英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第26話
~グランセル国際空港~
「さてと……。また王都に戻ってきたわね。何はともあれ、まずはギルドに行こっか?」
「ああ、軍の相談ってのをエルナンから聞いちまおう。」
定期船から降りたエステルの提案にアガットは頷いた。
「そういえば、今日は発着場にあの白い船が泊まっていないね。確か、『アルセイユ』といったかな。」
「え?」
意外そうな表情でオリビエは誰かに答えを求めるかのように呟き、オリビエの呟きを聞いたエステルは首を傾げて、反対側の着陸場に目を向けた。
「あ、ホントだ。」
「ちょっと残念だな…………ミント、どんな飛行船か気になっていたのに………」
何もない着陸場を見てエステルは頷き、ミントは残念そうな表情をした。
「確か、王家の巡洋艦だったか。どこかに任務で出かけてるんじゃないのか?」
「アルセイユはちょうどレイストン要塞に行っています。そこで完成したばかりの新型エンジンを搭載するそうです。」
「あ、整備長さんたちも工房船でレイストン要塞に出かけたって言ってました。」
ジンの疑問に事情を一番知っているクロ―ゼが答え、ティータがクロ―ゼの説明の補足をした。
「へ~、そうだったんだ。ってことは、あのカッコイイ船がさらにパワーアップするのよね?どんな風に変わるのか楽しみかも。」
「エンジンを交換するだけだから外装は変わらないと思うけど……。でも、間違いなく世界最速の船になるはずだよ♪」
エステルの疑問にティータは嬉しそうな表情で答えた。そしてエステル達はギルドに向かった。
~遊撃士協会・グランセル支部~
「皆さん、よく来てくれました。ルーアンとツァイスでの報告書は読ませていただきましたよ。本当にご苦労さまでしたね。」
「うーん、『結社』にしてみれば小手調べだとは思うんだけど……。仮面男も、サングラス男も本気を出してなかったみたいだし。しかもサングラス男に関しては完全にパズモ達任せだったし…………」
エルナンの称賛にエステルは苦い表情をして答えた。
「それでも『結社』が現実に動いていることが判っただけでも大きな収穫と言えるでしょう。今後は、王国軍との協力もスムーズに出来ると思いますよ。」
「で、その軍の相談ってのはいったいどういうものなんだ?やっぱり、『結社』関係なのかよ?」
「それなんですが……。どうも通信では相談しにくい内容らしいんです。ですから直接、軍の担当者が来て事情を説明してくれるそうです。」
アガットの疑問にエルナンは真剣な表情で答えた。
「ふむ……通信では相談しにくい内容か。ひょっとしたら盗聴を警戒してるのかもしれないね。」
「と、盗聴!?」
「その可能性は高いでしょう。導力通信は便利ですが傍受される危険もあります。ギルド間の通信であれば盗聴防止用の周波変更機能が使えるんですけどね……」
オリビエの推測にエステルは驚き、エルナンは特に驚いた様子もなく頷いた。
「その盗聴防止の機能は軍との通信には使えないんだ?」
「軍は軍で、独自の通信規格を採用しているので無理なんです。通常交信しかできません。」
「そうなんだ……。うーん、どうせだったら同じ規格にしちゃえばいいのに。」
「そうだよね………どうしてわざわざ違うのを使うんだろう?」
「まあ、協力しているといっても一国の軍隊と国際的な民間組織だ。情報保全の独自性は避けられんさ。」
エステルの提案にミントは頷き、ジンは苦笑しながら答えた。
「しかし、エルナン。どうやらあんたは、軍の相談が何なのか見当がついてるみてぇだな。でなけりゃ、わざわざ俺たちをツァイスから呼んだりしねえだろ。」
「おや、見抜かれましたか。これは私の読みですが……どうやら『不戦条約』に関する話である可能性が高そうですね。」
アガットの指摘を受けたエルナンは口元に笑みを浮かべた後説明した。
「『不戦条約』……それって最近、色々な所で耳にしてるけど……。具体的にはどんな内容の条約なの?」
エルナンの説明を聞いたエステルは首を傾げて尋ねた。そして首を傾げているエステルにクロ―ゼが説明をした。
「女王陛下が提唱されたリベール、エレボニア、カルバード、メンフィルの4ヶ国間で締結される条約なんです。国家間の対立を武力で解決せず、話し合いで解決すると謳っています。」
「え……!それじゃあ戦争がなくなるってことなの!?」
クロ―ゼの説明を聞いたエステルは驚いた表情で尋ねた。
「いえ、強制力はありませんからなかなか難しそうですけど………それでも抑止力にはなりますし、国民同士の友好的なムードにつながるとお祖母様は考えていらっしゃるそうです。」
「そっか……」
「わあ………クロ―ゼさんのお祖母ちゃんって、本当に凄いね!」
「さすがはアリシア陛下だ。いい目の付け所をしてらっしゃる。」
「4つの国が仲良くできるきっかけになるといーですね。」
クロ―ゼの説明を聞いたエステルはどことなく嬉しそうな表情をし、ミントははしゃぎ、ジンは感心し、ティータは嬉しそうな表情で頷いた。
「その不戦条約が、来週末に『エルベ離宮』で締結されます。外国の要人も集まりますしメディアにも注目されるでしょう。そんな状況で、もしも『結社』が何かを企んでいるとしたら……」
「確かに……。シャレにならないわね。」
クロ―ゼの心配にエステルは真剣な表情で頷いた。
「加えてメンフィルの参加者がリベールを含め他の2国も注目している方達ですから、かなりの慎重性が求められているんです。」
「へっ?メンフィルからは一体誰が参加するの??皇女のリフィアやプリネかな~とも思っていたけど。」
クロ―ゼの説明を聞いたエステルは首を傾げて尋ねた。そしてクロ―ゼはエステルの疑問を聞き、真剣な表情で重々しく答えた。
「いえ…………メンフィルの参加者なんですが…………現皇帝夫妻であられるシルヴァン皇帝陛下とカミ―リ皇妃です。」
「あ、あんですって~!?げ、現メンフィル皇帝って事は………メンフィルの今の王様!?」
「そいつは確かに他の3国は注目するな………まさか皇帝夫妻が揃って直接参加するとは………」
「それも”英雄王”リウイ皇帝陛下ではなく、今までその名しか知られていなかった現メンフィル皇帝が妃と揃って姿を見せるとは確かに驚きだね。」
クロ―ゼの説明を聞いたエステルは声を上げて驚き、ジンやオリビエは頷いた。
「あれ?ちょっと待って………確かリフィアが今のメンフィルの王様の娘だから………もしかして、リフィアのお父さんとお母さん!?」
「はい。お祖母様もメンフィルからの代表者はリフィアさんかプリネさん、或いはメンフィル大使――リウイ皇帝陛下と思っていたのですが………今回の参加者を聞き、かなり驚いていたと聞きます。」
「それは確かに驚くだろうね。”ゼムリア大陸真の覇者”とも言われている国を統べる王が参加するなんて聞いたら誰でも驚くだろうね。」
エステルの疑問にクロ―ゼは答え、クロ―ゼの言葉を聞いたオリビエは頷いた。
「はい。メンフィルの現政権を握る重要な方でもありますから、なんとしても今回の会談を成功させたいとお祖母様は思っているんです。」
「フン……結構シビアな話になりそうだ。で、その担当者が来るまで俺たちはここで待てばいいのか?」
クロ―ゼの説明を聞き、頷いたアガットはエルナンに尋ねた。
「そうですね。約束の時刻まで時間はありますし自由になさって結構ですが……」
アガットに尋ねられたエルナンが答えかけたその時、通信器が鳴った。
「おや、失礼。」
鳴り響いている通信器に気付いたエルナンは通信器をとった。
「こちら、遊撃士協会。グランセル支部です。はい……はい……。………………………………。なるほど……そうですか。ふむ、確かにそれは困ったことになりましたね。少々お待ちください……」
「もしかして王国軍から?」
「いえ、エルベ離宮からです。何でも、観光客の子供らしき迷子を保護したそうですが……保護者が見つからずに困っているとのことです。」
「あらら。」
「まあ……」
エルナンの話を聞いたエステルは驚き、クロ―ゼは心配そうな表情になった。
「その子の保護者を見つけてほしいとの要請なんですが……。軍の担当者が来るまで時間もありますし協力していただけませんか?」
「そりゃあモチロン、引き受けさせてもらうわ。アガットもいいよね?」
「しゃあねえな。とっとと離宮に行くとするか。」
「助かります。」
エステルとアガットの答えを聞いたエルナンは置いていた通信器をとってまた話始めた。
「ええ、ちょうど手の空いた遊撃士がいたのでそちらに向かわせます。貴方のお名前は……はい……了解しました。それではお待ちください。」
そして通信器を置いたエルナンはエステル達の方に向いた。
「エルベ離宮に勤めているレイモンドさんという執事がその迷子を預かっているそうです。離宮に着いたら訪ねてみてください。」
「うん、わかったわ。……って、レイモンドさんってどこかで聞いたことのある名前ね。」
「んー、あの若い執事じゃないか?離宮解放の時にカウンターの下に隠れていた。」
「そっか、ナイアルの友達だっていうあの人か!」
エルナンから聞いた名前で首を傾げているエステルにジンは以前の事を思い出して言い、ジンに言われたエステルは完全に思い出した。
「お知り合いならなおさら話が早そうですね。それではよろしくお願いします。」
その後エステル達は推薦状を貰うために一人で仕事をするミントとは一端別行動にし、そしてオリビエやティータをギルドに待機にして、エルベ離宮に向かった…………
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