英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第2章~荒ぶる大地~ 外伝~工匠都市防衛戦~前篇
~工匠都市ユイドラ・城壁上~
「なっ……………!」
敵襲の知らせを聞いたウィルは蟻のように群がっている魔族の軍を見て、信じられない表情をした。
「な、何よあれ~!?多すぎじゃない!!」
「どうやって、あんなに集めたんだよ~。」
「………総力戦と言った所か。」
「敵もそれだけ必死と言う訳ですね………」
あまりにも多い敵の数を見たエミリッタとシャルティは信じられない表情をし、ユエラとメロディアーナは冷静な表情で答えた。
(くっ………水那達は間に合わなかったか……!もっと早くに頼んでおけば、こんな事には……!)
ウィルは自分の判断不足を心の中で呪った。
「どれだけ来ようと………ウィルやユエラ達の敵は殺す………!」
ラグスムエナは大鎌を構えて、戦闘態勢に入った。
「ウィル!今までのように討って出るのは危険過ぎます!」
「わかっている!裏門を防衛しているレグナー達に通達!門を堅く閉じて、敵の侵入を食い止めろ!空を飛んで侵入してくる敵を優先的に撃退!絶対に街に入らせるな!」
セラウィの忠告に頷いたウィルはユイドラ兵達に伝令をした。
「「「「ハッ!」」」」
伝令に頷いた兵士達は報告に向かった。
「ルリエンよ………我等に勝利を………」
「軍神の戦士として、この命、果てるまで戦い抜きます。」
「………この私がいる限り、ロカ様は殺させません。」
フォーチュラは戦闘前の祈りをし、ロカは静かに槍を構え、イルザーブも剣を構えた。
「フフ………腕がなるわね♪」
「フン。雑魚がいくら群がろうが無駄な事を。」
カーリアンやファーミシルスは敵の大群を見て、不敵に笑っていた。
「キャハッ♪一杯遊べそう♪」
「余達がいるのだ!敵がいくらいようと、負けはない!」
「うふふふ……今日はどれだけ殲滅しようかしら♪」
エヴリーヌやリフィア、レンは可愛らしい容姿ながら敵の大群に腰が引けているユイドラ兵達と違って、楽しそうな表情をしていた。
「…………どうやらお前をここに連れて来て正解だったようだな、シェラ。期待しているぞ。」
リウイは先日、”帰還の耳飾り”によってメンフィルから一時的に呼び寄せて来た部下――シェラ・エルサリスを見て言った。
「ハッ。」
リウイに見られたシェラは軽く頷いた。
「ペテレーネ。久しぶりかもしれんが、衛生兵として頼むぞ。」
「お任せを。手が空いていれば私も援護させて頂きます。」
「マーリオン。お前はペテレーネ達の補佐だ。教会で待機しているシスター達の護衛や補佐を頼むぞ。」
「了解しました…………」
リウイの指示にペテレーネは会釈をして頷き、マーリオンも頷いた。そしてペテレーネとマーリオンはユイドラにある教会を仕切っているシスター――ハンナを中心としたユイドラの女性達による衛生部隊の所に向かった。
「ツーヤ、イリーナさん。絶対に私達から離れないで下さいね。それと無理は禁物です。無理と思ったら、街の人達が避難している場所に撤退して下さいね。」
「はい!」
「ご主人様は絶対に守ります………!」
プリネの指示にイリーナは頷き、ツーヤは凛とした表情でプリネを守る事を改めて固く誓った。そしてプリネは召喚した自分の使い魔達にも向いて言った。
「ペルル、フィニリィ。大変とは思いますが、精一杯頑張って下さい。」
「勿論だよ!ボク達の未来のためにも頑張らないとね!」
「当然ですわ!わたくしにとっても思い出があるこの街をあのような魔物共に壊させはしませんわ!」
プリネの頼みにペルルとフィニリィはそれぞれ力強く頷いた。
「お父さん、お母さん!」
そこに武装したセティ達――ウィルの娘達が来た。
「3人とも!?ここは危険だ!早く、避難所に!」
娘達の登場にウィルは驚いた後、すぐに警告した。
「私達も戦います!」
「そうだよ!一人でも戦える人が必要なんだから、母さん達に鍛えてもらった私達も戦わないと!」
「………シャマーラの言う通りです。ユイドラを守りたい気持ちは父様達に負けません。」
セティは弓を掲げ、シャマーラは大剣を掲げ、エリナは槍を掲げて戦う意思を強く言った。
「そんな!危険過ぎます!」
娘達の決意を聞いたセラウィは驚いた後、セティ達を心配した。
「う~ん………さすがにあんた達じゃ、この状況で戦うのは厳しいんじゃないかな~?」
「………ええ。ですが3人がある程度の武を持っているのも確か……どうしますか、ウィル。」
シャルティも珍しく渋い表情で答え。メロディアーナは頷いた後、ウィルに判断を求めた。
「……………………」
判断を迫られたウィルはその場で考え込んでいた。
「私達、お父さん達の無事を祈って待っているだけじゃ、嫌なんです!」
「母さんやユエラ姉さん達に鍛えてもらったんだから、ある程度は戦えるよ!私達もユイドラを守らせて!」
「………お願いします、父様。」
「……………………わかった。」
「ウィル!?」
決意を持った表情の娘達を見て、許可を出したウィルにセラウィは驚いた。
「セティ達のこの様子を見たら、ここで断っても隠れて戦いそうだからね………だったら、目が届く所で戦ってくれた方が安心できるよ。」
「それはそうですが…………」
ウィルの話を聞いたセラウィは納得はしていたが、それでもまだ心配していた。
「心配するな、セラウィ。私達がいるんだ。」
「そうだよ!危なくなったら、あたし達がフォローすればいいだけだし!」
「みんな………守る………」
心配しているセラウィにユエラ達は心強い言葉をかけた。
「………わかりました。ですが、私達のように決して一人で戦わないで下さいね?」
「3人で協力して戦う事。いいね?」
「「「はい!!」」」
セラウィとウィルの言葉にセティ達は力強く頷いた。そしてついに魔族の大群がユイドラのかなり近くに近付いて来た!
「ウィル、敵が大分近付いて来ました!」
「わかった!弓隊、構え!」
メロディアーナの警告に頷いたウィルは指示をした。ウィルの指示によって兵士達は弓矢を構え、セラウィやセティ、フォーチュラにエヴリーヌも弓を構えて技を放とうとした。
「………行くわよ。」
「シェラ、お前は状況を見て移動しつつ、外の敵を一掃しろ。」
「御意。」
ロカは魔導鎧に付いている砲口を出し。リウイに命令に頷いたシェラもいつでも放てるようにした。
「…………神をも震撼させし………」
「流星よ……」
リフィアとエミリッタは魔術の詠唱を始めた。そして敵の大群はユイドラに近付いて来た。
「!今だ!放て!!」
ウィルの号令に呼応するように、ユイドラ兵達は一斉に矢を放ち、一斉に放たれた矢は雨のように敵に降り注いだ!
「行くぞ!乱れ撃ち!!」
「行きますよ!ハッ!………まだです!2連制圧射撃!!」
「死んじゃえばぁ!!アン・セルヴォ!!」
「ヤアッ!2連射撃!!」
フォーチュラ、セラウィ、エヴリーヌ、セティの弓矢も敵を射抜き、絶命させた!
「………行きなさい!」
「………制圧二連。発射。」
ロカ、シェラの砲撃は大量の敵を葬り
「エル=アウエラ!!」
「小隕石召喚!!」
リフィアとエミリッタの魔術も負けずに大量の敵を葬った!
「弩砲!構え!」
さらにウィルの号令で城壁にある防城兵器の一種、大型弩砲――アーバレストをユイドラ兵や工匠達は協力して、槍のような大きい矢を何本もつがえて、弓を引き絞った!
「投石機!用意!」
そしてアーバレストと同じ兵器の一種である、投石機――カタパルトも同じようにユイドラ兵や工匠達によって構えられた!
「撃て!!」
そしてウィルの号令によって兵器に付いている矢や石は一斉に発射され、地上の敵を大量に減らした!上からの攻撃によって地上の敵は次々と絶命していったが、翼を持ち、空を飛ぶ魔物達は上空より強襲した!
「そこだっ!」
「フッ!」
「ど~りゃ~!」
「ヤアッ!」
「それっ!」
「はあーっ!」
上空より強襲して来た敵をウィル、リウイ、カーリアン、プリネ、、レン、ユエラはそれぞれの武器で撃退した!また、ユイドラ兵達や工匠達も戦闘を始めた!
「そこっ!」
「とーう!」
「死ねっ!」
「ハアッ!」
「邪魔よ!」
「えい!」
「貫け!」
飛行能力を持つメロディアーナ、シャルティ、ラグスムエナ、イルザーブ、ファーミシルス、ペルル、フィニリィは空中戦で挑み、敵を倒して行った!
「戦意よ、目覚めよ!祝福!!」
「ありがとうございます、イリーナさん!………斬!!」
イリーナによって身体能力が上がったツーヤはジャンプして、クラフト――十六夜”斬”で敵を斬った!
「行けっ……!光弾!!」
そしてイリーナは魔術を放って敵を撃ち落とした所を
「ハアッ!!」
ツーヤがクラフト――溜め突きで止めを刺した!
「速いの、行っくよ~!ヴェングス!!」
シャマーラは両手剣という大型の武器を持ちながら高速剣の一種――風鎌剣の剣技で敵にダメージを与え
「止め!」
エリナが槍で敵の喉元を突き、絶命させた!そしてエリナの背中から襲いかかろうとした敵がいたが
「させない!」
セティが撃ち落とし
「ハア~!気合斬り!!」
シャマーラが両手剣に闘気を込めて豪快に真っ二つに斬った!
「セティ姉様、シャマーラ。ありがとうございます。」
「フフ、気にしないで。妹を守るのも姉の務めですよ。」
「そうだよ~!だってあたし達は姉妹なんだから!」
お礼を言うエリナに2人は微笑みながら答えた。
「フフ………ありがとう、2人とも。……でも、油断は禁物よ、シャマーラ!」
そしてエリナはシャマーラを背後から襲いかかろうとした敵を槍で喉元を突き、絶命させた!
「ありゃ。あたしも人の事、言えないな~。」
「私達はお父さん達と違って、工匠として、戦士としてもまだまだなんですから………3人で協力して、頑張りましょう!」
「はい!」
そして3人は協力して、戦い始めた!
城壁の上は上空より侵入して来ようとする敵との混戦になった!そこに慌てた様子の一人の工匠がやって来た。
「領主様~!レグナー様達が苦戦しています!至急、援軍を!!」
「なんだって!レグナーが!?まさか、相手はディアーネか!」
自分の好敵手であり、ユイドラの工匠の中でもナンバー2を誇るほどの実力があるレグナーが苦戦している事に驚いたウィルはレグナー達を苦戦させている相手を尋ねた。
「い、いえ………相手はセオビットと名乗る睡魔族の者のようです!!たった一人なのですが、これが強くて………上級工匠の数名が既に重傷を負い、教会へ運ばれて行っています!」
「クッ………まさか、ここでそんな強敵が現れるなんて………!」
新たな強敵の登場にウィルはどうするか考えた。そして工匠が遠慮気味にウィルに尋ねた。
「あ、あの………ここにリウイっていう人はいますか?」
「え?」
「………俺がどうした。」
リウイが呼ばれた事にウィルは首を傾げ、リウイは尋ねた。
「その………セオビットという者が『リウイという半魔人を出せ』と………」
「何?そのセオビットとやらは俺に何の用なのだ?そのような名前、聞いた事もないが。」
聞いた事も見た事もない相手が自分を呼んでいる事にリウイは首を傾げた。
「はあ………それが『私と同じ半魔人の癖に人間との共存を謳う魔族の面汚しに裁きを与える』と叫んでいたのですが………」
「………………同じ”半魔人”か。……………どうやら、ここは俺が行った方がいいな。プリネ。お前はツーヤとイリーナと共にペテレーネ達の援護に向かえ。……恐らく、そのセオビットとやらのせいで、重傷者が増えているだろう。治癒師が圧倒的に不足しているだろうから、一人でも多くの治癒術師がいた方がいいだろう。」
工匠から話を聞いたリウイは少しの間考え、答えた後プリネに指示をした。
「はい、わかりました!イリーナさん、ツーヤ!行きますよ!」
「「はい!」」
リウイの指示に頷いた後、ペテレーネ達がいる教会に向かった。
「そのセオビットとやらが戦っている場所に案内してくれ。」
「はい!」
「レグナー達を頼む、リウイ!」
「ああ。」
そしてリウイは工匠に案内され、レグナー達が戦っている場所に向かった。
~工匠都市ユイドラ・裏門~
ウィルの好敵手であり、右腕でもあるレグナー率いる工匠達はたった一人で裏門を破壊し、ユイドラに侵入して来たセオビットによって絶体絶命の状況に陥っていた。
「ふふっ………あっけないわね?退屈凌ぎにもならないわ………」
「クッ…………」
無傷で不敵な笑みを浮かべているセオビットを全身に傷を負い、所々破れている外套を羽織った黒髪の青年――レグナーがセオビットを睨んでいた。レグナーを守っている巨大なゴーレムもセオビットの攻撃によってボロボロになっていて、周りの工匠達も重傷を負っている様子で地面に蹲って呻いていた。
「まあいいわ………あなた達を葬った後、リウイとやらをゆっくり探すわ………。」
そしてセオビットは片手に魔力を込めた。するとセオビットの片手に膨大な魔力が籠った!
「!!全員、散開しろ!」
それを見たレグナーは全員に警告したが、重傷を負っているため、誰も動けなかった。
「死になさい。」
そしてセオビットは片手に込めた膨大な魔力の弾を放った!
「セアッ!!」
そこにリウイが乱入し、レグナー達の前に立ちはだかり、クラフト――フェヒテンケニヒで魔力の弾を真っ二つにした!
「ラ・ティアラル!!」
さらに乱入する前に駆動させ始めたオーブメントを発動させ、アーツでレグナーや工匠達の傷をある程度回復させた。
「貴方は……メンフィル王。」
自分達を救った人物に呆けたレグナーだったが、リウイ達の正体をウィルから内密に教えられていたレグナーは自分達を救った人物がリウイである事に驚いた。
「………お前がウィルが言っていたレグナーだな?そいつの相手は俺がしてやる。お前達はその間に負傷した者達を教会に運び、壊れた門の修理を行っておけ。」
リウイは、攻撃をやめて自分を興味深そうな表情で見ているセオビットから目を離さず、レグナー達に指示した。
「援護は?」
「必要ない。俺の戦いに付いてこられる奴はここにはいないだろうしな。」
レグナーは援護が必要か尋ねたが、リウイは断った。
「………わかりました。ここはお願いします。」
リウイの答えをある程度予想していたレグナーはリウイに軽く目礼した後、工匠達にさまざまな指示をして、門の修理に向かった。そしてその場はリウイとセオビットの2人だけになった。
「ふふっ……貴方がリウイね?……どんな男かと思ったけど、いい男じゃない。………魔力も父様と同等かそれ以上に感じるわね。ふふっ………楽しませてもらえそうね……」
「セオビットといったな………何者だ。俺はお前に見覚えも聞き覚えもないぞ。……その容姿からすると、エルフと魔人から産まれた半魔人という所か………」
不敵な笑みを浮かべているセオビットをリウイは目を細くして睨みながら尋ねた。
「ディアーネとやらから、貴方の事は聞いたわ。魔神の血を引くくせに、光と人間に与する裏切り者だと。」
「………勘違いするな。俺は光にも闇にも属さん。俺が目指すのは光と闇の”共存”だ。」
「フン……それが気にいらないのよ………!我が名はセオビット!リガナール半島に住みし魔人、イグナートの娘なり!」
リウイの答えに鼻をならしたセオビットは高々と自分の事を言った。
「…………リガナール半島………だと?確かあそこは腐敗の神に与する眷属によって、生き者が住めない腐敗の土地だと聞いたが。」
セオビットの口から出た土地の名前を聞いたリウイは、その土地の現在の状況を思い出して尋ねた。
「五月蠅い!数百年経とうが、生き者が住めない土地になろうが父様は生きているに決まっている!」
(………?何だ、こいつの言い方は。この言い方だと、まるで時代に取り残されたような言い方だが……)
リウイの言葉を聞き激昂したセオビットを見て、リウイは何かが頭に引っ掛かり、眉をひそめていた。
「この私と同じ半魔人の癖に、脆弱な人間と慣れ合っている魔族の面汚しが……!最初は殺すつもりだけど、貴方を見て気が変わったわ!じわじわといたぶった後、私の奴隷にしてあげるわ………この私の下僕になれるのだから、光栄に思いなさい!」
「結構だ。………我が覇道、誰にも妨げはさせん。邪魔する者は例え、同族であろうと赦しはしない。」
リウイはレイピアを構え、全身に闘気と魔力を纏った!
「ふふっ………せめて、この私の練習台にはなってよね!!」
セオビットは異空間より黒々と燃える魔剣を出して、リウイのように全身に闘気と魔力を纏い、そして剣を構えた!
「………行くぞ!」
そしてリウイとセオビットは戦い始めた………!
その頃、ハンナとペテレーネ、マーリオンがいる教会内は次々と運ばれる負傷者への対応に追われていた………
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