英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第177話
その後リィンが課題活動を終えるとクロウからステージ衣装の到着が遅れる為、誰かが直接店に取りに行く事になり、クロウに頼まれたリィンは引き受けた後アンゼリカから託された導力バイクで行く事にし、荷物持ちの手伝いとしてアリサを呼んだ後サイドカーにアリサを乗せて帝都に向かった。
~夕方・帝都ヘイムダル”ヴァンクール通り”・ブティック”ル・サージュ”本店~
「―――悪かったなぁ。わざわざ取りに来てもらって。でも、その分満足のいく仕上がりになってると思うぜ。」
「こちらこそ、こんな短期間での製作をありがとうございました。」
申し訳なさそうな表情で答えたオーナーの言葉にアリサは謙遜した様子で答えた。
「ハハ、クロウのやつには去年も無茶振りされたからな。去年のステージも良かったし今年も見物に行かせてもらうぜ。そういや、あんたがサイドギターのお嬢さんかい?ふむ、上品な雰囲気があのデザインと上手く調和して、中々魅力的にキマリそうだぜ。」
「え、えっと……結局、どういうデザインにしてくれたわけ?」
オーナーの話に戸惑ったアリサはジト目でリィンを見つめ
「ま、まあ……帰ってからのお楽しみって、事で。」
リィンは苦笑しながら答えを濁した。その後リィンが先に外に出ると何かに気付いた。
「鳥……?」
リィンが見つめた先に蒼い鳥が街灯に止まっていた。
「………………」
「え…………」
鳥をジッと見つめたリィンが呆けたその時鳥は飛び去り
(あの鳥、あの猫と”同類”ね。)
(ええ、そうですね。)
(使い魔の類でしょうか?)
(………………………)
ベルフェゴールの言葉にリザイラは頷き、メサイアは考え込み、何かを感じ取っていたアイドスは真剣な表情で鳥が去った方向を見つめていた。
するとその時アリサが店から出て来た。
「えっと、リィン?なにかあったの?ボーっとしちゃって。」
「はは……いや、大した事じゃないんだ。そこの街灯に変わった鳥がとまっててさ。」
「変わった鳥?」
「ああ、ちょっと見たことのないような羽の色で…………瑠璃色というか……真っ青な色をしてたんだ。」
「へえ……確かに珍しいわね。でも、なんでこんな街中に……?」
リィンの話を聞いたアリサは目を丸くして尋ね
「さあ……」
アリサの問いかけにリィンが首を傾げたその時
「あらら?」
ミスティがリィン達に近づいてきた。
「クロチルダ―――いや、”ミスティ”さん!?」
「知り合いなの?(なんだか声だけは聞き覚えがあるような……)」
ミスティと知り合い同士であるかのように接しているリィンを見たアリサは目を丸くした後不思議そうな表情で考え込みながらミスティを見つめた。
「ふふっ、お久しぶり。お願いだから”本名”は勘弁ね。帝都の人達にバレたらもみくちゃにされそうだから。」
「はは……わかりました。でも、偶然ですね。こんな場所で会えるなんて。あ……ひょっとして、こちらの店に?」
「ええ、トリスタにもあるけど本店の方が品揃えはいいしね。君達の方は、そんなトランク3つも抱えてどうしたの?ふふ、もしかしてデートかしら?」
「そ、そんなんじゃないですから!…………でも、いつかはしたいですけど…………」
「その、実は……」
ミスティの問いかけにアリサは慌てた様子で否定した後小声で呟き、リィンはミスティにステージ衣装を受け取りに来た経緯を説明した。
「へえ、学院祭でコンサート!いいわねぇ!うーん、面白そうじゃない!士官学院祭か……うまくスケジュールが空けば遊びに行っちゃおうかしら。」
「はは……よかったら、是非。まあ、プロの人に聞かせられるレベルじゃありませんけど。」
「音楽はハートよ、ハート。―――いっけない。あまり時間がないんだった。それじゃあ、またね。明日の放送もヨロシク♪」
「ええ、楽しみにしています。」
そしてミスティはリィン達がさっきまでいた店に入って行った。
(……………彼女の奥底から感じた”闇”は一体……)
ミスティが店に入るまでジッと見つめていたアイドスは真剣な表情で考え込んでいた。
「明日の放送って……何のこと?そういえばさっき、本名がどうとかって……」
「ああ、実は―――」
事情がわからないアリサにリィンは歌姫クロチルダが”ミスティ”としてラジオに出演している事を説明した。
「ミスティ―――”アーベントタイム”の!へええ……あのクロチルダと同一人物だったんだ……!」
「はは、意外と気付かないものだよな。あれ……?でも明日って金曜日だよな?”アーベントタイム”は日曜だったはずだけど…………」
「そういえば……何かあるのかしら?」
「うーん……まあいいか。そろそろトリスタに帰ろう。みんなも待ってるだろうしさ。」
「うん、そうね。今日中に衣装合わせをしなくちゃならないし。」
「ああ、そうだな。その、絶対に悪くないから怒らないでくれよな?」
アリサの言葉に頷いたリィンは苦笑しながらアリサを見つめ
「だ、だから本当にどんな衣装なのよっ!?」
リィンの言葉を聞いたアリサはジト目で指摘した。
その後サイドカーにトランクを乗せたリィンは後ろにアリサを乗せて運転し、アリサは頬を赤らめて嬉しそうな表情で背後からリィンを抱きしめて落ちないようにしっかりと掴まり、その後導力バイクで旧校舎に向かったリィンは仲間達にそれぞれの衣装を渡し、リィン達はステージ用の衣装に着替えた。
~夜・旧校舎~
「へえ……悪くないんじゃない?」
アリサは自分が身に纏うステージ衣装を見て感心し
「ふむ、露出は多めだが良いセンスをしているな。」
「ん、悪くないかも。」
「黒でお揃いなのもカッコイイ感じだよねー。」
ラウラの言葉にフィーとミリアムは頷き
「でも、おへそを出すのはちょっと恥ずかしいですわ……」
「まあまあ、このくらいの露出だったら、大した事ないと思うよ。」
恥ずかしそうに顕わになっているへその部分を見つめたセレーネの言葉を聞いたツーヤは苦笑しながら諌め
「何だ。エヴリーヌの普段の服と比べれば大した事ないね。」
「むしろエヴリーヌお姉様はもっと露出を控えて下さい……」
肩透かしを喰らったかのような表情で呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは呆れた表情で指摘した。
「まあ、悪くはないけど、もうちょっと露出させてもいいんじゃないかしら?例えば胸とか♪」
「ベ、ベルフェゴール様…………それだと投票してくれるのが男性ばかりになりますよ……」
ベルフェゴールの感想を聞いたメサイアは冷や汗をかいて疲れた表情で答え
「ねえねえリザイラ様、わたし、似合っている?」
「ええ、中々似合っていますよ。」
興味ありげな表情をしているミルモに尋ねられたリザイラは静かな笑みを浮かべて頷いた。
「ふむ、露出もそれ程ではないから、これなら男どもも肝心の音楽の方を聞くだろうな。」
「ブーブー。ワタシはもうちょっと露出させるべきだと思うけどな~。」
アムドシアスの感想を聞いたヴァレフォルは頬を膨らませて答え
「エヘヘ、みんな似合っているね~♪」
「フン、”精霊女王”たる私は何を着ても映えるのは当然ですわ!」
無邪気な笑顔を浮かべたペルルの言葉を聞いたフィニリィは鼻を鳴らした後高貴な雰囲気を纏って髪をかき上げた。
「ううっ……何だか落ち着かないです……」
その時眼鏡を外し、髪を下ろし、ステージ衣装を身に纏ったエマがシャロンと共に来た。
「いいんちょ、色っぽいねー!」
「フフ、まさかここまで華やかになるとは……」
「これなら成功する事間違いなしですね。」
「ぶっちゃけエロいね。」
「フィ、フィーさん……」
「ア、アハハ……」
「そうかな?まあ、胸はわりと出ているけど。」
女子達がエマの衣装の感想を言い合っている中フィーの指摘を聞いたセレーネは冷や汗をかき、プリネは苦笑し、エヴリーヌは首を傾げ
「は、離して―――!今すぐエマに抱き付くわ―――!」
「はいはい、興奮するのはわかるけどここで飛びつくのはなしよ?」
ベルフェゴールはエマに飛び掛かろうとしているヴァレフォルを抑えつけていた。
「うううっ……信じた私が馬鹿でした……」
「うんうん、睨んだ通り、髪を解いたのは正解だったわね。さすがシャロン。セットも完璧、グッジョブだわ!」
「ふふっ、恐れ入ります。ですがまだ真打ちが残っていますわよ?」
「へ―――」
そしてシャロンの言葉を聞いたアリサが呆けたその時
「フフ、お待たせ。」
ステージ衣装を身に纏ったアイドスがアリサ達に近づいてきた。
「わあ……!とっても綺麗ですわ♪」
「うん……フフ、さすが”女神”と言った所だね。」
セレーネの感想にツーヤは微笑みながら頷き
「まあ、セリカなら驚く事間違いなしだよね?キャハッ♪」
「ア、アハハ……確かに……というかお父様達だけでなく、エステルさん達も見に来るそうですから、エステルさん達も驚くでしょうね……」
口元に笑みを浮かべて言ったエヴリーヌの言葉を聞いたプリネは冷や汗をかいて苦笑しながら頷き
「うむ!さすがはセリカと同じ身体を持つ者だな!」
「や、やめてよ~。アイドスがセリカに見えちゃうじゃない。」
納得した様子で頷いたアムドシアスの言葉を聞いたペルルは表情を引き攣らせた。
「ほう……確かにアイドス殿が登場すればまさに”真打ち”登場だな。」
「ええ……!アイドスが登場すれば絶対会場はもっと盛り上がるわ……!」
「というか、アイドスを見ていると何だか背景が輝いているようにも見えるよねー?」
「まあ、女神なんだから”女神の威光”とかを纏っているんじゃないの?」
ラウラの言葉にアリサは力強く頷き、不思議そうな表情をしているミリアムの言葉にフィーは静かに呟き
「フフ、ありがとう、みんな。」
女性陣の反応を見たアイドスは嬉しそうに微笑んだ。
「エマ様とアイドス様もそうですがお嬢様や皆様も素敵ですわ。」
「へえ……みんな予想以上に似合ってるな。」
シャロンがアリサ達を称賛しているとステージ衣装を身に纏ったリィン達がアリサ達に近づいてきた。
「あら、そっちもいいじゃない。」
「白い装束……古い宮廷風の意匠も入っているようだな。」
「エセ王子っぽいけど悪くないかも。」
「それを言うならいつも白い制服を着ている貴族の男はみんな、エセって事になるね。」
「エ、エヴリーヌお姉様……」
「言っておきますけど、貴族生徒の皆さんは本物の”貴族”ですからね?」
「まあ……!皆さん、とっても素敵ですわ♪」
「あはは、ボクたちと違ってデザインは同じみたいだけどー。」
女子達はそれぞれ感想を言い合ってリィン達を見つめた。
「まあ、期間も期間だったから違うデザインにはできなくてさ。」
「野郎のステージ衣装なんざあんま凝っても仕方ねえだろ。華は女子どもに持たせて男子はあえてお揃いにする……これぞメリハリってヤツだぜ。」
「フフ、なるほどな。」
「髪の色や背の高さが違うから逆に引き立つかもしれないね。」
クロウの説明を聞いたガイウスは静かな笑みを浮かべ、エリオットはリィン達を見回して納得した様子で頷いた。
「フン、この手の衣装なら俺は着なれてなくもないが……お前が着ると正直、冗談にしか見えんな。」
「ほ、放っておいてくれっ!誰が好き好んで、こんなエセ貴族風の格好を……言っておくが、同じこの格好で僕と一緒に歌うというのを忘れてるんじゃないだろうなっ!?」
口元に笑みを浮かべて自分を見つめるユーシスの指摘を聞いたマキアスは疲れた表情で反論した後ジト目でユーシスに指摘し
「ぐっ……思い出させるな。」
マキアスの指摘にユーシスは唸り声を上げてマキアスから視線を逸らして疲れた表情になった。
「よーし、そんじゃあ今夜中に出来る限りのリハーサルをやっちまうぞ!」
「今日を入れて1日半……もう本当に時間がないから。みんな、ノーミスで行かない限り今夜は帰れないと思ってね?」
「無論、異種族達の皆も同じで、その主達も同じだぞ?」
エリオットとアムドシアスの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。
「何だ……その有無を言わせぬ迫力は。」
「貴方、音楽になるとほんと人が変わるわね……」
「はあ……今夜は帰れるのかな。」
「エヴリーヌ、早く寝たい……」
「フフ、そのためにも全力で頑張って、ノーミスで成功させましょうね?エヴリーヌお姉様。」
「ふふっ、後で全員分のお夜食をお持ちいたしますね。」
「シャロンさん。そういう問題では……」
「まあ、こうなったら肚を括るしかないだろう。」
「……もういいです……こうなったら恥も外聞も捨てて開き直るしか……ブツブツ……」
「フフ、これもみんなが手を取り合う為への小さな一歩として全力で頑張るわ。」
エマが独り言を呟いている中、アイドスは微笑んでいた。
「い、委員長……?」
「いいんちょが壊れた!?」
「こっちに帰ってきてください、エマさん!」
エマの様子を見たリィンは戸惑い、ミリアムは驚き、セレーネは必死の表情になり
「まあ、そっとしておくがよい。」
「そうですね……」
疲れた表情で言ったラウラの言葉にツーヤは頷いた。
そしてリィン達は1日半まるまる使ったかつてない程のハードなリハーサルを始めた…………
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