ゼノヴィアがデュランダルを木場目掛けて投げ、木場はそれを掴み構える。
 すると、デュランダルの聖なるオーラがゼノヴィアが持っていた時の荒々しいものから静々としたものになっていった。
 持ち主の特性が出てるのか?

 ギシャァァアアアアア!

「ハァアアアッ!!」

 ズバッ!

 木場の一閃が模造品のミドガルズオルムの胴体を一刀両断、更にその余波で周りの岩をも切り裂いてしまう!

「ウオオオオオッ!!」

 ズバババババッ!

 俊足を活かした木場の剣戟が模造品のミドガルズオルムをバラバラに引き裂いてしまった!

「大丈夫ですか、副会長?」
「は、はい……」

 模造品のミドガルズオルムを切り伏せた木場は副会長の身の安否を確かめる。幸い、ケガはしていない様だな。

「まさか、子供の二匹も起き上がったりしないだろうな……?」

 イッセーは子神喰狼(フェンリル)二匹も今みたいに起き上がるんじゃないかと警戒するが、流石にあの重体じゃ動きはしないだろう。
 現にまったく動く気配は無い。

「どうやら、増援など必要無かった様だな」

 そこへ、快活な声で話し掛ける者が現れた。

「サイラオーグさん!」

 サイラオーグ、あれがイッセーの言っていたバアル家の次期当主で、部長の従兄弟であり、そして若手悪魔ナンバーワンの男。
 どうやら、俺達の増援に来てくれた様だが、見ての通り、無駄足を踏ませてしまった様だな。

「あの悪神ロキと戦って生き残るとはな。フフ、兵藤一誠、リアス、お前達とは若手ナンバーワンを賭けて、いずれゲームがしたいものだ。特に赤龍帝のお前とは理屈無しのパワー勝負をしたいものだな」

 イッセー達グレモリー眷属を見てそう漏らすサイラオーグ・バアル。どうやら、雰囲気通りの豪快な男の様だな。


ー○●○ー


「で、神喰狼(フェンリル)は結局手に入れられなかったと?」
「そういう事だ。悪ぃな、ヴァーリ」
「まあ良い。神喰狼(フェンリル)はまたの機会にするさ」
「完全に無駄足だったな」
「そうでもないさ、神威。兵藤一誠が禁手(バランス・ブレイカー)に至るきっかけになっただけでも、無駄足ではないさ」
「嬉しそうだな?」
「そう言うお前もどこか嬉しそうだぞ、竜胆?」
「へへ、有望な後輩ができた事に舞い上がってるのかもな。ましてそれがダチの弟ともなれば、尚更テンションも上がるさ」
「そうか。お互い楽しみの成長に舞い上がってるのみたいだな」


ー○●○ー



「それでは、お父様、お母様、ミリキャス、行ってまいります」

 あれから数日が経ち、ロキ戦の疲れを癒した俺達は人間界に帰る事になり、現在、グレモリー邸の前で部長の両親やミリキャス様、グレイフィアさんに大勢の使用人達に見送られていた。

「リアス姉様、もう帰っちゃうの?」

 ミリキャス様が寂しそうな目をしながら、部長に問う。

「ごめんなさいね、ミリキャス」

 そんなミリキャス様の様子に部長も少し申し訳なさそうな顔をしていた。

「リアス様はお忙しいのです。無理を言ってはいけませんよ」

 グレイフィアさんが肩に優しく手を置きながら、ミリキャス様を諭す。

「はーい、お母様」

 ん?

『ええっ!?』

 ミリキャス様の発した単語にイッセー、千秋、鶇、燕、神楽、アーシア、ゼノヴィアが驚く。

「今、お母様って……」
「ああ、言ったな……」
「と言う事は……」

 ……そう言う事なんだろうな。


━○●○━


 そんな感じで、最後に衝撃な事実を知って驚いた俺達は、来る時に使った列車に乗って人間界に向かっていた。
 で、現在、目の前では…。

「あ、あのぉ、小猫ちゃん……?」
「にゃん♪」

 イッセーの膝上に塔城が横たわっていた。
まあこれも、そう言う事なんだろうな。
 周りの女性陣は当然、不機嫌そうになっていた。

「うぅ……ポジション取られたぁ……」

 イッセーの膝上にいる事が多い神楽は別の事でも不機嫌になっていた。
 それにしても、激動的な夏休みだったな。
 冥界に行ったり、ドラゴンに山で修行をつけられたり、『三狩王(トライ・イェーガーズ)』の一角と対峙したり、悪神と戦ったりと本当に激動的だった。
 兄貴の良い土産話になりそうだな。……竜胆から貰った情報も含めて。奴の情報が真偽はともかく、無視できないものなのは確実だからな。

「ん?」

 なんか忘れてる様な?
 ふと、何かを忘れてるような気がした。
 何を忘れてるんだ?…………夏休み………あっ!?

「やべっ……」

 自分のやらかしたポカに気付き、額に手を当てて仰いでしまう。

「ど、どうした、明日夏……?」

 イッセーの困惑しながらの問い掛けに自嘲気味に答える。

「……いや……夏休みの宿題をすっかり忘れていたと言う自分のマヌケっぷりに気付いただけだ……」

 普段は最初の一週間でちゃっちゃぱっぱと終わらせてたんだが、レイドゥンの事やら、強くなる事やらで色々悩んでた事ですっかり忘れていた。……人生最大のポカだ。

「「ああぁっ!?」」

 すると、イッセーとゼノヴィアが悲鳴じみた叫びを上げる。
 まさか……。

「最後の敵を忘れていたよぉっ!?」
「宿題の事すっかり忘れてたぁっ!?」

 どうやら、二人も全くの手付かずの様だな。

「……貴方達なにやってるのよぉ。合宿で宿題ができなかったなんて、部長としての責任に関わるわ。ちゃんと終わらせる事」
「「「……はい……」」」

 ……夏休みもほとんどねえ。これは徹夜になりそうだな。


ー○●○ー


『へぇー、リンに会ったんだ』
「リン?」
『ああ、彼は知り合いには竜胆の竜からリンって呼ばれてるんだ』
「そうか」
『それにしても、情報屋に彼の息が掛かった者がいる、か』
「あんまり驚いてねえな?」
『僕もなんとなくそうなんじゃないかって思ってたんだ。……それどころか、更に深い所にもなんて、ね』
「……………有り得そうだな」
『僕としては、リンが言った研究所ってのが気になるね』
「?……なんでだ?」
『勘だけど、碌でもない物の気がするんだ。それに、リンも碌でもないって言ったんだよね?』
「兄貴と同じで、ほとんど勘っぽいけどな」
『だからだよ』
「?」
『リンの勘はよく当たるんだ。……特に碌でもないなんて表現する様な事にはね……』
「……その感じだと、ずいぶんと仲良かったみたいだな?」
『まあね』
「気にならねえのか?」
『ん?なるよ。元気かなぁとか』
「そうじゃなくて!」
『テロリストになった事がかい?』
「……ああ」
『そこはそんなに気にならないかな』
「……なんでだ?」
『まあ、リンって、気紛れで突拍子も無い事をするところがあるからね』
「……気紛れでテロリストになられても迷惑なんだがな……」
『でも』
「?」
『絶対に悪人にはならない。彼はそう言う男だよ』
「……テロリストになったのも、ちゃんとした理由があるって事か?」
『うん、たぶんね』
「…………………そうかよ。まあとりあえず、伝える事は全部伝えた。もう切るぞ?イッセーとゼノヴィアと宿題終わらせねえといけねえからな」
『珍しいね?もしかして!?明日夏、不良になっちゃった!?』
「棒読みで驚いてんじゃねえよ」 
 

 
後書き
5章終わりです。今までで一番話数が少ない!?
次回からは6巻の内容である6章です。 
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