竜から妖精へ………
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第11話 初めての約束
とりあえず、歓迎バトル? と言うなかなか熱烈な歓迎会をしてくれて、それが終わった後は皆で盛大に宴が開催された。
過去の記憶が無いゼクトにとって、全てが初めての事である為、おっかなビックリしつつも、『習うより慣れろ』と言う事で 暖かいフェアリーテイルの輪の中に入っていったのだ。
そして、その第一印象がこちらである。
「―――えーっと……」
先程のナツやエルザ、ミラとの戦いの時も、皆皆盛り上がっていたんだけれど、決してそれに負けてない光景が眼前に広がっていた。
「うおりゃああああ!!」
「まだまだ!!!」
盛大に気合を入れながら、大ジョッキを片手に、只管 ゴクゴクゴクゴク!!! と飲み続けていた。勿論、1杯、な訳はなく 次々と空のジョッキが増えては注がれていく。即ち、飲み比べをしている様だ。
「ぐぬぬぬぬぬ………!」
「ぐらああああ………!」
そして、別の席では、丸テーブルに対面になるように、座って、手を取り合い、グググググググ………と、力を入れている。所謂、腕相撲である。単純な力比べをし続けている。テーブルに亀裂が入っているのは、御愛嬌。
「おりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」
「そりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」
そして、更に違うテーブルでは、山の様に積み上げられた料理の数々。それらを両手使って儂づかみにして、ただ只管口の中に入れ続けて、““バクバクバクバクッ!!!”” と食べ続けている。
つまり……まあ、所謂食べ比べ? 大食い&早食い勝負と言う事だろう。
色んなジャンルで、勝負事が大好きな様だ。
と言う事で、第一印象、それを簡単に説明すると。
「あ、あはは………、やっぱり、すっごい……騒がしいね……、いや、賑やか、なのかな??」
ゼクトは、そうつぶやいていた。それは、考えて出てきた言葉ではなく、自然に出てきたのだ。それしか、言葉が無い、と言うのが正しいのかもしれない。
そんな時だった。
「うおーーい!ゼクトーーー!!」
背後から、自分を呼ぶ声と、何より殺気の様な気配も同じく感じた1秒後。
「っっ!!?」
背中に衝撃が走った。どうやら、誰かに飛びつかれた様だ。そして、何よりもよく考えたら、先程の声の主が誰なのか、冷静に考えれば判った。
と、この間、ゼクトが考えていた時間は0.0001秒程……。
「ぜーーーくとーーーーっっ!!」
直様、大声で背中で暴れ続けているから、考えをシャットさせられてしまったのだ。
「わあああああああっ! な、ナツっ?? な、なに? なになに!?」
そう、飛びついてきたのは、ナツである。
背中には衝撃以外にも 熱気が一緒に感じられるのだ。……熱気、と言うより 非常に熱いから、もう火だ。そして、次に何をいわれるのかも大体把握。
直ぐに想像通りのセリフが響いた。
「もっかい、オレと勝負しろぉぉ!!!」
「えええっ、やっぱりそれーー!!」
予感的中、である。……別に当たった事は嬉しくもないのはゼクトだった。更に騒がしくなる事間違いないだろうな、と脳裏に思い浮かべたのだが、心配はなかった。
「よさないか!ナツ!」
エルザがやって来て、ナツを一蹴。
背後からゲンコツをナツの頭に入れたのだ。ごつんっ! と言う鈍く、重い音が鳴り響いたと同時に。
「ふぎゃっ!!!」
その音に似合う威力だったのだろう。ナツは、頭を抑えて蹲ってしまって、おとなしくなった。
「あ、エルザ。……ふぅ、それにしても、びっくりしたよ……」
ゼクトは、一先ず落ち着かせて深呼吸をした。
よくよく考えると、先程、沢山食べさせてもらって、更に飲ませてもらって、……許容範囲を超えそうだったから、少々苦しかったのだ。
「ゼクト!」
「わっ! な、何っ?? エルザ。どーしたの??」
ナツが終わった……、と思ったのも束の間。今度はエルザがゼクトの肩を思いっきり掴んだ。ナツの様に飛びかかってきたりはしないが、やはり、エルザの力も強い物である為、なかなかに肩も悲鳴を上げている様だ。……それでも、振りほどいたりはしないけれど。
エルザは、振り向いたゼクトを見ると。
「その……// ゼクト、楽しんで…いるか……?」
頬を少し紅潮させながら、ゼクトにそう聞いていた。
ナツの時の様に、エルザもまた、《勝負!》って感じの流れだろうか? と予想をしていたゼクトだったのだが、エルザの返答に関しては予想外だった為、ゼクトは少し戸惑ったのだが。
「え…? うんっ! 楽しいよ! こんなに楽しいの……今まで無かったと思うっ!」
ゼクトは、そう答えた。
少しばかり、顔の赤いエルザをちょっと心配してたけれど、赤くても、エルザは笑顔だったから、ゼクトも笑顔でそう答えたのだ。
「そっ……そうか///」
エルザは、次には、まるで花開く様に、笑顔の質を変えて、喜んでいた。
『喜んでくれる様な事をしてくれたのは、こちらの方なのに』 とゼクトは 思って そう言おうとしたのだけど。
「ちょーーーっとまったーーー!!!」
そこに、また来訪者が現れる。比喩抜きで 本当に飛ぶように現れて、エルザとゼクトの間に降り立ったのは、ミラだ。《サタンソウル》をまた使用したのだろうか?
「わわっ! ど…どうしたの? ミラ??」
突然 降ってきた? ミラに驚きを隠せず、ゼクトはそうミラに聞いたのだが、ミラはゼクトには答えず、ただただエルザの方に睨みをきかせていた。
そして、めいいっぱい、空気を吸い込むと。
「エルザッァ!!何抜け駆けしてんだっ!!」
ナツの……、竜の咆哮にも負けない勢いで吼える。《叫ぶ》ではなく、《吼える》と言う印象の方が近い声質だった。……正直怖い、と思ってしまっても無理はないだろう。
「む…?」
エルザもエルザで、決して億さず、負ける事などはなかった。真っ向からミラと睨み合っていたのだから。悪魔などなんのその、である。
そして、勿論 睨み合いは長くは続かず、あっと言うまに、ミラとエルザは、取っ組み合いにまで発展していた。
あまりの出来事、衝撃の連続でゼクトはついて行けてなかったんだけど、エルザとミラがケンカ? を始めた事は判った為、慌てる。
「ちょ、ど、どうしたの!? 2人ともっ! 今は宴なんでしょ? なんでそんなに殺気立ってるの! お、落ち着いてーっ」
兎も角、2人を止めようと間に入ろうとしたのだが、がしっ、と力強く 自分の肩を掴まれた為、進む事が出来ない。今度の力は今までよりも遥かに強い。まさに大人と子供の差だ。
「わぁっ!!」
「おう、ゼクト。」
自分の肩を掴んだ相手は、ゼクトは直ぐに判った。
「あっ ギルダーツ」
それは、ギルダーツだった。
ゼクトは、先程の2人とは、比べ物にならない程の力だったから、直ぐに判る事が出来たのだ。それにしても、本気じゃないとは思うけど、力を入れすぎ、と思ってしまうのも無理はない。訊けば、ギルダーツは、このギルド1番の魔道士らしいから、大人気ない、とも思ってしまう。
そんな心情は露知らず、ギルダーツは、にかっ! と笑うと。
「あいつらの事は今は、ほっといてやれよ。………決着をつけなきゃならねえことは、世の中にはあるのさぁ……。男だろうが、女だろうが、大人だろうが、子供だろうが、な?」
意味深に語るギルダーツだけど、ゼクトは訝しみながら見ている。そして、話半分にしか聞いてない。
「………何? その変な笑顔は?」
直ぐに判る程、妙な笑顔だったから。本気じゃない、巫山戯ている様な笑顔だったから。だから、ゼクトは、疑いのまなざしを向けていたのだ。
それを見て、ギルダーツはまた笑う。
「だーっはっは! やっぱおめえは可愛いとこあんだよな!? ほれ、どーだ? こっちで飲みなおねえか?」
「っ~~~!! か、可愛いってなにっ! ギルダーツが、変な顔、するからじゃんかっ!」
ゼクトは、子供扱い(子供だけど……)されて、ちょっと、頬を膨らましながらそう言うけど、『硬い事言いっこなしだ!』と、殆ど強引に連れ去られてしまった。
エルザ達とは少々離れたテーブルに座って何かの飲み物をグラスにギルダーツは注いだ。琥珀色の液体で、仄かに香りが漂ってくる。……今まで飲んだ事のない匂いだった。(と言っても、ゼクトはサバイバル生活だったから、基本的に川の水しか飲んでない)けれど、一般常識、程度として、お酒に関しては判る。……彼は、ただ、あの場所でいた訳ではなく、勉強もしていたから。
「ほーれゼクト! そんだけ 力つええなら、こっちも 結構いける口だろ?」
ギルダーツは、またまた良い……じゃなく、妙な笑顔でそう言う。
でも、今回はゼクトは断ったりせず、その注がれた液体、酒を眺めていた。
「ん~……でもさ、オレ、飲んだ事無いから、わかんないよ? ……それって、お酒……でしょ?」
ギルドの宴が始まってすぐに、皆が一斉に飲んでいた物だ。本当に美味しそうに飲んでいて、頬を仄かに赤くさせ、盛り上がっていたから、少なからず、ゼクトも興味あるといえばあったんだ。でも、メニュー表に、しっかりと書かれている。『お酒は15歳から』と。自分の正確な年齢は判らないけれど……まだ、そこまでは行っていないと思えるから、躊躇していた。
「ん? ああ、そーだぜ? まあまあ! 飲めばわかるって。ちぃと早いが。大人へ階段を登る~……ってやつだ! 何事も経験! ぶつかってみねぇと判んねぇだろ? ほれ、ミラん時やエルザん時みてぇによ?」
ギルダーツは、そう言いながら、飲む事を促そうとしたその時だ。
「このばっかもんが!! ギルダーツ!」
突然、非常に大きな……大きな 何かが上から降ってきた。
「え……? お、大きな……手?」
そう、それは凡そ人間とは思えない程の大きさの拳で、ギルダーツの頭を叩いていたのだ。大人達の中でも、特に大きいギルダーツの更に上からのゲンコツだから、相当にでかいのは間違いない。
驚いていたんだけど、魔力が感じられたから、身体の質量を変える魔法、だと言う事はすぐにゼクトは理解した。
「いってててて……まあまあ、ちょっとくれーいいじゃねえか? マスター。男たる者、酒の1杯や2杯くれぇ飲めねぇとやってけねぇだろ?」
そのゲンコツはマスターのものだった。
大きさは、ギルダーツの身体程ある大きさだと言うのに、それを頭に受けて、且つ潰されず、普通に返事を返す事が出来ているのも十分驚愕だ。
他の皆は 拳が降ってきた事に、驚き 飲んでいた酒や食料を口から盛大に吹いていた程の衝撃だったのに。
「あほかぁ! ガキに何を薦めとるんじゃ。10年早いわ」
流石、ギルドの長だ。
規律に関してはしっかりとしている様で、横で聞いていたゼクトも、うんうん、と頷いていた。決まりは守らないといけない事くらい、記憶が無くたって、判る事だ。
因みに、先程もあった、一般的な常識や倫理観云々に関して 学ぶ事が出来た理由は、後々に判明するので、ここでは省略。
「あはは……そうだよね。」
ゼクトは、納得して頷いていたんだけど……。
「これはぁ! ワシのとっておきじゃ! ゼクトに飲ませたら、無くなってしまうわい!」
「んあ? 大丈夫だろ? まだ半分残ってんじゃん」
「あほ! お主も言っておったじゃろ! ゼクトは、強そうだと! ハマりでもしたら、あっと言うまになくなるわい!」
全然違った様だ。
マスターが酒を止める理由が。清々しいまでに。
「………………あ、ははは…………」
ゼクトは、一瞬固まった後、乾いた笑みを浮かべていた。
そんな時だ、くいっ…くいっ……っと、服の裾を引っ張られる感触があった。今までのに比べたら、気のせいじゃないか? と思える程の強さ?である。
「んん…?」
ゼクトは、後ろに振り返ると、そこには、青い髪の女の子が立っていた。ニコリ、と笑みを浮かべて。
「やっほー! はじめまして~ゼクトっ!」
とても、愛くるしい笑顔を向けて、ゼクトに手をふる女の子。ゼクトは、今までの衝撃とは違ったコミュニケーションだったから、何処か嬉しく? なった様で、笑顔を同じく向けた。
「あっ……! はじめまして! ええっと……キミは……?」
「あたし! レビィだよっ! レビィ・マクガーデンっ! って言うの!」
青い髪の女の子、改めレビィ。
「うん、よろしくね! レビィ! えーっと、オレはゼクト……って、知ってるよね?」
頭を掻きながら、そう言うゼクトをみて、レビィは笑顔で答えた。
「あははっ、うん! だって、ゼクト大人気だったからね~~? 知らない人、いないと思うよ? それに、 中々、話する機会がなくて……、ちょっと遅くなっちゃったよー」
「そうなんだ…。ありがとね? レビィ」
ゼクトは、レビィにお礼を言っていた。
「えっ…? 何が? あたし、何かしたかな??」
お礼をいわれるとは思ってなかったレビィだったから、少し不思議そうに、首を傾げて訊いた。それを見たゼクトは、にこっ、と笑顔を向けて答える。
「えっとさ………、ほらっ。こんなオレと話したい、って思って 話しかけてくれたんでしょ? そのことでさ? 嬉しいよっ」
ゼクトのお礼の意味。
何でもない、普通の、ありふれた、ありきたりなコミュニケーションの取り方に対してのお礼だった。
「えっ? ええっ!? そ…そんな/// お礼を言われるような事じゃないよぉ…?」
レビィは、満面の笑みを向けられて、ゼクトにお礼を言われて、恥ずかしくなった様で、視線をゼクトからずらしてしまった。
「んーん。……でも、オレがそう思ったんだ。だから言わせてよ。レビィ! これから、よろしくね?」
ゼクトは、そう言って手を差し出した。何を求められているか、レビィはすぐに理解した。
「あ……うんっ! こっちこそ! よろしくね?」
ゼクトの差し出された手を、レビィは、ちょっと驚きつつも、掴んだ。
友好の印であり、挨拶でもあり、色んな所で使用用途がある、握手である。
「(ほんとに……こんな感じなんだ……? ゼクトって。笑顔も、素敵だし……、誰にでも……。む~……、だったら、アレだけ人気あるのもうなずけるなぁ……)」
レビィは、ゼクトの手を握り、じーっと、その手を見ていながらそう思い描いていた。
「ん? どうしたの?」
考え事でもしているのかな? と不思議に思ったゼクトは、レビィに訊くと。。
「やっ! な、何でもないよ?」
レビィは、青い髪を左右に靡かせて、首を左右に振る。
そして、2,3回 左右に振った後。
「むっ…むむっ??」
今度は、周囲を見渡す様に、目を配らせていた。この行動の意味も、ゼクトはよく解らず。
「……ん?」
不思議がってると、そんなゼクトの心境が判ったのだろう、レビィは訊く前に答えてくれた。
「あ、その……ほらっ、ゼクトと話してると、ミラやエルザに襲われるかもっ! って、ちょっと警戒をしててねー!」
レビィは、頭を苦笑いしながら掻き、そう言う。笑いながら言っているけれど、内容が少々物騒だ。
「え……? それは……いくらなんでも、大袈裟な気がするんだけど……」
ゼクトが、そう返すと。レビィは、ゼクトに思いっきり顔を近づけて答えた。
「いやいや! ゼクトは甘いよっ? ゼクトってば、ほんっとに人気あるんだからねっ! だって、私だって、ようやく隙を見て……。って!///」
最後まで言い切る事なく、レビィは 顔を赤くさせながら、口許を抑えた。
「……???」
どうやら、ゼクトには、最後の方は、あまり聞こえてなかったみたいだ。
「(ほっ……よかった…。ん~~どーにか、ゼクトのこと、もっと知りたいし……、これからも、傍にいたいんだけど……/// 本人には言わないけどね……/// は、恥ずかしいから……///)」
レビィは、赤くなっているであろう顔を、両手でぺちぺち叩いて、今後のことを考えると。
「あっ!!」
何かを思いついた様で、顔を上げた。
「んん?? レビィ、ほんとどーしたの? 何かあるの?」
正直、客観的に見ていても、レビィの行動は、挙動不審だと思えるから、ゼクトはそう聞く。
レビィも大体判っていたから、慌ててゼクトに答えた。
「やっ! 違うの違うの。えとー、その……あのね? ゼクト。ゼクトって、そのギルド自体に入るのは初めて………でしょ?」
「え…? うん。勿論だよ!」
「だよねっ! ほら、最初は、1人で仕事するのは色々と大変だと思うんだっ! だから……」
レビィは、一瞬顔を俯かせ、2、3度深呼吸をすると、顔を赤くさせながら言った。
「初めはさっ! そのっ……私と、一緒にしない!? 簡単なのから慣れていくと言いって思うんだっ! わたし、手伝ってあげるからっ!」
レビィは思い切って伝えることが出来た。今日、目的、目標を掲げていたのが、それだったから、ある種、達成感が味わうことが出来た。
でも……、やっぱり 答えを聞くまでが怖いのは仕方がないだろう。ゼクトにも今後の考えが有るはずだから。我侭を言う訳にもいかないから。
「え…? し、ごと…………」
ゼクトは、レビィの話を聞いて、腕を組んで考え込んでいた。その姿を見て、レビィは思わず表情を暗めてしまう。
「(あっ……私じゃやっぱり、あの……頼りないって思ってるかな…? 突然、だし……、ほとんど、おはなし、した事ないし……。私とよりは、実際に、戦ったミラやエルザとのほが、良いって考えてる…のかなぁ? うー……でも、それが当然かも……。ほんと、いきなりだし…… 話したばかりだし……)」
悪い方悪い方へと考えてしまっている為、その都度、視線が下がってしまうレビィ。
「(あーーん……。どーしよぉ…… 勢いで言っちゃったけど……。しっぱい、だったよーっ……、も、もっと時間をかけたらー……)」
両手で、頭を抱えだした。
傍から見たら、2人ともが面向かって考え込んでいる図になるから、何処となく奇妙である。
そして、ほんの数秒後。
「そう……だよね」
ゼクト自身も色々と考え込んでいたから、レビィの姿を見てなかった。故に、気が付いてなかったから、普通に答える。
「えっ??」
レビィ自身も自分の事でいっぱいいっぱいだったから、少々驚き気味で、ゼクトのほうを見ると。
「ギルドって仕事を……するとこなんだよね。そうだったね! うん! ありがとっ! レビィ! どうかお願いするよ! やっぱり、全部が初めてだからさっ!」
先程の考え込んでいた表情から、一転。ゼクトは、笑顔を見せて言っていた。
それを聞いて、目が点になってしまうのは、レビィである。
「……えっ!? ……ええっ!? ほ、ほんと? 私でも、良いの??」
レビィは、ゼクトの返答に驚きを隠せられない様だ。
そして、ゼクト自身も レビィが驚いている理由が判らない。
「え…? その……レビィが誘ってくれたのに? なんで?」
「あ…! いやっ、なんでもないよ! その、ちょっと、びっくりしちゃってさ、ほらっ、ゼクト、何か考えてたから。ミラやエルザのほうがいいのかな…って。あの2人の方が強いからさ…。すっごく…」
2人の強さを知っているからレビィは、消極的だった様だ。でも、ゼクトは、首を傾げた。
「…………え? その、オレよくわからないんだけど、ギルドの仕事って、強いことが絶対条件……っとかあるの?」
ゼクトは、何度も戦っているんだけれど、実を言うと、そんなに戦い好き、大好き! と言う訳でもないんだ。身を守る為に、大切な場所を守る為に、戦い続けてきたけれど、平和に暮らせるのなら、そっちの方が断然良いから。それでも、戦わなければならない時には、絶対に逃げたりはしない、とも強く思っている。
それを訊いたレビィは答えた。
「え? いやっ、そんな事ないよ? 確かに、ギルドに来る依頼の中には、討伐も勿論あるけど、お届け物だったり、他には 魔法の解除とか、探し物…とか、そう言うのもあるから。それにまだ、私達は危ないからってまだそんな危ない仕事にはいかせてもらえないから、大丈夫……かな?」
レビィの返事を訊いたゼクトは、笑顔になって答えた。
「そっか。なら、レビィと一緒にしたいよ。レビィの事、知りたいって思うし! 仲間なんだからさっ!」
弾けんばかりの笑顔。
まさにそれは、《光》だった。
《光》だから……とても、眩しくて、直視するのがとても難しい。レビィはそれを身体中で感じていた。ただの《光》じゃなくて、暖かい光だから……、顔が熱くなってしまうのも仕方がない、って思う。
「………あ/// う、うんっ! ありがと、ゼクト。よろしくねっ!」
直視することが難しかったけれど、レビィはしっかりとゼクトをみて、お礼を言っていた。
ゼクトは、本当に楽しみだって思ってくれている。決して、その言葉には嘘偽り無い。
何故なら、理由は判らなくとも、フェアリーテイルの事が好きだから。フェアリーテイルの皆が大好きだから、と言う理由が1番だ。
《初めてのギルドの仕事》
《初めてのギルドのパートナー》
ゼクトにとって、嬉しい事がとても多い様だ。
レビィもその事は判っていた。本当に喜んでくれる。と言う事と同時に、その喜ぶ理由も。
「(よかった……)」
レビィは、ぐっ…と拳を握りこんだ。
普段、レビィは消極的だ。同世代にすごい人たちが多いから、自分自身にあまり自信を持つ事ができないから、こんなに強気になんて、なれなかった。
でも、今日ゼクトの姿を見て、よく、判らないけれど、レビィは、何だか勇気が湧いてきたんだ。
――ゼクトと、仲良くなりたい。
そう、思ったから。
そして、それと同時に、ミラやエルザの事が羨ましいとも思っていた。
そして―― レビィは すぐに理解していた。
――何故、勇気が湧いたのか。
――何故、ゼクトと仲良くなりたいのか。
それは……きっと……、《一目惚れ》なんだって判る。
ギルドに対する事もそうだし、皆と話している姿もそう。……同じ位の歳の子には見えなくて、とても魅力的だった。
実際に話してみても、よく判る。本当に優しい、と言う事がよく判る。
だからこそ。
「ほんとうに……嬉しいな………、よかったっ」
レビィは笑顔だった。
こんな気持ちになった事は、これまでになく、初めての事だったから、戸惑ったけれど、それでも、最高の形で、スタートを切る事が出来たから。
「じゃあ! 明日! あそこの大きな依頼ボードの前ねっ? ゼクト!」
「うん! 明日、だね。よろしくっ、レビィ!」
しっかりと約束を交わす事が出来た。
本当にナイスタイミングだった。
何故なら……。
「お~~い! ゼクト!な~に宴の主賓が、こんな隅っこにいるんだよ!」
「こっちこいって! 飲もうぜl! ほれほれ!」
「わっ! そ、そんなに、引っ張らないでって、行く! 行くからっ!」
再び 他のメンバー達に揉みくちゃにされながら、行ってしまった、連れて行かれてしまった? から。
それを笑顔で、手を振って見送るレビィ。
「あ……ははは。やっぱり、人気者、だよね? ゼクトは。ふふふ……私、ほんとについてたなぁ……」
そう呟きながら、本当に楽しそうなゼクトと、皆の方を見ていたのだった。
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