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戦国異伝

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第二百五十五話 帰りの旅その五

「大身になってもな」
「それがしはそれがしだと」
「重くない、しかしそうした御主でないとな」
「それがしでないと」
「わしもそう思う」
 ここではだ、林は笑って言った。
「その様にもな」
「それはそれで、ですな」
「そう思う」
 こう羽柴に言うのだった。
「それはそれでな。まあとにかくじゃ」
「子が出来たなら」
「御主も安心じゃな」
「これで家が続きますな」
「ではそれがしはです」
 ここで彼の甥である秀次が言う。
「三好家を継いで」
「そうしてじゃな」
 秀次には前野が応える。
「三好家を栄えさせていくな」
「そう考えています」
 その様にというのだ。
「子もいますし」
「御主は子沢山じゃしな」
「はい、幸いにして」
「小竹もな」
 川尻は秀長を見つつ言った。
「御主も子がおらぬからな」
「はい、残念なことに」
「御主も授かればよいな」
「そう願っています」
「子は宝じゃ」
 しみじみとしてだ、川尻は言った。
「まさにな」
「全くじゃ、子があってこその国じゃ」
 滝川も言う。
「国も子がなければな」
「ではそれがしこれからも」
 羽柴がまた言う。
「ねねに子が授かる様にしていきます」
「それではな」
 こう話してだ、そしてだった。
 織田家の家臣達は酒を飲んで楽しんでいた、それはどの家の者も同じでだ。
 家康もだ、長政と共に徳川家と浅井家が共に親しんで飲んでいた。家康はその場で長政に対して言った。
「いや、難はありましたが」
「はい、それぞれ」
「こうして共に勝ち生き残り」
「酒を楽しめることはですな」
「有り難いことです」
 家康は酒を飲みつつだ、長政に言った。
「実に」
「そうですな、それがしもそう思います」
「危うくでしたな」
「はい、織田家と刃を交え」
「そしてでしたな」
「家が滅びるところでした」
「それがしもです」
 家康はまた言った。
「危うく竹千代を失うところでした」
「ご嫡男を」
「それがです」
「共にでしたな」
「難を逃れました」
「上様が気付かれたお陰で」 
 まさにそのせいでだ。
「助かりました」
「共に」
「若し上様がおられなければ」
 その時はというのだ。
「まさにです」
「我等はですな」
「滅びるか嫡男を失っていたか」
「そうなっていましたな」
 二人で飲みながら話す、そして。
 長政は肴の刺身、近くの海で獲れた新鮮なそれを家康と共に口にしつつだ。そうしてこうしたことを言ったのだった。 
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