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戦国異伝

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第二百五十五話 帰りの旅その三

「こうして書いておったのじゃ」
「そうでしたか」
「宴に行ってみるか」
 織田家の中のというのだ。
「これから」
「ですな、それでは」
「うむ、丁度貴殿が行く時には」 
 その宴にだ。
「権六殿が怒っておられるわ」
「そうした時ですか」
「うむ、丁度な」
「やれやれ、権六殿もですな」
「相変わらずだというな」
「はい、猿殿に対して」
 常にというのだ。
「そうされますな」
「それが権六殿じゃ」
「あの方のよきところですな」
「うむ、ではな」
「行って参ります」
「わしはもう酒がかなり回った」
 文を書き終えたところでそれを実感した、それでこう言ったのだ。
「だからな」
「もうお酒はですか」
「これで止めてじゃ」
 そしてというのだ。
「休む」
「今宵はですな」
「そうしようぞ」
 こう言ってだ、明智は実際にだった。
 己の陣に戻って休んだ、そして忠興が宴の場所に行くと。柴田が羽柴の頭を横から拳骨でごつんとやっていた。
 それが終わってからだ、こう彼に言っていた。
「もう大概にせい」
「いやいや、それでもです」
「嬉しいか」
「やはりそうですな」
「まあそれはわかる」
 柴田も羽柴に理解は言った。
「わしも子が出来た時は嬉しかった」
「今のそれがしの様に」
「そこは違う」
「ではどう違いますか」
「わしは御主程喜ばなかった」
 そこが違うというのだ。
「連夜浮かれてはしゃぐ様なことはな」
「そういえばそうでしたな」
「御主はもう大名じゃぞ」
「はい、だからですか」
「しかも十万石を優に超えるな」
「大身というのですな」
「そうした立場になったのじゃ」
 だからこそというのだ。
「もっと身を慎め」
「はしゃがずに」
「そうじゃ、もう足軽でもないのだぞ」
「大名だからこそ」
「それなりの仕草を身につけぬか」
「いや、そのことはわかっていますが」
 羽柴は左てを自分の頭の上に置いてそのうえで言った。
「それがしどうしてもです」
「子が出来てか」
「とかく嬉しいのです」
「それはわかると言っておるな」
「慎むべきですか」
「全く、御主は何時まで経ってもそうじゃな」
「そう言われる権六殿も」
 ここで言ったのは前田だった、盃の酒を飲みつつ笑っている。
「尾張を一つにする前から変わっていませぬな」
「わしもか」
「はい、そうしてすぐに拳骨を頭にやるところが」
 人を叱る際にというのだ。 
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