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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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終章~士官学院祭、そして―~ 第176話

10月21日――――



~トールズ士官学院・校門~



学院祭準備の日、全校生徒は校門に集まり、トワの演説を聞き始めていた。

「えー、コホン。皆さん、本日は天気もよく、絶好の設営日和になりました。先月から準備を進めて待ちに待っていた人達も多いんじゃないかと思います。」

演説をしたトワは静かな笑みを浮かべて目を閉じ

「それでは、これより学院祭の各種準備・設営を始めます!期限は今日と明日の2日―――明日の深夜は”なるべく”作業を持ち越さないようにしてくださいねー。みんな、ケガをしないよう元気に張り切っていきましょう!」

「おおっ!」

元気よく片手を挙げると共にジャンプして笑顔で全校生徒を見回して号令をかけた。



こうして全校生徒は学院祭の準備を始め、それぞれが忙しく駆け回っている中リィン達は教室で集まっていた。



~1年Ⅶ組~



「この半月余り……みんな、本当にお疲れ様!」

「クク、まあ何とか形になって何よりだぜ。」

「ふう……とんでもない半月だったけど。」

エリオットとクロウが仲間達を労っている中、リィンは疲れた表情で溜息を吐いた。



「ええ……まさかここまで大変だとは思わなかったわね。」

(つ、疲れたよ~!特にエリオットとアムドシアスが怖かったよ~!)

リィンの言葉にアリサは頷き、ミルモは疲れた表情で呟き

(ハア、アムドシアスは予想していたけど、まさかあの子があそこまで鬼だったとはねぇ……)

(ふふふ、この私が指導をされる立場になるとは思いませんでしたよ。)

(フフ、でも楽しかったからいいじゃないですか。)

(そうね……辛くて厳しい日々だったけど、同時にとても楽しかったわ……)

ベルフェゴールは疲れた表情で溜息を吐き、静かな笑みを浮かべるリザイラの言葉にメサイアとアイドスはそれぞれ微笑みながら答え

(我はまだ物足りないのだがな。)

(ええっ!?もう、勘弁してよ~!)

(全く、後どれだけすれば満足なのですか……)

アムドシアスの念話を聞いたペルルは表情を引き攣らせ、フィニリィは呆れた表情で溜息を吐いた。



「エリオット、音楽の指導だとスパルタすぎるし。」

「あはは、何だか別人みたいだったよねー。」

「あの時のエリオットさん、とても怖かったです……」

「アムドシアスは予想していたけど、エリオットさんがまさかあんな豹変するなんてね……」

「まあ、それだけ学院祭の出し物を成功させたいという思いからあそこまで豹変したのでしょうけど……」

ジト目のフィーの言葉に続くようにミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、セレーネは疲れた表情をし、プリネとツーヤはそれぞれ苦笑しながらエリオットを見つめた。



「ご、ごめん。良いものにしなきゃって思ってたらつい……」

「はは、気にするなって。」

「そなたとアムドシアス殿の叱咤があったから即席の演奏班(バンド)も何とかまとまったのだろうしな。」

「ああ……きっと良いステージになる。」

(これでお金を取らない所が勿体なさすぎるわよね~。)

(ヴァ、ヴァレフォルさん……)

「えへへ……」

ラウラとガイウスの言葉にエリオットは嬉しそうに笑い、ヴァレフォルの念話を聞いたエマは冷や汗をかいた。



「はあ……」

「な、何とか歌の方は形になったとは思うが……」

「……くっ……本当にアレをやるのか……?」

一方ボーカルを担当するエマは当日の事を考えて疲れた表情で溜息を吐き、マキアスは表情を引き攣らせ、ユーシスは唇を噛みしめて呟いた。



「オラオラ、いい加減、往生際が悪いっつーの。少しは文句も言わずに練習に励んだアイドスを見習えっつーの。」

ボーカル担当の愚痴を聞いたクロウは口元に笑みを浮かべて指摘し

「ふふっ、エマの歌なんてかなりの完成度じゃない。」

「うむ、あれで衣装をまとえばさぞ舞台映えするだろう。」

「男子の目、釘付け。」

「いつもと違うエマさんに皆さん、きっと驚くでしょうね♪」

「ふふっ、そうだね。」

「成功する事、間違いなしですね。」

「ううっ、プレッシャーをかけないでくださいよ~……」

女子達の感想を聞いたエマは疲れた表情で呟いた。



「はは、マキアスとユーシスも最後には完全に合わせられたな。」

「ああ、最初の頃はどうなる事かと思ったが……」

「うんうん、とっても好対照なデュオになったと思うよ。」

「そ、それが納得行かないんじゃないか!」

「フン……恥辱の極みだな。」

リィンとガイウス、エリオットの感想を聞いたマキアスは声を上げて反論し、ユーシスは鼻を鳴らしてジト目になった。



「ふふ、やってるわね。」

その時サラ教官とレーヴェが教室に入ってきた。

「旧校舎の使用許可は学院長から取ってきたわ。今日と明日の2日間、自由に使っていいそうよ。」

「勿論、施錠をお前達がしっかりやる事も条件に含められてある。」

「ホ、ホントですか!?」

「ふう……正直、助かりました。」

サラ教官とレーヴェの話を聞いたエリオットは明るい表情で声を上げ、リィンは安堵の溜息を吐いた。



「やはり音楽室の練習だけでは本番の感覚は掴めぬしな。」

「結局、講堂の舞台はⅠ組がずっと使ってたものね。」

「あちらは劇である以上、仕方ないかもしれませんが……」

「でも、ずっと使っているなんてズルくない?エヴリーヌ達も使うのに。」

「まあまあ、結果的にわたくし達も万全の準備ができたから、いいじゃありませんか、エヴリーヌさん……」

「ま、旧校舎の1階だったら講堂と似たような空間だからな。おあつらえ向きな舞台もあるし、リハーサルにはもってこいだろ。」

「ああ、いいアイデアだと思う。」

「旧校舎1階といえば入学式の日を思い出すが……」

「フン、どこぞの教官が俺達を嵌めた場所だな。」

クロウの言葉を聞いたガイウスは頷き、ある事を思い出したマキアスは疲れた表情をし、ユーシスは呆れた表情で仲間達と共にサラ教官を見つめた。



「アハハ……まあ時効ってことで。」

全員に注目されたサラ教官は苦笑し

「フッ、自業自得だな。」

「ああん!?黙っていたアンタも同罪の癖に、他人事のように言うんじゃないわよ!?」

静かな笑みを浮かべて言ったレーヴェの言葉を聞いたサラ教官はレーヴェを睨み

「あの二人も相変わらずですよね……」

「そうね……もうあれから半年も経っているのに……」

その様子を見守っていたツーヤとプリネは苦笑していた。



「そういや、嬉し恥ずかしのベタなハプニングもあったみたいだな?」

そして笑顔で言ったクロウの指摘にリィンとアリサは顔色を変え

「あはは、なにそれー?」

「ん、実は―――」

「た、大した事じゃないから!」

興味ありげな表情をしているミリアムに説明しかけたフィーをアリサは慌てた様子で声を上げて制止し

(というかクロウ、どこで聞きつけたんだ……?)

リィンは呆れた表情でクロウを見つめていた。



「ふふっ、それでは今日は予定通りに動きましょうか。」

「ああ、ステージ衣装が到着するのは今日の夕方……それまでは各自、学院祭の飾りつけや出し物に協力しよう。」

「そうね、明日は1日、リハーサルで潰れそうだし。」

「せめて今日くらい協力するのが筋というものであろう。」

「めんどくさいけど仕方ないか。」

「むう……エヴリーヌもめんどくさいけどプリネのお姉ちゃんとして頑張らないとね。」

「フフ、一緒に頑張りましょうね、エヴリーヌお姉様。」

「リィンはトワ会長から課外活動を受け取っているんだったな?」

「ああ、相当忙しそうだしせめて力になれればと思ってさ。ついでに旧校舎の様子もチェックしておこうと思ってる。」

ガイウスに尋ねられたリィンは頷いて説明を続けた。



「そうだな……1階を使うとは言え何があるかもわからないし。」

「チェックするなら念のためARCUSで呼んでちょうだい。」

「ああ、その時は頼む。」

「ふふ、練習も含めてせいぜい頑張りなさい。あたし達は見回しとかしてるから何かあったら連絡して。」

「とりあえず衣装が届いたら全員ARCUSに連絡するぜ。今日中に衣装合わせだけはしておきたいからな。」

その後Ⅶ組は解散してそれぞれ学院祭の手伝いを始め、リィンはトワの元に向かって課外活動の内容が書かれてある封筒を受け取った。



~校門~



「―――それじゃあ、よろしくお願いするねー。」

「ええ、任せてください。」

トワから封筒を受け取ったリィンは課外活動の内容を確認した。



「はは……学院祭関係ばかりですね。しかし、トリスタの商店街も随分協力してくれていますね?」

「うん、毎年恒例なの。ラジオ局ともちょっとしたタイアップなんかもしてるし。わかりました、トリスタ方面もなるべくフォローしておきます。」

「うん、お願いねー。あ、でもステージの方もおろそかにしちゃダメだよ?クロウ君から聞いてるけどかなりの仕上がりなんでしょ?」

「ええ、本格的なリハーサルはこれからなんですけど…………でも、身内も来ることですしやれるだけはやってみますよ。その……アンゼリカ先輩も見に来てくれるんですよね?」

トワの言葉に頷いたリィンは学院を去ったアンゼリカを思い出し、トワに尋ねた。



「うん。アンちゃんの話だと1日目は無理だけど、2日目はレン姫がリウイ陛下達と一緒に学院祭に来るからその時の案内兼護衛として来れるんだって。」

「そうですか…………って、リウイ陛下達も来訪されるのなら、絶対に成功させないといけませんね、ハハ……」

トワの話を聞いて明るい表情で頷いたリィンはある事に気付いて冷や汗をかいて苦笑した。



「フフッ、そうだね。アンちゃん達を含めた学院祭に来るお客さんたちに思いっきり楽しんでもらえるようお互い頑張ろう?君達のステージも含めて学院祭自体を成功させることで。」

「……はい、全力でやってみます。ヒントをくれた会長にも格好悪い所は見せられませんし。」

「あ……えへへ。うん、楽しみにしてるね!

その後トワと別れたリィンは課外活動を始めた。
 
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