戦国異伝
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第二百五十五話 帰りの旅その四
「変わっていませぬな」
「そういえばそうかのう」
「権六殿も大身ですが」
朝廷から官位を貰い幕府では老中の一人にもなっている。
「それでも」
「まあそれはな」
そう言われるとだ、柴田もその髭だらけの顔で言う。
「わしもまだ慎みが足りぬか」
「権六殿が静かであれば」
今度は慶次が言う。
「それがしの頭もたん瘤がなくなります」
「御主は猿以上に問題じゃ」
柴田はその慶次にも言った。
「幾つになっても悪戯ばかりしおって」
「それが楽しいので」
「とんだ傾奇者じゃ」
「ははは、これからも傾いていきまする」
「全く、猿といい御主といい」
「まあとにかくです」
蒲生が柴田が慶次に言ってから述べた。
「猿殿も父親になられた」
「そのことはか」
「素直に喜びましょう」
「喜んでおるわ」
既にとだ、柴田も言葉を返す。
「わしもな」
「確かにはしゃぎ過ぎですが」
「それを言っておるのじゃ」
「それもよしとしまして」
「怒らぬべきか」
「これから忙しくなりますから」
「そうであるな、これからじゃな」
柴田は蒲生のその言葉を聞いてだ、納得した笑顔になって頷いた。
そしてだ、こうも言ったのだった。
「こ奴がねね殿と共に大騒ぎになるのは」
「と、いいますと」
「だから子育てじゃ」
柴田は羽柴にこのことを告げた。
「それは厄介じゃぞ」
「そうなのですか」
「まさに戦場じゃ」
子を育てるということはというのだ。
「常にそうじゃぞ」
「そうなのですな」
「御主もねね殿も実に子煩悩になろう」
二人の気質を見抜いての言葉だ。
「だからこそな」
「忙しくなりますか」
「そのこと覚悟しておれ」
「そうなのですか」
「まあこれからじゃ」
丹羽の目は暖かいがそれでも言うことは言った。
「御主もわかる」
「子育てのことが」
「くれぐれも子育てにかまけてな」
「政をですな」
「ないがしろにせぬ様にな」
「それは承知しております」
「まあ御主にはそれはないがな」
丹羽もそこはわかっていて言う。
「しっかりしておるからな」
「どれも万全にしてみせます」
「しかし。女好きの御主がな」
今度は佐久間が言う。
「これまで子が出来なかったか」
「どうにも」
「それも妙なことじゃ」
こう言うのだった。
「一人もとはな」
「それがずっと気になっていました」
「しかしそれがじゃな」
「ねねがやってくれました」
彼でなく、だった。
「でかしたとです」
「文に書いたか」
「はい」
まさにそうしたというのだ。
「いや、全く以て出来た女房です」
「出来た女房は亭主をよくするというが」
林通勝も言う。
「全く以てその通りじゃな」
「左様ですな」
「この様な剽軽者に嫁いで」
「剽軽者ですか」
「全くじゃ」
それこそとだ、林はまた言った。
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