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アインクラッド篇
movement Ⅱ 絶望と希望の二重奏
アスラ戦 其之二
前書き
お久し振りです。
「ハアァァァァ!!」
片手直剣最上位ソードスキル《ノヴァアセンション》十連撃。取り敢えず小手調べだ。なにやらキリトがびっくりしているのが見えるが、まあ放っておこう。
1秒未満で十連撃を叩き込み、タゲを自分に移す、しかし
「駄目だ!離れろ!!」
キリトが叫んだように、この場合のソードスキルは悪手だ。特に高位のスキルは硬直時間も長い、タゲられてる以上、当然反撃がくる。
『グルォォ!!』
四本の刀がこちら目掛けて高速で振るわれる。大技直後の硬直で動けない俺は為す術もなく……
「なーんてなるかよっ!!」
両手剣四連撃ソードスキル《ライトニング》を発動、次々と迫る刃を全て弾き返す。辺りの人間が驚愕を表情に映す中、おもいっきりバックステップ。次の瞬間にはそこを大槌が叩く。
「アマギおめぇ………どうやったんだ!?」
クラインさんの叫びが聞こえるが取り敢えず無視。再びブラッドクロスを構え、ソードスキルを発動する。
片手半剣ソードスキル《スラスト スターズ》、両手剣ソードスキル《イラプション オブ ボルケーノ 》、片手直剣ソードスキル《ハウリング オクターブ》、7+7+8=22連撃を連続して繰り出す。最初の七連撃で攻撃を相殺し、残りの15発がすさまじい勢いでアスラのHPを食い散らかす。
『ガアアァァァァ!!?』
十本近い腕が唸りをあげて襲い掛かってくる。が、シエラさんや閃光の剣閃を、さらにはソラの鞭の先端すら見切る俺には全て、見える攻撃であり、対処可能な範囲内だ。防ぐまでもなく、紙一重でかわしていく。チラと反対側を見ると、ヒースクリフが盾で腕を的確に弾いているのが見えた。そして………
「オオオ!!」
後方から飛び込んできた黒衣の剣士。言うまでもなくキリトだ。がら空きの胴体に高位ソードスキルをぶちかましている。
「俺とヒースクリフで全部捌く!後は全員攻めに徹しろ!!範囲攻撃も潰してはみるが警戒しとけ!!!」
指示を飛ばしつつ、迫り来る無数の連撃を弾き、捌き、かわし、合間にソードスキルで確実にダメージを与えていく。
sight三人称
「刃の雨」とでも呼ぶべき連撃を、しかしアマギは全て無傷でやり過ごしている。いかに硬直が無いとはいえ、全ての攻撃が軌道の決まっているソードスキルで迎撃できる訳でもない。しかし、ボスの刃はアマギに届かない。
あまり知られていないが、アマギは攻略組随一の思考速度と観察力を持っている。彼は、それらをフル活用することによって、敵の行動をほぼ100%の精度で予測することができる。
驚くべきは、その先読みの長さだ。大体10~15秒先までの予測を可能としている。
彼の最大の武器は、その先読み能力から来る、『相手の攻撃を全て封殺する』という、およそダメージディーラーとは思えないものだった。
降り注ぐ刃の雨を、受け流し、スキルで相殺し、紙一重でかわす。同時に放たれた五本の腕を、片手半剣ソードスキル《ペンタグラム》で全て弾き返し、カウンターで《クレセント》を見舞う。弱点に当てた一瞬の隙を衝いて、キリトをはじめとした攻撃隊が一斉に雪崩れ込む。色とりどりの閃光が弾け、ボスのHPが大きく削れる。
しかし、攻撃隊にタゲが移る様子はない。依然としてアマギ一人を狙い続けている。まるで何かに惹き付けられるかの様に、彼だけを徹底的に攻め続ける。
そう、実際にアスラは彼に惹き付けられていた。
《剣聖》アマギのスキルスロットに突如出現したこのスキルには、数々の効果がある。
1.装備中の全武器スキルの熟練度を1000まで上昇させる。
2.スキル熟練度1000以上が解放され、裏ソードスキルの使用が可能になる。
3.ソードスキルの技後硬直及びクーリングタイムが無効化される。
と言う三つが、現在の熟練度104で使える全てである。恐らくはユニークスキルであろうこのスキルは、しかしメリットだけのスキルではなかった。有効化すると、mobの攻撃が使用プレイヤーに集中するというデメリットがあった。
sightアマギ
無数の斬撃が閃く。軌道を見極め、紙一重で回避する。どうしても避けきれないものはソードスキルで弾き飛ばす。
このような事を、かれこれ一時間。ボスのHPゲージは漸く一段削ったぐらい。単純計算でもあと三時間はかかる。
(……保つ……のか!?)
この先読み技術は、見た目ほど楽ではなく、脳に負担が強いため、あまり使いたくはないかくし球だった。既に軽い頭痛が始まっている。
「っても、そうも言ってられねぇなぁ!!」
アスラが一際大きく咆哮する。パターンの変化だ。同時にさらに腕が倍に増える。これで―――36本。
「っ!?ヒースクリフ!」
「分かっている!あと十分耐えてくれ!」
「ったく、無茶苦茶言ってくれるねぇ!!?」
叫び、ブラッドクロスを握り直した。
sight三人称
ボスの猛攻を、ギリギリでかわす、弾く、捌く。銀色のラインと赤い火花が次々と閃くその光景は、傍目には美しくすら見えた。切り結ぶ無数の刃の、残像か否かを見分けているのは、既に当人の他にはいない。
アマギの仮想体には、無数のダメージエフェクトが刻まれている。直撃こそ一つもないが、百を超える切り傷は、彼のHPを半分にまで減らしていた。
やがて、永遠にも思える攻防にも、終わりの時がやって来た。
「っ!?マズイ!!」
アマギの先読みは、ほぼ100%の精度を持つ。“視界の補足しうる範囲では。”
アスラは石造りの床に腕を突き込むと、真下からアマギを攻撃した。ギリギリ反応が間に合い、何とか飛び退いたが、それは先読みの終わりを意味した。
「何とか………ならねぇかもコレ。」
唸りをあげて迫る白刃に、自身の首が飛ぶ光景をイメージしたアマギ。しかし、それが現実になる寸前、間に誰かが割って入った。
「………無事か、アマギ。」
「………ったく、遅いんだよ、アラン。」
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