英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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終章~空の軌跡~ 第110話
~アルセイユ・ブリッジ~
「―――安定翼、格納完了。そのまま”モルテニア”と並びつつ、湖上の浮遊都市に向かえ。」
「イエス・マム。」
「敵の迎撃があった場合は?」
部下達に指示をしているユリアにミュラーは尋ねた。
「……そうですね。”モルテニア”に任せるというのもありますが、都市への着陸を最優先とします。」
「了解した。ちなみに、自分に敬語は無用だ。階級はともかく、こうして砲術士として手伝っている以上、貴官の指揮下にあるのだからな。」
「……了解した。」
「へえ、ミュラーさんって砲術士なんかもできるんだ?」
砲術士の席に座っているミュラーを見たエステルは驚いて尋ねた。
「帝国軍で最も導力化された機甲師団で鍛えられたからねぇ。顔に似合わず、その手の業務は一通りこなせるわけさ。」
「……顔に似合わずは余計だ。」
笑いながら言ったオリビエの言葉にミュラーは顔を顰めて答えた。
「なるほど、そういう事か。ところでオリビエってばいつの間に着替えちゃったの?」
「帝国皇子として視察するんじゃないんですか?」
オリビエの言葉に頷いたエステルとヨシュアは普段の服装になっているオリビエを見て尋ねた。
「ハッハッハッ。そんなのただの建前さ。これが終わったら、ボクの自由で優雅な時間は終わりを告げてしまうからねぇ。せめてそれまでは気楽な格好でいさせてもらうよ。」
「はは……最後のモラトリアムというわけか。」
「はあ、エレボニアの国民が知ったらどう思うことやら……」
オリビエの説明を聞いたジンは苦笑し、シェラザードは呆れて溜息を吐いた。
「ボクとしては知られても一向に構わないのだがねぇ。どうだい、記者諸君たち。リベール通信でスッパ抜いては?」
そしてオリビエは後ろにいたナイアルとドロシーを見て尋ねた。
「おっと、いいんですかい?」
「だったらバンバン写真撮っちゃいますけど~。」
「頼むから、そいつの戯言をいちいち真に受けないでくれ……」
オリビエの言葉を真に受けている2人にミュラーは怒りを抑えた様子で言った。
「えっと、それはともかく……。どうしてナイアルたちがいつの間に船に乗っているわけ。」
「竜事件の時のようにお祖母様が手配したんですか?」
「ええ、お察しの通りです。陛下がカシウス准将に口添えをしてくれましてね。従軍記者扱いで乗艦させてもらったんですよ。」
「ハーケン門での、姫様たちのカッコイイ姿も撮っちゃいました♪現像、楽しみにしててくださいね~?」
エステルとクローゼの疑問に2人はいつもの様子で答えた。
「あ、あはは………」
「やれやれ……どうにも緊張感がねえな。」
2人の言葉を聞いたクローゼは苦笑し、アガットは呆れた。
「そういえば、エステル。一つ聞きたい事があるんだが、いいか?」
「ん?何?」
ナイアルに尋ねられたエステルは首を傾げて尋ねた。
「”覇王”の隣にいた金髪の女性……ありゃ、何者だ?”覇王”の隣にいた事や、服装からして見た感じかなりの身分のようだったが……メンフィルの皇族、武将で今まで見た事ない顔なんだよな……」
「ああ、イリーナさん?イリーナさんはリウイの奥さん――正妃よ。」
「何!?」
「……あの女性が将軍や准将がおっしゃっていた”覇王”の正妃として嫁いだ女性なのか……後で私も挨拶をしておかなくては。」
エステルの話を聞いたナイアルは信じられない表情をして驚いた。また、ユリアも驚いていた。
「まあ、ナイアルが知らないのも無理はないわよ。イリーナさん、最近リウイの正妃になったし、結婚式をあげるのもまだ先らしいし。」
「…………こりゃ、驚いたぜ……まさかそんなスクープがあったとは……クッ、こうなりゃ今回の事を利用して何が何でも後で取材させてもらわねーと……!………にしてもどっかで見たような気がするんだよな……」
エステルの話を聞いたナイアルは驚いた後、ある事を思い出して考え込んだ。
「見覚えがあって当然ですよ~、先輩。以前ロレントの大使館に行った時、お話ししたメイドさんなんですから~。」
考え込んでいるナイアルにドロシーは呑気な様子で言った。
「大使館にいたメイド…………………?…………!あの時のメイドか!………って、何でただのメイドがいきなり”覇王”の妃になっているんだよ!?」
ドロシーの言葉を聞いてイリーナの事を思い出したナイアルは訳がわからない様子で叫んだ。
(う~ん、さすがにそれをあたし達の口から言うのは不味いよね?)
(フフ、そうだね。”冥き途”の事もこの世界の人達に発表されるのは少し困るしね。)
小声でエステルに尋ねられたリタは苦笑しながら答えた。
「あ、あはは……。そういえば、おじいちゃん。『零力場発生器』の調子はどう?」
ナイアルの様子に苦笑していたティータは博士に尋ねた。
「うむ、今のところ順調じゃ。何も起きなければ浮遊都市に着陸するまでは持ってくれるじゃろう。」
「ちょ、ちょっと待った。ってことは……何か起こったらヤバイとか?」
「うむ。問答無用で墜落じゃろうな。」
「サラッと言わないでよ……」
博士の言葉を聞いたエステルは疲れた表情で溜息を吐いたその時、レーダーに反応があった。
「レーダーに反応あり……!ステルス化された艦影が10機、急速接近してきています。」
「来たか……」
「”グロリアス”に搭載された高速艇みたいですね……」
「ふむ、敵のステルスも何とか見破れたようじゃの。」
部下の報告を聞いたユリアは気を引き締め、ヨシュアは真剣な表情で呟き、博士は頷いた。
「――”モルテニア”の艦長――メンフィル機工軍団団長シェラ将軍に連絡を。」
「イエス・マム。……こちらアルセイユ。”モルテニア”、応答せよ――至急、相談したい事があります――」
ユリアの指示に頷いた部下は通信器でどこかと通信した。
「そういえば、気になったんだけど……”モルテニア”とはどうやって通信するの?」
「勿論、導力通信器じゃ。向こうにも『零力場発生器』を1機、通信器に付けられるサイズを渡してある。」
エステルの疑問に博士が答えたその時、モニターにシェラが映った。
「……こちら、”モルテニア”。相談したい事とは前方の敵艦の事ですか。」
「はい。我々は加速し、立ち塞がる艦のみ撃破し、強行突破するつもりですが、そちらはどうするおつもりですか?」
モニターに移ったシェラにユリアは尋ねた。
「こちらも同じ作戦のつもりですが、”アルセイユ”ほど加速はできません。よって、まず我々が敵艦を減らし、その隙を狙って、強行突破して下さい。我々も後で追いつきます。」
「了解した。」
シェラの提案にユリアは頷いた後、ブリッジにいる部下に指示した。
「―――主砲展開用意!”モルテニア”の攻撃が終われば、加速して、強行突破する!立ち塞がる艦のみ撃破せよ!」
「イエス・マム!」
ユリアの指示に部下達は頷いた。するとアルセイユの主砲が展開された。
「――主砲隊に通達。魔導主砲展開用意。これより前方の敵艦を撃破する。繰り返す――」
一方”モルテニア”の艦長席に座っているシェラも部下達に指示をした。するとアルセイユと同じように、モルテニアの巨大な主砲が展開され、そして――
「砲撃開始。」
シェラの指示によって、巨大なエネルギーがモルテニアの主砲から発射されて、結社の飛行艇達を襲った!巨大なエネルギーに慌てたかのように結社の飛行艇達は展開したが、それでも間に合わず、5機が巨大なエネルギーに命中し、大爆発を起こして、エネルギーが消えた時には消滅していた!
「な、何あれ………!?」
「………まさか飛行艇を消滅させるなんて………結社の飛行艇の装甲はかなりの装甲なはずなのに……」
「ミントちゃん………あの様子だと、中にいた人達って………」
「うん……多分、生きていないよ…………」
その様子を見ていたエステルは信じられない表情をし、ヨシュアは真剣な表情で呟き、不安げな表情で呟いたティータの言葉にミントは暗い表情で頷いた。
「今だ!」
「イエス・マム!」
一方ユリアは気にせず、部下に指示をした!するとアルセイユは加速して、アルセイユに気づき、攻撃して来た飛行艇達を主砲で撃破しつつ、突破した!
「1番、2番、5番を撃墜。3番、4番も完全に引き離しました。」
「やった!」
「ああ、見事だ!」
「いやはや……これが最先端の空中戦か。メンフィルの空中戦も凄かったけど、こっちも凄いねぇ。」
部下の報告を聞いたエステルは明るい表情をし、ジンとオリビエは感心していた。
「ふむ……。この主砲は素晴らしいな。かなりの威力のはずだが、大した精度と反動の小ささだ。」
「わはは、当然じゃ。本来なら、レーダーと連動した迎撃砲も付けたかったが……。ま、それは次の課題じゃの。」
ミュラーの感心した言葉に博士は笑いながら答えた。その時、またレーダーが反応した。
「レーダーに反応あり……!」
「8時の方向から全長250アージュの超弩級艦が接近中……!」
レーダーの反応を見た部下達は緊張した口調で報告した。
「そ、それって……!」
「例の”方舟”ってヤツか……」
「……ヨシュア君。”グロリアス”の基本性能と武装は分かるか?」
報告を聞いたエステルとケビンは真剣な表情をし、ユリアはヨシュアに尋ねた。
「機動性、最大戦速共に”アルセイユ”には及びません。ですが、強力な主砲に加え、無数の自動砲台に守られています。攻撃・防御ともに完璧でしょう。」
「そうか……。4時方向へ全速離脱!敵戦艦の追撃をかわしながら浮遊都市の上空を目指せ!」
「アイ・マム!」
ヨシュアの情報を聞いて頷いたユリアの指示に部下達は頷いた。そして雲の切れ間から”グロリアス”が現れ、”アルセイユ”に向かって大量の砲弾を撃ってきた!砲弾の中には追尾する砲弾もあったが、”アルセイユ”は急旋回することで全ての砲弾をかわし、最大戦速のまま”グロリアス”との距離を引き離した。
「……”グロリアス”の射程圏内から離脱しました。」
「ふう……」
「「こ、恐かった~……」」
「さすがに緊張したわね……」
報告を聞いたクローゼとティータ、ミント、シェラザードは安堵の溜息を吐き
「フフ、私は楽しかったよ?」
「そりゃ、リタは最初から死んでいるから関係ないでしょ……それにしても、もうドキドキだわ。でも、これで敵の妨害は全部かわせたんじゃないかな。」
リタの言葉を聞いて呆れて溜息を吐いて言ったエステルは安心した様子で言った。
「いや……油断しない方がいい。」
「ああ、常識は通用しねぇ相手だ。最後の最後まで気を抜かねぇ方がいいだろ。」
そしてヨシュアの忠告にアガットは真剣な表情で頷いた。
~モルテニア・ブリッジ~
アルセイユがグロリアスを引き離したその頃、モルテニアはグロリアスと遭遇し、グロリアスは大量の砲弾をモルテニアに放った!しかし放たれた砲弾はモルテニアを包んでいた透明な壁に阻まれて、全て壁で爆発してなくなった!
「あれが”結社”の”方舟”とやらか……シェラ、”魔導”の力……思い知らせてやれ。」
「ハッ。――主砲隊に通達。砲撃開始。」
艦長席の傍に用意されてある皇族用の席に座っていたリウイの指示に頷いたシェラは部下達に指示をした。するとモルテニアの主砲が放たれ、さらに――
「”結社”よ!余達の力……思い知るがいい!究極なる光、クロースシエル!!」
「キャハッ♪落ちちゃえ♪闇の深淵にて重苦に藻掻き蠢く雷よ………彼の者に驟雨の如く打ち付けよ………!グラビティ………ブレス!!」
「ふふっ♪撃ち落としがいがあるわね♪我、久遠の絆断たんと欲すれば………言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう………ファイナルチェリオ!!」
「……アーライナよ!私に力を……深淵なる混沌、 ルナ=アーライナ!!」
甲板にいたリフィア、エヴリーヌ、セオビット、ペテレーネが放った大魔術やSクラフトが放たれた!するとモルテニアの主砲、リフィア達の攻撃が命中したグロリアスの数ヵ所に大穴があき、さらに爆発を起こした!
「さすがに”グロリアス(これ)”を破壊されたら、笑えないな……急いで離れないと。……ハア……まさか”グロリアス(これ)”を超える艦があるなんて……これからどうやって、メンフィルと戦えばいいんだ?」
その様子を爆発が起こった事によって揺れているグロリアス内のモニターを見ていたカンパネルラは冷や汗をかいて、疲れた表情で溜息を吐いた。そしてグロリアスはモルテニアから逃げるように離れて行った。
「”グロリアス”、撤退していきます。追撃しますか?」
「ほおっておけ。……今は浮遊都市の潜入が先決だ。それにあの艦も恐らく浮遊都市へ目指すのだろう。……その時に制圧する予定だから、破壊するな。あれほどの巨大戦艦を手に入れられる機会等、滅多にない。」
「御意。」
リウイの指示にシェラは頷いた。そしてモルテニアがアルセイユを追うように浮遊都市に向かったその頃、アルセイユは浮遊都市の上空に出た。
「と、都市上空に到達しました……」
ユリアの部下は上空から見える浮遊都市の景色――さまざまな建物や緑豊かな庭園に目を奪われながら報告した。
「………すごい………………」
「これが……古代ゼムリア文明の精華ですか……」
「……想像以上の代物やな。」
浮遊都市の景色を見たエステルは口を大きくあけて呟き、クローゼとケビンは真剣な表情で呟いた。
「ふむ……向こうの方に巨大な柱のようなものが見えるな。おそらく、この都市にとって重要な施設の一つであるはずじゃ。着陸するならまずはあの近くがいいかもしれん。」
「了解しました。エコー、周囲の状況はどうだ?」
博士の推測を聞いて頷いたユリアは部下に尋ねた。
「……はい。50セルジュ以内に敵艦の反応はありません。”グロリアス”も完全に引き離せたと思われます。」
「よし……。ルクス、速度を落としながら前方の”柱”付近に着陸するぞ。」
「アイマム。」
「あれ~?」
その時、突然ドロシーが声を上げた。
「どうしたの、ドロシー?」
「なんだ?感光クオーツでも切れたかよ?」
突然声を上げたドロシーにエステルとナイアルは尋ねた。
「あ、ううん。それは大丈夫ですけど~。なんか、向こうの方から変なものが近づいて来るな~って。」
「なに!?」
「う、うそ!?」
ドロシーの言葉を聞いたエステル達は慌てて前を見た。
「―――な、なんだあれは!?」
ユリアは前方にいる黒い竜の形をした人形兵器を見て驚いた!
「―――さあ、見せてもらおうか。希望の翼が折られた時……お前たちに何が示せるのかを。」
人形兵器に乗っているレーヴェはアルセイユに急接近して、剣で左翼を攻撃した!
すると左翼が爆発を起こし、アルセイユは安定を失って瞬く間に墜落していった…………
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