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機動戦士ガンダム0091宇宙の念

作者:むらたく
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宇宙編
月決戦編
  第35話 宇宙の念3

「アイラ…大丈夫か⁉︎」
ギラ・ドーガを後ろに付けた、青いパイロットスーツが近づいてくる。
「大尉…」
「俺のドライセンはもうだめだ…このままネオ・ジオンの部隊と一緒に…」
「どうして…」
「は?」
「どうして彼女は…どうして⁉︎通じ合えたのに、ニュータイプは分け隔てなく分かり合えるなんて嘘‼︎戦いの道具に利用して…その結果がっ‼︎」
「すまない…」
グランは、枯れた声でそういい、アイラを包んだ。
「っ!大尉?…」
「戦いを、こんな哀しみを押し付けた俺たちを許してくれ…すまない…」
「……」
流れる時さえも忘れ心を交わした2人…当事者は短い時間なれど、ニュータイプとして理解し合う間近であった。
しかし、哀しい運命と刻により、分かり合うことは叶わなかった…。
哀しみの銀河を越えて、尚も戦火は収まらない…。


「そろそろ…ラストセッションといくぜ…」
隻腕のデルタガンダム…渾身の念で機体を操るフラン。
「もう迷わない…今までの事が、無駄でなかったということの証の為に‼︎」
フーバーのバウ…緑の機体色を煌めかせ、銀河の海を飛ぶ。
「もってくれよ…デルタ‼︎」
操縦桿を握りしめ、デブリから飛び出すフラン。
「‼︎」
一瞬の不意をつかれたフーバー。
「ナイヘーメン士官学校首席卒業の技量、見せてやるよ‼︎」
「金色…‼︎」
バウのシールドから、連装の拡散ビーム砲が発射され、辺りを薄く照らす。
ジェネレーター直結のこのシールドビーム砲は、バウの兵装の中でも屈指の威力を誇る。
高出力の光線を浴びつつ、機体を強引に近づけていくフラン。
「怯まないのか⁉︎これを喰らって‼︎」
金色に輝く装甲がビームを弾きつつ、ゆっくり溶解していく。
「これくらいなら…耐えるぜェ‼︎」
機体を射角から離脱させ、バウをロックオンする金色の不死鳥。
焼け爛れた金色の塗装が、さながら火を纏ったフェニックスのような、はたまた皮膚を溶かした化物のような威圧と存在感を放っている。
デルタの首と肩の間、少し後ろに引いたところから、小型のガトリングが伸びる。
「食らって墜ちろ‼︎」
「ビームガトリング‼︎」
後ろに下がりつつ、光弾の雨から、シールドで機体を護るバウ。
「パージ‼︎」
爆散するシールドに乗じて、間を取ったフーバー。
「逃がすかよぉ‼︎」
さらなる追い打ちを仕掛ける敵機を見据え、火器管制コンソールに光る、最後の増加ポッドをタッチする。
「最後に残った…切り札‼︎」
ガスの尾を引いて腰部から射出されたミサイルは、デルタガンダムを目掛け真っ直ぐ飛んでいく。
「撃ち落とす‼︎」
ビームの弾幕に晒されたミサイルが爆裂し、周囲に異様な煌めきを撒き散らす。
「まさか…これは‼︎撹乱幕‼︎」
ビームを弾く粒子が宙域を漂い、金色の機体色を反射し眩く輝く。
「しまった!奴は…⁉︎」
モニターを見回し、反応の先を撃ち抜く。
「?軽い?爆発が…」
その刹那、下半身を捨て、アタッカーのみとなったバウのマニュピレーターに握りしめられたサーベルが振り下ろされた。
「後ろから⁉︎」
デルタの肩を上から貫通し、踵を返したガンダムの顔面にパンチを入れる。
「どうだ…金色‼︎」
弾き飛ばされたデルタ。
コックピットを揺さぶる衝撃。
サーベルが左腕と左脚のスカートアーマーを抉り飛ばし、もはや継戦能力は消えた機体を、なんとか制御する。
「死ぬ……か…」
だめ、あなたはまだっ!
死んではいけない…
待ってる人がいる…
「待ってる人…」
「しぶとい奴が‼︎」

「そうだ、あいつがいるんだ…死ね、ねぇよ」
急制動をかけた機体は、一気に数ブロックもの距離を置いてバウを置き去りにした。
「くそっ……なんだったんだ…あの宙流、宇宙を流れる念の様な…」
奇妙な気分を心に感じつつも、上半身のみとなり、変形したバウ・アタッカーの操縦桿を握る。
「新型のギラ・ドーガなら、恐らく受信してくれる…はずだな」
通信コンソールを確認し、信号弾をタッチする。
「届いてくれ!」
バウのバックパックから黄緑の閃光弾が高く打ち上げられ、周囲の宙域を照らす。
「これで…一旦母艦に帰投するか…」
ふと前のデブリを見て、そこに叩きつけられ、四肢を失ったジムIIIが目に入る。
「ジムか…」
パイロットの亡骸はあの中にあるのだろうか…
いや、たぶんコックピットに突き刺さったヒートホークに潰されて…
マルロと同じように。

「くっ…」
一際大きなそのデブリに向けて、弔いに最後のガトリングを放った。

人の思念たる宙流が疾る月面宙域。
戦いに、ほんのすこしの終着の光が射し始めていた。 
 

 
後書き
今回初めて挿絵を入れてみました!
ガンプラですが…w
これからちょくちょく入るかもしれません。
次回に続きます。 
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