ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第6章
体育館裏のホーリー
第107話 誕生、おっぱいドラゴン!
前書き
最終章が非常に楽しみだ!
「ずいぶん買い込んじまったな」
「イリナさん達の歓迎会ですから」
「だったら、それなりのもんを作らねえとな」
俺とイッセーとアーシアは学校が終わるとそのまま帰らず、イリナ達の歓迎会の為の買い出しに出ていた。人数が人数なので、かなりの量になってしまったが、作る身としてはやりがいがある。
ちなみにイリナとユウはイッセーの家に住む事になった。今頃、イッセーのあの変わりっぷりに驚いていることだろう。
それからライニーとアルミヤさんは木場とギャスパーが滞在しているマンションに住む事になった。
「父さん達、帰ったら驚くだろうなぁ。いきなり住人が増えてるんだから」
「しかも、二人もだからな」
おじさんとおばさんは現在、世界一周旅行にでかけている。
旅行代理店をしている部長の親戚が部長がお世話になっていると言う事でプレゼントしてくれたと言う事になっているが、実際はイッセー達の冥界行きを誤魔化す為だ。
まあ、その世界一周旅行ももうすぐ終えて、近日中に帰ってくる事になっている。
「そう言えば、もうすぐ体育祭だな」
イッセーがスポーツ用品店を見て、思い出した様に言う。
「体育祭?」
「クラス対抗でやるスポーツ大会だ」
うちの学校は二学期が始まってすぐに体育祭が控えている。
正直、悪魔や天使、異能との戦闘用に鍛えてる俺がいるせいで、俺達のクラスの独走状態になりそうだがな。もちろん、加減はするが。
「……うわぁ……私、そう言うの苦手です……」
アーシアが憂鬱そうに顔を俯かせる。
悪魔に転生したとは言え、アーシアは元々それ程運動神経が良い方ではなかった。球技大会でも大分苦戦していたしな。
「あっ!?」
「ッ!?」
「アーシアッ!」
道の僅かな段差につま先でも引っ掛けてしまったのか、アーシアがバランスを崩して倒れかけていた!
慌てて助けようとしたが、その前に一人の男がアーシアの肩を支えた事で事無きを得た。
「大丈夫か、アーシア?」
「は、はい。この方が」
俺は男の方を見る。一言で言えば、優男と言った印象だった。
「すみません、ありがとうございます!」
「また会えたね、アーシア・アルジェント」
「え?」
アーシアの礼に対して、男は再会の言葉を言う。
「あんたは!」
イッセーは男を見て驚く。アーシアもイッセー同様に驚いている様子だった。
「ごきげんよう、アーシア。貴女に会いに来ました」
「え?」
男は二人の様子などお構い無く、アーシアに語り掛ける。
俺は小声でイッセーに男の事を訊く。
(誰なんだ?)
イッセーも小声で答える。
(冥界で会った若手悪魔の中にいたんだよ。確か、アスタロト家の次期当主だって)
(アスタロト家って言えば、魔王ベルゼブブを輩出した……)
(ああ)
だが、話を聞く限りじゃ、顔を合わせた程度で、ここまで親しげに接する程の顔見知りって訳じゃないはずだが。
「僕を忘れてしまったのかな?」
「あ、あのぉ……」
「お前、アーシアに何を!」
困惑するアーシアにお構い無く語り掛ける男にイッセーがアーシアを庇う様に男に詰め寄るが、男はイッセーを手で制して、なおもアーシアに語り掛ける。
「僕達は出会っているはずだよ。彼よりももっともっと昔にね」
「なに……?」
「ッ!」
男の言葉でこの男とアーシアの関係が分かった。
その後、男が見せたい物があると言い、近くの公園に俺達を連れてくるなり、上着を脱いで胸元を見せてくる。男の胸には大きな傷痕があった。
「傷……もしかして!?」
「そう……僕は君の神器によって命を救われた悪魔、ディオドラ・アスタロトだ」
やはり、こいつ、ディオドラ・アスタロトがアーシアが魔女と呼ばれる要因となっ悪魔。傷付いたこいつを助けたが為に、アーシアは異端の烙印を押され、魔女と呼ばれる様になった。そしてアーシアは紆余曲折があって、今の生活を手に入れた。今のアーシアはこいつがいなければいなかったと言う事になるのか?
「冥界で君を見掛けた時は驚いたよ。でも、あんな騒ぎで話をできずじまいだったろ?」
上着を着直しながら、ディオドラ・アスタロトは言う。
ロキの事だな。
「だから改めて迎えに来たんだ」
「む、迎え……?」
「僕達の出会い、そして再会は運命だと思う」
「っ!」
そう言いながら、ディオドラ・アスタロトはアーシアに跪いてアーシアの手を取ったと思ったら、ディオドラ・アスタロトはアーシアの手の甲に口付けをする!
「テメェ、アーシアになんて事を…」
「妻になってほしい。僕は君を愛しているんだ」
ー○●○ー
「そうですか。その様な事が……」
歓迎会に出す料理の下ごしらえをしながら、俺は一緒に料理の準備をしている副部長にディオドラの事を話していた。
あの後、アーシアに求愛行動をしたディオドラ・アスタロトは「今日のところはひとまず帰るよ。必ず迎えに来るから、待っていてくれ」とアーシアに言って、魔法陣を介して転移して帰っていった。
イッセーとアーシアは今日あった事を部長に報告しに行っている。
「あんたはそいつの事、どう思ったのよ?」
話を聞いていたのか、俺達の手伝いをしている燕が訊いてきた。
「……お坊ちゃん育ちが自分に酔って舞い上がってるって感じだな」
俺は淡々と答える。
はっきり言って、あいつの求愛は一方的なものだった。困惑するアーシアを放っておいて、一方的に言いたい放題だったからな。俺やイッセーはもちろん、アーシアも言葉を挟む隙さえ無かった。運命やら愛を語る自分の言葉に大分酔っている様に思えた。
まあ、あの求愛っぷりから、アーシアへの想いは本物なのかもしれないが。
「でも、自分を助けてくれた人を好きになっちゃったって気持ちは分からなくないかな〜」
調理組の鶇がそんな事を言う。
言った鶇本人がまさにそれだからな。っと言うか、イッセーに想いを寄せる女性陣の大半のきっかけがそれだったりする。そこからさらにあいつへの想いを深めていったって感じだな。
「でも、アーシアさんはイッ君の事が好きだから、その悪魔の人も大変だね?」
歓迎会の主役と言う事で寛いでもらっているユウがそんな事を訊いてくる。
まあ、アーシアはイッセーの事を本当に一途に想っている訳だからな。ちょっとやそっとじゃ、その想いが揺らぐ事はまず無い。言っちゃ悪いが、ディオドラが入り込む余地なんて皆無だ。
「それでも、あの様子じゃ、そう簡単には諦めないだろうな」
あいつの熱愛っぷりも相当なものだったからな。
「明日夏の言う通り、自分を救ってくれた女の子に再会したものだから、舞い上がっているだけでしょう。良いから放っておきなさい」
そこへ、イッセーとアーシアを連れてやってきた部長が時間も経てば、熱も冷めるだろうと言ってくる。
それで済めば良いんだがな。
それに、アーシアと奴が出会った事が少し気になるんだよな。当時のアーシアはその神器の能力で聖女として崇められていた。故に教会の中でもかなり深くて重要な場所にいたはずだ。そして当時は和平が成立する前、つまりそこは敵地である。そんな場所に上級悪魔、しかも魔王ベルゼブブを輩出した家の次期当主が眷属も連れずに単独でいた事が気になる。いや、ケガをしていた事から、戦闘になって眷属とはぐれてしまっただけかもしれないが、だったらなんで、わざわざ敵地だった場所にいた?ヘタをすれば、悪魔側と教会側の戦争の火種になりかねる事だぞ?敵情視察の為だとしても、経験が浅い若手悪魔にやらせる事でもないし。
まあ、俺の考え過ぎかもしれないが。
とりあえず、今は歓迎会を盛り上げる為の準備に専念するか。
ー○●○ー
「改めまして、紫藤イリナです!」
「神田ユウナです!」
「……ライニー・ディランディ……」
「アルミヤ・A・エトリアだ。彼女達やゼノヴィアの様にアルと呼んでくれても構わない」
準備が終え、ようやく始まった歓迎会。開幕は主役の四人に話してもらっていた。
「悪魔の皆さん、私、今まで敵視してきましたし、滅してもきました……」
「………教会……怖いですぅ……」
「安心して。ミカエル様は「これからは仲良くですよ」と仰られていたし…」
「私自身は仲良くしたいなとは思っていましたし」
「私も個人的には仲良くしたかったのよ」
「……まあ、世話にはなったからな……」
「私も特に異存は無い。これからは学業方面共々よろしく頼むよ」
元々そこまで敵意の無かったユウはもちろん、イリナもアルミヤさんも友好的だった。
ライニーも最初会った頃に比べれば、友好的な方だった。
「教会代表として!」
「よろしくお願いします!」
パチパチパチパチ。
イリナとユウの締めに、俺達は拍手を送る。
「長年争い合ってきた仲だ、突然手を取り合えと言えば、不満を持つ者もいたが、お前達が共闘してロキと戦う姿が結果的に最高のデモンストレーションになった。お前らには改めて、礼を言わねばならん」
離れた所でアザゼルが酒を片手に礼を言ってくる。
「そう言われると、頑張った甲斐があったってもんだな」
「そうだな」
「ま、急な事で、堕天使からの戦士を出せなかったのはちと心残りだったが」
「………一人いましたわ……」
堕天使側から戦闘員を出せなかった事を気にしているアザゼルに、副部長が静かに言葉を発する。
「………とは言っても……半分だけですが……」
それだけ言うと、副部長は黙ってしまう。
堕天使絡みには相も変わらず素っ気無く、冷たいものだが、ロキとの戦いで堕天使の力を開放した事で多少の心境の変化はあったのかもしれない。でなければ、今みたいな事は言わないはずだからな。
「……そうか……」
アザゼルも副部長がそう言ってくれただけでも満足なのか、普段のおちゃらけた雰囲気は形を潜め、優しそうな表情をしていた。
アザゼルはどうにも、副部長を特に気にかけている節が見える。部下であるバラキエルの娘ってだけが理由じゃないよな?なんとなく、そんな気がした。
「おっと、そうそう、イッセー」
「はい?」
急にいつも通りの雰囲気になったアザゼルはイッセーに話し掛ける。
「昨日、所要で冥界に行ってたんだが、向こうでお前、大人気だぞ」
「俺が冥界で?」
「わあ!凄いです、イッセーさん!」
「ミョルニルでロキにとどめを刺したんだから、当然だよ」
「いやぁ、そうじゃないんだ」
『?』
イッセーが冥界で有名って事で盛り上がる俺達だが、アザゼルはなにやら額を掻いて、微妙そうな顔をしていた。
「テロリストから冥界を守った英雄の素顔と言う、ドキュメンタリー番組があってな」
苦笑いしながら、アザゼルはリビングにある巨大テレビを点ける。
……なんだ、もの凄く嫌な予感が……?
『……おっぱいを突かせてください!』
「なっ!?」
点けられたテレビの映像から流れた第一声に俺達は唖然としてしまう。
『主のおっぱいを突いて、ここに降臨ッ!!』
『な、なら……おっぱいを揉むだけでなく、す、す、吸ったりとかも……?』
『これは部長のおっぱいの分!』
「……アザゼル……これは一体何なんだ……?」
なるべくへいそうを装いながらアザゼルに尋ねるが、おそらく、顔は引きつってしまっているだろう。
「戦いながらおっぱいおっぱい言ってるイッセーの紹介シーンが大ウケでな♪乳龍帝と言う愛称までできている♪」
「ち、乳龍帝!?」
「特に子供に大人気でな♪『おっぱいドラゴン』なんて呼ばれてるんだぜ♪」
「……まじかよ……」
……なんとも嬉しくない呼ばれ方されてるな、イッセー……。
『うおおぉぉおおおおん!?!?』
『ッ!?』
突然の泣き叫び声に驚く俺達。
声の出処はイッセー…正確には、イッセーの左手の甲が光っており、そこから声が出ていた。
「い、いきなりどうしたんだよ、ドライグ!?」
声の主は、イッセーの持つ『赤龍帝の篭手』に宿る二天龍と呼ばれるドラゴン、ドライグ。そのドライグが現在、号泣していた。
『二天龍と称された俺が!?赤龍帝と呼ばれ、多くの者に畏怖されたこの俺が!?それが乳龍帝だぞッ!『おっぱいドラゴン』だぞォォッ!うああぁぁあああああ!?!?』
あのドライグが、二天龍と称され、『赤き龍の帝王』と呼ばれるあのドライグが…………嘆き悲しみ、号泣していた。
『………うぅぅ……こんな事……白いのに知られでもしたら…!?』
『まあ、アルビオンも泣くだろうなぁ♪『我が宿敵がなんて様だ!?』なんて言いながらな♪』
ドライグの言葉に俺の中のドレイクが心底楽しそうに答える。
『良いじゃねえか、ドライグ♪』
『黙っていろ!貴様も呼ばれてみれば分か…』
『芸名みたいで面白そうじゃねえか♪』
『この『遊びドラゴン』がぁぁッ!?』
あぁ、こいつなら確かに面白がりそうだな。当のドライグはあまりにも不名誉な呼ばれ方に嘆んでいると言うのに。
「ちなみに、『おっぱいドラゴンの歌っ』て言うテーマソングが絶賛制作中だったりする」
『なにそれ!超聴きてぇ!』
『うがああぁぁぁあああああああ!?!?』
その後、イッセーは必死になってドライグを慰めるのであった。
伝説のドラゴンでも、意外と繊細なんだな。
後書き
ドライグの心労の始まり(笑)
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