英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第111話
~アルセイユ・ブリッジ~
「……………エ………テル…………。……エス……ル………起きて………」
「……大丈夫か……………エス……ちゃん……」
「…………エス……さん…………起きて…………さい……」
「………きて………ママ………」
「……ん…………」
自分を呼ぶさまざまな声に気付いたエステルは目を覚ました。
「あ……」
「よかった……目ぇ覚めたか。」
「よかった~……」
「大丈夫?どこかケガしていない?」
目を覚ましたエステルを見たケビンとミントは安堵の溜息を吐き、ヨシュアは心配そうな表情で尋ねた。
「あ……うん……」
そしてエステルは体を起こした。
「……ちょっとヒジを擦りむいたくらいだけど……。…………みんなは…………?」
「ま、なんとか無事だぜ……」
「……あ、あうう~……」
「だ、大丈夫……です……」
「やれやれ……スリル満点だったねぇ……」
「ふう……さすがにダメかと思ったわ。」
「九死に一生を得たといったところか。」
エステルの言葉に反応した仲間達はそれぞれゆっくりと起き上がって言い
「フフ、こんな楽しい体験は初めてだったよ。」
「最初から死んでいるリタだから、そんな事が言えるのよ……」
ヨシュア達のように最初から起き上がっているリタの言葉にエステルは呆れた表情で溜息を吐いた。
「……えへへ~……。そんなにたくさん……食べられないですよ~……」
「はあ……ったく。こらドロシー!もう朝だぞ!」
一方まだ寝ぼけているドロシーに呆れたナイアルは怒鳴った。
「ほえ……ナイアル先輩……?」
ナイアルの言葉にドロシーは飛び起きた。
「そちらの方はどうだ?」
そしてユリアはそれぞれの席に前に倒れているミュラー達に声をかけた。
「……問題ない。」
「な、何とか無事じゃ。」
「……問題ありません……」
「こ、こちらも何とか……」
「し、死ぬかと思いました……」
ミュラーや博士達もそれぞれ起き上がって言った。
「……まさに奇跡だな。それとも……ただ手を抜かれただけなのか……」
全員が無事な事に信じられない表情をした後、苦い表情で呟いた。
「そ、そうだ!さっきアルセイユを攻撃した黒いヤツに乗ってたのって……」
ある事を思い出して血相を変えたエステルはヨシュアを見た。
「……ああ。間違いなくレーヴェだと思う。」
「……野郎か」
ヨシュアは真剣な表情で答え、ヨシュアの言葉にアガットも頷き
「となると確かに手を抜かれたのかもしれんな。奴さんがその気だったら完全に撃墜されていただろう。」
「……なんか複雑ね。」
「………………………………」
ジンの推測を聞いたエステルは溜息を吐き、ヨシュアは黙り込んでいた。
「そういえば……私たち、どこに落ちたのでしょう?」
「浮遊都市の周縁部のようですが……。まずは外に出て状況を確認した方が良さそうですね。」
そしてエステル達は外に出た。
~リベル=アーク市~
「こ、ここって……」
「うわぁ……キレイ……」
外に出たエステル達は周りの景色に目を奪われ
「こ、これはもう撮って撮って撮りまくるしか~!」
ドロシーは写真を撮りまくった。
「おいおい……。感光クオーツを使い切るなよ?」
その様子を見たナイアルは冷や汗をかいて指摘した。
「しかしここは……えらく浮世離れした場所やね。都市っちゅうよりは庭園といった方が良さそうや。」
「そうですね……。大都市における公園のような場所なのかもしれません。」
「た、確かにそんな雰囲気だけど……。それにしては、同じような場所が遠くまで続いてるんですけど……」
「やれやれ……。とてつもないスケールだねぇ。」
ケビンの推測にヨシュアが頷き、エステルが呟いた言葉にオリビエが溜息を吐いて頷いたその時
「ピューイ!」
「ジーク!?」
「ピュイピュイ!」
ジークが飛んできて、クローゼの肩に止まった。
「あ、ジーク君だ!」
「よかった……。はぐれたのかと思ったわ。大丈夫……私たちも平気よ。」
「ピューイ♪ピュイ!ピュイピュイピューイ!」
「そう……分かったわ。どうやら私たちは、浮遊都市の最西端に不時着したようです。そして”グロリアス”はちょうど反対側の東側に停泊しているみたいですね。それと”モルテニア”はこちらに近づいているそうです。」
ジークの報告を聞いたクローゼは全員に説明した。そしてエステル達はこれからの事を相談するために会議室に集まった。
~アルセイユ・会議室~
「―――アルセイユの損傷はそこまで深刻なものではない。導力機関はほとんど無傷じゃし、反重力発生機関の損傷も軽微じゃ。じゃが、スタビライザーをはじめ、細かい導力系統に不具合が生じておる。このままでは、まともに浮き上がることもできんじゃろう。」
「そうですか……」
博士の報告を聞いたユリアは真剣な表情で頷いた。
「とにかく人手をかき集めて修理を始めるしかないだろう。及ばずながら自分も協力させていただく。」
「……かたじけない。」
「陛下達が到着された時、アルセイユの修理に人手を割いてほしい事を私からもお願いしておきます。」
「ありがとうございます、殿下。」
ミュラーとクローゼの申し出にユリアはお礼を言った。
「アルセイユはそれでいいとして問題は、この都市のどこかに存在する”輝く環”の方だろうね。どうやら”結社”の方は着々と準備を進めているようだ。」
「はい……。彼らの手に”輝く環”が渡ったらどのような事になってしまうか……」
オリビエの推測にクローゼは不安そうな表情で頷いて答えた。
「まあ、どう考えてもロクな事にはならないでしょうね。今までの事から判断する限り。」
「ヘッ……違いねえ。こりゃ、すぐにでも動いた方が良さそうだな。」
「だが、闇雲に動いたらかえって混乱を招く恐れがある。ここはやはり、探索班を組むべきだろうな。」
「確かに……。まずは移動ルートを確保しないと”輝く環”も探しようがないしね。」
「………………………………」
仲間達が話し合っている中、ヨシュアは黙って考え込んでいた。
「どうしたの、ヨシュア?」
「いや……何でもないよ。―――とりあえず、探索班にはバックアップも必要だと思います。アルセイユに戻ってきたらすぐに交替できるようにするのが望ましいかもしれません。」
「そうだな……。私も探索に加わりたいところだが、今はアルセイユの修理が急務だ。当面の役割分担を話し合う必要があるな。」
ヨシュアの提案にユリアは頷いて答えた。
「うん、それがいいかもね。」
エステルもそう呟いたその時
「……失礼する。」
「あ、リウイ。それにイリーナさんとシェラさんも。」
リウイ、イリーナ、シェラが会議室に入って来た。
「陛下。そちらの方は無事到着されたのですか?」
会議室に入って来たリウイにクローゼは尋ねた。
「ああ………それにしても随分、手酷くやられてしまったようだな。」
「はい、お恥ずかしながら。………あの、陛下。恐れ多いのですが実はお願いがございまして……」
自分が尋ねた言葉に頷いているリウイに決意の表情になったクローゼが話しかけた。
「わかっている。修理の為の人手なら、シェラと相談してくれ。……必要な人数は出すよう指示してある。」
「かたじけない。……シェラ将軍、後程”モルテニア”に相談の為に伺ってもよろしいでしょうか?」
「構いません。リウイ様の指示により”モルテニア”内にいる全員に”アルセイユ”の乗組員達を無条件で通すよう、通達がしてありますので。」
ユリアに尋ねられたシェラは淡々と答えた。
「それともしよければ探索班に私達も加わってもいいですか?」
「え……そりゃありがたいけど、イリーナさんも戦うの?転生する前は魔術を使って戦う事はできたようだけど……」
イリーナの申し出を聞いて驚いたエステルはイリーナを見て尋ねた。
「ええ。転生後もペテレーネのお蔭で記憶が戻る前でも魔術が使えましたし、記憶が戻ったお蔭で以前と同じ……いえ、以前以上に戦えます。」
「他の者達は”モルテニア”内に待機している。………連れて行きたい者がいれば、呼べばついて行くだろう。」
「そっか。じゃあ……」
イリーナとリウイの言葉に頷いたエステルはヨシュアと相談しメンバーにクローゼを選び、リウイとイリーナにも同行を頼み、アルセイユの通信器を使って、モルテニア内にいるウィルとセラウィを呼んで貰い、同行者に加えた。
「それではエステル君以下、7名のメンバーに探索をお願いする。何が起こるか分からないからくれぐれも無理はしないでくれ。……陛下達もご無理をなさらないよう、お願いします。」
「大丈夫、心配しないで。」
「俺達には無用な心配だ。」
「まずは移動ルートの確保を優先的に行います。」
ユリアの言葉にエステルとリウイ、ヨシュアは頷いて答えた。
「よろしくお願いする。残りの者は待機メンバーとして船体の修理を手伝ってもらいたい。」
「はいっ!」
そしてユリアの頼みにティータは頷いた。
「……おっと、そうじゃ。ちなみに朗報が1つあってな。どうやら浮遊都市の上では”導力停止現象”は起こらんらしい。アルセイユから離れていても戦術オーブメントが使えるはずじゃ。」
「ほ、ほんと!?」
「ど、どうして分かるの?」
博士の報告を聞いたエステルは驚き、ティータは尋ねた。
「実は、例の『零力場発生器』が不時着の衝撃で壊れたんじゃが……。それにもかかわらず、艦内の装置を問題なく動かすことができたんじゃ。どうやらケビン神父の推測がおおよそ当たっていたようじゃな。」
「どういうこと、ケビンさん?」
「”環”は外界に存在する異物を排除しようとする機能を備えている……。つまり、都市の中にいる限り、オーブメントは異物としては認識されんちゅうわけですな?」
「うむ、そういうことじゃ。」
ケビンの推測に博士は頷いた。
「は~、良かった。さすがに探索している時にアーツ無しじゃキツそうだし。」
「それでは、艦内にある工房施設も使えそうですか?」
「うむ、そちらも問題ない。更なるオーブメントの改造も可能じゃから立ち寄るがいい。」
「了解!」
「分かりました。」
そしてエステル達は仲間達と解散した。
「さてと……。早速、艦の外に出て捜索活動を始めちゃおうか?」
「うん、そうだね。……さ~て。どんな素材があるかな?」
「フフ、ウィルったら………」
エステルの提案に頷き、目を輝かせているウィルの言葉を聞いたセラウィは微笑んでいた。
「……ごめん、エステル。色々と装備を切らしていて補充しなくちゃいけないんだ。少し待っててくれるかな?」
「あ、そうなんだ。何だったら、手伝おうか?」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは頷いた後、尋ねた。
「いや、それには及ばないよ。30分くらいで戻るから休憩室で待っててくれるかい?後、パズモ達を召喚してくれないかい?彼女達に話があるから。」
「へ……パズモ達を?……ちなみに確認しておくけど、クーちゃんとカファルーも?」
「いや……まず、その2人を出したらアルセイユが余計に壊れるから………」
エステルの言葉を聞いたヨシュアは呆れた表情で答えた。
「ま、何にせよ、パズモ達に用があるのね。わかったわ!パズモ、永恒、テトリ、ニル!」
そしてエステルはパズモ達を召喚した。
「ヨシュアに少しだけ付き合ってあげて。」
(わかったわ。)
「はい。」
(………我等に何の用だ、小僧。)
「……………………」
エステルの指示にパズモとテトリは頷き、サエラブはヨシュアを見て、ニルは真剣な表情で黙ってヨシュアを見ていた。
「では、休憩室でお待ちしておりますね。行きましょう、みなさん。」
そしてイリーナの言葉に頷いたエステル達は休憩室に入って行った。
「まったく……君もいいかげん罪作りやね。」
休憩室に入って行くエステル達と入れ替わるようにケビンが会議室から出て来た。
「……すみません。」
「謝るんならエステルちゃんに謝り。……ホンマにええんか?」
「もう、決めた事ですから。ケビン神父……どうかよろしくお願いします。」
「ったく、しゃあないな……。よし、時間もないことやしとっとと医務室を借りるか。」
「はい。……エステルの身体の中にいる君達にも伝えておきたい事があるから、それを聞いてくれないかな?」
(……?)
「ヨシュアさん?」
(……どうやら、まだ何か隠していたようだな……)
「……ちゃんと説明してもらうわよ。」
そしてヨシュア達は医務室に向かい、ある事をした後、エステル達と合流した。
その後エステル達は浮遊都市の探索を始めた……………
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