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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第20話(1章終了)

ギルドを出たエステル達はドロシーとナイアルに旅立つ事の挨拶をするために2人が泊まっているホテルに向かった。



~ルーアン市内・ホテルブランシェ・客室~



「こんにちは~……って……」

エステル達が部屋に入るとドロシーはベッドの上に横たわっていて、ナイアルは机で書類仕事をしていた。

「事件の報告をしている時からうつらうつらし始めてな……。終わった途端、爆睡しやがったんで仕方ねぇからベッドに運んだんだ。」

「ま、昨日は真夜中まで色々なことがあったからな。少々キツかったのかもしれん。」

ナイアルの話を聞いたアガットは昨日の事を思い出し、納得した。

「ふん、徹夜を続けられてこそ一人前の記者だっつーの。そうだ、コイツの説明だけじゃいまいち要領が得なくてな……。今回の事件について幾つか質問をしてもいいか?」

「うん、いいわよ。」

「ミント達で答えられる事なら、なんでも答えるよ!」

そしてエステルたちはナイアルの質問に答えながら、事件のあらましを説明した。

「なるほど、大体わかったぜ。それにしても『怪盗B』がリベールに来ていたとはな……」

「え……!ナイアルってば怪盗男のことを知ってるの!?」

ナイアルがブルブランの事を知っているように聞こえたエステルは驚いて尋ねた。

「大陸各地を騒がす有名な盗賊らしいぞ。狙った獲物は逃がさない。あくまで華麗に盗み去る……そんな芝居がかった盗賊らしい。」

「フン……。同一人物くせぇな。」

「確かにあの人を見ていると、お芝居を見ている感じだったね。」

ナイアルの話を聞いたアガットは鼻をならして納得し、ミントも頷いた。



「だが、その『怪盗B』がまさか結社の手先だったとはな。『身喰らう蛇』……とことん得体の知れない連中だぜ。」

「あの、ナイアルさん。今回の事件についてはどこまで記事にするんでしょう?」

クロ―ゼはナイアルが今回の事件の内容をどこまで記事にするか心配になり、尋ねた。

「いや、実はギルドと王国軍から結社についての報道は控えるように頼まれちまいましてね。『悪質な愉快犯』の仕業として書くことになっちまうと思います。」

「まあ、クーデターも集結してやっと国内も落ち着いた頃合だ。市民の動揺を考えたら妥当な判断だと言えるだろうね。」

ナイアルの説明にオリビエは納得して頷いた。

「記者としては不満だが、そのあたりは俺も納得してるさ。その代わり、また事件が起こったら俺たちにもちゃんと知らせてくれよ?」

「うん、わかったわ。それじゃあ、あたし達はツァイス地方に出発するけど……」

「おお、そうか。俺は原稿書きがあるからちょいと見送りに行けねぇが……。ドロシーのヤツ、起こすかよ?」

「あ、いいっていいって。せっかくぐっすり寝てるんだし。ナイアルからよろしく言っといて。」

「わーった。くれぐれも気を付けろよ。」

そしてエステル達は空港に向かった。



~ルーアン発着所~



ジャンの手配によってチケットを手に入れたエステル達はしばらく待った後、定期船が来た。

「さてと。あたしたちも乗りますか。」

「はい、そうですね……」

定期船に乗ろうとした所意外な人物達がエステル達に声をかけた。

「あ~、いたいた!」

なんとクラム達がエステル達に近付いて来た。

「あ、あんたたち!?」

「みんな!?」

「みんな、どうして……」

クラム達の登場にエステル、ミント、クロ―ゼは驚いた。

「見送りに来たのー。」

「まったく3人とも、ちょっと薄情すぎるぜ。オレたちに黙って出発しようとしてさ~!」

「ほんと、プンプンですよ!」

「クローゼおねえちゃん。ホントに行っちゃうの~?」

驚いているエステル達にクラム達は思い思いの言葉を言った。

「うん……ごめんね。挨拶をしようと思ったんだけど留守にしてるって聞いて……」

「ルーアンの方に来てたわけね。あ、それじゃあひょっとしてテレサ先生も……」

「うふふ。間に合ったみたいですね。」

そこにテレサ、そしてコリンズとジル、ハンスまでがやって来た。



「先生!」

「院長先生!それに、ジルたちも……」

テレサ達の登場にミントとエステルは驚いた。

「あはは!ぎりぎりセーフって感じね。」

「はあ、いきなり見送りして驚かせようなんて言い出すからこんな事になるんだよ。」

「ま、結果オーライってことで。」

呆れて溜息を吐いているハンスにジルはウインクをして答えた。

「実は、ジルさんたちからあなた達が出発することを教えてもらったんです。それで、どうせならみんなでお見送りをしようという事になって。」

「フフ、ついでだから私も付き合わせてもらったよ。」

「そうだったんですか……」

テレサとコリンズの話を聞いたクロ―ゼは感動してテレサ達を見た。



「……なあ、エステル姉ちゃん、ミント姉ちゃん。ヨシュア兄ちゃん……家出しちゃったんだってな。」

「あ……………」

「………………」

クラムの言葉を聞いたエステルとミントは表情を暗くした。

「あたし達、先生からその事を教えてもらって……」

「そっか……。ごめんね、みんなに黙ってて。」

「みんなを心配させたくなかったんだ………」

気不味そうに話すマリィを見て、エステルとミントは謝った。

「ううん、いいんです。あの、わたしたち、女神さま達に毎日お祈りします!ヨシュアさんが早く帰ってきますようにって!」

「ボクもお祈りする~!」

「きっとかなえてくれるの~。」

「「みんな……」」

「ふふ、ありがとう。」

マリィ達の暖かい心使いにエステルとミント、クロ―ゼは感動し、微笑んだ。

「ついでにあたしたちも女神様に祈らせてもらうわ。エステル、クローゼ、ミントちゃん。くれぐれも気を付けてね。」

「頑張るのはいいが無理して危険な目には遭うなよ。そんな事になったら、あいつ、自分が許せなくなるだろうからな。」

「ジル、ハンス君……」

「うん!わかった!」

「うん……。肝に銘じておくわね。」

ジルとハンスに励まされ、エステル達は頷いた。



「エステルさん、クローゼの事、どうかよろしくお願いします。しっかりしているように見えてもろいところがある娘ですから……」

「せ、先生……」

テレサの言葉を聞いたクロ―ゼは恥ずかしそうな表情をした。

「えへへ、任せてください。といっても、あたしの方が色々助けられちゃいそうだけど。」

「ふふ……。クローゼはこれを機会に自分を見つめ直せるといいわね。自分のすべきことが何なのか焦らず答えを出すといいでしょう。」

「はい……わかりました。」

テレサの事簿を聞いたクロ―ゼは凛とした表情で頷いた。

「遊撃士と学生……どちらも目指すべき道がある。2人とも、これまでの日々でじゅうぶん力を養ってきたはずだ。己の力を過信せずに使いこなせるようになるといい。そうすれば必ずや困難な道も乗り越えられるだろう。」

「「はい!」」

そしてコリンズの言葉にエステルとクロ―ゼは力強く頷いた。



ツァイス方面行き定期飛行船、『セシリア号』まもなく離陸します。ご利用の方はお急ぎください



「あ、いけない……!」

出発のアナウンスを聞いたエステル達は急いで、定期船に乗り込んだ。

「それじゃあ、またね!」

「みんな……お元気で。」

「今度来る時は絶対、ツーヤちゃんも連れてくるね!」

「姉ちゃんたちも元気でな!」

「土産話とヨシュア君、期待して待ってるからね!」

そして定期船はツァイスに向けて、飛び去った。



一方その頃、ディアーネ達を追い払ったユイドラ軍だったが、数日後に今までとは比べ物にならないほどの大軍がユイドラに迫っていた…………




 
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