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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第40話今日は《スプリガン》がよく落ちる

何故《スプリガン》がシルフ領の首都《スイルベーン》に落ちるんだ?スパイだとしても登場の仕方がおかしい。ミスを犯して空から落下したとかならわかるが、コイツの登場はまるで別物だ。今のは新規プレイヤーがALOに初ログインした時のライトエフェクトだ。それなら《シルフ》が落ちてくるはずなのに《スプリガン》がーーーバグか?

「おい、あんた・・・」

「あぁぁ~・・・」

『完全に気絶してる・・・』

重症だなコイツ。とりあえず周りの《シルフ》のプレイヤー達に問題はないと伝えておいたから、この場を収める事には成功ーーー

「ギャァァァァァァァァア!!」

「グハァッ!?」

「ライト、また落ちてきたで」

「今日は《スプリガン》がよく落ちるな・・・」

「・・・同じように周りに言う?」

「勘弁してくれ・・・」

今度は《スイルベーン》の名所、《風の塔》から別の《スプリガン》が落ちてきた。そしてさっき落ちてきた《スプリガン》をプレスする。コレはもうフォロー出来ねぇよーーー

「キリトくーん!・・・あ、ライトくん達もいたんだ!大丈夫だった?」

「リーファちゃん!」

「ウチらは全然平気やけど・・・」

「それはその《スプリガン》と、その下にいる《スプリガン》に聞いてくれ・・・」

「オレもうフォローしねーかんな」

今落ちてきたキリトと呼ばれた《スプリガン》の所まで空から降りてきた金髪ポニーテールの《シルフ》の少女、リーファ。彼女は《シルフ》プレイヤーの中でもかなり上位に入る実力者だ。そんな彼女は別の種族のプレイヤーをシルフ領に連れてくるような娘じゃないんだがーーーキリト?

「酷いよリーファ・・・」

「まぁまぁ、ヒールしてあげるから」

そう言ってリーファはキリトに向けて手をかざし、呪文(スペル)を唱える。あれはSAOにはなかった《魔法》というシステム。手をかざして呪文(スペル)を唱えると、使われた単語の意味を魔法として発動する事が出来る。リーファが使ったのは《回復魔法》。自分、もしくは相手のHPを回復出来る魔法だ。
それよりもオレはまず、キリトに寄って耳打ちする。

「お前・・・桐ヶ谷和人か?」

「あぁ・・・明石翼?」

「やっぱりか」

このキリトという《スプリガン》はダイシー・カフェにいた男、桐ヶ谷和人だった。逆立った黒髪以外を覗けば現実(リアル)と全く一緒と言ってもいいぐらいよく似てる。

「ライトくん、知り合い?」

現実(リアル)でな」

「ふーん・・・それより、キリトくんに乗られてるその《スプリガン》の人は?」

リーファにオレとキリトが知り合いなのかと聞かれてざっくりと答える。でもリーファはキリトの下敷きにされている《スプリガン》が気になるようだーーー

「俺の下?「さっきから乗られてるんですけど?キ~リ~ト~く~ん」おわぁっ!?」

あ、気がついた。コイツの口調から見てとれる性格、そして声、コイツはーーー

「ん?・・・よっ!《リトルギガント》!」

『ライリュウ(くん)!!』

「え?彼とも知り合いなの?」

知り合いも何も、大親友さ。神鳴竜(ライリュウ)現実(リアル)とは違って少し長い前髪を三本の房に分けて、他はオールバックの黒髪、そして妖精特有のエルフ耳。顔は現実(リアル)とそこまで変わらないな。

「キリトも落ちてきたんだな。つーか、ここどこ?」

「シルフ領の首都、《スイルベーン》だ」

「バグやと思うで?」

「本来ありえないからな、こんな事」

「そのアバター、よく似合ってるね」

どうやら竜ーーーライリュウも自分に何が起きたのか分かってないみたいだな。恐らくバグでスプリガン領のホームタウンではなく、シルフ領に落ちちまったんだから。

「恐らく、ライリュウさんはパパと同じ理由で《スイルベーン》にログインしたんだと思われます」

『ん?』

「ちょっ!勝手に喋ったらまた面倒な・・・!」

どこからか幼い少女のような声が聞こえた。キリトが何故か胸ポケットの中に何か言ってるけどーーーその中から謎の声の主が顔を出した。コレはーーー

「《ナビゲーション・ピクシー》ってやつか!?」

「初めて見たな・・・」

「やーんもう可愛ェェ!お持ち帰りしたいわ~!」

「ホントにそうだね!ね?ライリュウくん」

「・・・!?・・・?・・・?!!?」

黒いロングヘアーの《ナビゲーション・ピクシー》、小さな妖精の姿形をしていて、プレイヤーをナビゲートする、謂わばーーープレイヤーに付き従うNPCって所だな。
その《ナビゲーション・ピクシー》の少女を見て、オレとミストは少し驚き、キャンディとアリーは完全に魅了されている。ライリュウはーーーいくらなんでも驚き過ぎじゃないかと思うぐらい表情がおかしくなっている。
そして、ようやく口を開いたらーーー

「ユイ・・・ちゃん?」

「ライリュウ知っとるん?」

その《ナビゲーション・ピクシー》の物であろう名前を呟いた。その声にキャンディは質問するがライリュウには届いてない。そしてユイと呼ばれた《ナビゲーション・ピクシー》の少女はライリュウの顔を見てーーー

「また会えましたね、ライリュウさん!」

満面の笑みで声を掛ける。その笑顔を見た途端、ライリュウはーーー目からブワッと大量の涙を流し始めた。

「ユイぢゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん!!」

『えぇーっ!?』

その少女の名を叫びながら飛び付こうとしてるので驚きながらも抑える。それでも全く止まりそうになかったからミストとキャンディとアリーのオレ達4人総出で引っ張り抑える。

「まてまて!ライリュウお前どうした!?」

「なんやよお分からんけど一回落ち着けや!!」

「そうだよ!深呼吸しよ!?ね!?」

「出来るかぁそんなモン!!ユイちゃんが目の前に!!放せェェェェぇェェ!!」

「放さねェェェェェェェェ!!一回落ち着けェェェ!」

何がどうしてライリュウはこうなっちまったんだ!?このユイという《ナビゲーション・ピクシー》がいったい何をしたんだーーーつーか止まらねぇ!!新規アカウントとしては筋力値高すぎんじゃねぇのか!?

「とにかく一回落ち着けェェェェ!!」

明石家秘伝ーーー奥義!

「《一回寝てろのツボ》ォォ!!」

「ハウッ!・・・スピー・・・ドアーップ・・・」

『寝た!?』

これが明石家の秘伝技、《気力のツボ(ピンポイント)》。身体中の至るところに存在するツボを押して、そのツボがもたらす現象を起こすという技だ。これはその奥義だ。ショボい技ではない、決してショボい技ではない!とりあえずみんなでどっかでメシ食ってその後にライリュウとユイというこの少女の事を聞こうーーー

「スピー・・・ドアーップ・・・」

「コイツ何が早くなりたいんや?」

「スピー・・・ドダーウン・・・スピー・・・ドダーウン・・・」

「あ、遅くなったね」

コイツのいびきどうなってんだ?
 
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