英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第169話
~ザクセン鉄鉱山~
「ハア……ハア…………落ちてしまったか…………」
Cが奈落の底へと落ちて行く様子をリィンは息を切らせながら見つめ、、戦闘終了を確認したアイドスはリィンの太刀に戻り、レンは元の姿に戻った。
「し、死んだの……?」
武器を収めたアリサはCが落下して行った奈落の底を見つめ
「……あの高さから落下すれば、間違いなく命は助からないと思うが……」
「……………………」
アンゼリカは真剣な表情で考え込み、フィーは警戒の表情をしていた。するとその時何かの音が聞こえて来た。
「え―――」
「この音は……!」
音を聞いたセレーネは呆け、エリオットが驚くと何と漆黒の飛行艇がCが落ちた場所から現れた!
「ガレリア要塞に現れた……!」
「”RF26シリーズ”……!ラインフォルトの高速飛行艇……!」
「”帝国解放戦線”の船か……!」
飛行艇を見たフィーとアリサ、マキアスはそれぞれ声を上げ
「うふふ、仕方ないわね。そっちがそう来るのなら――――」
レンは不敵な笑みを浮かべて何かの行動をしようとした。
「貴様ら、何をしている!?」
するとその時怒鳴り声が聞こえた後クレア大尉率いる鉄道憲兵隊と領邦軍の隊長率いる領邦軍が駆け付けて来た!
「こ、これは……!―――全員、射撃開始!」
現場に駆け付けたクレア大尉は瞬時に状況を把握した後指示を出し
「イエス・マム!」
クレア大尉の指示を聞いた鉄道憲兵隊は飛行艇目掛けて射撃を開始した!
「か、勝手なことをするな!お前達、何としても止めさせるのだ!」
「イエス・サー!」
しかしその時、領邦軍の隊長の指示によって領邦軍の兵士達が鉄道憲兵隊の妨害を始めた!
「くっ、いい加減に―――」
その様子を見たクレア大尉が隊長を睨んだその時!
「やれやれ、興醒めな事だ。」
飛行艇からCの声が聞こえて来た!
「”氷の乙女”……鉄血の子飼いの小娘よ。貴様の主人に伝えるがいい。全ての準備は整った―――次こそは貴様の番だとな。」
「っ…………!」
Cの声を聞いたクレア大尉は唇を噛みしめた。するとその時!
「うふふ、逃がさないわよ。来て―――パテル=マテル!!」
レンは大鎌を空高くへと掲げて叫んだ!すると何かの駆動音が聞こえた後、レンの傍に巨大な人形兵器―――”パテル=マテル”が空から現れて着地した!
「うわあああああっ!?」
「なあああああっ!?」
「な、何なの、あれは!?」
「”結社”の人形兵器……!?」
「大きいですね………」
”パテル=マテル”の登場にエリオットとマキアスは声を上げて驚き、アリサは混乱し、フィーは警戒の表情で叫び、セレーネは呆けた表情で見上げ
「パテル=マテル!その真っ黒な飛行艇を吹き飛ばしなさい!」
「――――――!」
レンの指示によってパテル=マテルは巨大な腕を振るって飛行艇を殴り飛ばして崖にめり込ませ
「うふふ、止めよ。――――ダブルバスターキャノン。」
「―――――――」
凶悪な笑みを浮かべたレンの指示を聞き、その場でかがんで両肩についている巨大な砲口を飛行艇に向けて膨大なエネルギーを溜め込んだ!
「なっ!?レン姫の指示に従っている……!?」
「まさか彼女が操っているのか……!?」
パテル=マテルの行動を見たリィンは驚き、アンゼリカは信じられない表情でレンを見つめ
「い、いかん!総員、何としてもあの人形兵器の行動を止めろ!」
領邦軍の隊長は表情を青褪めさせて領邦軍に指示をした。
「イエス・サー!」
隊長の指示を聞いた領邦軍はパテル=マテルに銃撃を放ち始めたが
「うふふ、何をしているのかしら?」
「うあっ!?」
「グッ!?か、身体が……!?」
レンのクラフト―――魔眼をその身に受けて身動きが取れなくなった。
「邪魔者はレンが抑えてあげたわ。さあ、薙ぎ払いなさい!パテル=マテル!」
「―――――!!」
するとその瞬間、パテル=マテルは両肩についている巨大な砲口から膨大な導力エネルギーを解き放ち、パテル=マテルの最低段階の主砲―――ダブルバスターキャノンが放たれ、パテル=マテルの主砲を受けた飛行艇は大爆発を起こして木端微塵になった!
「…………ぁ………………」
「な、な、な…………」
「…………あの様子では全員助からないだろうな……」
「ええ…………」
その様子を見守っていたエリオットは呆け、マキアスは口をパクパクさせ、重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの言葉にセレーネは辛そうな表情で頷き
「うふふ、ご苦労様。」
「―――――」
レンはパテル=マテルをねぎらっていた。
「レン姫……もしかしてその人形兵器が……」
パテル=マテルをねぎらっているレンを見たリィンはレンに問いかけた。
「ええ。この子が何度か話に出たレンが”リベールの異変”の時に”結社”から奪い取った”パテル=マテル”よ。とってもお利口さんなのよ?」
「ええっ!?そ、その巨大な人形兵器が……!?」
「……確かにさっき見せた砲撃のスペックを考えれば町一つ、簡単に廃墟にできるだろうね。」
レンの答えを聞いたアリサは驚き、フィーは真剣な表情でパテル=マテルを見つめて呟いた。
「……………………」
一方クレア大尉は真剣な表情で考え込んでいた。
「こ、これは一体どういうことだ!?いくらテロリスト相手とはいえ、問答無用で撃墜するとは……!」
するとその時領邦軍の隊長がクレア大尉を睨んで苦言を口にした。
「……落ち着いて下さい。貴方方もその目で見たように先程の爆発は、我々の銃撃ではなくそちらの人形兵器―――メンフィル帝国軍が所有している人形兵器―――”パテル=マテル”の主人であるレン姫の指示によるものです。それにあれだけの爆発……何らかの爆発物を積んでいた可能性も高いでしょう。すぐに鉱員たちを解放して詳しい調査をするべきかと。」
「よ、よくもぬけぬけと……」
クレア大尉の話を聞いた隊長は怒りの表情でクレア大尉を睨んだが
「この皇帝陛下の許可証……よもや無視するおつもりですか?」
「くっ……小娘が調子に乗りおって……そ、それはともかく、貴様たちは何なんだ!?士官学院だったか……どうしてこんな場所にいる!?ば、場合によってはタダではすまさんぞ!?」
クレア大尉が取り出した書状を突き出されて唇を噛みしめた後リィン達を睨んだ。
「くっ……」
「矛先を向けて来た。」
「……あなた方は……」
そしてリィン達が隊長を睨んだその時、アンゼリカが前に出た。
「何か誤解があるようだね。彼らはあくまで私に付き合ってくれただけさ。」
「先輩……!?」
「なんだ貴様は…………ア、ア、ア……アンゼリカ様っ!?」
「おお……姫様!」
「アンゼリカ様……戻ってきているとは聞いたが……」
アンゼリカの登場に領邦軍はざわめきだし
「フフ、ご無沙汰しているね。見知った顔も多そうだし、正面から行ってもよかったかな?どうしてテロリスト相手に手をこまねいていたのか……色々事情も聞けただろうしね。」
「うっ……」
「お、おい……マズくないか……」
アンゼリカの問いかけに領邦軍の兵士達は表情を青褪めさせた。
「う、狼狽えるな!姫様、我々は侯爵閣下から厳命されているのです!我らの領地に土足に踏み込む無礼者を許すなど……!」
「うふふ、おかしいわね?”ザクセン鉄鉱山”の所有権を持っているのはエレボニア皇家であるアルノール家のはずだけど?」
アンゼリカに反論した隊長の話を聞いたレンは小悪魔な笑みを浮かべて隊長を見つめ
「グッ…………―――レン姫!何故貴女がこのような所にいらっしゃって、先程のような勝手なことをされたのですか!?事と次第によってはメンフィル帝国に抗議させてもらいますぞ!?」
見つめられた隊長は唇を噛みしめた後レンを睨んで怒鳴った。
「あら、抗議をしたいのはむしろこちらの方よ?メンフィル軍の兵器であるパテル=マテルを破壊しようとした行為……この場で”処刑”されても文句は言えないわよ?」
「……ッ!」
しかし凶悪な笑みを浮かべて大鎌を取り出したレンがさらけ出す殺気や闘気に呑みこまれ、息を呑んで黙り込んだ。
「ちなみにレンがこの場にいる理由はカレイジャスに乗せてくれたオリヴァルト皇子への”お礼”よ。それにレンはエレボニアとメンフィルの国家間の回復の為に貴方達領邦軍が手をこまねいていたテロリストを処刑しただけよ?」
「う……あ……」
「ヒッ……!?」
「ば、化物……!」
どんどん膨れ上がるレンの殺気に呑みこまれた隊長や領邦軍の兵士達は身動きが取れず、悲鳴を上げた。
「ああ、そうそう。士官学院の人達がこの場にいるのはレンが彼らに鉱員達の解放とテロリスト達と戦闘が起きた時のサポート要員として同行するように”依頼”したから彼らの身はレンが保証するわ。」
「う……あ……ふ……ふざけるなあぁぁぁっ!他国の皇女が土足で我らの領地に踏み込んで好き勝手に暴れた挙句、そのような戯言が通じると思っているのか――――!」
するとその時自棄になった隊長がレンに襲い掛かり
「なっ!?」
「何をしている!?レン姫に手を出せば君どころか侯爵家もタダでは―――」
「…………!」
「うふふ、そっちが仕掛けてくるのなら遠慮はいらないわよねぇ?」
隊長の行動を見たリィンは驚き、アンゼリカは警告しかけ、クレア大尉は大型の軍用銃を懐から取り出して隊長に銃口を向け、レンは凶悪な笑みを浮かべて迎撃の構えをした。するとその瞬間、突如ミュラー少佐がレンの前に飛び込み
「フン!」
「へぶッ!?」
大剣を振るって隊長を吹っ飛ばした!
「え――――」
「あ、貴方は……!」
ミュラー少佐の登場にエリオットは呆け、マキアスは驚き
「―――お怪我はありませんか?レン姫。」
「うふふ、大丈夫よ。」
自分の方へと振り向いたミュラー少佐の言葉にレンは微笑みながら答えた。
「やれやれ…………よりにもよってレン姫に危害を加えようとするとは……そんなに早死したいのかい?」
その時聞き覚えのある呆れた様子の声が聞こえ、声に驚いたリィン達が声がした方へと振り向くとなんとそこにはオリヴァルト皇子がジョルジュやツーヤと共にいた!
「オリヴァルト殿下……!」
「ナイスタイミング。」
オリヴァルト皇子の登場にアリサは声を上げ、フィーは静かに呟き
「ツーヤさん、ジョルジュ先輩も……」
「お姉様達が無事で本当によかったです…………!」
ツーヤとジョルジュに気付いたリィンは目を丸くし、セレーネは安堵の表情をし
「凄いな……一体どんな技術で作られているんだ……?」
「ハア……やっぱりパテル=マテルを呼んだんですか、レンさん…………」
ジョルジュはパテル=マテルを興味ありげな表情で見つめ、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐いた。
「あれ……クロウは?」
その時クロウがいない事に気付いたエリオットは不安そうな表情をし
「クロウからはさっき通信でこっちに向かっている最中に出会った人形兵器に囲まれて、その際の戦闘で傷を負ったから傷を回復してからこっちに向かうって。まあ、クロウの話だとそんな大した傷は負っていないそうだから、大した事はないと思うけど。」
「そうですか……」
「……………………」
ジョルジュの説明を聞いたマキアスは頷き、レンは真剣な表情で考え込んでいた。
その後オリヴァルト皇子はミュラー少佐と共に帝国解放戦線の飛行艇の残骸がある大穴を見つめた。
「……あれがテロ組織が所有していた最後の飛行艇か。」
「ああ、恐らくは。詳しい検分は必要だろうが。」
「ふむ……」
ミュラー少佐の言葉に頷いたオリヴァルト皇子は考え込みながら後ろへと振り向いた。
「お、皇子殿下におかれましてはお迎え出来て光栄の至り―――」
領邦軍の隊長は緊張した様子でオリヴァルト皇子に挨拶をしようとしたがオリヴァルト皇子が制した。
「……挨拶はいい。それより状況を整理しよう。そちらの士官学院生達並びにレン姫の行動の正当性は私が保障する。異存はないかな?」
「も、もちろんでございます!」
オリヴァルト皇子の問いかけに隊長は慌てた様子で答え
「殿下……」
「はああっ……よ、良かったぁ~……」
リィンはオリヴァルト皇子に感謝し、エリオットは安堵の溜息を吐いた。
「―――それと先程レン姫に危害を加えようとした件についてはレン姫に裁量を委ねる。君自身がやらかした事なのだから、勿論責任を取ってもらうよ?」
「そ、それは…………」
オリヴァルト皇子に見つめられた隊長は表情を青褪めさせ
「―――オリヴァルト皇子。それとは別件になりますが、パテル=マテルで飛行艇を撃墜しようとした所領邦軍が妨害をするどころかパテル=マテルを破壊しようとパテル=マテルに銃撃をしました。証人としてこちらのⅦ組の皆さんもそうですし、そちらのクレア大尉率いる鉄道憲兵隊も目撃しています。―――そうですよね、クレア大尉?」
「……はい。レン姫の仰る通り、領邦軍がメンフィル軍が保有する人形兵器―――”パテル=マテル”に銃撃を行っている所を私を含めたこの場にいる鉄道憲兵隊全員がこの目で見ました。」
「何?…………とんでもない事をしてくれたな。パテル=マテルはメンフィル軍が保有する兵器の中では戦艦―――”モルテニア”、”グロリアス”に次ぐトップクラスの兵器だ。その兵器を正当な理由なく破壊しようとしたのだから、正直国際問題に発展してもおかしくないぞ。」
「…………………」
レンとクレア大尉の説明を聞いて眉を顰めたオリヴァルト皇子は厳しい表情で領邦軍を睨み、領邦軍は隊長を含めた全員が表情を青褪めさせた。
「まあ、攻撃されたと言っても自己修復が可能なレベルですから大した事はありませんし、私としてもできればこのような些細な事を公にして国際問題に発展させたくはありません。この件と先程私の身を狙った件につきましては”ログナー侯爵家”の当主―――ゲルハルト・ログナー侯爵に直接抗議し、内密に”示談”で済ませようと思っているのですが。勿論、”賠償金”を頂く際”ログナー侯爵家”にノルティア州の領地を差し出させる要求はしませんので、その点はご安心下さい。」
「そうか……そういう事ならこちらとしても異存はない。その二つの件についての裁量はレン姫にお任せする。」
「フフ、ありがとうございます。―――そういう訳ですのでログナー侯爵に本日中に私自身が赴く事を伝えておいてくださいね?」
オリヴァルト皇子の答えに微笑んで会釈したレンは不敵な笑みを浮かべて領邦軍を見つめ
「か、かしこまりました……!」
レンに見つめられた隊長は恐怖の表情で敬礼をした。
「さらに鉱山所有者である皇族”アルノール家”の名の下にこの場の全ては私が預かる。領邦軍の諸君は速やかに撤退を。鉄道憲兵隊の諸君は私の指揮下に入ってもらうぞ。」
「仰せのままに、殿下(イエス・マイロード)。」
「ぎょ、御意……!撤退―――グズグズするな!」
オリヴァルト皇子の指示にクレア大尉は敬礼をし、隊長は敬礼をした後領邦軍と共に撤退した。
そして―――その後の事態収取は驚くほどスムーズだった。オリヴァルト皇子の指揮下、鉄道憲兵隊は忠実に職務を果たし……残されていた人形兵器は駆逐され、鉱員たちも無事、全員が解放された。
しかし―――事件がもたらした余波はそれだけでは済みそうになかった。領邦軍は明らかに、テロリストたちの行為を黙認するかのように動き……貴族派が牛耳る第一製作所による『鉄鉱石の横流し』の証拠もテロリストによって破棄されていた。
しかし……状況証拠は限りなく黒に近く―――オリヴァルト皇子はイリーナ会長の全面協力を受ける形で、厳正な調査を行うことを宣言するのだった――――
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